2026年2月5日に発売された、ジェムマッチローグライト『ANTHEM#9(アンセム・ナンバーナイン)』。スタイリッシュな外見・音楽と爆裂的なコンボが魅力の本作ですが、今回Game*Sparkでは本作の開発を手がけたkoeda氏と、パブリッシャーを手がける集英社ゲームズの森田航氏にお話を伺う機会が得られたので、本作の魅力についてお尋ねしてきました。
独自のアートワークは「直線しか引けない」制約から生まれた!?
――本日はよろしくお願いします。

koeda氏(以下、koeda): よろしくお願いします。

集英社ゲームズ 森田航氏(以下、森田): よろしくお願いします。

――まず、これは私が本作のアートワークを見て感じた事なんですが、本作は今までのローグライト系ゲームに比べて非常にスタイリッシュな印象を受けます。いったいどのような着想から、本作のアートスタイルを生み出してきたのでしょうか。
koeda: そう言っていただけるのは、本当に光栄です。実はこの作品のアートワークって、最初から狙って作ったというより、消去法の末に今の形に落ち着いたものなんですよ。
開発当初はほぼ一人で作っていたんですが、僕自身はもともとデザイナーではなくて、正直、絵が描けるタイプでもありませんでした。UIを作ろうとしても、引けるのは直線くらいで(笑)。
なので、「直線しか引けない」という制約の中で、どうすればプレイヤーに魅力的に見えるUIになるだろう、と考えるところから始まったんです。
そこで思いついたのが、自分の中でずっと関心のあったアメコミのスタイルでした。
英字を使った表現だったり、フォントを多彩に組み合わせたりと、ちょっとハッタリっぽい部分もあるんですが(笑)、そうしたアメコミ風の表現を取り入れることで、今のビジュアルに辿り着いた、という感じですね。
――体験版からも、よりスタイリッシュになった印象を受けました。
森田: 今回、UIも一気に刷新しました。スタイリッシュさという点では、かなり磨きをかけられたと思っています。
以前のUIは斬新ではあった反面、少し煩雑というか、見づらい部分があったのも事実で、そこは開発チームとしてもちゃんと認識していました。
なので今回は、「スタイリッシュでありながら、きちんと見やすい」という点を特に意識しています。
その中で、先ほどkoedaさんが触れてくださったアメコミ風の要素も引き続き取り入れています。たとえば、味方や敵キャラクターの周りに、吹き出しが飛び出すような形でスキルを配置していて、まるでキャラクターが「次に何を使おうかな」と考えている、そんな見た目になるようにしているんです。
コミックっぽい遊び心はしっかり残しつつ、全体としてはブラッシュアップしたUIになっている、という感じですね。
――本作の特徴と言えば爆発的に伸びるコンボですが、このコンボシステムに至った経緯はどのようなものでしょうか。

