個人ゲーム開発者が満足いく成功とは何か?ドリルで鉱石集めゲーム『ほりほりドリル』を開発した“とーらい”氏に聞いてみた【東京ゲームダンジョン7】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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個人ゲーム開発者が満足いく成功とは何か?ドリルで鉱石集めゲーム『ほりほりドリル』を開発した“とーらい”氏に聞いてみた【東京ゲームダンジョン7】

Steamでレビュー数100件前後のゲームって「数が少ない」と思うでしょうか?これ実は、かなりの数なんです。

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個人ゲーム開発者が満足いく成功とは何か?ドリルで鉱石集めゲーム『ほりほりドリル』を開発した“とーらい”氏に聞いてみた【東京ゲームダンジョン7】
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今回も大盛況となったインディーゲームイベント「東京ゲームダンジョン7」。クオリティが高いゲームも数多く、試遊すると同時に「このままみんな完成まで辿り着いて、そして自分が納得する反応と売り上げを獲得してほしい」と願っています。

ゲームライターとしてインディーゲームシーンを追いかけていると、そんな当たり前の願いにたどり着くのが、実はなにより難しいことを思い知らされます。「ゲームを完成するところまでたどり着けない」という問題や、「完成してリリースしても売れない」という問題を恒常的に見ることになるのです。

いろんなクリエイターと取材などで関わってみて感じるのは、おそらくSteamレビュー数を1万や2万も獲得して「圧倒的に好評」の評価を受けながらビジネスとして大成するケースよりも、レビュー数は100~300前後で熱量のあるプレイヤーが確かな評価をしてくれる……というあたりが、セールスと批評で満足できるラインではないか、ということです。

これは本業が別にある方だったり、自作をセルフパブリッシングしていたりする方をイメージしています。でも実際はSteamレビューで100件以上を獲得できるくらい、ゲームを伝え、販売していくことには、かなり高いハードルがあります。

ゲーマーだと「100件を越えたくらいって、ぜんぜん少なくないか?」と思うかもしれませんが、ライターとしてインディーゲームシーンの内情を知るごとに「いや、多いんだ」と感じます。

そんな中、セルフパブリッシングでおそらくは納得するセールスと評価を得たクリエイターにお話を聞いてきました。ドリルで鉱石集めをして、時に集めたコインでドリルを改造していくゲーム『ほりほりドリル』を開発した、とーらい氏です。

本作は、記事公開時点でレビュー数247件を獲得。ゲーム実況でも盛んにプレイされています。そんな『ほりほりドリル』を開発したとーらい氏から、クリエイター本人が納得いく評価とセールスを獲得するヒントについて伺いました。

もともとスマートフォン版をPCに移植したタイトル

――『ほりほりドリル』はもともとスマートフォンで先にリリースしていましたが、Steam版のリリース後の反応はいかがでしたか。

とーらい氏:正直PC版については想像以上でした。やっぱり一個よかったのが、ゲーム実況でPC版の『ほりほりドリル』が遊ばれているのを観た視聴者が、スマホ版を買って遊んでくれたことが流れが大きいです。そういった流れから相乗効果で本作の評判を上げていくのがよかったです。

――スマートフォン版が先にあるというのは、「ゲーム実況を観て、気になったら調べて買う」がやりやすそうですね。

とーらい氏:Xを見ても、「○○が遊んでいたから、スマホを観たらあったのでやってみた」という声をいただけるので、そういう効果はあったのかな、と思いますね。

――その流れを作る事も計算していましたか。

とーらい氏:そもそもPC版はスマホ版の宣伝のために作った面もあるんですよ。やはりスマホだけだと、YouTubeやTwitchなどでゲーム実況してもらえないんですよね。スマホは縦画面だし、ゲーム実況の画面映えがしないから。

だからPC版を出して、ゲーム実況で盛り上がったらいいなというのが狙いにありました。ただ、まさかPC版がここまで売れるとは思わなかったので、そこは嬉しい誤算でした。

――もともとスマートフォンアプリを主戦場としていたと思うんですが、なぜPCでの展開も考えたのでしょうか。

とーらい氏:やはりアプリだけだとマーケティングがやりづらいんです。結局、広告にお金をかけて、最初にダウンロード数を稼げるかという勝負になってきていて。それって大企業が強いんです。それ以外でどうにかできないかなって思ったときにPC版を作ることにしたんです。Steamはウィッシュリストを集めて、発売日に「話題の新作」のところに載ったら、個人開発でもある程度は目につくチャンスがあります。

そういう意味では、個人として売りやすいのはPCなのかなと。アプリでやるならゲーム開発以上にビジネス的な観点が必要になってくるのかなというのは感じていますね。

――PC版の開発についていかがでしたか。

とーらい氏:スマホアプリからPCに移植するのはけっこう大変でした。スマホ版もPC版も同じUnityで開発しているのですが、PC版は縦画面から横画面に作り直すので、UIを全部作り直したりするのが大変でしたね。

