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大型営農を仮想世界でやってみよう。農家が見る営農の理想『ファーミング シミュレーター 22』【特集】

米農家の筆者が見た『Farming Simulator 22』の実際の営農体験プレイレポート。

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それは11月終わりのこと。「rateさんって実家農家でしたよね?『ファーミング シミュレーター 22』やってみませんか、どうですか?」と編集部からの突然の無茶振りで本記事は始まりました。

実際、筆者の実家は4反(約0.4ヘクタール)程の田んぼと畑を所有する米農家ではあるので「稲作でもやればいいのかな?」と始める前は簡単に考えていました。しかしそれが間違いだったのです……。元々は「ずっと生まれてから農業やってるのに、なんでゲームでも農業やらなあかんねん。」と同シリーズは敬遠していた筆者。しかし、今回、日本地域での同作のパブリッシングを担当するバンダイナムコエンターテインメント様にSteam版キーをご提供いただけたこともあり、海外ではよく知られる同シリーズに、米農家としての知見を活かし(?)早速挑戦していこうと思います。


え!?米ないの?シミュレーターでも突きつけられる農作業の現実

まずは前提となる部分ですが、2008年から展開が途切れず新作が出ているほどの人気シリーズの2022年版新作である本作品は、プレイヤーが経営者として農場を経営するゲームです。開発会社はスイスのGiants Softwareで、EU圏ではe-Sportsとして農作物の収穫速度を競うプロリーグも存在していたりします。

そんな本作品ですが、ゲームのウリは大型営農のリアルな体験ができるということ。日本では北海道などで行われているような大規模な農作業を味わうことができます。

キャラクターの見た目もカスタマイズできるので普段の農作業スタイルにしてみました。

前述したとおり筆者にはある程度農業知識はある上、言うまでもなくゲームメディアのライターでもありますので、なけなしのプライドにかけ難易度選択では迷わず「ノーマル」を選択。すると何の説明もなしに街中に放り出されることになりました。画面上の操作ヘルプを見ながら早速土地を購入して現地に向かうことにしましたが、足が無いのも不便なので適当に歩き回って見つけたショップでピックアップワゴンを購入します。

土地がほぼワンクリックで速攻買えるのがスゲェって思いました。

購入した土地に到着したところ、既にオーツ麦が収穫状態で植えられていました。空地だと思っていたのですが折角の収穫状態なので収穫をしてみることにしてみました。稲作や一部の野菜なら日常のように(日常です)わかる筆者ですが、いきなりの専門外に、収穫方法も納品先もさっぱりわからないので、一先ずショップへいって農機具を眺めてみることに。

「……うん、さっぱりわからんわ」2手目で敗北宣言しました。

何を買っていいのかも分からず、肥料や機材などを買えるだけ買いこんでショップの軒先で操作練習を行っていたのですが、流石にチュートリアルくらいはあるだろうとやり直すことに。

プライドを二束三文で売り払った後は、難易度イージーで再スタートです。イージーでは、想像通り農作物の回収や売却など一通りのチュートリアルがあったのはあったのですが、丁寧にレクチャーしてもらえるのは文字通り簡単な流れだけ。あとは、メニュー内にある文字チュートリアルなどを見ながら手探りでやってみようという、洋ゲーストロングスタイルがここで発現……。こうなれば、頼るべきは人生の先輩だ、ということで実際の従事者に教えを乞うことにしました、ただしゲームの中の、ですが。

本作では、他の土地の所有者は契約という形でアルバイトを募集していて、各種作業を代行することでもお金を稼ぐことができます。この代行作業では、実際に必要な機材を報酬からの天引きではありますが、リースで借りることもでき、どのように機材を運用するのかも勉強することができます。

最低限の仕組みさえわかれば、現実と比べながら作業をする余裕だって生じます。早速、業務の詳細について確認していきましょう。

例えば、畑のすき込み作業は現実でも必須。農作物を育てると表面部分が栄養を失い、地面も固くなっていき、土壌として役に立たなくなります。そのため収穫後などは地中の土を混ぜ返して栄養の回復と土壌を柔らかくします。小規模な広さならクワや鋤(すき)を使って畝(うね)を作るのですが、大型営農になるとプラウとよばれる大型の鋤で地面を一気に掘り起こします。

現実でやると3畳(約0.0005ヘクタール)くらいの小さな畑でも半日が平気で終わるほどのこの作業。シミュレーターとうたった本作品においても、たとえ大型営農用の農具があったとしても2ヘクタールの畑に対し、実時間で数時間近くかかる作業を要求され、本作品を「所詮ゲーム」と軽く考えていた筆者はここで改めて現実を突きつけられることになりました。

父が小学校の頃は、学校を一週間休んで農作業をやっていたとは聞いたことがありますが、機材が進化した今でも農作業は時間がかかるものだなと改めて思った次第です。

すき込みの後は地面から出てきた石の回収、石灰と肥料の散布も行います。現実だと石の回収が非常にめんどくさく、あまりにも大きいと処理もできずに業者に引き取ってもらったりするのですが、今作では機械で一気に回収して業者にサッと販売できてしまうのは楽でいいなぁと思った次第です。

