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AI機能でZoiの心の声が聞こえちゃう?次世代ライフシム『inZOI』の「スマートZoi」でキャラの本音を丸見えにしてみた

『inZOI』に搭載されたNvidia製GPUのみで使えるAI機能を、RTX5090 laptop搭載PCで実際に検証してみました。

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2025年3月28日より早期アクセスが開始されたライフシム『inZOI』。リアルなグラフィックでリリース前から注目を集めていた本作は、早期アクセスの開始から1週間後には累計販売本数が100万本を突破。記事執筆時点のSteamレビューでも17,528件中81%が好評とする“非常に好評”の評価を獲得し、好調な滑り出しを見せています。

本作にはNVIDIAのGPUに特化した機能がいくつか搭載されています。

その一つはNVIDIA DLSS 3とレイトレーシングを活用したゲームのパフォーマンスとビジュアルの強化。そして、もう一つはスマートZoi」と呼ばれる実験的なAI機能です。本作は生成AIを利用してNPCに命を吹き込むNVIDIA ACE技術を採用しており、機能をオンにするとゲーム内のキャラクターが周囲の環境にリアルに反応するようになるとされています。

本稿ではNVIDIAの最新GPUを搭載したPCを使用し、実際のプレイ体験に基づいてこれらの機能をご紹介します。

なお、本作のタイトルにもなっている“Zoi”という言葉はゲームに登場する個々のキャラクターを指す呼び名ですが、本稿では分かりやすさを優先して単に“キャラクター”と呼んでいます。

パフォーマンスはお手の物

まず始めに、プレイ中のフレームレートを測定してゲームのパフォーマンスを確認しました。今回使用したのは次のスペックを持つ最新ゲーミングノートPCです。

  • CPU:インテル Core Ultra 9 プロセッサー 275HX

  • GPU:NVIDIA GeForce RTX 5090 Laptop

  • NPU:インテル AI Boost

  • メインメモリ:64GB

測定時の条件は次の通りです。ゲームの設定を変更して最大FPSの制限を外し、どこまで高いフレームレートが出せるかを調べました。

  • NVIDIA DLSS Super Resolution:パフォーマンス(デフォルト値)

  • NVIDIA DLSS フレーム生成:オン

  • 最大FPS:制限なし

  • 垂直同期:オフ

実際の測定結果はこのようになりました。数値はスマートZoiがオフの場合で、オンにすると10~20fps程度変動します。また、屋外については周囲にキャラクターが多い場面ほどフレームレートが低下する傾向が見られました。室内は一人家族で測定した数値です。

  • 室内:160~180fps

  • 屋外:120~160fps

  • 建築画面:90~115fps

  • キャラクター作成画面:150~165fps

通常のプレイでは60fps以上あれば処理落ちが発生しないことを考えると、十分なパフォーマンスが発揮されていることが分かります。実際、スマートZoiを有効にしてプレイした場合でも処理落ちは見られませんでした。

自然な話し言葉で聞ける“心の声”

続いて、スマートZoi機能によって何ができるのかを具体的に検証していきます。

初めてスマートZoiをオンにする際は、グラフィック品質を一段階下げるかどうかを尋ねられます。今回はパフォーマンスに余裕があったため、そのまま変更しないことを選びました。

スマートZoiを有効にしてまず気づいたのは、キャラクターの頭上に時々現れる「本音」というボタンです。このボタンをクリックすると、キャラクターが今何を考えて行動しているのかがセリフとして表示されます。まさしくキャラクターの“心の声”が聞けるのです。

このセリフは単純なパターンの組み合わせではなく、自然な話し言葉として表現されます。これが生成AIを利用したスマートZoiの力なのでしょう。ゲームの将来像を感じさせてくれます。

本音ボタンは周囲に他のキャラクターや相互作用できる物が多いほど出現しやすく、一人の時よりも多人数で一緒にいる時、なにもない屋外よりも家具に囲まれた室内にいる時の方が頻繁に発生しました。

