Game*Sparkレビュー:『SCARLET NEXUS(スカーレットネクサス)』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『SCARLET NEXUS(スカーレットネクサス)』

埋もれてしまうのは余りにも惜しい作品。気になったらプレイしてみよう!

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『SCARLET NEXUS(スカーレットネクサス)』はバンダイナムコエンターテインメントが開発・販売を手掛け、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けで6月24日に発売された完全新規IPのアクションRPGです。

いくつかの惜しい箇所は有るものの、アニメ調のゲーム作品が好きな方、特にプロモーションビデオを観て世界観やキャラクター、派手なアクションに惹かれた方には間違いなくオススメできる本作。まっさらな状態で楽しみたい方はこのままゲームを購入し、超”脳”力を駆使する戦いに仲間たちと共に身を投じましょう。


さて、ここからはゲームを要素に分けてレビューしていきます。レビューでは主に3つの視点から『SCARLET NEXUS』を評価し、オススメできる点や欠点などを解説していきます。では、その3つの視点を示しましょう。それは「ビジュアル・グラフィック」「アクションRPGとしての面白さ」そして「キャラクターとストーリー」です。

「ビジュアル・グラフィック」は本作の全体的なビジュアルや、世界観とグラフィックの安定性に関して言及します。

「アクションRPGとしての面白さ」は本作の特徴でもある超”脳”力アクションや仲間との「SAS接続」など、戦闘やUIの快適性などゲームの根幹についてです。

最後に「キャラクターとストーリー」では、『SCARLET NEXUS』のストーリーの細部には極力触れず、少し抽象的に評価していきます。また、個人的には最も大きな欠点と考えているキャラクターについても言及します。

なお、本レビューではPS5版を使用してレビューしています。

「ビジュアル・グラフィック」

全般的なビジュアルと世界観

まず、本作の全般的なビジュアルは素晴らしいものとなっています。プレイヤーは冒頭のチュートリアルが終わると、すぐに街を探索できるのですが、街のビジュアルはアニメ調(セルルック)な遠景描写と3Dオブジェクトがゲーム空間上で違和感なく共存しており、独特ながらも素晴らしい雰囲気です。特に、遠景が淡い水彩画のようにぼけて輪郭線のみになる、バンドデシネ風の表現が良くできています。

世界観についても既存のサイバーパンクを上手く発展させており、数多の作品が世に出てきているサイバーパンクというジャンルから派生させ、「ブレインパンク」と銘打った世界観は後述するゲームシステムともマッチしています。

本作の世界観を特に魅力的にしているのが、怪異の存在です。ミュージシャンのCDジャケットデザインや書籍イラストを手掛ける山代政一氏がデザインする怪異は、有機物と無機物が融合した独特のデザインをしており、このことが本作の伏線にもなっています。

キャラクター

キャラクターのビジュアルも不気味な点が一切なく、日本のアニメで動くキャラクターがそのままゲーム世界で動かせる違和感の無さが素晴らしいです。100人に聞けば100人が魅力的と答えるであろうビジュアルのキャラクターを作り出すのは容易ではないはずです。

ただ、一部のキャラクターなどに見られる、親戚の設定にも関わらずあまりにも髪型や背丈がかけ離れているデザインなどは気になりました。

実は姉弟、アラシが姉というのも驚きです。

さらに残念な点として、キャラクターの服装カスタマイズが魅力的なデザインに対してあまりにも酷い点です。せっかく存在するカスタマイズも、基本的にシリアスな本作に致命的に合わないのです。結局、私がゲームで服装カスタマイズをすることはありませんでした。

不具合かと思うほどお守りが大きすぎる……

戦闘時のビジュアル

戦闘時のビジュアルは、使用する「SAS接続」(仲間から受け取る能力)に合わせて変化する攻撃や敵の攻撃エフェクトがリッチに、かつゲームプレイの根幹でもある戦闘を世界観に沿いつつ分かりやすくしています。

後述する戦闘時の形態変化に合わせてビジュアルも変化し、一見しての分かりやすさと、ボーナス感が上手く演出されています。

ゲームも後半になると大量の敵や味方の能力を並行して複数使用する場合がありますが、このような場合もフレームレートの低下は体感で感じられず、安定したゲームプレイが可能です。解像度やシャギーの悪化もゲームプレイを通じて感じられませんでした。