「海外のプレイヤーは最初が面白くないとすぐやめるんです」

――『ほりほりドリル』はドイツのgamescom 2024のジャパンブースにも出展していますよね。海外出展したことでセールスの影響や、個人的によかった経験などはいかがでしたか。


とーらい氏:正直、gamescom 2024に行くのはお金がかかったので、費用対効果で言ったらマイナスで……。

――渡航費ですかね。私も別件でドイツに取材へ自費で行ったときに30万近くはかかりました。gamescom 2024のジャパンブース出展自体は、特定非営利活動法人・映像産業振興機構(以下、VIPO)が行ったとのことですが、クリエイター本人の渡航費などは出せなかった……と、この前GameBusiness.jpでVIPOの方による講演を取材して知りまして……。
※参考記事:政府によるゲーム産業への支援の現状とゲーム開発の未来。文化庁や経済産業省が支援するプログラムの運営キーマンたちと若手クリエイターの本音(GameBusiness.jp)

とーらい氏:そうだとは思うんですけど、海外の方が遊んでいるのを目の前で見て、フィードバックを受けて直していくのを5日間繰り返していたのは大きかったです。

やはり日本と海外のユーザーさんはゲームでひっかかるところが違うんですね。日本にいてはできないクオリティの上げ方ができたというか。いわゆる海外ユーザーにも受け入れられやすいようなものにできたのかなあ……と。

――gamescom 2024に来たお客さんは『ほりほりドリル』にどういう反応でしたか。

とーらい氏:まず日本と違ったのは、けっこうきっぱりと「ああ、もういいや」ってやめるところです。ある程度、最初からゲームの面白いところをゲームプレイ内で伝えないと簡単にやめちゃうというか。

日本のユーザーさんは優しいというか、ある程度は遊んでくれるケースが多いんですけど、海外の方は試遊の最初がダメだとけっこうハッキリと「もういいや」とやめてしまう。その経験から、できるだけ最初のほうでゲームの面白いポイントを作るようになりました。

――あらためて『ほりほりドリル』を試遊させてもらい、早めにボムが見つかって大きく稼げるポイントが出てくるなと感じました。これもgamescom 2024での経験が大きいのでしょうか。

とーらい氏:大きいですね。特に体験版は遊ぶ時間が短いので、最初にもらえるコインを増やしたりして、最初にドリルを作ったりする面白いポイントを遊べるように気を付けました。

最初の体験版のときは、しっかりと地面を掘っていけないとドリルを作る場面までいけませんでした。本作の肝はドリルを作って強くなるところなので、それを早めに遊んでもらえるように前のほうに押してきた感じです。

『ほりほりドリル』は自身で満足できる結果に

――あらためまして、セールスに関してはご自身で納得できる結果になりましたか。

とーらい氏:レビュー数で見えている以上に売れていますね。まあ大満足ですね(笑)。結局、人件費は自分以外にかかっていないですし、外注もしていません。今後数年は開発を続けられるくらいには収益を上げられました。しばらくは安心して開発に専念できますし。 

――もともと、とーらいさんとしてはどのくらいの結果がでれば満足できる目標などございましたか。

とーらい氏:自分の場合はYouTubeなどで実況されて、遊んでもらえて知ってもらえれば嬉しいなと考えていました。もともとPC版の売り上げどうこうで生活していこうとは考えていませんでした。

――いま、ゲームを作り切ってもSteamのレビュー数が100件に到達するのも大変な状況なので、『ほりほりドリル』にはひとつヒントがあるんじゃないかと。

とーらい氏:自分の場合はやはりスマホ版があったので、ある程度は売るための土壌があったというか。「ファンがいた」と言えばいいでしょうか。

そのおかげでPC版が出た時、ゲームを知られるひとつのケースとして、『ほりほりドリル』のファンがゲーム配信者の方に「このゲームが面白かったから遊んでくれませんか。PC版もあります」って教えたことがあります。それも大きかったですね。

――たしかにある種、わかりやすいゲームですし、実況もしやすいタイトルですよね。

とーらい氏:僕自身はそこまでゲーマーじゃなくて、あんまり変わったバランスのゲームとかそういうのは作れないんです。本当に王道というか……そういうものしか作れなかったのもあります。

そもそも自分がゲームを作り始めたのは、ゲーム実況からなんです。ゲーム実況が好きでゲームを作り始めた。そういう意味でも、一般的なゲーム好きの人がプレイしているタイトルをやっていなかったりします。だからこそ、あんまり変わったことはできなかったです。

――ありがとうございました。


とーらい氏のゲーム開発がどこまで他のクリエイターで再現性があるかはわからないですが、いくつかの点で個人ゲーム開発者にとって、自身の求めるセールスと評価を得るためのヒントがあるのではないでしょうか。

『ほりほりドリル』は現在PC版はSteam、スマートフォンではiOS/Google Playにて発売中です。


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ライター:葛西 祝,編集:TAKAJO

ライター/ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。『Crusader Kings III』と『Mount & Blade II: Bannerlord』に生活リズムを狂わされ続けています。ちなみに好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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