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Game*Sparkレビュー:『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』(ネタバレあり)どうすればできるかな?思いつきの実行こそ遊びの楽しさ

オープンワールドを自発的に探索させる仕掛けが用意されていました。

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Game*Sparkレビュー:『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』(ネタバレあり)どうすればできるかな?思いつきの実行こそ遊びの楽しさ
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本記事は『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のオープンワールド要素にフォーカスしたレビューであり、
物語の核心部分のネタバレを含んでいます。
必ずエンディングに到達してからお読みください。

世界の巡り方をプレイヤーが決められるという、オープンワールドゲーム。その弱点は、メインシナリオから外れる「寄り道」の多くが取りこぼされてしまうことです。

盛り上がるメインシナリオを先に進めたい人には寄り道のダンジョンやサブイベントは「遠回り」と分かっているので、進める強さを身につけていれば無視して先に行き、大抵は放置されたままクリアしてしまいます。全部潰してから先に進むのも時間がかかりますし、クリア後の消化試合も味気ないものです。


以前レビューを担当した『ゼノブレイド3』の場合だと、全てを見るための動機は「よく練られたエピソードを読み進む」でした。しかし、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』にはそれがありません。主人公・リンクは全く喋らず、ほとんどのイベントは予定調和。そこに本作が用意したのは「マスターソードを探す」という強烈な動機です。

ゲーム序盤で示された4都市を回って監視塔に戻ってきたとき、ゼルダとおぼしき人影が現れ、物語のナビゲーションはハイラル城突入を示します。しかし、プレイヤーによってはこうも思ったはず。「これ、明らかに罠だよね?」と。

住人のゼルダ目撃情報では別人疑惑がいくつか出ていましたし、メインチャレンジの地上絵巡りをある程度進めていれば、偽物であることは既に承知しています。前作を踏まえれば突入に警戒もしますし、大半のプレイヤーはマスターソードをまだ手にしていないでしょう。持っていないことに不満を示す人物もいて、そこにプルアの「全力を尽くせば」の言葉を聞けば「先にマスターソードを探すべきでは」と思うのが自然でしょう。

ナビゲーションは「行け」と指示しているが、世界中で見聞きしたヒントの数々は「罠だ」と示している。賢者が揃ったところで導線に不信感を持たせ、世界のどこかに隠されたマスターソードの手がかりを求めよ、とプレイヤーに察知させる。すると、マップ全域に残された未到の場所が、全て「マスターソードの手がかり候補」となり、自発的にマップの隅々まで探索させるよう仕向けられるのです。

そしてヒントに気付いて、障害への対策さえできればどのタイミングでも辿り着くことが可能です。もしシナリオ導線に誘導したいなら、神殿の攻略と同様に賢者の力を使わないと突破できないギミックを用意すれば良いのです。しかもご丁寧に複数の手段を用意しており、“辿り着いてみろ”とシグナルを発しているようです。

シナリオ上、マスターソードに至る道筋は、実際のところ一度ハイラル城へ突入した後に示されるのですが、慎重なプレイヤーであれば明らかな罠にかかりに行くのを避けるでしょう。前作は早めにマスターソードの場所が判明したので、今作でも地道に調べればヒントを見つけられるだろうと考えます。ここに、本作における最大の謎解きが仕掛けられているのです。

普通のゲームであれば、強敵への切り札は物語のクライマックスに用意するもの。多くのオープンワールドのゲームであっても、基本的にはメインストーリーの進行に従って入手するもので、道中であった仲間達と協力するシーンを用意して、最終決戦前の盛り上がりを形成する核となります。他にも空を飛翔して移動できるといった攻略に必要な手段は、特定のメインクエストクリアが必須など、シナリオ進行に従ってアンロックされます。

『Horizon Forbidden West』の場合、マップを探索しているとファイアグリームや水中の洞窟など、ストーリーを進めないと侵入できない場所が見つかり、序盤には入れないが後になって解決手段を入手して報酬を得るというアクティビティがあります。ここに入りたければストーリーを進めてね、というメッセージが出て、そこに「見えない壁」をプレイヤーは感じてしまいます。

オープンワールドは自由と言われていても、用意されたメインシナリオを進めることが第一であり、自由な探索の最中にもそこに引き戻そうとする「見えない壁」が目に付きます。