koeda: ジェムを並べてスキルを発動させて、それが連鎖してコンボになっていく、というシステム自体は、企画のかなり初期から入っていました。ただ、正直に言うと、当時の自分はそこをこのゲームの一番の強みだとは、そこまで意識していなかったんです。
転機になったのが、最初のプロトタイプである『ANTHEM#9』が、集英社が主催したコンテスト「集英社ゲームクリエイターズCAMP GAME BBQ vol.2 デモなし部門」で受賞したときでした。その際に多くの方に実際に遊んでいただいて、集英社ゲームズさんの方から「このコンボがうまくつながったとき、すごく気持ちいいですよね」というフィードバックをいただいたんです。
その言葉を聞いて、初めて 「なるほど、このゲームって、そこを一番面白いと感じてもらえているんだ」 と、自分自身も再認識することができました。
そこから集英社ゲームズさんと一緒に開発を進める中で、 「せっかくなら、このコンボ部分をもっと尖らせて、唯一無二の強みにしていきましょう」 という方向性がはっきりしてきて、今の形まで一緒に作り上げてきた、という経緯になります。
森田: そうですね。そこからは、とにかく「コンボの気持ちよさ」を徹底的に突き詰めていこう、という話になりました。見た目的にどう見せれば気持ちいいのか、演出的にどんな見せ方がいいのか、という部分と同時に、システム面でも工夫を重ねています。
具体的には、コンボが積み上がっていくほど倍率がかかって、ダメージもどんどん上がっていくようにしていて、 いわゆる“脳汁が出る”体験につながる部分ですね。 そこはかなり時間をかけて、じっくり作り込んでいった記憶があります。
――以前のインタビューにおいても「集英社ゲームズさんの開発サポートが始まってからコンボ要素を尖らせていった」という旨を語られていましたが、スキルを強化すると多段ヒットになるといった要素もそういった「尖らせ方」の一環なのでしょうか。
koeda: はい、そうですね。実は「スキルを強化すると使用回数が増える」という仕様を入れたのは、本当に開発の終盤で、かなりギリギリのタイミングだったんです。
それまでは、いわゆる一般的なローグライク/ローグライトゲームと同じように、スキルを強化すると性能が少し上がったり、バフの量が増えたり、という形にしていました。
ただ、いろんなテストプレイを重ねていく中で、「スキルをグレードアップしても、あまり魅力を感じにくい」というフィードバックがどうしても多くて。
じゃあ、どうすればいいんだろうと考えたときに、このゲームはやっぱり“コンボを伸ばすこと”が一番の軸になっているので、そこにちゃんと噛み合う強化の仕組みがあるはずだ、と思ったんです。そこからはもう必死に頭をひねって、「強化=回数が増える」という形に行き着きました。
実際には、集英社ゲームズさんの社内審査会が控えている、もう本当に直前ギリギリのタイミングで、「ここで入れないと、もう一生入れられないな……」と思いながら、かなり無理をして仕様変更を入れて、実装させてもらった記憶があります。
森田: これを過ぎたら、もう仕様には手を入れられない、という段階でしたよね。本当に最後の最後で、「どうするか決めよう」というタイミングで入った修正だったと思います。
koeda: 結果的には、その変更によって、コンボを伸ばす楽しさとスキル強化の体験がしっかり結びついて、ゲーム全体のコンセプトと直結する形にできたと感じています。
――本作の主人公キャラクターはそれぞれ特徴的な能力を所持しています。その中でも「ベニ」のAPアクション(余ったジェムでバフを得られる、同種のバフが揃えばAP消費なしでバフ獲得)は他のローグライク・ローグライト作品であまり見ない印象なのですが、どういった発想で思いつかれたのでしょうか。

koeda: それはですね、正直に言うと、めちゃくちゃ苦労して行き着きました。最初から、プレイアブルな3人のキャラクターそれぞれに、はっきりした個性を持たせたいという意識はありました。
ルービットは頭がいいキャラクターで、ジェムトレードを使って状況をコントロールしていく、いわば知略型。ファニーについては、手数を増やすタイプにしよう、というアイデアは割と早い段階で固まっていました。
一番悩んだのがベニですね。ベニは「自分を強化して戦う、バフ系のキャラクターにしたい」という方向性だけは、かなり最初から決めていたんです。
ただ、じゃあそれをどういうシステムで表現するか、というところで本当に行き詰まりまして。
ベニに関しては、APアクションを試作しては潰して、また別の案を作って……というのを、1か月くらいひたすら繰り返していました。
最終的に、なぜ今の形に落ち着いたのかというと、正直、はっきり覚えていない部分もあるんですが(笑)、
とにかくいろいろ作った中で、「一番面白かったものがこれだった」という感じですね。
森田: もともと「ジェムチャージ」というコンセプト自体は、ベニのキャラクター性から来ていましたよね。
民族的な意匠を持ったキャラクターなので、祈りを捧げて、ジェムを捧げる代わりにご加護を得る、というイメージから始まっていたのは覚えています。
そこから、同じ種類のバフが揃えばAPを消費せずにバフを獲得できる、という仕様になったんですが、それも結局、「どうすれば一番気持ちよくなるか」を突き詰めた結果だったのかなと思います。これができたら脳汁が出るよね、という(笑)。
正直、システム的に一目で理解してもらえるか、という不安はありました。でも体験版を公開して、実際にユーザーさんに遊んでもらったら、「純粋に気持ちいい」という声の方が多く返ってきて、結果的には良かったなと感じています。
koeda: できた当時は、正直これ難しすぎないか、という心配もかなりしていました。 ただ、3人目のキャラクターですし、少しくらい思考がガラッと変わるキャラがいてもいいんじゃないか、ということで、 半分は冒険のつもりで、この仕様で進めてみたんです。
結果として、体験版などでユーザーさんの声を聞いてみると、 「ベニが一番面白い」と言ってくださる方も結構多くて、 あれだけ悩んでこの仕様にしたのは、間違っていなかったなと今では思っています。
森田: 時間制限の中でちゃんと回せるか、間に合うか、という部分も、かなり気を使いましたよね。
koeda: そうですね。最初は30秒じゃ全然足りない、みたいな話もあって。
そのあたりは特に意識して調整しました。本当に、ひたすら苦労した記憶があります。
――本作はプレイヤーキャラクター3人だけでなく、敵キャラクターにも多くの魅力的な人物や変わった感じのモンスターがいますが、開発者側から見て「推し」なキャラクターは居ますか?
koeda: 本当は、全員推したいところではあるんですけどね(笑)。
メインキャラクターたちは、いろんなところで注目していただいていると思うので、あえてここで一つ挙げるとしたら、序盤に登場する敵の「パペットハンズ」です。
手の機械みたいなキャラクターなんですが、とにかく動きが気持ち悪くて。ぜひそこは、実際に見てほしいなと思っています。正直、ああいう敵って、なかなか他のゲームでは出てこないんじゃないかな、というちょっとした自負もありますね。
「このゲーム、なんか変な敵がいっぱい出てくるな」とか、 そういう部分にも注目してもらえたら嬉しいです。

