
『首都高バトル』新作や『マリオカート ワールド』など、近年にわかに盛り上がりつつあるレースゲームジャンル。その中でも、2023年10月のSteam NEXTフェスにて日本の架空の県を舞台にしたことで話題を呼んだ『Japanese Drift Master』がいよいよ発売されます。
『JDM: Japanese Drift Master』(以下、JDM)は、ポーランドのGaming Factory開発によるオープンワールド要素があるシムケードなレースゲームです。これまで弊誌では体験版を使った特集記事を公開するなど取り組んできました。今回は発売少し前に触れる機会に恵まれたため、ゲーム序盤から体感できたプレイレポをお届けします。
なお、今回のプレイレポでは現用OSに対応したハンコンを所有していないことから、Xbox Oneパッドでのゲームプレイによるレポートとなります。
ポーランドからやってきたトウマとなりレースで成り上がれ!
『JDM』はストーリー要素もあるオープンワールドレースゲームです。プレイヤーは、ポーランドから日本へやってきたドライバーのトマシュ・スタノフスキことトウマを操作し、峠などを舞台としたレースで勝ち上がるというもの。ゲーム起動時のメインメニューは、オプション設定やバグレポートなどが可能で、それ以外のカスタマイズなどはメインミッションの進行具合によって順次開放されます。


ストーリーは漫画形式で語られますが内容は堅実なもので、トウマが父を失ったことによる失意からレースシーンでトラブルを起こしてポーランドを去り、日本において再びレースの世界に入り信頼を得るものとなっています。
ゲーム序盤である第1章は、サーキットや公道を舞台としたドリフトバトルが中心です。日本にやってきた主人公トウマは、「ターボ寿司バー」の宅配ドライバーとして働きつつ、様々なレースに出場することになります。状況を説明する序章であることは間違いないですが、漫画を通じて描かれるストーリーはなかなか興味深いものでした。



早速、車を運転して埼玉でも群馬でもない、群玉県の山道や田舎道を走ってみると、思った以上に日本っぽく作られていることが好印象です。マップ上に現れる看板のテキストこそ凝視すると違和感があるぐらいで、植生や地形、道路標識、路面標示などのリアリティは一見してかなり高いと思えます。
本作に登場する車はホンダやマツダなどの実メーカーが中心ですが、トヨタ車がない代わりにAE85風のオリジナルカーが登場。自車を手に入れてカスタム出来るようになると、ゲームプレイの幅が一気に広がる印象です。


ドリフトの難易度等については後述しますが、初見ではドリフトに適した設定に気づきにくく、操作に慣れるのも一苦労しました。しかしながら、チュートリアル的な教習所も存在しており、ドリテクの習得だけでなく一般的なグリップ走行でサーキットを攻めるカリキュラムや、ドラッグレースにおけるアクセルワークも学べます。


第1章はレーサーとして周囲の人達から信頼を得るストーリーとなっており、群玉県北東にある灰火丸(はいかま)湖周辺で展開されます。続いての第2章からは南西の市街地である市殻でも繰り広げられると共にサーキットでレースも行われるため、ストーリーが本格的に動き出していく印象を受けました。カーカスタマイズの解説は、第2章で説明されるため、より早く解説して欲しいところではありましたが、絵とセリフによって解りやすくなっているのが嬉しいです。
カーカスタマイズは、マフラーの交換やタイヤの調整だけでなく、車の外装やハンドルやシフトレバーなど車内インテリアにも及んでいることから、シム的だけどアーケードライクでもある、まさしくシムケード的な作りであると感じました。



シムとアーケードの中間に位置する『JDM』
本作は、シミュレーターとアーケードスタイルの中間のリアリティを指す合成語「シムケード(simcade)」を自称するカーレースゲームで(シムケード自体は2010年代にユーザー間でも使われていた)、シミュレーターほどのシビアで繊細な操作を求められるわけではありませんが、かといってアーケードスタイルほど簡単過ぎない操作難易度に落ち着いています。
接触等による車の破損表現は無く、ペナルティもそこそこで、例えが古いのですが第一印象としてはマイルドになったコードマスターズの『Race Driver GRID』というところ。

