ホラー脱出ADV『トガネヨビ』は、■■するほどホラーが苦手な作者による■■作品だった――独自の作風と“突然リリース”の真意【インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ホラー脱出ADV『トガネヨビ』は、■■するほどホラーが苦手な作者による■■作品だった――独自の作風と“突然リリース”の真意【インタビュー】

尖ったセンスの光る『トガネヨビ』が生まれた経緯や、驚きのリリース戦略まで、超ロングなインタビューにお答えいただきました!

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ホラー脱出ADV『トガネヨビ』は、■■するほどホラーが苦手な作者による■■作品だった――独自の作風と“突然リリース”の真意【インタビュー】
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2026年1月28日、明確な予告なく突如PC向け(Steam)に発売され、インディーゲーム界をザワつかせた『トガネヨビ』。

「深夜の電話ボックスで、指定された11の番号に接続するだけ」。そんな高額報酬バイトに臨む主人公・ハチスカユウキが、怪異の棲みついた電話ボックスからの生還を目指す――本作は、ポップなビジュアルと容赦ないホラー演出、そして歯ごたえ十分の謎解きが光る脱出×ホラーADVです。

Game*Sparkでも、プレイレポートを掲載しています。


そんな独自性あふれる『トガネヨビ』を世に送り出した制作者・じゃむさんっぽいど氏と、パブリッシャーのヴァンパイア株式会社にメールインタビューを行いました。

タイトル同様、一度聞いたら忘れがたい印象的な名前を持つ皆さまは、普段どのように活動し、どのように本作を生み出したのか……。組織の基本情報からゲーム制作の経緯、そして今後の展望まで、幅広くお話を伺いました!

『トガネヨビ』はUnityの“練習作”だった――尖ったセンスと、それに惚れ込んだパブリッシャーの共闘が結実した一作

――(制作者様へ)これまでのご経歴や、現在のご活動内容についてお聞かせください。

じゃむさんっぽいど氏(以下じゃむさんっぽいど):現在は主にオリジナルのイラストや映像、ゲーム、音楽を趣味で制作しています。

――(ヴァンパイア株式会社様へ)ヴァンパイア株式会社の概要や現在の事業内容について、あらためてご紹介いただけますでしょうか。また、代表としてどのような方針や思想のもとで活動されているのかも、ぜひお聞きしたいです。

ヴァンパイアのかとう(ヴァンパイア株式会社・代表取締役)(以下ヴァンパイアのかとう氏):2026年2月現在、大きく4つの事業を運用しています。

クリエイティブの受託を行う「プロダクション事業部」でゲーム業界向けのイラスト制作、モーションの制作、動画制作・動画編集、SNS運用などを提案。LINEスタンプなどのデジタルコンテンツの企画、制作、販売を行う「スタジオ事業部」。独自コンセプトのBARやスナック、レンタルスペースを運用する「オフライン事業部」。そして、ゲームを企画、開発、販売する「アーカイブス事業部」です。

事業選択に一貫性がないように思われるかもしれませんが、我々は自分たちを含む ”より多くの夢を実現する” ことを使命として活動しています。またスローガンとして #遊んでたら褒められた という言葉を掲げています。その思想の中で、誰かがやりたいと言ったものの中でやれそうなものを全部やっていった。その結果残っているのが今の事業だということです。

――制作者であるじゃむさんっぽいど氏がヴァンパイア株式会社のスタッフでもあるという関係性も、本作の独自性につながっているのではと感じました。どのような経緯で企画が立ち上がり、どのように制作が進んでいったのでしょうか。

ヴァンパイアのかとう氏:『トガネヨビ』よりも先に作っていた『ソドミーファタール』の開発中に、古いパソコンだと動作がややモッタリすることがあり動作の軽量化を目指しました。しかし、RPGツクールで開発していたこともあり、やや無茶な作りではあったんです。そこで、Unityを使えるようになることに時間を投資してもいいかもねって話をしていたら「Unityで練習用に作ってみました」って『トガネヨビ』が出てきたんですよね。それがめちゃくちゃ面白かったので、これ売りたい!!と販売用にブラッシュアップしていくことになりました。