どんな方でも遊びやすく気持ちいいコンボ体験ができることを目指したゲームに
――Mission2以降、デモ版にはなかったブレス付属ジェムや、さまざまな新システムが追加されていて驚きました。今後のミッションや、あるいはキャラクター別にExtra10まであるという高難易度ステージでも新システムが追加されるのでしょうか。

koeda: はい。Mission1から3にかけて、少しずつシステムが追加されていく構成になっていて、それ以降はExtraも含めて、基本的なシステム自体は共通になります。
こういう段階的な解放にした理由なんですが、 開発としてはもともと、Mission3以降、すべてのシステムが揃った状態で、このゲームの面白さが一番のピークに達する、という設計をしていました。
ここで戦術やプレイング、構築など、いろんなことを考える余地が完成する、というイメージですね。
ただ、このゲームの特徴として、「できるだけ難しく感じさせたくない」という思いもあって。そこで、最初からすべてを詰め込むのではなく、段階的にシステムを増やしていく形にしました。
そうすることで、プレイヤーの方には少しずつゲームを学んでもらいながら、気づいたらいろんなことができるようになっていて、結果的にこのゲームのすべてのシステムに自然と触れている、という導線を意識しています。
Extraについては、「システムが変わる」というよりは、「ルールが変わる」というイメージですね。
基本の仕組みはそのままで、たとえばボスがランダムに出現するようになったり、 報酬でもらえるコインが少なくなったりと、少しずつ制約が増えていきます。
しっかりルールを理解したプレイヤーが、そこからさらに腕を磨いていくフェーズ、 という位置付けになっています。
森田: システムとしての完成はMission3で一区切りしていて、Mission4以降は、「覚えた状態で、どんどん楽しんでください」という感覚ですね。
ただ、スキルやブレス、チャームといった要素の開放自体は、Mission4以降やExtraでも引き続き行われていきます。いろんな種類の中から、自分なりの組み合わせを楽しんでもらえるような形になっていると思います。
ブレスからジェムが得られる、という仕組みも、実は最初から想定していたものではなくて、開発途中で生まれてきたシステムなんです。
振り返ると、koedaさんが集英社ゲームズにこの企画を持ち込んでくださった段階では、ブレス自体もまだ存在していませんでしたし、一緒にどういうゲームにしていくかを考えていく中で、いろんなシステムが生まれていきました。
そこから一度、要素を全部そろえたうえで引き算をしていって、Mission1からどういう導線を引くかを整理した結果、今のような形に落ち着いた、という感じですね。
――Mission選択時にEasy・Normal・Hardを選択できるシステムや、Easy難易度では使用するデッキが1つだけといった要素も、そういったゲームシステムを構築していくうえで実装されたのでしょうか。
koeda: Easyでの単一デッキ……僕らは「シングルデッキ」と呼んでいるんですが、
デッキが1つだけでも、このゲームのシステムとしての面白さは、十分に味わえると考えています。
より多くの方に、「自分でもちゃんと遊べた」と感じてもらいたい、そんな体験を届けたいと思ったときに、Easyではデッキを1つにしてもいいんじゃないか、という判断になりました。実際、Easy難易度でもMission1から4まで遊べて、ゲームクリアまで到達できるようにしています。
個人的には、「難しいものをクリアできること」だけが正解だとは思っていません。それぞれのプレイヤーさんが、自分なりの成功体験を感じられることが大事だと思っていて、そうした考え方を反映した難易度設計になっています。
――Extra Missionでも難易度選択はあるのでしょうか?
koeda: Extraには難易度選択はありません。そこからはNormalまではクリアしてから挑戦して頂けるといいかなと。イメージとしてはExtraは「ベリーハード」ですね。
――本作は今までのローグライク・ローグライトゲームのイメージを覆すビジュアルということで、本作からこの手のゲームに入るプレイヤーもいると思うんです。そうした方に向けた、初心者向けのおススメキャラクターや攻略のコツなどはありますか?
koeda: 本作にはプレイヤーキャラクターが3人登場しますが、最初は必ず、ルービットという眼鏡をかけた女性キャラクターから遊んでいただく形になっています。
これも、プレイヤーさんの成長を意識した設計ですね。ルービットのAPアクションは「ジェムの色を変える」というもので、このゲームのシステムを理解して、使いこなしていくうえで、一番シンプルで分かりやすい能力を持ったキャラクターになっています。
この手のゲームを初めて手に取っていただいた方には、まずはルービットで進めていって、「なんとなくでもクリアできるようになってきたな」と感じられたタイミングで、他のキャラクターにも手を伸ばしてみる、という遊び方がおすすめかなと思っています。

