タクティカル系FPSの祖先?FPS界のレジェンド『Wolfenstein 3D』と『DOOM』はどのように異なるか、ゲームデザインを紐解く【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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タクティカル系FPSの祖先?FPS界のレジェンド『Wolfenstein 3D』と『DOOM』はどのように異なるか、ゲームデザインを紐解く【年末年始特集】

ぱっと見は似ている『DOOM』と『Wolfenstein 3D』はどう違う?

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タクティカル系FPSの祖先?FPS界のレジェンド『Wolfenstein 3D』と『DOOM』はどのように異なるか、ゲームデザインを紐解く【年末年始特集】
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id Software 公式サイトより

ジョン・ロメロ、ジョン・カーマック、トム・ホールといったレジェンドゲームクリエイターを排出したid Softwareが1992年から1993年にかけてリリースした『Wolfenstein 3D』や『DOOM』は、今日のFPSというジャンルを築き上げた始祖といえる作品です。

開発元が同じことや発売まで1年半ほどしか空いてないことなどから、パッと見では似たような作品にも見えます。しかし実際には両者のゲームデザインは真逆と言っていいほど異なるもの。本稿では両作品のゲームデザインを紐解きながら、どのような差異のある作品なのか解説していきます。

なお、本稿で使用する『Wolfenstein 3D』のスクリーンショットは、「ECWolf」というソースポートを用いて撮影しています。

両作の共通点はどこにあるのか

『Wolfenstein 3D』(1992)と『DOOM』(1993)のインターフェース。

本題に入る前に、両者の共通点を整理してみましょう。まず、画面下部のインターフェースがかなり似ていることが挙げられます。細かな違いはあれど、武器や弾数、ヘルス残量などプレイヤーのステータスが表示されています。

そして、インターフェース中央に位置する顔グラフィックも共通しています。被弾時に反応したり、ダメージを受けるほど主人公の顔がボロボロになったりと、現在の主人公の状態が表現されています。

主人公の顔が見えないFPSにおいて、残りヘルスや被弾などが把握できるこの仕組みは現代から見ても画期的であり、『DOOM』といえばこれを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。これは前作の『Wolfenstein 3D』や、前々作の『Catacomb 3-D: The Descent』(GOGで購入可能)の時点ですでに採用されていました。

『Catacomb 3-D: The Descent』(1991)のスクリーンショット。後2作とは違い、ダメージに応じて顔グラ(右上)が徐々にガイコツになっていくという方式。

また、銃の位置が中央であることも同様です。今日のFPSでは、主人公が持つ銃は画面右下に表示され、腰撃ち状態で構えているような表現。しかし両作では画面下側の中央に配置されていて、常にサイトを覗き込んでいるような表現になっています。弾丸は中央に飛んでいくため、レティクル(クロスヘア)はありません(『DOOM』のリマスター版では追加されている)。

かなり高い位置に敵がいるが、向きさえ合っていれば倒せる

ゲームデザイン的な観点から見ると、この時点ではまだ“上下(高低)”の概念がないことが挙げられます。縦向きのエイムが存在しないため、横軸の方向がある程度合っていれば上下関係なく弾が敵に飛んでいきます。『Wolfenstein 3D』のマップデザインは平面なのであまり気にならないかもしれませんが、『DOOM』ではマップが立体的になっているため、現代のFPSをプレイしているユーザーには奇妙に映るかもしれません。

以上のように、いくつか共通点が挙げられます。プレイしていない人から見るとグラフィックが綺麗で立体的になった『DOOM』は『Wolfenstein 3D』の強化版という印象を受けるかもしれませんが、筆者としては、そもそも両作はゲームデザインの方向性が全く異なる作品であると考えています。

『DOOM』は『Wolfenstein 3D』の単なる進化版ではない!ゲームデザイン面での違いを紐解く

筆者の考えを詳しく話す前に、まずFPSの大まかなジャンルについて定義しておきます。かなり大雑把ではありますが、ここではFPSのジャンルを「アクション系FPS」「タクティカル系FPS」の2つに分けていきます。

「アクション系FPS」の特徴としては、ハイスピードで走る、連続でジャンプするなど主人公の身体能力や耐久力の高さが挙げられます。世界設定においても、多くのものは敵がモンスターだったり、SF世界を舞台としていたりとファンタジーを描いています。一方で「タクティカル系FPS」は、敵も味方も1発の被弾が致命傷になるようなバランスになっており、慎重かつ戦略的な立ち回りを要求されます。舞台も現実に近しい設定のものが多く、敵は主に人間となります。