リンクが操れる各種の力は最初の浮島で出揃っていて、ゲームを進めてもクラフトの新しい力が増えたりはしません。その代わり、ゲームを通してプレーヤーに力と道具の使い方を徹底的に学ばせます。

祠では祝福の光ももちろん手に入るのですが、そこで得られるのはプレイヤーの「知恵」であり、Tipsで出る膨大な小技を含めた「知恵」がリンクの行動範囲を拡大させる鍵となるのです。一見行き止まりに見えるような場所であっても、観察力と道具を使う知恵で突破でき、一旦引き返すようなことはまず無いでしょう。

特に空に使うゾナウギアには使用限界が設けられており、翼や熱気球を単体で使ってもそれほど遠くへは行けません。制限時間内にどれだけ加速させられるか、エネルギーを持続させるか、その工夫の方法を祠や地下空間で学び、上空の探索に活用するという導線になっているのです。

大きな舞台を用意するオープンワールドでは時に探索が苦痛になり、緩和するためにナビゲーションを細かく設定する傾向にあります。次に向かう場所の情報を入手したら自動的にログを更新し、すぐさまマップで目的地が示されます。確かにそうすれば理不尽に迷うことは減りますし、中断しても後から思い出すのは簡単です。

その一方で主目的が常に示されていれば寄り道が遠回りでしかなくなり、指定された場所に行って「タスク」をこなすだけの作業になりかねません。その代わり、『ティアキン』では起点となる人物だけを示し、目的地はその人の話から自分で探し出す必要があります。まるで宝探しのようであり、そこには立ち塞がる障害も待ち受けています。

その都度プレイヤーは知恵を巡らせ、「こうすれば突破できるのでは」と仮説を立て、実験する。時には突拍子もない無茶を思いついても、それが成功してしまう。前作の能力でもそうでしたが、今作の“ウルトラハンド”でそれが一層強化されました。

本作に於いては、マスターソードに至る導線は隠されているものの、「見えない壁」に阻まれることはありません。手探りの発見やゴリ押しでも届くようになっています。前作プレイヤーならまずコログの森を訪れるでしょうし、空に渦巻いている雷雲の中に突入できるか一度は試したくなります。

そして攻略法に気がついたときの「これは行けるんじゃないか?」というワクワクが、本作で最も楽しい瞬間です。マスターソードにいつ、どこから、どうやって辿り着くか。確証がない中で、その仮説を立てて実行する前の高揚感に謎解きの面白さがあります。解法を知ってしまえば二度とできない手探りの旅こそ、オープンワールドにおける『ゼルダ』の謎解きと言えるのではないでしょうか。

マスターソードに至る手がかりを求めて、地図の怪しい場所を片っ端から巡り、伝説に繋がりそうなチャレンジを解決する。「寄り道」だと思わなければ、それらの苦労も全て心地よい冒険になります。メインシナリオの導線に逆らったために、逆に全ての「寄り道」が寄り道ではなくなり、文字通り「ゼルダの伝説を追う過程」になる。これまで様々なオープンワールドの作品を経験しましたが、この感覚は『ティアキン』が初めてでした。

探索のプロセスが作業的であれば、しらみつぶしの面倒さが先に立ち、当てのない探求の旅を諦めてしまう人が出るでしょう。それでも『ゼルダ』の場合はプレイヤーの思いつくあらゆる手段をしっかりとカバーし、発見と謎解きの楽しさを磨き上げてきたからこそ、『ゼルダ』ならきっと応えてくれるに違いない、そうプレイヤーに思わせる信頼を持たせてくれるのです。

天高く登った白龍に追いつくことはできるのか?それとも追尾する手段があるのだろうか?今ある手段で全力を尽くせば届くかもしれない。探索を続ければ自力で見つけられるかもしれない。マスターソード探しという物語の中核でそんな無茶を許容するのが『ティアーズ オブ ザ キングダム』の懐の深さであり、『ゼルダ』における自由なオープンワールドとは何か、の答えであるように思います。

総評:★★★

良い点
天地が加わった広大なハイラル
様々な思いつきに対するリアクションが隅々まで用意されている
ウルトラハンドによる「工作」の面白さ
状況に応じて多彩に変化する音楽

悪い点
神殿クリア時のイベントが4カ所とも全く同じ
賢者呼び出し中の操作性




《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

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