2年の延期、2度の試遊を経た『冤罪執行遊戯ユルキル』の体験版プレイレポ─STGとADVの融合はプレイ感を損なわないのか? 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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2年の延期、2度の試遊を経た『冤罪執行遊戯ユルキル』の体験版プレイレポ─STGとADVの融合はプレイ感を損なわないのか?

完全新規のSTGであり、ADVの要素も大胆に取り入れた『冤罪執行遊戯ユルキル』。個性的な特徴に溢れていますが、公開された情報だけでは内容が分かりにくいかもしれません。本質の一端に触れる体験版プレイレポートを通じ、その魅力に迫ります。

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■物語を読むだけじゃない──STGとADVが密接に関わる『冤罪執行遊戯ユルキル』の醍醐味

リナとの関係性が一段落する、と前述しましたが、それは物語の進行のみで自動的に落着するような安易な構成ではありません。まず、本作におけるADVパートの大部分は、「アトラクションからの脱出」を舞台に描かれますが、ここで集まる手がかりがリナの説得に不可欠なので、しっかりと集め、事実関係を把握する必要があります。

ちなみにアトラクションは、ただの娯楽施設ではなく、体験版(=製品版 第1章)は千石の事件をモチーフとした集合住宅を模しています。そこには、当時の事件を思わせるものや事件資料などが置かれているため、過去に何が起きたのかプレイヤーも詳しく知ることが可能です。

こうして事件のあらましを知り、手がかりを得たら、リナとの険悪な関係は解消──とは、残念ながらいきません。千石はあくまで冤罪を訴えていますが、リナからすればその態度は「反省すらしない凶悪犯」にしか見えないので、理解どころか嫌悪感は増すばかり。物語の自動進行で解決するほど、容易い溝ではありません。

その敵意をADVパート内でぶつけられることもありますが(執行人の質問に正しく答える「マジキルタイム」)、関係性の溝が埋めるかどうかは、最終的にSTGパートの展開で決まります。

設定面の詳しい説明は冗長になるのでシンプルにまとめますが、本作のSTGは「仮想現実世界における、極限下の尋問」が形になったもの。しかも、便宜上「尋問」という形こそ取っていますが、真相に辿り着くか否かは重要ではなく、「処刑人(この場合はリナ)が囚人(千石)を信じるかどうか」。彼女が信じられないと判断すれば、千石はあえなく処刑となります。

言い分の異なる双方が争うADVゲームはよくありますが、本作の特徴的な点のひとつは、「異なる言い分を持つ相手(処刑人)が、裁定の権利を有すること」。事件への正しい理解は大前提ですが、相手(体験版ではリナ)の感情や心境も受け入れなければなりません。

リナから見れば千石は敵に等しい相手ですが、千石にとってのリナは、説得し、理解を得る相手。打ち勝つ道では勝利(=生存)に繋がらない、奇妙で繊細な綱渡りに挑む展開は、本作が持つ独自の味わいとも言えるでしょう。

こうした事情や目的を盛り込んだSTGパートは、事件の理解度によって残機が増減するなど、ADVパートで得た手がかりが色濃く影響します。

また戦闘中も、ボスとして登場するリナの心の壁(ココロウォール)をショットなどの攻撃で破壊し、その偏見(ヘンケンシナプス)を取り除き、2人にとっての正解を目指す(ココロメイズ)などの行程を求められ、多彩な選択がたびたび突きつけられます。

この選択の数々を間違うと、残機を失うという分かりやすいペナルティが科せられます。仮想現実とはいえ、STGで残機が0になればどうなるか、想像するのは難しくないでしょう。適切な道を選ばなければ、到底生き残れません。

自機を失うほど、命を落とす危険が近づく。それは、残機制のSTGにはお馴染みの感覚ですが、ADVパートで選択を誤ることでも、同じ危機感に襲われます。STGにおける瞬間かつ反射的な判断と、ADVでの事実と推察を元にした試行的判断という違いこそあれ、危機感という共通性で地続きにし、一体化を果たしています。

「STGパート中に選択肢が突きつけられる」と聞くと、ゲームのテンポを心配する方もいることと思います。確かに、STGだけを突き詰めるならば、情報に基づいて正解を推測しないといけないヘンケンシナプスやココロメイズは、余分なシステムかもしれません。

ですが、本作の製品版には「SCORE ATTACK MODE」があるので、STGだけに没入したい場合は、そちらのモードを選ぶのが最適でしょう。そして、物語とSTGを融合させた「MAIN STORY」として見た場合、突きつけられる選択やリナとのかけ合いが、「ゲームプレイ」を阻害するとは感じませんでした。むしろこの両立がなければ、『冤罪執行遊戯ユルキル』である必要がない、と個人的に思います。

体験版の実感について誤解を恐れずにまとめると、『冤罪執行遊戯ユルキル』の「MAIN STORY」は、「STGにADV要素を盛り込んだもの」ではなく、「複雑な背景を持つ人間同士がぶつかるドラマを、STGとADVで描いた」と言うべきもの。STGの縦糸とADVの横糸が、物語という織物を編み上げているのです。

ここまでお伝えした点を踏まえ、それをSTGとADVの融合と見るか、混ぜてみたが分離していると感じるか、人によって意見が分かれるかもしれません。特に、ストイックなSTGファンからすれば、邪道と捉えてもおかしくないでしょう。

しかし、ADV要素が“単なる客寄せパンダ”ではなく、濃密で魅力的な展開を確かに作り上げ、その上でSTGを乖離させずにつなぎ止める構成は、この2022年に完全新規STGを出す意気込みに相応しいパワフルさが込められていたように感じます。

これまで2度の試遊プレイでも明かされなかったADVパートは、2年の延期を経て、STGとの融合を果たしました。もちろん延期は、待ちわびるユーザーによって嬉しい話ではありませんが、これはSTGとADVの熟成に必要な期間だったのかもしれない──などとつい考えてしまうほど、今回の体験版プレイは好感触でした。

作品自体に正式な評価を下すのは、当然製品版の発売以降になりますが、待ちわびた日々を裏切ることのない、期待感を覚えるプレイ体験でした。このデスゲームの先に、希望はある!



《臥待 弦》
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