いま、JR秋葉原駅でゲーマーなら思わず振り向いてしまうようなものが設置されています。それが、レトロゲームが入ったアーケード筐体です。
なぜ、駅構内にゲームが?これ遊んでいいの?いくらかかるの?いろいろと不思議が尽きませんが、この度Game*SparkはJR秋葉原駅に直撃取材を敢行。これを設置した担当者の方にもお話を伺うことができたので、この筐体の詳しい情報をお届けします。
ゲーセンじゃないのにアーケード筐体が!
アーケード筐体は、JR秋葉原駅の1F(電気街改札~中央改札の間)に設置されています。筐体は計3箇所あり、プレイできるのは2箇所、1箇所はサイネージとなっています。アーケード筐体は白と黄色をベースにした可愛らしいカラーリングで、「PLAY FOR THE FUTURE -AKIBA DONATION-」の文字が。4月7日にオープンしたばかりのエキュート秋葉原の施設の一環であることもわかります。

まずは、遊べる筐体を見ていきましょう。ここでプレイできるのは、『スペースインベーダーDX』など計3タイトルです。プレイするには、まず左側の縦長スクリーンで「START」をタッチして、アルファベット4文字で名前を入力。カードもしくは交通系IC決済でお金を投入します(※現金は非対応)。プレイは最低200円からで、500円、1,000円なども選択できます。

『スペースインベーダーDX』は、原初の『スペースインベーダー』4種類に、タイトーキャラがゲスト出演するパロディモードが収録された、まさにデラックスな内容のゲームです。
左右に動きながら徐々に下へと迫ってくるインベーダーを撃ち落とすというシンプルかつ削ぎ落とされた駆け引きは今でも素晴らしく、思わず熱中してしまうハズ。意外なところで遊べる高揚感も手伝って、数分の体験が非常に楽しいものになりました。