石灰を撒くのは新しく起こした畑や、カルシウム不足で農作物が病気になった時などは必ず行う作業で、植える農作物に合わせて土壌の性質を変化させることができます。

肥料を散布したら、苗床としての畑の準備はほぼ完了です。収穫量を上げるには、ここからローラーで地面を形成したり、植え付ける作物に合わせて更に土壌を形成していくのですが、リースであっても機械代金が馬鹿にならないので早速植え付けに移りましょう。

植え付けでは、トラクターに器具を装着し種を植えていくのですが、種もショップで簡単にトン単位で買い付けられるので、作業自体は他に比べれば非常に楽です。とはいえこれも数時間かかる作業なので、まったりと進めていきましょう。

作物の種類は違いますし天候にもよりますが、現実の田植え作業でも、朝6時位から始め、終わりは昼過ぎ、というのは普通なので、植え付けしながら夏場を思い出していました。

成長中には除草作業もあったりするのですが、除草剤を一気に撒いて雑草を処理できるのが流石にゲームといったところでしょうか、手作業で撒かなくていいの楽でいいなぁ。

いざ収穫!

収穫では、コンバインと呼ばれる収穫機械を使って作物を一気に刈り取っていきます。横から出ているパイプでコンテナを並走させ回収も行えます。

なお、収穫などの平行作業が必要な場面では、作業自体をNPCを雇って自動化することができます。秒間でお金がかかるためあまり雇用したくないのが人情ですが、畑の数が増えたりしてくると自動化しないと追いつかなくなります。農業は手間も時間も掛かるものなので仕方ないところですね。

納品先によって値段が違うので高い所で売るのが基本。ただし同じ作物を売り続けると値段が下がります。

そしてこちらがその結果。維持費なども考えると結構な赤字です。最初は投資だと思うしかないのですが、大規模な農場経営はいきなりやるものではないなと思い知ることになりました。ビニールハウス栽培や、畜産も本作品では可能なので、ただ単純に畑だけを運営するだけだと大赤字に陥っていきます。

この辺、日本では同じように個人で、しかも専業でやるのは非常に難しいです。そのうえ、水回りの問題や、販売先などは、本作品のように新規農家に対してフルオープンな姿勢ではないので、自分で解決しなければならないのが参入の大きな障壁となっています。

米は特に苗が一番の壁になります。育苗があまりにも手間がかかるのでほぼ苗を購入して植えることになります。

また、農作物にも育成時期が決まっていて、同じ作物を植え続けると連作障害という病気になってしまいます。なので単一栽培せず、区分けを行って輪作と呼ばれる色々な農作物を順番に植え続けるのが基本です。

とりあえず、一連の流れを終え感じたことは、『ファーミング シミュレーター』というタイトルに偽りはなかった、ということです。一つ一つの作業にも実際に時間がかかり、農作業の体験は丁寧に再現されていると実際プレイして思った次第です。筆者は主に米農家ですが、野菜の栽培も行っていることもあり、植えたことのある根菜(ジャガイモなど)に対しては「大規模だとここまで大変なのか」と思い知りました。

納品先によっては電車をレンタルして一気に売り払うこともできます。電車をレンタルというのがスケールの違いを感じます。

実際の農機具にテンションが上がる

本作品に登場する農機具は実際に存在するメーカーの機材がメインです。農機具名で検索すれば実際に運用している映像などもYouTubeで見ることもできます。『天穂のサクナヒメ』では農林水産省がマニュアルになったように、本作品でも実際の農作業がやはり参考になるというのが面白い所です。

特にヨーロッパやアメリカは大規模営農のメッカであることもあり、どうやって使うかわからない農機具もYouTubeを見れば理解できるので勉強にもなりました。

デカい農機具を目の当たりにした時初めて筆者はこのゲームが人気のワケを知った気がします。

「生まれてからずっと農業やってるのに、なんでゲームでも農業やらなあかんねん」などと言っていた筆者。しかし、現実の仕事終わりに、ゲーム世界で、現実では使ったことのない農機具を高圧洗浄機で清掃したりと(実際の農作業の後も土を落とさないと固まって器具が使えなくなったりする)しているうちに、気づいたら100時間近くをあっさり消化してしまいました……。

現実の米農家が、いつの間にやらすっかり気分は大規模農場経営者になっていた本作。正直新しく購入した畑を耕耘しに今すぐゲーム世界に戻りたいくらいです。農作業やスローライフに憧れる方は是非一度プレイしてみるといいでしょう。現実だと手に入りづらい世界がここなら手に入ります。

タイトル:ファーミング シミュレーター 22
対応機種:PC(Steam/Epic Games ストア)/Mac/PS4/PS5/Xbox One/Xbox X|S
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年11月22日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:101時間
価格:6578円



《rate-dat》

面白そうなことに頭を突っ込んで火傷してます rate-dat

本業はデザイナー。 印刷物やWeb、写真加工など色々とやっています。

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