人気ゲームシリーズ『龍が如く』が、人気Vシネマシリーズ「日本統一」のキャスト・製作陣によって実写ドラマ化されると知り、期待よりも不安が上回りました。
2024年にAmazonプライムビデオで配信された「龍が如く~Beyond The Game~」がその元凶です。作中では、主人公の桐生一馬がチンケな強盗を働き、自ら「堂島の龍」を名乗りたがるなど、原作が持つ本質がありとあらゆるヘンな方向へ改変されていました。
およそ数時間に渡って「誰がダレに向けて何を作っているんだ?」と不満を抱えながら、最終話まで見届けた記憶があります。自分でもよく分かりませんが、家にいるのに帰りたくなりました。
筆者はゲーム『龍が如く』シリーズを全てプレイしているファンのひとりです。実写化作品では、三池崇史監督の「龍が如く 劇場版」と、前述した「龍が如く ~Beyond The Game~」を観ていますが、いずれも絶賛には程遠い完成度だと思っています。
そういった経験もあり、龍が如くスタジオの「RGGサミット」にて、人気Vシネマシリーズ「日本統一」チームとのコラボ実写ドラマが発表された際も、「本当に大丈夫かな」と心配な気持ちで眺めていました。
本作が公開されるやいなや、「再現度が凄い」「小ネタがおもしろい」など、SNSではかなり高評価な意見が目に飛び込んできたので、不安はありつつもワクワクしながら視聴したのです!
しかし結論から言えば、残念ながら、今回も筆者には刺さりませんでした。
ただ、実写化された映像を観て、『龍が如く』を大切にしてくれていると感じたのは、初めての経験でした。随所に作りの粗さはあるものの、原作へのリスペクトに溢れた作品に仕上がっています。長年のファンの目から観ても、本作は『龍が如く』の世界観をかなり忠実に再現しているドラマと言えるでしょう。
だけど、刺さらなかったのです。
本稿では、高評価の声も多く、制作陣のリスペクトも感じる『龍が如く』と「日本統一」のコラボドラマが、なぜ刺さらなかったのか……その感想をお届けします。
Amazonプライムに加入してまで見るべきか迷っている方、『龍が如く極3』の購入を検討している方もぜひ参考にしてください。
再現度の高さゆえの意外な弱点

前述した「龍が如く~Beyond the Game~」では、相次ぐキャラクター設定や世界観の改変に辟易し、「誰かひとりでも『龍が如く』を愛しているスタッフはいないのかよ!」と心の底から叫びたくなりました。東城会の佐々木って誰なんですか。
しかし、「日本統一」チームとコラボした本作は違います。物語の時系列からキャラクター設定にいたるまで、『龍が如く 極』の物語を忠実に再現していました。パンチパーマでグラサンをかけた嶋野は出てきません。
ですので、本作が「ピースファイナンス」の取り立てから始まった瞬間、ものすごくテンションが上がりました。やっとゲームの世界を尊重してくれるクリエイター陣に恵まれた――そんな思いも束の間、鑑賞していくうちに思いもよらぬ感情を自覚したのです。
「退屈だ」と。
というのも、本作は全3話、約3時間に『龍が如く 極』の物語を詰め込んでいます。当然、ゲーム本編に比べると尺は大幅に短いです。セリフも含めて忠実に再現しているだけに、淡々とダイジェストを追っている気分になってしまいました。
これは『龍が如く』第1作目の脚本が抱えていた問題とも言えますが、キャラクターの人物像や現在の状況を、説明ゼリフで解説するシーンが多いのです。「あいつはあの事件からこんな風になってしまった」と、説明で視聴者に伝える場面が多く、会話というよりは情報のやり取りに終始している印象を受けました。つまり、人物をエピソードで描写する時間がないのです。
キャラクターの本質を歪めるような改変やオリジナリティの押し付けはイヤ。かといって、再現度が高過ぎても、知っている展開が続くだけであまり面白くないのだな、と実写化作品でファンを納得させるサジ加減の難しさに改めて気付かされました。
何が言いたいかというと、ドラマとして観るには尺が短すぎるし、ダイジェストにしては長過ぎるのです。これだけ忠実に再現してくれるのならば、一般的なサブスク配信のドラマのように6~10話構成でしっかり作り込んでくれたら、印象は大きく変わったのではないかと思います。
桐生一馬の魅力が伝わっていない疑惑

