現在エピソード4までが配信されている、DONTNOD Entertainmentの人気アドベンチャーシリーズ『ライフ イズ ストレンジ 2』。Game*Spark編集部は、そんな本作と前作『ライフ イズ ストレンジ』、スピンオフ作品『The Awesome Adventures of Captain Spirit(以下、キャプテン・スピリット)』の脚本を担当したジャン=リュック・カノ氏へインタビューを行いました。ストーリー執筆に影響を与えた出来事や、開発についての裏話、シリーズの今後の展望などについて伺うことができましたので、その模様をお届けします。
――『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの脚本執筆に当たって、影響を受けた作品や出来事があれば教えてください。
ジャン=リュック・カノ氏(以下カノ氏):前作『ライフ イズ ストレンジ』開発中に子どもが産まれまして、そのときに感じたことがゲームに強く反映されました。子どもの成長もそうですし、子育ての中で自分が決めることになる選択の大切さは、脚本にも影響を与えています。
――父親になったことや子育てを経験したことで、どのような心境の変化がありましたか。
カノ氏:自分一人だった頃は、全ての選択の結果はただ自分に返ってくるだけでした。子どもが産まれると、自分の選択や行動が子どもに影響を与えるようになって、選択することが怖くなったり責任を感じるようになりました。例えば、子どもに「汚い言葉を使ってはいけないよ」と言い聞かせても、自分がイライラした時に思わず汚い言葉を使ってしまったりして、後悔することなどがありますね。
――なるほど。子育てを通して、『ライフ イズ ストレンジ』のように「時間を巻き戻したい」と思ったことはありますか。
カノ氏:子どもがいけないことをしたとき、つい大声で怒ってしまったことがありました。「あのときに時間を巻き戻せたら……」と思ったりしますが、現実では無理ですから「あのときはごめんね」と謝るしかないですね。
――『ライフ イズ ストレンジ』はシリーズ第一作目からエピソード形式を採用されていますが、このリリース形態にはどのようなメリット/デメリットがありますか。
カノ氏:メリットとしては、ストーリーの流れがある程度決まっていたとしても、ユーザーのフィードバックを受けて細かい調整ができるという点です。例えば『ライフ イズ ストレンジ』でとある事件の中心人物となった女の子「ケイト・マーシュ」はプレイヤーからの人気が高かったので、その後もストーリーに関わるよう変更を加えています。
『ライフ イズ ストレンジ 2』のエピソード1で登場する主人公ショーンの幼なじみ「ライラ・パーク」は、エピソード1以降には登場しない予定だったのですが、「良いキャラクターだ」というフィードバックを多数もらっていたので、その後のエピソードで彼女にコンタクトをとる選択肢を用意しました。
エピソード形式のデメリットはストーリー製作においてはあまりないのですが、『2』はひとつの町の中で完結した前作と違い、様々なロケーションを描いていくんですよね。そのため、マップに使うアセットを使いまわしたりできず、新しいゲームを短い間隔で出していくような苦労があったと聞いています。
――『ライフ イズ ストレンジ 2』ではUnreal Engine 4を採用していますが、ストーリー製作に影響はありましたか?
カノ氏:グラフィックが強化されたり、リップシンクが正確になったりとメリットはありましたが、直接的にストーリーに影響したことはあまりありません。
――『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの使用楽曲のチョイスは非常に素晴らしいですが、どのように選曲されているのでしょうか。また、採用する曲を聴いたり歌詞を読んだりして、脚本に影響が生まれたことはありますか。
カノ氏:DONTNODの2人のディレクターが見つけたり好きだったりする曲を、開発チーム内で一緒に聴いたりして、そこから話し合って決めています。『ライフ イズ ストレンジ 2』のエピソード4の脚本を執筆しているとき、ディレクターが「これを使いたい」と持ってきた曲のイメージでエンディングの脚本を書いたことがありました。
――シリーズの展望について教えてください。今後『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』や『キャプテン・スピリット』のような、スピンオフ作品が登場する可能性はあるのでしょうか。
カノ氏:今のところは『ライフ イズ ストレンジ 2』の完結に向けて力を注いでいるので、そうしたスピンオフ作品を作る予定はありません。ただ、私の頭の中でいろいろと考えていることはあります。具体的なことは言えませんが、このアイデアを世に出したいな~という希望はあります。
――ゲームとしてのリリースが難しくても、カノさんのアイデアをノベライズやコミックという形で出すことなどは考えていますか?
カノ氏:小説やコミックで出版するにしても、自分の意志だけでは決められません。シリーズ自体の版権はスクウェア・エニックスに属していますしね。
――ちなみに、現在海外で刊行されているコミック版については携わっているのでしょうか?
カノ氏:基本的にDONTNODはコミック版の出版には関わっていないのですが、発売前に読む機会はありました。ストーリーテリングやアートなどは非常に良かったのですが、ゲームのエンディングの内のひとつを採用した後日談という形は、個人的には少し気になったりはします。原作のコンセプトでは、どちらのエンディングにも未来があるわけですから。ただ、ファンに寄り添うようなストーリーが描かれていると思いますよ。
――最後に、シリーズファンに向けて『ライフ イズ ストレンジ 2』の「ぜひとも見て欲しいところ」を教えてください。
カノ氏:前作のマックスとクロエというキャラクターがファンから深く愛されていることは存じています。『2』では彼女たちがいなくなって、ショーンとダニエルという新しく作り上げたキャラクターが主人公になりました。そんな2人が、マックスとクロエのように愛されることを心から願っています。
――ありがとうございました!
国内向けには『ライフ イズ ストレンジ 』とスピンオフ『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』が発売されている本シリーズ。その繊細なストーリーテリングの一端が垣間見えるようなお話を聴くことができました。現在、海外向けに無料配信されている『キャプテン・スピリット』や、先日PS4/Xbox One/PC向けに国内発売が決定した『ライフ イズ ストレンジ 2』の今後の展開についても期待したいところですね。
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