――それぞれのお立場から、『トガネヨビ』をどのような作品だと捉えていらっしゃいますか。あらためて本作の概要と、特にプレイヤーに注目してほしいポイントを教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:■われた公衆電話からの脱出、ホラー風推理ARGの『トガネヨビ』は主人公のハチスカユウキが恋人と共に暮らすために金がどうしても必要で、公衆通信機の通信テストという闇バイトに手を出したことが発端となります。ハチスカはマキハラという男の指示に従い深夜2時に通信を行いますが、この通信機はトガネヨビという怪異が憑いた恐ろしい呪物であることと、この絶望的な状況で死を繰り返し情報を手繰り寄せ、線と線で点を繋げて脱出するゲームということが、初めての死と共に突きつけられます。

本作は恐ろしい公衆通信機からの脱出がテーマですが、「人が人を想う気持ち」「愛」も題材としています。ハチスカが恋人を想って闇バイトに手を出したこと、マキハラが何故闇バイトを募集しているか、他の犠牲になった人たちの情報ひとつひとつが、誰かを想って起きた事象であるため、登場人物の関係性やバックグラウンドに是非注目してプレイしていただきたいです。

ヴァンパイアのかとう氏:『トガネヨビ』はインディーゲームのブームとはある意味で外れた路線じゃないかなって思っています。インディーゲームとしてのトレンドを追う形ではなく、じゃむさんっぽいどくんが面白いと思ったものをそのまま形にしたって感じで。前作の ”狂気より愛をこめて” と比べるとゲームとしての難易度が格段に上がっているので、とっつきにくい方もいると思います。そういう方にはお気に入りの配信者さんの動画で楽しんでもらえたらいいかな。でも、自分で謎を解いていくことにワクワクできる方は、何も見ないで、夜中に一人でこっそり楽しんでもらえたら、一番楽しめると思います。

――前作『狂気より愛をこめて』は「絶対に話がかみ合わない男たちとの恋愛アドベンチャー」という強烈なコンセプトで注目を集めましたが、今回はホラー作品となりました。この大胆なジャンル転換に至った背景や思いをお聞かせください。

じゃむさんっぽいど氏:私事ではありますが、昔からキャラクターのデザインや世界観の構築と妄想が大好きで、一次創作を行い続けています。世界観とストーリーを形にする手段のひとつに「ゲーム」があり、自分の中の「お話」に最適なジャンルを制作時に選んでいるだけで、ジャンルの変更に対しては大きなこだわりはありません。

高校生の時に発表した過去作達、夜にしか遊べないRPGの『ヨルダケ』や、ボンベの酸素が切れて死ぬまでの180秒間を深海で過ごすだけのゲーム『180sDIEving』、化け物の住む塔からの脱出謎解きAVGなどから、どちらかといえば突然恋愛ゲームを制作したことの方がイレギュラーだったかもしれません。

また、Unityでゲームを作ったこともプログラミングの経験もほとんど無く、勉強として制作したのが『トガネヨビ』です。この経験を元に、更なるゲーム制作の幅を増やし、自分の創作を好きと言ってくれる多くの方に伝わると嬉しいです。

――実際にプレイして、ホラー表現が本当に怖くて何度も泣きそうになりました。一方で、登場キャラクターは驚くほどポップでかわいらしく、そのギャップが強く印象に残っています。ホラーゲームとして特に大切にした点、そして“かわいらしさ”と“容赦のない恐怖”をあえて両立させた意図について教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:自分もホラーが大の苦手で、中学生の時『スーパーマリオ64』のテレサのステージをやったら下痢が2時間ほど止まらなくなったことがあります。それでも、自分にとってホラーゲームの魅力は「未知との遭遇」「非現実的なものの存在を感じること」、すなわち独特の奥ゆかしい世界観にあると思っています。そんな恐ろしくも惹かれるような不気味な世界観が作れたら、と考えて常にコンテンツ制作に挑んでいます。

『トガネヨビ』のキャラクター達がポップで可愛らしいのは、ポップとホラーという組み合わせにしたかったからとかではなく、プレイヤーのターゲットの基準は常に「自分」であるため、ホラーに直面して2時間下痢する男でもやりたいと思う奥深い世界観とポップで可愛い絵柄という癒しを用意する必要があったからです。それから、純粋に可愛らしいキャラクターがひどい目に遭うのが好きだからでもあります。