電気街改札付近にある筐体には、ゲームは入っていないものの、これまでプレイした人の名前や投入金額が記録されます。アーケードゲームで名前を刻むにはハイスコアを取らなければなりませんが、この筐体には全員記載されます。猛者に敵わず、あまりスコアを残せた経験がない筆者も、これでスコアラー気分?
このゲーム機って結局何なの?担当者に直撃!
さて、JR秋葉原駅でレトロゲームをプレイできることはわかりましたが、それではなぜ設置されているのでしょうか?気になった筆者は、エキュート秋葉原を運営し、このゲームの設置を仕掛けた株式会社JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニーの新事業戦略部 部長 播田行博(はりた ゆきひろ)氏を直撃。本筐体の設置意図などを詳しくお伺いしました。
――このアーケード筐体を置く目的は、ズバリ何なのでしょうか……!?
播田行博氏(以下、播田氏)当社がこの度エキュート秋葉原を作るにあたって、単に施設を作るだけでなく秋葉原文化とうまく組み合わせることを試みています。
ゲームは昔から秋葉原文化のひとつですから、それにふさわしいアイコンを設置できないかということで、ゲームを遊んで寄付ができるというこのプロジェクトを考えました。街とのつながりも意識しており、「PLAY FOR THE FUTURE -AKIBA DONATION-」に限らず、秋葉原の企業が製作しているロボットを導入するといったこともしています。
こういった色々なものをひっくるめて、秋葉原の入口としてワクワクや期待を感じさせるような施設にしたいという思いが、これらの発端になっています。
――なるほど。この筐体は秋葉原文化を盛り上げるプロジェクトで、投入したお金は寄付されるのですね。この寄付金はどういった場所に使われるのでしょうか。
播田氏主に秋葉原を盛り上げるようなイベントや、秋葉原の防犯・清掃に力を入れている団体に寄付されます。遊んでいただくことで、街の防犯向上や美化、イベントに使われて、秋葉原がより良くなっていくんです。
――遊ぶだけで意義のあることにつながるのは嬉しいですね。1日あたり何人くらいの人がプレイされるのでしょうか。
播田氏オープン以降は毎日50人から100人くらいの方が遊んでくれています。なにか目的を持ってきた人というよりも、ふらっと通りかかった人が「なんか置いてある!」と興味を示していただいているようです。そしてそれ以上に、見つけて、近寄って、写真を撮っていかれる方もたくさんいらっしゃいます。秋葉原の街の入口としての役割は今のところ達成できているのではないかという手応えを感じています。
――金額はどれほど集まるのでしょうか。
播田氏先ほどの数字ともリンクしますが、平均で1日あたり1万円を超えるような寄付が集まっている状況です。大半の方は200円でプレイされるのですが、1日に1人か2人くらいの方が500円で、1週間に数名くらいの方が1,000円を投入してくれています。自分たちのプレイが寄付になり、街の活性化につながるという趣旨を理解してプレイしていただいていて、大変ありがたいですね。
――プレイされるのは、レトロゲーム直撃世代の方が多いのでしょうか。
播田氏我々が思った以上に年齢層が幅広いんですよ。上は1978年当時に『スペースインベーダー』で遊んでいたくらいの世代の方が昔の腕試しとして楽しんでいるところも見て取れますし、腕に覚えのあるゲーマーの方が来ることもあります。
若い方も物珍しさで楽しんでいただいていますし、小さなお子様が「何あれ~」と親御さんと一緒に興味を示していただくこともあります。海外の方からの反応もいいですね!また、グループで楽しまれている方も多く、1人がプレイして、周りでプレイを見守るという楽しみ方をされていました。
――サイネージにネームエントリーを入れた意図はどういったものなのでしょうか。
播田氏ネームエントリーはアーケードゲームの重要な文化のひとつなので、なんとかして取り入れたいと思い導入しました。秋葉原の活性化につながることが特徴のひとつなので、名前を入れてそれが共有されるというアーケードゲーム文化と組み合わせる形で、自分のプレイが寄付になっているという実感を得られるよう表現しています。プレイが終わる頃にはサイネージに表示されているはずなので、体験した方はぜひサイネージを見に行ってください!
――ゲームと一口にいっても色々なものがありますが、アーケードゲームを選ばれた理由は何でしょうか。
播田氏今回のプロジェクトにあたって、駅や我々の施設はやや機能的になりすぎているなと感じていました。海外の駅や空港はちょっとしたメダルゲームやピンボールなどが置いてあったりするのですが、日本ではそういった遊びの部分――場合によってはちょっと無駄な部分――がないと思うんです。
そういった意味で、ゲームの聖地である秋葉原にゲーム機が置いてあったら、特別な体験になりますよね。
――搭載されているゲームはどれもレトロなものですよね。こちらは選定基準などあるのでしょうか。
播田氏秋葉原の“聖地”としてのイメージを考えると、やはり新しいものよりもレトロなほうがいいのかなと思います。秋葉原にはタイトーさん運営のものをはじめいくつもゲームセンターがあり、そこで最新ゲームからレトロゲームまで楽しめます。我々の施設では、まずは取っ掛かりとしてレトロゲームを楽しんでいただいて、ゲームの街でゲームを遊ぶということを体感する機会を楽しんでいただこうと思いました。
今回選んだ作品は、どれも懐かしいと思えるような、有名なものを選びました。中のゲームは入れ替えできるようになっているので、様子を見つつ導入するタイトルや定期的な入れ替えを実施したいと思っています。
――既存のアーケード筐体とは違った可愛らしいデザインが印象的です。こちらのこだわりを教えて下さい。
播田氏デザイン関係では2つ意識していることがあります。1つは「存在感」で、ある程度目立つ見た目にしています。こそっと置いてあってもよくわからないものになってしまうので(笑)。
ただ、エキュート秋葉原の施設の一環としてやっているので、それから逸れたデザインにしても意味がありません。街を盛り上げる要素のひとつになるよう考えつつ、エキュート秋葉原の雰囲気とうまくマッチするように工夫しています。サイネージに流れている映像も、秋葉原らしい雰囲気に仕上がっていると思います。
――大変魅力的なプロジェクトですが、やはり人前でゲームを遊ぶのは恥ずかしいと思う方もいると思います。そういった方に向けて、アピールがあればお願いします。
播田氏私自身もプレイしたのですが、思ってた以上にうまくできなくてびっくりしました(笑)。ただ、この筐体の目的は人にプレイを披露したり、上手い下手を競ったりというよりも、「ゲームの聖地 秋葉原でプレイする」という体験自体を楽しんでいただきたいと考えています。
弊社の社員の言葉をそのまま借りるのですが、昔のゲームっていざプレイしてみると思ったより難しいんです。でも、クレジットを消費して終わりなのではなく、これが寄付されて街の活性化につながると思えば、これは終わりじゃなくて始まりだよね!……と上手いことを言っていました(笑)。そういう観点で考えると、もし早くゲームオーバーしたとしてもプレイすること自体に価値があるので、ぜひ気軽に楽しんでください。
――ありがとうございました!
アニメやゲームなど、オタク文化に触れ合うために訪れる人も多い秋葉原。そんな場所の入口であるJR秋葉原駅では、街の活性化につながるという新しい形でゲームという文化と触れ合うことができました。これからのGW、立ち寄った際にはぜひ1プレイ遊んでみてはいかがでしょうか。
SPACE INVADERSTM & © TAITO
※UPDATE(2025/05/05 20:48):記事中の誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。