koeda: プレイするうえでのコツとして一つ挙げるとすると、この手のゲームでは報酬で新しいスキルやブレスが手に入る場面があると思うんですが、そこで「レア度」にすぐ飛びつかない、というのが意外と大事かなと思っています。
このゲームは、あくまでジェムマッチのパズルが一番の軸になっているので、最初のうちは、どれだけレアリティが高そうに見えても、一回ぐっとこらえてジェムがきれいにつながるスキルを優先して取ってみてほしいですね。
まずは10コンボ、20コンボといった形で、安定してコンボを出せるようになることを目標にしてもらえると、かなり感触が変わってくるんじゃないかなと思います。
森田: まさに自分は、最初にレアリティに飛びついてしまって、最終的にデッキを全部金ピカにしたものの、全然うまく回らない、という失敗をしていました(笑)。
やっぱり一番の基本は、「まずは色を揃えること」ですね。それができるようになったら、次の段階として、先ほども話に出ていた「コンボを増やす」という部分を意識していくのが大事だと思います。
色を揃えつつ、コンボ数がどんどん伸びるようにスキルをレベルアップさせていく。
それが結果的には、一番クリアへの近道になるんじゃないかな、という感覚ですね。
――ありがとうございます。個人的に「メガネでドSのお姉さん」というルービットさんはすごくツボを突かれたキャラクターで、本当にこのキャラクターを生み出していただき、ありがとうございます!
一同:(笑)
koeda: こちらこそ、ありがとうございます(笑)

――それでは最後に、本作を楽しみにしているユーザーの皆様にメッセージをお願いします!
koeda: 『ANTHEM#9』は、色合わせパズルの感覚で、どんな方でも遊びやすく、気持ちいいコンボ体験ができることを目指して作ったゲームです。
ゲーム自体は好きだし、戦略系のゲームにも興味はある。でも、正直あまり難しすぎるのは苦手というか、 「そこまで上手いわけじゃないけど、ちょっと触ってみたい」そんな方には、かなりハマるんじゃないかなと思っています。
というのも、実は自分自身がまさにそういうタイプなんです。 戦略系のゲームは好きなんですが、全然上手くなくて(笑)。それでも、気持ちよくクリアできるゲームを作りたい、
そんな思いでこの作品を開発してきました。
なので、同じような気持ちを持っている方にぜひ手に取っていただいて、「俺でもクリアできた」「私でもクリアできた」そんな報告をもらえたら、本当に嬉しいです。ぜひ、よろしくお願いします。
森田: 体験版の公開後は、本当にたくさんのご意見をいただいていて、すごく感謝しています。 そのうえで、製品版は体験版よりもかなりボリュームが増えていて、 体験版ではまだ見つかっていなかったデッキのシナジーや、「まだこんなにコンボが伸びるの!?」という体験が待っています。
見た目だけ見ると、コンボの数字がバババッと出てくる、ちょっとふざけた感じのゲームに見えるかもしれません。でも、その“ふざけたコンボ”を出すまでの過程は、実はかなり考えどころがあって、シナジーに気づいた瞬間や、戦術の深みにハマったときの面白さ、発見の気持ちよさがしっかり詰まっています。
ぜひ、実際に手に取って、その感覚を味わってもらえたら嬉しいですね。
――ありがとうございました!
『ANTHEM#9』は、PC(Steam)にて発売中です。
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