戦闘に関するビジュアル・グラフィックは文句なしの素晴らしさです。

「アクションRPGとしての面白さ」

敵との戦闘

敵との戦闘では刀や小型刃を使用した基本的な攻撃に、念力を組み合わせることでコンボを繋ぎ、派手で気持ちの良いアクションを繰り出せます。ただ、派手ではあるものの奥深い戦闘ではなく、高難度のゲームを求める方にはオススメしません。本作においてソウルライクやローグライクのような、ひりつく体験は皆無です(筆者は難しいゲームが苦手なのでむしろ本作は好きなタイプ)。

敵との戦闘では主に念力を使用したオブジェクトの投げつけ攻撃がダメージソースとなり、基本的な攻撃は念力ゲージを貯めるための補助手段のような扱いになっています。このことを意識して並行した操作を行い、基本的な攻撃と念力が上手く組み合わされば気持ちの良い戦闘、いわゆる「魅せプ」のような戦いが可能。もちろん、クリアだけであれば落ち着いて攻撃し続ければOKです。

敵体力ゲージの下にある黄色のクラッシュゲージを削れば、特殊演出の攻撃も可能です。ゲームには難しさよりも気持ち良さを求める自分にとって、こうした「魅せプ」のための戦術性を提供してくれる難易度には好感を持てました。

ただ、肝心の念力攻撃のアクションはマップに多数配置されている多様なオブジェクトごとに変わるため、自分で選択的に戦っている感覚が薄くなっています。また、回避のアクションはモーションがキャンセルされない仕様で、敵の攻撃を咄嗟に回避するというアクションができず、回避したいのにできない、という場面も多く感じました。回避に関しては画面外からの攻撃が普通にあることも相まって、瞬時に使えないのが少し残念に感じます。

ストーリー上も重要な「SAS接続」は味方の能力(脳力)を借り受けるシステムで、使用することで攻撃に特殊効果を掛けたり、瞬間移動したりといった様々な恩恵を受けられます。SAS接続はクールタイムがあるものの基本的にはいつでも活用できるため、ストーリー後半には8種類の味方の能力を次々に入れ替えながら、□と△を押して武器を使用し、さらにR2とL2で念力を組み合わせて敵を攻撃するという、かなり忙しい状態になります。この忙しい操作感を楽しく感じるか、せわしなく感じるかで評価が分かれるでしょう。自分は、手を動かし続ける本作のアクションは割と好きです。

脳駆動はゲージが溜まると自動で発動する能力強化効果ですが、発動のタイミングを自分で選べないので扱いづらく、強化される能力も限定的なため、いまひとつ面白さに寄与していないように感じました。

脳内空間はビジュアル的にも特異で、敵を瞬時で倒せるような強力な能力強化要素でもあるため、面白い要素です。ストーリーにも密接に関連しており、ただのゲームシステムになっていない点も好感が持てます。

戦闘に関して総合すると、敵を倒すという一点だけを目標にするのならば大味で簡単すぎます。ただ、仲間の能力を借り、武器と念力を組み合わせ、特殊演出のキメ技を出す、といった華麗に敵を倒すまでの過程を楽しむというプレイスタイルならば楽しめます。これはPS5独自の要素ですが、ハプティックフィードバックやアダプティブトリガーも気持ち良く、戦闘を一層楽しめます。

能力強化

能力強化は、ブレインマップという盤をレベルアップで得られるポイントを使用して埋めていくのですが、能力強化を行わない状態ではアクションにかなり制限があり、序盤を触っただけではアクションゲームとしてあまり良い印象を受けないのではないか、というレベルで制限されています。また、終盤にはほとんどの能力を取り切っているため、能力を選択的に育てる楽しみはあまりありません。

クエスト

本作にはメインシナリオとは別に、街中の人に話しかけることで開始できるクエストがあるのですが、今の時代には珍しい典型的なお使いクエストです。クエストに含まれるストーリーもほとんど無く、明確な欠点となっています。

