あてもなく彷徨ってきた主人公が、流れ着いた地で人々のために戦う。これはもう創作物としての不変のテーマだと思います。その上でプレイヤーが正義も悪も、ときには道なき道すらも選択できる作品であれば、それは最高の魅力を放つのではないでしょうか。
スパイク・チュンソフトは、アクワイアが手がけるアクションアドベンチャー『侍道3』『侍道4』Steam版について、2025年6月27日に公式日本語対応したことを発表しました。
2002年に第1作が発売されて以来、シリーズ累計出荷100万本以上を誇る『侍道』シリーズ。プレイヤーは流浪の「侍」となって、さまざまな争いや陰謀が潜んでいる地域を舞台に、自分だけの選択をしながらその生き様を作り出していく作品です。作品ごとに異なる時代や舞台が描かれています。
ゲーム内では特定の勢力に力を貸したり、力なき人々を護ったり、刀を抜いて暴虐の限りを尽くしたり、非常に幅広いプレイが可能。クリア後の引き継ぎ要素も多く、プレイしていくごとに魅力が増していく作品です。本稿では、日本語対応された『侍道3』『侍道4』の魅力を紹介していきます!
『侍道』シリーズとは
『侍道』シリーズは、2002年にPS2で発売された『侍~SAMURAI~』から始まります。同作の舞台は明治10年、時代とともに日本から「侍」という存在が消えつつある中で、主人公をはじめとした“最後の侍”の物語が描かれます。同作は2008年にPSPで『侍道ポータブル』という名称で移植されています。
第1作で侍が消えゆく時代を描き、後のシリーズでは江戸時代末期(『侍道2』)、戦国時代(『侍道3』)、幕末(『侍道4』)と異なる時代が描かれています。シリーズごとに時代背景や世界観に合わせた武器やキャラクターも登場するほか、本作ならではの「遊び」に満ち溢れた設定やキャラクターが多いことでもお馴染みです。



本シリーズはとにかく自由に遊べることが最大の魅力です。シリーズ第1作『侍』では、最初に町娘がチンピラに襲われているのですが、かっこよく助けることも、無視することも、いきなり抜刀して近づく危険人物にもなれます。場合によってはいきなり簀巻きにされて線路に放置されるのも醍醐味です。
どこか寂しくも美しい世界観やBGMは、どの作品でも時代や時流に合わない1人の侍として描かれる主人公と相性抜群。おちゃらけた場面や突飛なキャラクターなども有名ですが、ルートでかっこいいストーリーが楽しめるのも素晴らしい作品です。『侍道2』のおにぎりとか最高ですね!


そのほか、シリーズ外伝としては、ゴールドラッシュ時代を描く『サムライウエスタン 活劇侍道』や、シリーズ第1作『侍』のスピンオフ作品『侍道外伝 KATANAKAMI』なども制作されています。


峰打ち!土下座!戦国時代を生き抜く『侍道3』
『侍道3』は2008年にPS3向けに発売(2009年にはXbox 360向けに移植)され、その後2016年にPC向けの展開が行われています。物語の時代はシリーズの時系列として最も古い戦国時代で、織田信長がその勢力を増し、今にも攻め込もうとしている地・祇州天奈が舞台。
プレイヤーは先の合戦で奇跡的に生き残った1人の落ち武者となり、謀反によって大名となった藤森家、かつて国を治めていた桜井家の残党などが集う桜花党、そして重税にあえぐ高種村の3つの勢力の中で自分の生きる道を見つけ出します。舞台背景が戦国時代ということもあってか、合戦跡などの凄惨な状態も残されています。




イベントの途中で「抜刀」「土下座」が可能な【いきなり沙汰システム】や、戦闘で敵を殺さない【峰打ち】などのシステムが特徴。また、入手した刀のパーツを組み合わせて自分だけのオリジナル刀を作ったり、一部のキャラクターを【伴侶】にしたり、より自由な生活を送ることができるようになっています。
基本的に日数制限がない本作では、金稼ぎクエスト「渡世」でひたすら稼いだり、鍛冶屋で刀を鍛えながらより強い刀を求めたりも可能。土下座や抜刀でイベントの腰を折ることもできますが結構使い所が難しいですね。イベント発生数がストーリー進行に関わるので、慣れないうちはいきなりクライマックス、ということも起こり得るかもしれません。