公衆電話ボックスを旧公衆通信機ボックス、関東地方の埼玉県を中東地方の祭珠地区など、僕らが身近に感じるものと少し異なる表現にしたのは、『トガネヨビ』を含めたすべての作品のキャラクターは自分の作ったキャラクターや世界観を現実とは異なるパラレルワールドのような世界におじゃましているのだと認識してもらいたいからです。

――不意に訪れるジャンプスケアや、じわじわと変化していく電話ボックスの様子など、恐怖はとても強烈なのにどこか“クセになる楽しさ”も感じました。恐怖とエンターテインメントのバランスはどのように設計されたのでしょうか。意識して避けたことや、特に大事にした考え方があればお聞きしたいです。

じゃむさんっぽいど氏:意識して設計していません。ただ、ずっと同じ通信BOX内にい続けるのはそれもまた恐ろしく退屈に感じる方も多いのではと思ったため刺激を用意している、といった感じでしょうか。本当はめちゃくちゃ怖がりなのでジャンプスケアなんて存在してほしくないです。自分がプレイしてる時だけ異変が起きてほしくないです。テストプレイ中にも散々びっくりしていました。でも、ホラーが苦手な人こそ人が何に恐怖するのかよくわかるのではないでしょうか。

全然関係ないですがホラーゲームを作ったところでホラーに耐性がつくとかは特にありませんでした。今もT字路に設置された鏡に人がうつって、こっちに来るとわかっているのにびっくりします。

――「トガネヨビ」や「クギビト」といった言葉は、「一体どういう意味なんだろう」と想像や恐怖を掻き立てる印象的な響きでした。これらのワードはどのような瞬間に生まれたのでしょうか。着想のきっかけや、このワードを採用するに至った経緯をぜひ教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:連想ゲームみたいな感じです。公衆電話のゲームを作るとなった時に、電話には必ず0~9の番号がふられた10種以上のパネルがありますよね。それを「十つの鍵」として「十鍵呼び」。トガネヨビは怪異の名前ですが、正しい順序の数字に固執し呼ぶものなので、一見した限りではなんの名称かはわからないけれど、漢字にすると少しわかる…?というラインを目指しました。

クギビトは「供儀人」と書くように、供物や捧げるものの類語で調べ見つけた「供儀」をそのままカタカナに。「ココリ」の起源が「こっくりさん」みたいに、こういった造語を作るのは好きなのです。絶対に会話がかみ合わない恋愛ゲームの狂気より愛をこめてを作ったことで、連想造語パワーが強まりました。(連想造語パワーも造語なので、ご安心ください。)

――電話ボックスという閉鎖空間も非常に象徴的だと感じました。あの空間にプレイヤーを閉じ込める発想は、どのようにして生まれたのでしょうか。

じゃむさんっぽいど氏:脱出や謎解きのゲームが好きなので、よくプレイしたりするのですが世の中には公衆電話ボックスから脱出するゲームが数多くありますよね。ただ、電話をかけることが脱出の鍵となるゲームはなかなかないので、ホラーゲームとして怪異とつながる感覚を楽しんでもらえたらと考え公衆電話ボックス脱出ゲームにしました。

――本作のビジュアルは、スクリーンショット1枚でも強く印象に残ります。キャラクターデザインや画面全体の雰囲気について、インスピレーションを受けた作品や体験などがあれば教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:自分はゲームを作る時、ほぼ必ず使う色を何色までと制限しています。学生の時に作ったゲームからずっとそのスタイルで、色数を絞る方が印象的ですしイラストの制作の時間がかなり短縮されるからです。それから、自分はずっとピンク色が大好きなので、ピンク色をより良く魅せるカラーパレットを常に研究しているためです。

ビジュアル面でインスピレーションを受けた作品は特に無いのですが、公衆電話ボックスで硬貨を入れ、タッチパネルで数字を入力し、つながるまで待つという行為自体には物語に入り込むのに重要な時間だな、と感じるきっかけになった作品があります。

8年くらい前にプレイしたI:ROBOT trialというふりーむ!で出てる作品なのですが「これは、歩けるアニメ」というキャッチコピーで、世界観に没入するための工夫が体験版の時点で多く仕込まれていました。今でも印象に残っているのが、自分の所持金が数字ではなくコインで表示され、そのコインを自動券売機にドラッグして切符を購入するといったシーンです。こういったひとつひとつの手間が、世界観に浸らせるきっかけとなることを深く勉強させてもらいました。

