かつてはさまざまなビデオゲームを発売し、現在はジグソーパズルやカードゲーム、それらの雑貨などを販売していることで知られる「やのまん」。同社はRPG『アレサ』シリーズ35周年を記念するサウンドトラック発売と、初のトークライブを行うことを明らかにしています。
これだけでも嬉しい話なのですが、その少し前の2025年5月頃から同社公式Xアカウントにて、さまざまなゲームの資料などを“発掘”していることを発信しています。その一連の情報の中で、ひとつのゲームの気になる情報を発信していました。未発売だったPS版『フェーダ・リメイク!』のサンプルロムおよび開発機が発掘されたというのです。
筆者はクライマックス(および関連会社)の初期のゲームが大好きで『ランドストーカー』や『シャイニング・フォース』シリーズなどの作品に大ハマリしていました。『フェーダ』 もそのひとつで、これまでさまざまなシミュレーションRPGを遊んできた記憶の中に残る作品として燦然と輝いています。
そこで、本稿では『フェーダ』および『フェーダ・リメイク!』の魅力を紹介していきたいと思います!

『フェーダ』シリーズとは
『フェーダ(FEDA : The Emblem of Justice)』は、1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売されたシミュレーションRPG作品。開発はクライマックスの関連会社であるマックス・エンターテイメントが行っています。
本作のキャラクターデザインを務めていた玉木美孝氏(2023年逝去)は、これまで『シャイニング』シリーズや『ランドストーカー』『レディストーカー』『アランドラ』など多くの作品を手がけています。玉木氏の生み出した多くのキャラクターは、ゲームの世界をとても魅力的に描き出しています。



『フェーダ』の舞台となるのは、ヒューマンとウルフリング・エルフ・ドラゴニュートなどの亜人類が暮らす大陸ミルドラス・ガルズ。長らく平和を保っていた大陸は、ヒューマンと亜人類間で勃発した大戦「ミレニアム・ナイトメア戦役(千年戦争)」によって混迷を極め、やがて亜人類側の繰り出した古代兵器によってヒューマン側が敗走します。物語の舞台は、亜人類勢力バルフォモーリア軍の勝利に終わった千年戦争終結後の世界です。
本作では、そんなミルドラス・ガルズ辺境の地スクーデリアにて、帝国の治安執行部隊として働く主人公ブライアンが、罪なき人々を手に掛けようとする上官に逆らい、同僚アインとドーラと共に脱走した事件から、やがて世界を巻き込むような大きな戦いと運命に立ち向かう物語が描かれます。



1996年にはセガサターンにて、リメイク版『フェーダ・リメイク!』を発売。1997年にはシリーズ続編となる『フェーダ2(FEDA2:WHITE SURGE the PLATOON)』がプレイステーション向けに発売されています。



部隊を率いて勝利を目指すSRPG
『フェーダ』はブライアンと仲間たちが1つの部隊として世界を移動し、戦闘を繰り返しながら物語を進行していく方式です。戦闘はいわゆるターン制シミュレーションRPGなのですが、各ターンごとに敵味方がまとめて行動するわけでなく、それぞれの陣営が交互に行動するというシステムが採用され、敵の攻撃への反撃は行いません。
このシステムはとてもユニークで、ゲーム内では「ユニットが簡単に倒されない、囲まれない」ことが特徴です。例えば一人のユニットを前に出しても、まず敵が1人行動し、その次は味方が行動することになるので、簡単に連続攻撃されないのです。もちろんお互いのユニット数の差などによっては連続でターンが来ることもあります。





多彩な種族が仲間になる本作は、それぞれ移動性能や武器が異なります。セントールや鳥人族なら高い機動性能を誇りますし、リザードマンであれば頑強さで部隊をサポートできます。戦闘では10体まで出撃できるので、育成やバランスなどを考えて部隊を編成していきましょう。
ユニットによっては通常攻撃だけでなく、MP消費で魔法や必殺技などの特殊攻撃も発動可能。本作は必殺技が非常に強力で、大ダメージを与えたり、範囲ダメージを与えたり、敵を麻痺させたりと、さまざまな場面で活躍します。ボス戦や手強い敵を倒すときなどは、必殺技を上手く運用するかどうかで自軍被害は大きく変化します。