祇州天奈の地は合戦の死体がそのまま残されていたりと荒れ放題。戦国時代ならではの、立身出世やお家再興などの話もあり、これまでのシリーズとはまた違う「侍」の物語を楽しめます。個人的には寂しくもどこか美しい雰囲気が好きで、物語としては侍嫌いの高種村の人々の変化がお気に入りです。


惜しむらくはSteam版は無印版で、コンソールで後に追加された「Plus」の要素がないこと。なお、日本語音声はゲーム開始時に選択可能です。全員英語のカットシーンも少し面白いので、一度はみておいてもいいかもしれませんね!サムライ。






攘夷運動と黒船に揺れる『侍道4』
PS3で2011年に発売された『侍道4』(PC版は2020年に発売)は、黒船来航に日本が揺れる幕末時代が舞台。イギリスの外国勢力、外国人排斥を狙う攘夷勢力、そして街の治安を担う幕府勢力の3つが台頭する地・阿弥浜を舞台に、船で流れ着いた主人公が港の騒乱に巻き込まれる形で、それぞれの勢力と関わっていきます。
前作から【峰打ち】などの一部要素を引き継ぎつつ、新たにプレイヤーのその周回での結果が次回以降に反映される【生きた証】システムが大きな特徴。また、コメディ色の強いお遊び要素としてミニゲーム形式の【拷問】や、NPCを口説いて素敵な夜を過ごす【夜這い】なども楽しめます。






主な物語は四日間という中で展開し、昼・夕・夜それぞれのパートでイベントを進めていきます(大きなイベントを進行させなければ何日でも滞在可能)。イベント進行のチャートや次の目的地が表示されるので管理は比較的簡単です。ただし、シリーズお馴染みの「大団円」を見るのはかなり大変です。
【生きた証】システムでは、例えばイベントで町に「語学所」が建つと、それ以降のプレイではNPC外国人と会話できるようになります。ただし、語学所を閉鎖するようなイベントをこなせば、再び建つまでは効果が発揮されません。ゲーム内ではこういった施設や街の様子なども変化していきます。






また、シリーズ初となる拳銃を使えたり、オリジナル流派の開発なども可能です。かなり遊びやすい作品なのですが、さまざまな要素を本格的に楽しむためには結構な時間や準備、知識が必要という点も。やり込み要素が好きな人であれば、是非とも夜這い100人達成なども目指してみてほしいところです。
ただし、現時点でSteam版の動作が非常に不安定になっています。筆者の環境ではゲームクラッシュが続いて思うようにプレイできない状態が続いています。また、Steamレビューやフォーラムでも多くの動作不具合が報告されています。せっかくの日本語対応なので、改善してくれるのを望みたいところです。






『侍道』シリーズは自由なゲームです。自由すぎて、初めて遊ぶ人は何をしたらいいかわからず、いきなり喧嘩になって殺されたり、なにも為せないまま一日を終わらせたりすることも珍しくありません。それでも少しずつヒントを得ながら物語を進め、その結果たどり着いたエンディングは忘れることはないと思います。
お遊び要素も多いですが、筆者は『侍道』はやはり“侍の生き様”を見せられるストーリーの決めの良さが最高のポイントだと思っています。力なき者、信念ある者、未来へ繋がるものを守る、そんなイベントのときには、しっかりとかっこいい!となるセリフや展開も用意され、映画やドラマを体感しているようなプレイ感が味わえるのです。



かつて多くのゲーマーを楽しませた作品が、現代環境のPCで、しかも日本語で遊べるというのは喜ばしいことです。パブリッシングの移管を含め、これまでさまざまな作業を行ってきたであろうスパイク・チュンソフトおよびアクワイアのチームには心から感謝しますす。
最後に、是非とも過去作もPCで遊べると嬉しいな!というシリーズファンの想いを書き記させてください。