解くことで近づく人物像――『トガネヨビ』の謎解き構造

――実際にプレイして、謎解きにはかなり苦戦しました。しかし相当悩みましたが、そこに理不尽さはなく、「解けたときの納得感」が強く印象に残っています。あの手応えのある難易度を作るうえで、特に苦労された点や、細かく調整された部分があれば教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:最初は、マキハラの言うことを守ればマジで生還できるとか、キャラクターの名前にある数字の順で通信をかけたら生還…みたいな風にしようと思ったのですが、それだとどうしてもゲームの奥深さがなくなったり、世界観を崩しかねないと感じました。名前に数字が入らない人はどうなるんだろう?とか、何故マキハラはバイトを募集しているかの理由に筋が通らなくなってきます。ストーリーの構築はかなり苦戦していました。

謎解きに必要な情報と、登場人物がどのように関わってきたか、何故公衆通信機に訪れたか、多くは語りませんが、全ての思惑が交差し、それを読み解くのもゲームの楽しみの一つかな、と思っています。

――開発を進める中で、「最初に思い描いていた形」とは違う方向に作品が変化していった瞬間はありましたか。想定外だったけれど結果的に良くなった部分などがあれば、ぜひ教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:最初は、死を迎える度に番号が表示されませんでしたし、ヒントも出ませんでしたし、ココリは時を操れませんでしたし、ハチスカは最初にスマホの待ち受けを見ながらセトガワについて喋りませんでしたし、ナナミもいなかったので、かなりハードモードでした。死を迎えてもなんのヒントも得られぬ状態に会社の方から多くの意見をいただき、もう一度プレイして確かめようという気持ちをプレイヤーに与えるために多くの工夫を凝らしました。ハチスカを脱出させたい、と思ってくれるように「恋人」という存在を強く出すとか。

――登場キャラクターはいずれも個性が際立っており、登場時間は決して長くないにもかかわらず、「もっと知りたい」と感じさせる存在ばかりでした。なかでもナナミやココリは、熱烈なファンが生まれても不思議ではないほど強く印象に残っています。お二人それぞれのお気に入りのキャラクターと、その理由をぜひお聞かせください。また、作中では語られなかった過去や設定など、可能な範囲で裏話も伺えればうれしいです。

じゃむさんっぽいど氏:全てのキャラクターを愛しているのでとても甲乙つけがたいのですが、今作のキーとなるセトガワという人物は、過去に自分が制作したゲームや映像作品、漫画などに登場しているキャラクターなので、家に等身大パネルがあるくらいには愛着があります。まさに「可愛らしい男性」というイメージですが、様々な作品を通すと彼がホモセクシュアルであり、それがきっかけで両親と疎遠になっており現在はひとりで着の身着のまま水商売で暮らしていることがわかります。

そんな自由に生きたいという彼の意志が、エンドを見ることでハチスカによって踏みにじられていることに気付くのもトガネヨビという闇の深いストーリーを理解するきっかけとなればと思います。このように過去作のキャラクターを次回作に登場させたりがかなりあるので、次回作以降でハチスカやナナミやココリが登場することも…?

ヴァンパイアのかとう氏:ココリって癒しですよね。本作でココリと最初に出会ったプレイヤーが、しばらくココリにすがるようになるんじゃないかなって思ってました。でも僕は、みんなが最初に通話するであろう、某デパートの人が好きです。裏話は僕からは特にありません。強いて言えば、声優さんがみんなめっちゃいい仕事してくれたなあと感じます。

殿城氏(アーカイブス事業部代表):すべてのキャラクターに良さがあるので悩ましいのですが、あえてボイスについて言及すると、お気に入りのキャラクターはトカチです。今回声優さんの台本資料などを手配した中で、難しいキャラクターだなと思ったのはトカチでした。一番シンプルだったので。

そのため声優さんも演技が難しいのではないかと感じたのですが、《過去のトカチ》のボイスを聞いた瞬間「どこにでもいる男性」が、「マキハラに対する疑心」を向けていると強く感じさせられました。トガネヨビは難しい世界観だと感じたのですが、このボイスを聞いた人はより没入感を感じたのではないでしょうか。