オリジナル『フェーダ』では必殺技は一部キャラクターのみ使用可能でした。『フェーダ・リメイク!』では、これまで必殺技が無かったユニットも新たな技を習得していて使用感も変わっています。




殲滅するか、目的を目指すか。変化する「リブラ値」
各戦闘では「敵を全滅させる」「指定エリアまでいく」「数ターン耐える」などのミッションが提示されます。その戦闘結果は「リブラ値」と呼ばれる部隊評価に影響を与えます。不要な血を流すかどうかで「ロウ」「カオス」へと属性(称号)が変化し、加入する仲間やエンディングが異なっていきます。
もしも「ロウ」属性を目指すのであれば、敵をなるべく倒さずにミッションを遂行することが大切です。本作はユニットごとに敵の攻撃優先度があるようで、特に主人公ブライアンと相棒アインは他の味方ユニットが近くにいたとしても敵が優先で攻撃してきます。これを利用した囮戦法が重要です。




ブライアンは防御力や体力も育ちやすいので、回復アイテムを持たせれば安定した囮として活躍します。このAIの特性もあり、シミュレーションRPGとしては比較的遊びやすい作品です。なお、ブライアンとアイン以外はもし倒されても、キャンプから「捕虜収容所」で特殊ミッションをクリアすれば復帰可能です。
ミッション達成クリアの場合は部隊全員に経験値が入りますし、ミッションを無視して敵の全滅を狙えば個別にキャラクターを鍛えることもできます。必要以上に戦わなくても経験値が入るシステムなので、プレイスタイルによって育成が大きく不利になることはありません。フリーバトルもありますが、不要な戦闘はリブラ値を下げてしまうのでロウプレイでは注意しましょう。





ちなみに属性の変化によっては仲間が離反してしまうことも。基本的にロウ/カオスで加入した仲間はその属性でいる限りは抜けることはないので、半端なプレイが一番危険です。もちろん何があっても離反しないキャラクターも多いので、それでも十分戦えますよ。




戦乱の中で描かれるドラマ
本作の主人公ブライアンは、かつて千年戦争で活躍して“ファウストの亡霊”の異名を持つ男。先の大戦で敗走したヒューマン種族でありながら、帝国で治安執行部隊の小隊長として働いていたブライアンは、地区の総督と上官の非道な作戦に逆らい、脱走兵となったことで数奇な運命へと巻き込まれます。
ブライアンとアイン、ドーラの3人は序盤は帝国の追走から逃げる脱走兵として戦い、やがて帝国と戦う解放軍と出会います。その先には帝国と関連人物による恐るべき陰謀や策略へと立ち向かう戦いや、さまざまな仲間たちとの出会い、そして部隊の属性による結末の変化などが待ち受けています。





ゲーム内ではエンディング以外に大きな分岐はありませんが、属性による加入仲間とミッション変化はあります。例えばゲーム序盤にロウ属性だと加入する回復ユニットがいるのですが、カオス属性側だと彼女のいる村が襲われて行方不明になってしまい、その後の戦闘でも少しミッションが変わってしまうのです。




序盤では帝国に加担していたブライアンの“清算”などの心情が語られます。主人公達3人が元軍人であることで、会話もかなり渋いのも印象的で『フェーダ・リメイク!』では林延年さんや郷里大輔さん、銀河万丈さん、皆口裕子さん、小森まなみさんなどなど、超豪華声優陣によるカットシーンが流れるのも嬉しいですね!



『フェーダ』はミッション達成内容で変化する主人公たちの属性など、単純に敵を撃破するだけではないシステムが大きな特徴です。ターゲットの優先順位や捕虜収容所などにより、シミュレーションRPGとしてはやや簡単な要素もありますが、自由に好きなキャラクターを活躍させられるのは嬉しい部分です。
続編『フェーダ2』では前作から8年後の物語が描かれます。『フェーダ』に登場したキャラクターも多数登場し、それぞれの立場で戦いを行うことになります。実は、同シリーズにはさらなる続編の構想もあったようなのですが、その後、やのまんがビデオゲーム事業から撤退していることもあり、残念ながら現在まで実現に至っていません。


今回の“幻のPS版”の発見はシリーズファンの筆者にとって、まったく知らないものだったので驚くことばかりでした。『アレサ』が35周年で展開を見せるのは喜ばしいことです。『フェーダ』も今後何かしらの展開があれば、本当に嬉しいですね!


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