UIについて

UIは分かりやすく、不満を覚えるような場面はありませんでしたあまり馴染みの無いR1L1とR2L2で別階層を切り替えるUIの操作方法も、慣れると素早く切り替えられ、好印象でした。最近はごちゃごちゃしていて分かりにくい『Apex Legends』のロビー画面も、本作のUI方式にしてほしいぐらい良いUIです。

「キャラクターとストーリー」

※ストーリーのネタバレがあります

一枚絵だが、自分のテンポで進められる

本作のストーリーは基本的に一枚絵ではあるものの、この点は欠点とは思えませんでした。ボタンを押せば次の台詞へとテンポよく進められますし、一枚絵であることはむしろ高評価です。本作はフルボイスでかつ、比較的台詞が長いので全て映像で描けばテンポが悪くなっていたと思います。

魅力的な外見にも関わらず、好きになれないキャラクター達

本作はアクションRPGながらも、豊富なキャラクター達に注目したキャラゲー的側面が多分にあり、キャラクターの魅力というのは重要な要素であると思います。その上で、筆者は本作の登場キャラクターがあまり好きにはなれませんでした(あくまで筆者の感想です)。

筆者が好きになれなかった点の最も大きな要因は、テンプレートをなぞったようなキャラクターが、さらに極端に記号化されてしまっている点です。ハナビは恋愛脳の幼馴染キャラ、ゲンマは渋い老兵キャラ、ルカはショタジジイ、アラシはロリババア、カゲロウは陰のあるお調子者、それ以下でもそれ以上でもありません。

例えば、カザネ隊の部隊長でもあるキョウカは部隊の母的なポジションになるキャラクター。母性の象徴なのか巨乳で、物腰も柔らかです。ただ、料理は不味く、どこか抜けている……令和の時代にここまでテンプレートなキャラクターを好きになれるでしょうか?筆者は残念ながら好きにはなれなかったです。

また、設定では「矮化剤」と呼ばれる薬剤投与により、外見が若くなっています。ただ、明言はされないもののプロフィールから「何期生」であったかが分かり、年齢を推測できます。先述のキョウカは538期生で、16歳のユイトは567期生なので、約45歳です。

最も驚いたのはシデンが30歳である点。現実世界であれば管理職になっていてもおかしくない年齢にも関わらず、あまりにも実年齢と精神年齢が乖離しており、不気味にすら思えます。ルカに関しても、自分の肉体と年齢の乖離に悩むキャラクターであればホットパンツ姿は不自然に感じました。

30にもなって人形に八つ当たりするなよ……

また、残念だったのは、ゲームで描かれるキャラクターの関係性の多くが主人公との関係であり、主人公以外同士の関係性がほとんど描かれないという点です。

昨今のキャラクター造形はゲーム性ではなく、キャラクターを如何に魅力的に描くかに注力したソシャゲの台頭で、一層複雑化・多様化しているのは周知の通りです。例えば『ウマ娘』では、ストーリーや育成で見られるトレーナーと担当ウマ娘間の関係だけでなく、サポートカードで見られるウマ娘同士の関係性がキャラクターに深みを生んでいます。

こうした多様な関係性とそれによる深みのあるキャラクター造形は『アイドルマスター シャイニーカラーズ』でも効果的に活用されています。『シャイニーカラーズ』ではキャラクターが当たり前に、対象によって態度や話題を変化させ、それが一面的ではないキャラクターの個性を際立たせる一助となっています。

対して、本作『SCARLET NEXUS』のキャラクターは多様な関係性が描かれず、キャラクターが多面的に描かれていません。多くのキャラクターが存在するにも関わらず、キャラクターが主人公視点から一面的に描かれているという点も、キャラゲーとして本作を見た場合の欠点に感じました。

不自然で薄味な絆システム

キャラクターを掘り下げるシステムとSAS接続の能力強化が組み合わさった絆システムは良い試みであるものの、序盤の敵対している状態でも絆システムに関連するエピソードがあるため、かなり不自然になってしまう場面があります。

親を殺された直後、殺した張本人とお茶をするというのはどう考えても無理がありますし、殺そうとした相手に誘われて呑気に喫茶店でお茶するというのも、どうにも受け入れがたく思いました。

