
もうすぐ、オタクにとっての夏の大イベントがやって来ますね!
そう「コミックマーケット(コミケ)」です。世界最大級のオタクの祭典であるコミケには、毎年マンガやアニメなどに対する愛を持った人たちが、その作品の同人誌やグッズなどを作成し販売。それを求めてやって来るファンも含め、来場者は1日平均約10万人にのぼります。
そんなコミケを含む、同人誌即売会に参加するための制作活動を疑似体験できる異色のシミュレーションゲーム『先生、新刊三冊くださいッ!』が、いよいよ本日8月6日に正式リリース。2024年11月から早期アクセスが開始されており、「同人界隈あるあるが詰め込まれ過ぎている」とオタクの間で話題なりました。
同人誌を作ったことがある方はわかると思うのですが……1冊を作るには、途方もない時間がかかります。自分が「同人誌を作ろう!」と決めて始めたのに、締切が近づくにつれて睡眠時間も削らなきゃならないし、遊ぶ時間なんてあるわけない。次第には口癖が「しんどい・苦しい・辛い」に……。それを乗り越えて完成させた喜びは、かけがえのないものです。
果たして、本当にゲーム上でそんな経験が味わえるのか? リアルに同人誌制作経験のある筆者がプレイしてみたところ、あの苦しくも楽しかった経験が鮮明に蘇ってきました。
“推しカプ”を作れる!自分の好みで見た目や性格も変更可能

本作は起動してすぐに物語がスタートするわけではなく、カップリングを組ませるキャラクターのクリエイトから始まります。

ゲーム内で使用するキャラクタークリエイトはしたことがあるものの、推しカプを作るなんて初めての経験!
ですが、同人誌作りも物語、あるいはキャラクターの設定つくりから始まるので、「ここから再現されるとは……!」と驚きです。髪型から顔つき、服装や性格までさまざまな要素を変更できるので、筆者はこの段階で1日かけてしまいました。銀髪ロン毛穏やか攻め最高!

また、カップリングの設定も細やかです。年上年下、身分差、さらに「どちらが先に死ぬか」まで決められるのだから、地雷がある人にも安心。事前に地雷を防げるよう、ストーリー内容の描写範囲まで選べるのはとてもありがたいですよね。
オタクバレにゾクッ!初めての即売会の恐怖も追体験

本作の主人公「伊香詩子」は、上記で作った推しカプの小説をひっそりと書いて楽しんでいた女子大生。物語は、その小説データが入ったUSBを落としてしまい、同級生に拾われたところから始まります。
筆者も、同人活動をしていたのは大学生の頃。当時は今のようにオタクに寛容ではなく、なんなら「キモイ」と迫害されていた時代です……。ぼっちな大学生活を送るわけにはいかないと必死にオタクであることを隠していた頃を思い出してしまい、詩子の同級生「海月結良」に落としたUSBを拾われたシーンでは背筋がゾッとしました。

しかし、この拾ってくれた結良も同じカップリングを推すオタクであったことから詩子と意気投合。彼女のススメにより、詩子は小説をWebサイトに投稿するようになります。

本作においてプレイヤーがやることは2つ。「外出先で小説のネタを探す」ことと、「そのネタをもとに小説を執筆する」ことです。

まずは学校からアイデアを探し、執筆することによってだんだんと外出先の範囲が広がり、それによって浮かぶアイデアも増えるという仕組みになっています。例えば猫カフェにいくと、「獣化」のネタが思いついていきます。

執筆は基本的には自動で、途中で選択肢が現れることも。分岐によって物語や結末、さらに読者の評価も変わるので、本当に自身が執筆しているかのような気分で選択しましょう。
ある程度作品がたまったところで、いざ即売会へ参加できるように。

初参加となる詩子の不安な気持ち……めちゃめちゃわかる! 今のようにネットで部数をある程度予想することができなかった時代は、筆者も「1部も売れなかったらどうしよう」と眠れない夜を過ごしました。

ゲーム内では、最初はまったく売れなかったものが、だんだんと部数を伸ばしていく喜びも追体験できます。
同人女のリアルも体験可能!辛いけど楽しい……あの頃が蘇る
そういった同人誌あるあるだけでなく、同人界隈についてや同人女の感情がとてもリアルに表現されていることも、本作の素晴らしいポイントです。

主人公の詩子は、アイデアが豊富で書くスピードも早い。しかし、読者の意見を気にしすぎて、アンチコメントに揺さぶられてしまうことも。

「アンチとファンは紙一重」とはオタク界隈でよく使われる言葉なのですが、それは本作でも同じです。アンチコメントを行っていた少女「小森灯」も、「嫌いなら見なければいいのに」と言う詩子に対し、「実は詩子の文章に心を掴まれていた」ことを後に語ります。

さらに、彗星の如く詩子の推しカプ界隈に現れた作家「シロクマのやま」。彼女の文才に詩子は自信を無くしてしまいます。しかしそんな2人が偶然出会った際には、シロクマのやまが「詩子の小説に心打たれて小説を書き始めた」と話すのでした。
また筆者の昔話になってしまうのですが、筆者は『カードキャプターさくら』『魔法騎士レイアース』などを代表作に持つCLAMPに憧れて、女友達4人で同人活動をしていたオタクです。しかし、その内の1人が他の作家の作品を褒めていたり、他の作家と仲良くしているのに嫉妬したり……といったことがありました。

本作では詩子と結良の友人関係もしっかりと描かれており、筆者も自身の経験を踏まえた上で思わず「わかる、わかる……!」と頷いてしまいます。
プレイ中には何度もあの頃の思いが蘇って辛くなるシーンもありましたが、頑張ってひとつの作品を作り上げた喜びは何にも代えられないほど。そんな楽しさも一緒に思い出すことができるゲームになっていました。
そして筆者が一番感動(?)したのが、詩子の祖母も同人作家で、その当時に同じ界隈にいた仲間と同じ老人ホームに住んでいること。

これが噂の「同人女マンション」! 私も年を取ってもず~っと推しの話をしていたい! 羨ましい~!
そのほか、ゲーム内では推しグッズを集めて痛バ(痛バッグ…推しグッズでデコレーションしたカバンの略称)を作ったり、自室を飾りつけたりもできます。作る側の同人誌制作だけでなく、グッズも満喫する楽しいオタク生活を味わうことができました。
同人誌制作、そして同人女生活を送れるシミュレーションゲーム『先生、新刊三冊くださいッ!』は、PC(Steam)にて1,500円(税込)で配信中。2025年8月20日までは20%オフの1,200円(税込)で購入できるセールが実施中です。オタク界隈に明るい方だけでなく、実は身近な世界じゃないけれど気になっていたという方も、ぜひプレイしてみてください!