『龍が如く』シリーズの主人公である桐生一馬は、無口で堂々とした印象が強いキャラクターですが、初期の彼は意外にも「叫ぶ」シーンが多いことをご存知でしょうか。
作中で大切な人を失った時に出る悲しみの咆哮、敵の軍団へ「死にてぇ奴だけ、かかってこい!」と啖呵を切るシーン、自らの覚悟を示す「東城会四代目、桐生一馬だ!」など。
桐生が冷静な男だからこそ、感情が爆発するインパクトが強まるのです。
しかし、今回のドラマでは、全体の再現度は高い割に、桐生の想いや覚悟が伝わる肝心なシーンが、あまり再現されていませんでした。全体的に平坦なトーンで話すため、喧嘩の時以外は「物静かで感情のないおじさん」くらいの印象しか伝わってこないのです。この描き方で、シリーズ初見の方は桐生一馬というキャラクターを好きになるのだろうか、と疑問に思います。
本作で桐生一馬を演じているのは本宮泰風さんで、『龍が如く7外伝 名を消した男』で獅子堂康生役を演じた俳優でもあります。『7外伝』ではものすごく声の演技が上手かったので、ドラマの演技に少し物足りなさを感じてしまいました。
後述するアクションシーンの迫力や佇まいは魅力的でしたが、桐生一馬の内面がうまく表現されていない点は個人的にはマイナスポイントです。
本作は「目的」を達成しているとは思えない

今回のプロジェクトが発足した大きな理由として、『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』へつながる物語を提供する、というものがあります。
「本作はゲームの入り口としての目的を果たせているか?」という問題ですが、私はこの点にも違和感が残ります。
なぜなら、本作には『龍が如く2』の話がほとんど出てこないからです。ドラマを見る前から「さすがに全3話でゲーム2本分の話は無理なのでは」と思っていましたが、それは予想通りでした。『龍が如く2』の話題に関しては、さりげなく初代『龍が如く』のストーリーラインに「堂島大吾」が登場する形で描かれています。この辺の流れは、本作で唯一に近い改変シーンと言えるでしょう。
堂島大吾は東城会六代目となる重要なキャラクターで、『龍が如く 極3』においてもキーパーソンとなる人物です。にもかかわらず、『龍が如く2』の話がほんの一部がさらっと出てくるだけなので、ドラマ単体で見てもかなりの唐突感がありました。
本作を観ても『龍が如く2』のストーリーはほとんど分からないので、『龍が如く極3』の入り口として機能しているのか、と問われると「ドラマを見ておけば大丈夫!」とは言えません。ただし、シリーズをしっかりと理解したいというニーズには応えられていませんが、「何となく世界観や立ち位置が分かれば良い」という方には最適な作品と言えるでしょう。
どこかから怒られるかもしれませんが、筆者は率直に言って「龍が如く~Beyond the Game~」くらいの予算とスケジュールを日本統一チームに渡して、リッチなドラマを作り上げて欲しかった、というのが本音です。
作りの粗さから垣間見える愛情と魅力