またドリフトがテーマに挙げられているだけあって、ドリフトの制御自体は難しいです。速度が出たらハンドルを切りサイドブレーキを効かせて、スピンしないようにカウンターステアを当てつつアクセルの強弱含めたハンドル/アクセルワークで調整します。
また一度発動したドリフトを持続させるには、オプションでアシストのABSとESPを切っておかなければなりません。プレイ当初あまりにもすぐドリフトが終わってしまうため、どうしてかと考えたところ、このABSとESPが原因だと睨み、設定を切ってドリフトバトルに挑んだら難なくドリフトが継続でき勝利に必要なポイントを稼げた……なんてこともありました。

一方で通常の加速や減速、ハンドリングで行うグリップ走行は素直で制御しやすい印象です。サーキット上のレースではグリップ走行も有効な手段となるので、ABSとESPを有効にすると滑りにくく比較的安定して攻められます。
アシストのABSとESPは、サーキットのレースや、街乗りを含めた目的地への移動だと有効にしておいた方が負荷も小さく運転できるため、必要に応じてON/OFFするのが良いでしょう。


またオプションで設定出来るドライビングモデルは、シムケードとアーケードの2種類が存在します。パッドだと体感では、両ドライビングモデルの違いはあまり感じられませんでしたが、若干アーケードの方が制御しやすい印象を受けました。
日本っぽさに溢れた架空の“群玉県”にうっとり
本作が舞台とするのは、日本の架空の県“群玉県”。弊誌のインタビューにおいて語られたことでは、開発者の何人かが日本を訪れて調査したことがあるとのこと。その甲斐あってか、どことなく榛名山周辺を思わせる、日本の山道や田舎道的な特徴を上手く表現しています。
山道へ入るための何気ないカーブや岸壁の落石防止工事の跡、電柱と電線、電灯の間隔など普段意識することのない構造物が上手く再現されていることに驚きを覚えます。


マップの外周を走る高速道路は、入り口に料金所が無いのが残念だったものの(形だけでも入れて欲しかった)、長大な道路から見える景色は日本的なものをしっかりと再現しており、どこを走っても気持ちが良いものとなっています。


また山間部だけでない都市部や住宅地の再現度も高いことも驚きました。住宅地を走る風景はまさに日本的な特徴を上手く汲み取っており、街灯の形から道路標識の配置、歩道と車道を分けるガードレールの形状、町中に置かれた自販機などなど、「近場を走っているみたいだ」と思う部分が数多くありました。
もちろん、都市部だけでなく港湾近くにある物流拠点や遠方の小さな町などなど数え切れないほど楽しいスポットが沢山あります。



一方で街中にある信号機は、中央の黄色が点滅するのみなので寂しさを感じましたが、運転中にはウィンカーを点けられるため(ハザードランプも点滅できる)、交差点で一時停止の後に進行方向へ点けたり、交差点で曲がろうとした時にとまってくれた車に対してサンキューハザードをしたりなど…、ゲームプレイと直接関係がないカーライフ的な遊び方も出来るのが嬉しいところです。
峠でのカーバトルやサーキットを中心としたカーレースだけでなく、延々とドライブするだけでも楽しい、まさに車が主役のオープンワールドゲームに相応しい内容となっていました。



カーレース、オープンワールド、ストーリーがバランス良く詰め込まれた『JDM』
”群玉県”という架空の土地やこれまでのユーザーの反応から、実際に遊ぶまで色モノな印象が強かった『JDM: Japanese Drift Master』ですが、今回プレイしてみると看板のデザインや文字表現はともかく、少々甘い部分があるものの堅実に日本の道路や街並みを再現したマップ構成や、ストーリー要素も含めかなり完成度高く作られていたタイトルでした。

また、レースやドライブを楽しませてくれる収録楽曲も忘れてはなりません。カーラジオとして収録されている曲の半分は体感で日本語楽曲が多い印象です。特にゲーム内ラジオ局の1つ「J-Music」は、体感で昭和から平成までの雰囲気を持つ曲が多く流れるため、プレイ中についつい聴いてしまうほどです。
『JDM』はハンコンで遊んでも良いですし、パットでも十分にプレイ出来るよう調整されていることから幅広いプレイヤーが手に取りやすいタイトルに仕上がっています。もちろんストーリーそっちのけで群玉県内を走っても楽しいドライブ体験を得られるでしょう。
『JDM: Japanese Drift Master』はPC(Steam、EGS、GOG)向けに配信中です。
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