頭上に小さく見えるのが本音ボタン。キャラクターが動き回っている時は若干押しにくい。

残念なのは、このセリフが基本的に英語でしか表示されなかったことです。ごくまれに日本語のセリフが聞けることもありましたが、極めて例外的でした。

本作は現在早期アクセス中で、スマートZoi機能も開発途上の実験的な機能です。筆者がプレイした時の日本語ローカライズ進捗度は84%でしたから、スマートZoiはまだ対象外だったのかもしれません。将来の日本語対応に期待しましょう。

その際には、日本語特有の表現として、性別や年齢、職業などに応じたセリフの語尾変化もぜひサポートして欲しいところです。

指示を与えてロールプレイ

さて、スマートZoiで出来ることはこれだけではありません。まだ日本語に対応していないのは残念ですが、その真価を探るべくさらにプレイを続けました。

スマートZoiでは、AIに対して「キャラクターがどのように振る舞うべきか」を指示できます。生成AIに詳しい方にはプロンプト(指示文)を自由に入力できると説明した方が分かりやすいかもしれません。入力欄には最大100文字までの文章を記入できます。ゲーム側が用意していたサンプルは次のような文章でした。

この世界がすべて偽物だと、あなたは知っている。あなたは人間ではなく、AIだ――そしてその事実を他の人にも知らせたいと思っている。

まるで、どこかのSF作品のような設定です。筆者も真似して次のように入力してみました。

あなたは一週間後に人類が滅亡することを知っている。この事実を皆に知らせなければならない。

この状態で丸一日キャラクターの本音を観察しましたが、入力した設定が反映される様子はありません。どうやらAIに対する指示も日本語では上手く認識されないようです。

そこで、辞書を引きながら指示を英語に書き換えました。内容は前と同じです。

すると、今度はキャラクターの本音に影響が現れました。キャラクターが過酷な運命に悩んだり、現実から目を背けたりする素振りを見せ始めたのです。

日本語訳:これは現実?それとも私の考えすぎなの?たまには自分のことに集中した方がいいのかな。

手鏡をのぞき込み、過酷な現実から目を背けるキャラクター。リアルな人間らしい反応かも。

つぶさに観察していると、ゲームはキャラクターの周囲にある情報と与えた指示をもとに本音を生成しているように見えました。キャラクターが本を読もうとする時には、その本の種類と指示の内容を組み合わせて一つのセリフを作り上げるといった具合です。

日本語訳:どうして皆がいなくならなければならないの?この本に答えがあるかも。

同じ本でも漫画を読む時は笑いに救いを求めるようなセリフになった。

しかし、しばらく観察を続けても、キャラクターの“行動”には明確な変化が見られませんでした。指示には「皆に知らせなければならない」と書いてあるにもかかわらず、キャラクターが自発的に他のキャラクターと会話を始める様子はなかったのです。同様に、キャラクターが未来を悲観して怯えたり悩んだりする身振りを示すこともありませんでした。

人類滅亡が迫りくる中でもゲームをすることは忘れない。模範的なハードコアゲーマー。

そこで、もう一つ別の実験をしました。家族を作り、妹と兄にそれぞれ異なる指示を与えてどうなるのかを観察してみたのです。

妹:あなたは冷蔵庫にあった兄のプリンを勝手に食べてしまいました。

兄:あなたは冷蔵庫にあるプリンを妹と一緒に食べるのが楽しみです。

二人の間でプリンを巡る会話が発生することを期待したのですが、しばらく観察していても時々本音にプリンが登場する以外は何も起きませんでした。兄が冷蔵庫を開けることもありませんでしたし、プレイヤーが会話に介入して「好きなおやつを尋ねる」という話題を選んでも特に変わった行動は確認できませんでした。

プリンを気にするセリフは現れたものの、会話や行動につながることはなかった。

やはり、現在のスマートZoi機能はキャラクターの内面だけに影響を与え、行動は対象外なのかもしれません。今のままでも十分に面白い機能ですが、行動に影響を与えられるようになればさらに画期的な機能になりそうです。日本語への対応とあわせて今後の発展に期待したいところです。


『inZOI』は、PC(Steam)向けに早期アクセスを実施中です。


《FUN》

遊ぶより創る時間の方が長いかも FUN

元ゲームプログラマー。得意分野はストラテジーゲーム。ゲームライターとして活動する傍ら、Modの制作や有志日本語化に携わっています。代表作は『Crusader Kings III』の戦国Mod「Shogunate」。

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