敵を倒すのではなく、「自分の欲」と向き合うゲームがあります。
現在HayaseWorksが開発中の『InfinityMine』は、「掘って、売って、借金を返す」というサイクルを軸にした採掘経済ローグライトです。地下に潜り、鉱石を持ち帰り、日々変動する相場を見ながら借金返済を目指していきます。

今回は、本作を個人で開発するHayase氏に話を伺い、敵のいないローグライトという設計思想や、採掘と市場を組み合わせたゲームデザイン、さらに個人開発者を悩ます海外コミュニティで売り方についても語っていただきました。
――自己紹介をお願いいたします。
Hayase:個人でインディーゲームを開発しているHayaseと申します。Unreal Engine で、自分がゲーム内のプレイヤーだったらという没入体験を重視したゲーム開発を行っております。
現在は採掘経済ローグライト『InfinityMine』を個人で開発中です。
――『Infinity Mine』を改めて紹介してください。
Hayase:「掘って、売って、借金を返す」というサイクルを繰り返す、採掘経済ローグライトです。
――ローグライトを掲げつつ、敵を出さず、採掘体験に絞り込んだ理由を教えて下さい。
Hayase:「リソース管理」と「環境の恐ろしさ」にプレイヤーの意識を100%集中させるためです。
戦闘要素を入れると、どうしてもアクションゲームとしての反射神経やセンスが問われてしまいます。本作で体験してほしいのは、物理的な敵に対する恐怖ではなく、「酸素の低下」「限られた借金返済への時間」「いつ発生するかわからない環境ハザード」といった、ジワジワと迫りくる環境の恐怖です。
その恐怖を乗り越え、自分の判断が良い結果を生んだ時に感じる喜びを味わって欲しいと考えています。
――相場や借金に追われ、欲をかけば全ロストという緊張感のデザインは、どのような発想から産まれましたか。
Hayase:プレイヤー自身の「欲」を最大の敵にしたかったというのが出発点となります。
一般的なゲームでは、理不尽な敵や初見殺しの罠など「ゲーム側にせい」にできる要素がありますが、本作においては、全ロストや借金に飲まれて人生を終えることの引き金となるのは「プレイヤー自身の判断」となるように設計しています。
体力も少なく時間の制限も迫ってきている中、目の前に高価な鉱石を見つけたプレイヤーは「あと1つだけ」という非合理的な考えを持ってしまいます。その欲張りの結果に、落石に当たり体力が尽きてしまったり、24時を過ぎてその場で倒れ込み、今日の採掘成果をすべて失ってしまったりします。この「自分の判断が失敗を招いた」という後悔の体験こそが、最もプレイヤーの感情を揺さぶり、次のプレイへの渇望を生み出すと考えてこのシビアな世界観を作りました。
――ゲームベースは採掘ですが、かなり投資的なシステムが肝になっていることがわかります。このような体験をゲームにしようとした理由を教えて下さい。
Hayase:ただ掘って強化するだけの作業ゲームにしたくなかったことが一番の理由です。
苦労して持ち帰った鉱石が、翌日の相場暴落で鉄くず同然になることもあれば、逆に倉庫で温めていた石が突如高騰することもあります。「採掘の体験」だけではなく、「市場を読む体験」の両方が求められることで、より高度なプレイ体験への戦略が生まれると考えています。

――採掘の気持ちよさへのこだわりを教えてください。
Hayase:UE5の物理破壊を活用した「地面を堀って鉱石を砕く感触」と「自ら整音している音響」です。
環境音やつるはしの打撃音は、ASMRのように耳に心地よく、かつ破壊の重さや地下のどんよりした雰囲気を感じられるようにこだわって整音を行っています。
――鉱石は売る以外に、どういった用途があるのでしょうか。
Hayase:より深く潜るための「ツルハシのクラフトや、特別な力を与えるアーティファクトの強化」に不可欠です。プレイヤーは、より良いつるはしをクラフトするか、今日の借金を返すために売るか という選択を迫られます。
――20種類まで拡張された鉱石には、それぞれどのような役割がありますか。
Hayase:安定して少額を稼ぐことができる鉱石や、相場の変動幅が大きい鉱石など深く潜るリスクに合うリターンを生む役割があります。
そして特定のつるはしをクラフトするために必要な鉱石や、つるはしの耐久度を回復することができる鉱石など換金価値よりも採掘活動を続けるために必要な鉱石も存在します。
これらはすべてランダムな生成の中でも、最も見つかる可能性が高い階層、フロアが存在します。
今資金が必要なのか、クラフトの素材が必要なのか取捨選択するという戦略性を生むための重要な要素となっています。
――「まだ持てるかも」とついつい欲をかいてしまうシステムになっているようですが、プレイヤーの油断や欲を煽るデザインはどういったことを意識していますか。
Hayase:プレイヤーの「重量制限」を非常にシビアに設定しています。目の前に高価な鉱石があるのに、バッグは重量制限でこれ以上持つことはできない。しかし、次のつるはしをクラフトするためにはバッグにある鉱石を持って帰らなければいけない。 という葛藤を意図的に引き起こすような設計とバランス調整を行っています。
――プレイヤーに敵を作らずともスリルをあたえる体験を作るにあたり、意識していることを教えて下さい。
Hayase:「環境ハザード」「時間」「大量の借金額」です。プレイヤーは大量の借金を返すことが、最大の目的です。ですが、時間は有限で24時にプレイヤーは疲れて、その場で眠ってしまいます。この借金返済と時間の制限が、プレイヤーの脳内を埋め尽くします。
加えて早く帰りたいのに、予期せぬ落石などの環境ハザードがプレイヤーの進行を阻みます。このようにプレイヤーの思考を多方面から圧迫し、判断を間違えることが自分を苦しめるような設計になるように意識しています。

