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インドネシアの大人気ADV『コーヒートーク』から見る「多様性の中の統一」と「経済発展の在り方」

なぜ『コーヒートーク』には多様な種族が登場するのか―インドネシアの政治・文化から改めて本作を深掘りし、その現状を解説する

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インドネシアの大人気ADV『コーヒートーク』から見る「多様性の中の統一」と「経済発展の在り方」
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インドネシアの「農閑期問題」

「多様性の中の統一」を国是にするインドネシアは、「資本の一極集中」という現象に見舞われている。つまり、国外からの投資がジャカルタ、スマラン、スラバヤ、そしてシンガポールに近いビンタン島とバタム島にばかり偏っているということだ。

全ての国民が民族・宗教の違いを問わず同権であるならば、地域間で「発展の偏り」があってはならない。もちろんある程度の格差はやむを得ないが、中には小学生がジャングルの中を何時間もかけて登校しなければならないほど基礎インフラが脆弱な地域もある。ジャカルタでは高速鉄道の建設が進められているにもかかわらず……。

そして、現在のインドネシアでは農村部から都市部への人口流出が社会問題になっている。農家の継ぎ手が農閑期にジャカルタへ出稼ぎに行ったはいいが、そのまま農繁期になっても戻ってこないという現象だ。

それらを解決するための最も有望な策が「ネットインフラの整備」である。

今年1月、インドネシア発のスタートアップeFisheryがシリーズC投資ラウンドで9,000万ドルもの資金を調達した。日本円で100億円を超える規模の投資劇だ。アグリテック分野に関わっている人であれば、誰もが腰を抜かしたに違いない。

eFisheryは「農閑期にできるビジネス」の確立を目指した企業。具体的には、養殖堀を農村に設置して淡水魚やエビを育てる。温度センサー、自動給餌器などの設備は常時ネット接続され、オーナーはスマホアプリで養殖堀を管理できる。農村部にネットインフラが設置されるということは、こうしたオンラインシステムを利用できるということでもある。(こうしたシステムだけでなく、資材などを後払い可能にする金融サービスなども提供。)

そしてネット環境と十分なスペックのPCと知識さえあれば、淡水魚の養殖以外にも様々なビジネスを実施できるはずだ。自宅にいながらゲームを制作し、それを世界中に配信することも可能である。

インドネシアが「ゲーム立国」を実現する日

ジャカルタへ移住することなく、ゲーム開発という手段で故郷に住み続けながら起業する―

決して突飛な発想ではない。去年10月、ルフット海洋・投資担当調整大臣がこのように発言している。

「今やゲームは巨大産業になっているが、我が国で流通しているゲームの97%は輸入即ち外国製のタイトルだ。これをインドネシア製にしなければならない」

インドネシアは内資優先主義の国として知られている。外国企業よりも国内企業、それも中小零細事業者の発展を最優先にする。故に、国内デベロッパーの世界的躍進は中央政府の望みでもあるのだ。そのデベロッパーがジャボデタベック(ジャカルタ首都圏)以外の地域に所在していたら、さらに好ましい。

幸いにも、良質なゲームを開発するための文化的下地は存在する。インドネシア国民の9割近くがイスラム教徒というのは事実だが、一方でこの国には「怪談」というものがある。幽霊や妖怪といった類のものが信じられている、ということだ。魔法使いや亜人が登場するゲームを配信しても、宗教を理由に排除されることはアチェ州以外ではまずない。よくニュースに登場する「インドネシアの宗教警察」は、イスラム法による自治権が認められたアチェ州のみの話である。

『コーヒートーク』はインドネシアの国是や都市部の日常を反映しつつ、同国の「経済発展の方向性」に大きな影響を与えるタイトルになった。また、『コーヒートーク』の躍進に取り残されるなとばかりに新たなゲームも続々登場している。この国が「ゲーム立国」を実現する日は、そう遠くないかもしれない。


《澤田 真一》
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