――本作はフルボイスで展開される点も非常に印象的で、キャラクターの存在感や恐怖の臨場感が一段と増していたと感じています。フルボイスという形を選んだ理由や、作品体験にどのような効果をもたらしたと考えているのか教えてください。あわせて、収録やディレクションの過程で苦労したことや楽しかったことなど、印象に残っているエピソードがあればぜひお聞きしたいです。

じゃむさんっぽいど氏:ハチスカの声(デッドエンド時)とトガネヨビの声を担当しました。主人公も怪異も性別を明言せず、各々好きなものに当てはめて楽しんでほしいというこだわりがあるため、男性とも女性ともとれる音声にするのが大変でした。

――制作を通して、「これは自分たちらしい」と強く感じた部分はどこだったのでしょうか。個人的には、独自性のあるアートワークに加えて、「ホラーが苦手な人でも遊べる」といった方向には寄せず、しっかりと恐怖体験を成立させている点や、手応えのある謎解きに挑戦している点に本作らしさを感じました。制作者のお二人から見て、本作の“自分たちらしさ”はどの部分にあると考えていますか。

じゃむさんっぽいど氏:制作者は自分ひとりしかいませんので、他の人が深くかかわらない限りは「自分らしい」ものになると思っています。必ずピンク色と紺色が存在するビジュアルと、世の中そううまくはいかない腑に落ちない感がらしさなのかな、と思っています。

ヴァンパイアのかとう氏:じゃむさんっぽいどくんの作品は、いつでも誇り高くじゃむさんっぽいどくんらしさがあります。彼らしさを殺さないことを大事にしたいなと思いつつ、ちょっとマーケティングに寄せたい気持ちが出てきたりして、でも、やっぱり彼らしさを一番大事にしたいなって思ってました。

“ある日突然”という選択――『トガネヨビ』のリリース戦略

――『トガネヨビ』はある日突然リリースされ、そのインパクトに驚きました。ヴァンパイア株式会社のSNSで「今後は“突然リリース”を基本にしたい」「本作はリリース後にウィッシュリストが大きく増えた」と発信されていらっしゃいましたが、一般的には発売前のウィッシュリスト獲得が重視されることも多い中で、今回の結果をどのように受け止めていますか。また、今後のリリース戦略についてのお考えを教えてください。

ヴァンパイアのかとう氏:Steamの仕様を考えても、また、プレイヤーさんに情報を伝えるためにもウィッシュリストを事前に集めた方がいいのは明白です。しかしウィッシュリストを集めることに疲弊して、その上で、思ったよりダウンロードが伸びなかった…と絶望している方も少なくありません。であれば、僕たちは作品を作ることにより専念して、そしてリリースした後にできるプロモーションに力を入れていきたいね。プレイヤーさんと一緒に作品を育てていきたいね、という考え方で現在に至っています。

殿城氏:そもそもではあるんですが、ウィッシュリストは、カートよりももっと手前の存在で「とりあえず買うかも」というメモでしかないと考えていて、そうなるとリリース前にウィッシュリストを先に展開して「これいいな!」とおもっていても、リリースまでしばらく経つとその熱が冷めてしまうんじゃないかと感じています。

それくらいなら、リリースしてそのタイミングでいろんなところでPRをする、「欲しい!」「面白い!」って感じたときが「購入できるとき」である方が熱量高く買ってもらえるのではと思っています。

幸いその狙いはある程度叶ったのではと感じていますが、今後はもっとその熱量を高められるように仕掛けていきたいと思いますので、応援・ご助力お願いできればと思います。

――リリース後、さまざまなプレイヤーの反応が寄せられていると思います。実際にプレイした方々の感想の中で、印象に残ったものがあれば教えてください。予想外だった声や、制作してよかったと感じた瞬間などがあればぜひお聞きしたいです。

じゃむさんっぽいど氏:自分のゲームをたくさん実況されている方の配信や動画を時々見に行ったりするのですが、「この制作者のゲームなら、そう簡単にハッピーエンドになるわけがない」などと言われることが多く、それはとても嬉しいことだと思います。

僕にとってゲームとは娯楽というよりも乗り越えるべき試練であり、決してスッキリするためだけに存在しているものではないので、傷痕を深く残し痛みを引きずっていただきたいのです。きっと自分によって多くの傷を受け、引きずった人にしか出ないセリフだと思うと、わざわざ傷を負うために自分のゲームをやってくれていることに喜びが溢れます。