戦いあった敵とお茶をする

他にも、ピクニック(デート)に行った後、腹ごなしに怪異を倒すなど、シリアスな本編から浮いている雰囲気に馴染めませんでした。全体的に無難で薄味な絆ストーリーも少し残念です。

牽引力は有るものの突っ込みどころもあるストーリー

本作のストーリーで明かされる怪異討伐軍の陰謀から、軍の内ゲバ、都市間抗争に第3勢力であるトゲツ教の暗躍、さらには月に関する驚くべき情報と時間跳躍などの世界の秘密はサプライズに溢れており、どんどん進めたくなる牽引力があります。テーマである「つながり」をビジュアルやゲームシステムに取り込んで表現している点も好印象です。

ただ、時間に関するストーリーや月に関するストーリーはあまりにもスケールが大きく、ところどころ不自然な点(崩壊した世界で相対したカレンが「カサネがもっと早く来ていれば」と言っていますが、時間跳躍できるので手遅れになることは無いはず……)も感じました。また、主人公たちが次々に明かされる世界の秘密という名の世界観設定に振り回されている印象も拭えません。

細かな台詞に関しても上手く設定とかみ合っていない要素もあるように感じます。例えば、台詞に出てくるGPSは数基の人口衛星をリンクさせた測距システムであり、少なくとも初期宇宙時代の技術水準が無ければ実現できません。ただ、その場合は月との関係に矛盾が出てきてしまいます。

また、国防軍と怪異討伐軍の立ち位置や各都市の規模、登場都市以外の文明、一般人の怪異への認識や月に対する認識などが無視されており、興味深い世界観にも関わらず、広がりが無いのも気になりました。

ランドール重工やスプリング製薬といった、登場キャラクターの親戚が関係している企業が上手く活かせて無いのも気になりますし、主人公のカサネと養母の関係が冒頭で絶縁状態になってからストーリー上で動きが無い点も気になります。とにかく細かな詰めの甘さが多いのです。

こうした細かな箇所が気になるものの、最終的には時空を超えて運命へと収斂していく結末はそれなりに納得感がありますし、そもそもアクションが楽しいゲームでもあるため、深く考えない方が良い作品かもしれません。

カサネとユイトのW主人公に関しては序盤~中盤にかけては異なる視点から物語を体験できて楽しい要素となっています。攻撃方法が少し異なるのも良いです。本作は少し複雑な物語でもあるため、2週目をプレイしたくなるのですが、2週目のプレイでも新鮮な気持ちで楽しめるため、W主人公なのは嬉しい要素です。

ただ、終盤は主人公が合流してしまうためにストーリーがほとんど同じになっており、物語の核心部分はもう少しバラしても良かったのではないかとも思います。


満点は付けられないが、間違いなくポテンシャルのあるゲーム。

本作のストーリーに関しては辛口な評価となってしまいましたが、基本的には快適で安定しており、減点部分は少ない作品です。ただ、減点部分が少ないからといって大幅に加点できる部分も少なく、それだけにストーリーの違和感が目立ってしまいました。しかし、そのストーリーも先に進めたくなる牽引力は間違いなく存在しており、それだけに惜しい作品となってしまっています。

『SCARLET NEXUS』は安定した品質のセルルックなグラフィックのゲームという、ある意味でニッチなジャンルのゲームですが、埋もれてしまうのは余りにも惜しい作品です。レビューをする以上、満点は付けられませんが、75点+(色を付けて)5点=80点ぐらいを付けたくなりますし、アニメ好きの友人にオススメしたくなるゲームでもあります。ぜひ続編を遊びたい、あるいは同じ開発陣の作る第二の『SCARLET NEXUS』を遊びたい、と思わせてくれる良作でした。

総評:★★★

良い点
・素晴らしいビジュアル・グラフィック・キャラクターモデリング
・敵を華麗に倒すのが気持ち良い戦闘
・ストーリーは牽引力がある
・ゲームは全体的に快適で安定感がある

悪い点
・キャラクターはあまり好きになれなかった
・サブクエストは全く楽しめない(が、こなす必要も感じないのであまり欠点にはならない)
・ストーリーには突っ込み所も多い

《大塩》
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