7月20日まで京都・みやこめっせにて開催された大規模インディーゲームイベント「BitSummit the 13th: Summer of Yokai」。その3階ブースにて、ひとつの新パブリッシャーが登場しました。
その名も、「Black Lantern Collective」。設立したばかりなのに、なんと8タイトルも出展するという気合の入りぶりです。これを仕掛けたのは一体何者なのか……!?本記事では、代表へのインタビューをお届けします。
熱狂的ホラー好きによる新パブリッシャー!

――自己紹介をお願いします。
テッド・ヘンチキ(以下、テッド):Black Lantern Collective代表のテッド・ヘンチキ(Ted Hentschke)と申します。ワールドワイドに面白いホラーゲームを見つけて、パブリッシングしていきます。
――新しくパブリッシャーを立ち上げた理由を教えて下さい。
テッド:お金がほしいからです!!……冗談です(笑)。
まず私の経歴を説明すると、実験的なホラーゲームを取り扱うDreadXPを立ち上げた後、当時まだホラーを扱っていなかったCRITICAL REFLEXで『Mouthwashing』や『Buckshot Roulette』を世に送り出しました。
他社を悪く言うつもりは一切ありませんし、仕方のないことなのですが、ホラーで成功した会社は儲かるという理由でどんどんホラーをやって、ホラーがそれほど好きじゃない人たちも入ってくるんですね。ただそれが進むと、判断力が鈍っていくという側面もあります。
そこで弊社では、三度の飯よりホラーが好きな連中を集めて、ただひたすら、永遠にホラーをやっていきたい……そんな思いで立ち上げました。

――Black Lantern Collectiveという名前はどういった意味があるのですか。
テッド:ギリシャ神話で「三途の川」にあたる「ステュクスの川」というものがあるのですが、そこをわたる船乗りが持っている提灯がブラックランタンなんです。
その船乗りは死の世界に人を導くので、すごく悪いイメージを持たれがちなのですが、別に全く悪くもなんともない存在です。
むしろ、別世界に導くという役割を持っていて、自分も船乗りのようにホラーの世界に導きたいというところから、この名前がつきました。
「コレクティブ」については、“組合”のような意味があるのですが、既存のパブリッシャーと開発者のような上下関係ではなく、お互いにフラットにやっている会社なんです。
契約している開発者さんは皆同じDiscordサーバーに入っていて、常にお互いのプロジェクトを見られる状況にある。その中でコメントしたり、フィードバックを与えたり、お互いを支え合う関係になっていることから、「コレクティブ」とつけました。
――Xアカウントのプロフィールには、「Publisher and Developer」と記載がありました。Black Lantern Collective自身もゲームを作っていくのでしょうか。
テッド:はい!社内開発プロジェクトは、9月頃に情報をお出しできる見込みです。
――テッドさんの好きなホラーゲームを教えて下さい。
テッド:1本に絞らなければならないのなら、Frictional Gamesの『SOMA』ですね。

私が思うインディホーラーゲームの素晴らしいところは、そのひとつひとつがアマチュア作品であることです。何が怖いかは人それぞれであり、それを具体化したものがゲーム体験に落とし込まれるので、作品ごとにまったく体験が異なるのです。
そもそも「ホラー」には定義がなく、少人数のチームで作り上げるアート作品としてどのゲームも楽しんでいますし、弊社は私自身が遊びたいゲームしかパブリッシングしません。
――情熱を感じる会社方針です。ユーザー目線では、どういったところに期待できるでしょうか。
テッド:弊社のメンバーは全員ホラー好きなので、「これをもっとホラーコミュニティに広めたい!」という情熱で作品を選んでいます。
他の会社に感じているのは、やはりゲーマーを数字として見てしまうところなんですよ。ウィッシュリスト数がいくつだとか、コンバージョンレートがどうとか。
そういったことばかり意識していると、パブリッシュするゲームを変わった目で見なければならないんです。でも、弊社は「これ面白いじゃん!もっといろんな人が遊べるようにしよう!」という純粋な目的で活動しているので、これからも面白いホラーゲームをどんどん出していきます。

――パブリッシングタイトルの中には、純粋な恐怖だけじゃなく、コメディやロマンス要素のある『Sucker for Love: Crush Landing!』のようなタイトルもありました。こうしたタイトルも扱う理由は何ですか。
テッド:ただ純粋に「怖い」ものだけだとやはり限界があります。映画など他媒体でもそうなのですが、最初から最後までずっと怖さを維持し続けるのは非常に難しいんです。
常日頃考えていることなのですが、ユーモアとホラーって実は紙一重なことが多いんです。例えば映画「ファイナル・デスティネーション」はみんな次々に死んでいく怖い映画なのですが、死に方を見てみると「こんなんあるわけねーだろ(笑)」みたいな突拍子もない面白さがあったりします。

なので、ホラーとユーモアをはじめとした他のジャンルをミックスすることは、それが自然な形なのではないかと思います。ホラー×家族、ホラー×恋愛、ホラー×お金など、いろんな分野に広げることで、恐怖の表現も広がっていくと思います。
――今後はどのようなペースで作品を展開していきますか。
テッド:今回は8本展示していますが、現在10数本のタイトルを仕込んでいます。年内には5本ほどリリースできると思います。来年以降は毎年6本~8本出せたら良いかなと計画しています。
――日本のユーザーのことをどう考えていますか。日本語対応についてもお聞かせください。
テッド:日本を特別扱いしているわけではありませんが、やはりホラーの歴史がある国なので、当然ホラーファンも多いと思います。
弊社のタイトルはグローバルに展開していきたいので、多言語に対応していく予定です。
――ホラーは映画や小説、漫画などでも人気ですが、ビデオゲームならではの良さはどこにあると思いますか。
テッド:映画や小説は常に受け身状態で楽しむ媒体です。ただ、ゲームは恐怖にたどり着くまでに自分で操作しなければならない。ユーザーは恐怖を受ける対象でありながら、そもそも自分が恐怖体験を作りあげているという奇妙な構図になっているんです。そういった自分で恐怖を追求していくのは、ゲームならではの楽しみだと思います。

――ありがとうございました!
ホラー好きの情熱で動かされている新興パブリッシャー・Black Lantern Collective。発表しているタイトルは、プレスリリースをご覧ください。