もちろんこれらの条件に一致しない作品もありますし、今回取り扱う両作もこの定義の限りではありません。これ以上に細かく分けることもできますが、大まかにわけるとこのように二分されるでしょう。

それを踏まえて、筆者は『DOOM』がアクションFPS、『Wolfenstein 3D』はタクティカル系FPSの走りであると考えています。ここからは、両作のバランス調整やプレイヤーの立ち回りなど、ゲームデザインを紐解いて解説します。

まず、両作の敵の違いから見ていきましょう。『DOOM』で対峙する敵はデーモンと呼ばれる敵であり、人間の敵はいません。一方で、『Wolfenstein 3D』の基本的な敵は兵士で、まれに犬やゾンビも登場しますが、基本的に人間と言っていいでしょう。

この設定の違いがゲームプレイ上においてどのような違いをもたらすか説明します。『DOOM』は敵や武器種によって異なりますが、倒すまでに5~6発以上、多いときは10発以上必要なこともあり、全体的な耐久力は高めです。

『DOOM』は多様な敵の種類が用意されている分、敵によって武器の使い分けを行う仕組みになっているため、武器によってはサクッと倒せることもあります。一方『Wolfenstein 3D』はボスを除き基本的に1~3発で殺せるほどの耐久力となっており、1人の敵にかかる時間はさほど多くありません。

Impの火の玉はプロジェクタイル方式。人型のゾンビはヒットスキャン。

次に、弾の飛び方について。まず、FPSにおける弾の飛び方には2種類あります。ひとつは「プロジェクタイル」と呼ばれる方式です。これは射撃された弾がグラフィックとして描画され、目に見える形で飛んでくるというもの。もうひとつは「ヒットスキャン」と呼ばれる方式です。これは射撃が行われた瞬間に即着弾するというもので、基本的に弾は描画されません。

これを踏まえて、両作の方式を見てみましょう。『Wolfenstein 3D』は全面的にヒットスキャンで構成されており、『DOOM』は基本的にプロジェクタイル、一部の敵がヒットスキャンとなっています。なお、プレイヤーが撃つ弾は『DOOM』の一部武器を除き、ほぼヒットスキャンになっています。

プレイヤーの耐久力にも大きく差があります。条件によっても左右しますが、体力フルの状態から比較すると『Wolfenstein 3D』は5~6発ほどで死んでしまいますが、『DOOM』は12~15発ほど耐えることができます。

これらの要素がゲームプレイに影響するものとは、ズバリ「プレイヤーの立ち回り方」です。『Wolfenstein 3D』の基本的な立ち回りは、しっかりとクリアリングしながらひとりずつ倒していくというものです。ダメージも大きく敵が複数いる場所に突っ込むとあっさりと死んでしまうので、常に緊張感のあるゲームプレイとなります。

一方『DOOM』は敵の弾さえ避ければ複数人を相手に戦っても問題ありません。まずヒットスキャンの敵を倒し、次に突進してくる敵、最後に遅い弾を撃ってくる敵……といった具合に倒す順番を脳内で組み上げていくのも『DOOM』の魅力のひとつです。


『DOOM』も『Wolfenstein 3D』も、それぞれ異なった良さがあることがわかります。筆者は今プレイしても十分に楽しめると思っていますし、普段我々がプレイしているFPSはどのような歴史を辿ったのだろう?ということを考える切っ掛けにもなるのではないでしょうか。

『Wolfenstein 3D』および『DOOM』はSteamなどで配信されているほか、PC Game Pass向けにも配信中。気軽に触れられるので、興味を持った方はぜひプレイしてみてください。


《みお》

超雑食の若年ゲーマー みお

2021年3月よりフリーでゲームライターをしています。現在はGame*SparkとIGN JAPANで活動し、稀にINSIDEにてニュース記事を執筆しています。お仕事募集中。ゲームの趣味は雑食で、気になったものはクラシックゲームから新しいゲームまで何でも手を出します。主食はシューター、ADV、任天堂作品など。ジャンルやフランチャイズの歴史を辿るのも好きです。ゲーム以外では日本語のロックやアメコミ映画・コメディ映画、髪の長いお兄さんが好きです。

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