――ローグライトとしてのリプレイ性は、どこで担保していますか。
Hayase:一番の鍵は、「日替わりで変動する相場」と「欲をかいてロストした時の強烈な悔しさ」がもたらすサイクルになります。
本作は、クラフトや資金稼ぎなど採掘目的によってプレイヤーの目標とプレイスタイルを変化させる必要があります。デッキ構築をはじめとするほかのローグライトゲームでは、シナジーを軸にしたゲーム性が多いため良いビルドを組むことが1つの目標になると思います。
本作は、「よりよいビルドを求めて次のプレイ」をするリプレイ性ではなく、「自分の行動と判断を改善して次のプレイ」をするリプレイ性を担保しています。
デッキ構築型のローグライクが、「美しい数式をくみ上げる知的なローグライト」とすると、『InfinityMine』は「欲にまみれながら、リアルタイムに命と金を天秤にかける肉体ローグライト」です。
もし欲張って全ロストしてしまっても、理不尽な死ではなく自分自身の判断ミスが原因なので、「次はもう少し早く引き返そう」「あと少しお金を貯めて、あの新しいツルハシさえ作れれば絶対に巻き返せる」という強いリベンジ欲求が湧き上がります。
この「状況の変化」と「悔しさからの再挑戦」が噛み合うことで、ついつい「あともう1日だけ」とプレイを繰り返してしまう中毒性を担保しています。
さらに、プレイヤーの記録や記憶は採掘人生を繰り返しても消えません。採掘労働で身についた採掘経験値は、次の採掘人生でも引き継がれるため100日という長い道のりですが、「強くてニューゲーム」が可能となっています。
――RedditのGameDevサブレディットで大きな反響があったそうですが、投稿した内容はどのようなものだったのでしょうか。
Hayase:「日本と海外でゲームを売るためのマーケティング手法にどんな違いがあるのか」という内容でした。
日本では依然としてXの力は非常に強力です。日本では現在でもメディアによる文字のある広告が有用ですが、海外ではYouTube ShortsやTikTokといったショート動画ベースの広告が非常に好まれます。特に海外では、インフルエンサーマーケティングの効力が高い印象を受けました。
配信者にプレイしてもらうことが最大の広告になるという意見が多く、広告ターゲットの地域で有名な配信者にアプローチをかけていくことが重要であるという総評でした。
――投稿後のSteamウィッシュリストなどの影響はいかがでしたか。
Hayase:結論から言うと、 ストア公開1週間後は日本シェアが95%でしたが、Redditでの投稿後はストアページの訪問数は日本と欧米が同じ比率となりました。議論ベースの投稿ですが、私のゲームに興味を持った方がRedditからSteamへアクセスしていることがデータから読み取ることができました。
加えて、海外の人向けのストアページに改善するためのアイディア案をいただき、GIFの追加や、理解しやすい表現で伝える改善をしました。その結果、欧米、特にアメリカユーザーからのウィッシュリストが顕著に増加しました。
――海外向け戦略に悩む国内開発者は多いと思いますが、彼らに向けての助言を教えて下さい。
Hayase:大きな成功とはいえる個人での成績はないですがいくつか考えていることをお伝えします。
インフルエンサーマーケティングは避けては通れませんし、英語での宣伝は必要になることが多いです。ですが、言語の壁があり、テキストで直接魅力を伝える事は難しいです。
言語の壁を乗り越えるのは「ビジュアルと音」です。ASMRなどを代表として、日本だけでなく海外でも音からの情報は強い印象を与えることができます。数秒間のGIFや、短い動画で「手触り」を伝えることが大切だと感じます。
日本人の謙虚さに慣れていると、海外からの反応は否定されているように感じることが多いかもしれません。開発者として透明性を持って積極的に対話し、もらった意見をかみ砕いて感情要素ではなく、その裏にある事実要素を理解して取り入れることが大切だと考えています。
――シネマティック映像を公開したとのことですが、どういった経緯で制作に至りましたか。
Hayase:現時点で実際のゲーム画面だけでは、「地下の孤独感」や「鉱石を見つけたときの嬉しさ」は伝えきれないと考えたからです。
「プレイヤーの選択が未来を決める」ことを直感的に感じていただくためのフックとして制作しました。
――シネマティック映像は具体的にどんな影響をもたらしましたか。
Hayase:SNSやストアページのクリック率が向上しました。すでに私の作品を知っている方以外からも、一定の社会的信頼を獲得することができ、ウィッシュリストの増加に繋がったと分析しています。ゲームプレイのトレーラーと合わせて、ある程度ゲームのストーリー性を伝えられたと感じています。
――最後に、興味を持つユーザーに向けてアピールコメントをお願いします。
Hayase:この『InfinityMine』は、物理的な敵は出ないからといって単なる作業ゲームではありません。本作における最大の敵は「あなた自身の欲」です。
膨大な借金の返済が迫る中、「もう少しだけ掘ろう」という欲に飲み込まれないように、冷静な判断をとることができるか。あなたの判断力が試される、ヒリヒリとした採掘サバイバルになっています。
もちろん、地面から埋まったレアな鉱石を見つける瞬間や、未知のダンジョン部屋を見つけた時の喜びは格別です。それを無事に持ち帰り、日々変動する相場を見極め、「一番高い時に売る」までがこのゲームの本当の戦いです。
近日中に序盤の面白さを詰め込んだデモ版を公開予定です。あなたが自分の欲をコントロールして、借金地獄を抜け自由を手にできるか。過酷な採掘労働を準備してお待ちしております。
ぜひSteamでウィッシュリストに登録して、挑戦への切符を手に入れてください!
『InfinityMine』は、PC(Steam)向けに配信予定です。