あと「この人緊縛大好きだな…」もよく言われます。別にドMとかドSとかではないのですが、縛られてこそ人は自由になれると考えています。

インディー海のクラーケン、『トガネヨビ』の次なる航路

――いまのインディーシーンやゲーム業界の流れの中で、『トガネヨビ』はどのような位置にあると感じていますか。

じゃむさんっぽいど氏:自分のゲームがインディーゲーム業界に属しているという意識がかなり薄く、本当に無知なので何もわかりません…。ただひとりの人間から出た創作の1つでしかありません…。会社でゲームを作っていますが、個人で作ってるゲームを、僕の手が回らぬパブリッシングなどの部分を会社がやってくれているので会社の人間に聞いた方が良いかもしれない。

ヴァンパイアのかとう氏:純粋に面白い作品を多くの人に遊んでいただきたいという気持ちなので、どの位置にあるかは考えなくてもいいかなって思っています。ただ、インディーゲーム含めてゲームの単価は安すぎるなとは思います。お客さんには安く遊んで欲しい気持ちも同時にあるので難しいですけどね。価格を決める時が一番揉めました。

殿城氏(アーカイブス事業部代表):『トガネヨビ』ならびにじゃむさんはかなり尖りがあるなとは感じていて、決して埋もれない輝きがあると感じています。とはいえゲーム業界のこのインディという枠がすでに大海ではあって、この海を眺める人たちにはまだまだ届いていないのかなという気もしています。ひとたび見つかれば、クラーケンの触手に絡められるのは早いと思うので、トガネヨビというコンテンツは一つのブイに、もっといろんな目印となるようなゲームを世に放って、もっとじゃむさんを知っていただけるように動いていきたいです。

補足:じゃむさんっぽいどさんは個人でVtuber活動も行っており、VRCのイベント等も主催しています。そこでの姿はクラーケンをモチーフにしたものとなっており、触手等の表現はここ由来のものです。ブイはそのまま海に浮かんでいる目印のことです。

――最後に、これから『トガネヨビ』をプレイする方へ、そしてすでに体験した方へ、それぞれメッセージをお願いします。あわせて、今後の展望(挑戦してみたい表現やジャンル、次回作の予定など)をぜひ教えてください。

じゃむさんっぽいど氏:次回作は既に進めておりますので、是非楽しみにしていてください。

今までは世界観に浸るための「余白」を演出していましたが、新たに加わった仲間のUnityを携え、これからはプレイの爽快感にも注目し、様々なジャンルの物語をお届けできればと考えています。何気に海洋生物や海が大好きなので、いつか海にまつわる物語を出して水族館やお寿司屋さんなんかとコラボができたら…と考えています。

ヴァンパイアのかとう氏:これからトガネヨビを遊んでみようと思ってくださっている方には、やっぱり、夜中に一人でこっそり遊ぶのをオススメします。最初はホラーテイストを味わっていただき、途中から謎解きの快感を味わっていただけると思います。すでに体験した方には、感想戦をお願いしたい。どういうきっかけで謎が解けたのか、もしくは今もまだ何もわかってないのかとか聞かせてもらえたら嬉しいです。

今後、じゃむさんっぽいどくんの作品は彼が作りたいものをどんどん世に出していきたいし、どんなものが出てくるのか僕も楽しみにしています。それ以外の作品では、僕自身の趣味としてはアウトサイダーな発想で作品を作れたら嬉しいです。今後もよろしくお願いします。

――長丁場のインタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました!


『トガネヨビ』はPC向け(Steam)に配信中です。また、スマートフォン版のリリースも予定されています。

ライター:難波,編集:みお


ライター/ゲームと映画と小説と移動と格闘技と犬が好きな兼業ライター 難波

雪山のペンションで殺人事件に巻き込まれたり、きらめき高校で青春を謳歌したり、時を渡る翼で時代を駆け星の未来を救った経験を経て、現在はしがない会社員。主にRPGとADV、ホラゲーとギャルゲーが好きで、郷愁と可能性に満ちたドット絵のゲームに目がない。すてきなゲームを世に生み出してくれる作り手への感謝とリスペクトを原動力に文章を書いています。棺桶に入れてほしいゲームは『FF15』。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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