色々と文句を垂れてしまいましたが、それでも本作は『龍が如く』という作品を大切にしよう、という心意気がしっかりと伝わる作品でした。
繰り返しになりますが、本作は『龍が如く 極』のストーリーをほぼ忠実に再現しています。過去の実写化作品ではカットもしくは改変されていたシーンがしっかりと映像化されていました。例えば、桐生一馬がサングラスのみで変装して葬式へ潜入するシーンなどです。
また、冒頭で桐生と真島が出会うシーンでは『龍が如く 極』の追加シーンまで完全再現。特に真島の兄さんのセリフはイントネーションまで完璧で、ゲームの音声が脳内で同時に再生されるほどでした。全体的に見ても、ゲームのキャラクターの見た目や話し方をかなり忠実に再現してくれています。

アクションシーンに関しても、バトルスタイルの変更時にでるオーラのエフェクトを再現しつつ、原作に登場したヒートアクションをリアルに実演。「フィニッシュホールド」という原作の投げ技も取り入れ、バトルの決着時には画面のトーンが変わり「例の効果音」が流れるといった徹底ぶりです。筆者は『龍が如く』のバトルが好きなので、ニヤニヤしながら桐生一馬の暴れっぷりを堪能しました。特に、埠頭での一連のバトルが、テンポや振り付けを含めて非常に良かったです。真島の兄さんが戦闘中に魅せたドスの持ち替えや、キレのある回し蹴りも素晴らしかったですね。
また、作中で銃撃戦が挟まれるのですが、桐生が狙うのはいずれも手や足など致命傷を避けています。北村一輝さんが桐生を演じた実写映画版では、ショットガンで次々に射殺するシーンがありました。一応、ゲームにおける桐生一馬さんは、人の腹部にドスを刺そうが、ビルから投げ落とそうが、「誓って殺しはやってません」と言い張るキャラクターなので、ドラマの中で人を死なせている描写がなかった点も好印象です。
個人的に最も心をくすぐられたのは、ゲームプレイヤー笑かしにかかる小ネタのオンパレードです。通行人とサブストーリーのようにカタカタとテキストベースで話し始めたり、最近のゲームには出てこないピエロの姿をした「ボブ宇都宮」が登場したり。由美の誕生祝いの席で赤牛丸の牛丼を食べ始める桐生には笑いました。ゲームの飲食時に何度も見た、背中越しのむしゃむしゃまで再現していたのです。
こういった大胆なユーモアは逆に大規模ドラマでは実現が難しそうなので、予算感を逆手に取った大胆な演出だなと感心しました。ある意味では、本編と正反対なバカバカしい瞬間も『龍が如く』が持つ確かな魅力なので、その辺まで汲み取ってもらえたのがファンのひとりとして嬉しかったです。
私は本作を見て、確かに「予算が限られていたんだろうな」と思う粗さも感じています。ロケーションの外観はほぼ『龍が如く 極』の映像を使っていましたし、再現が難しい箇所はカットされていたりしましたからね。しかし、過去に観た実写化作品では感じられなかった「嬉しい」という気持ちが芽生えていたのは紛れもない事実です。
確かにお金のかかった高級料理ではないかもしれませんが、自分のためを思って一生懸命作ってくれた手料理のようなドラマでした。限られた時間と予算の中で、「龍が如くファンに喜んでもらいたい」「龍が如くの世界を知ってほしい」という製作陣の心意気を感じたのです。
個人的には、以下のような方におすすめな作品だと思います。
「日本統一」のファンで『龍が如く』に興味がある
『龍が如く7外伝』で獅子堂や鶴野が刺さった
『龍が如く極3』までの流れを「ざっくり」知りたい
本作をきっかけに『龍が如く 極3』を遊んでも、問題はないと思います。『極3』においては、前述した堂島大吾はもちろんですが、児童養護施設で生活を共にする「遥」との出会いや関係性を知っておく方が重要だからです。その点は初代『龍が如く』で描かれているため、今回のドラマを見ておけば概ね理解できるでしょう。
また、ゲーム冒頭でしっかりとストーリーをおさらいできる機能もあるため、ドラマを見て興味を持った方は、ぜひ『龍が如く』の世界へ足を踏み入れてみてほしいです。












