「パートナーと趣味が合わない・・・」
つい最近も、SNSで「ゲームを取るか結婚を選ぶかで破局した」といった旨のポストをきっかけに、趣味と人間関係のあり方についてさまざまな意見が飛び交いました。
定期的に似たような話題が浮上しており、趣味の有無やスタンスの違いから、大切な人との関係に亀裂が入るケースも少なくないようです。
実は、筆者にとっても全く無縁の話題ではありません。元々、妻はアウトドア派・筆者はインドア派であり、結婚前は趣味の方向性が全く異なるカップルだったのです。
結婚する前、彼女はとある疾病の影響によって、ひとりでの外出が困難な時期がありました。筆者がライターになる前は、会社員として営業の仕事をしており、出かけられるとしても週に1日か2日程度。さらに、当時はコロナ禍の影響もあり、外出に制限が多い時期でもありました。
休日はインドア人間として「休みは家でごろごろゲームしていたい気持ち」と、彼女のために「外へ連れて行ってあげたい気持ち」の葛藤の連続です。実際に、趣味の相違からケンカになったこともありました。
このすれ違いを何とか解決したい。
そこでふと、お家で楽しめるエンタメのひとつとして「彼女にゲームの魅力を伝えてみよう」と思い立ちました。しかし、これまでケンカの原因にもなっていた話題だけに、話すには勇気のいる決断です。
普段のコミュニケーションを見直したり、少しずつゲームのプレゼンを重ねた結果、今では妻に「ゲームという素晴らしい世界を知れて良かった」と真っ直ぐに言ってもらえるほど、ゲームの世界に親しんでもらえるようになりました。
本稿は、あるひとりのゲーム未経験者が、ゲーマーになるまでのドキュメントです。
これからゲームの世界に足を踏み入れてみたい方や、ゲームを始めたばかりの方には「おすすめのゲーム一覧」として読むことができます。各タイトルの最後には、妻本人の感想コメントも掲載しています。記事の後半では、筆者の経験から学んだ「身近な人に自分の『好き』を推すヒント」についても執筆しました。
周囲の友達、SNSのフォロワー、パートナーに自分の好きを共有したい人のヒントになれば幸いです。
「連続ドラマ」としての『龍が如く0』

「ゲームを詳しく知らない」「興味を持っていない」という彼女に、何をどう伝えれば魅力を知ってもらえるのか。営業マンとしての経験なども踏まえつつ、色々な策を検討してみました。
妻とはドラマや映画を一緒に観ることがあったので「ストーリーがおもしろいゲーム」であれば、興味を持ってもらえるのではないかと。
そこで私は、「絶対におもしろい」と言ってもらえる自信がある『龍が如く0』を推してみることにしたのです。『龍が如く0』はヤクザや裏社会がベースであるものの、描かれるストーリーの本質は王道の友情・恋愛物語なので、きっと楽しんでもらえるだろうと。
「この世のあらゆる物語でトップクラスにおもしろいんだ」などと熱弁をふるいつつ「俺がプレイするから、ドラマを観る感覚で一緒に観てみない?」と提案しました。
ヤクザの怒号や凄惨なシーンについては「目を伏せるタイミングを合図する」という約束に安心してもらえたのか、「だったら観てみようかな」のOKをもらえたときは心で小さくガッツポーズ。
結果から言うと、妻は物語に何度も泣いて、最後はエンディングの姿に胸を打たれて真島の兄さんファンになっていました。
妻「ゲームって映画やドラマみたいにストーリーがおもしろいんだ」と視野が広がり、衝撃を受けました。真島の兄さんのあるシーンは嗚咽が止まりませんでした。「ゲーム」への見方や考え方が大きく変わった作品です。桐生と錦の友情に立ちはだかる、ヤクザとしての掟のもどかしさも、胸に来るものがありました。
二人で未来を選択した『Detroit Become Human』

『龍が如く0』で「ゲームのストーリー」に興味を持ってもらえた良いタイミングで、『Detroit Become Human』がPlayStation Plusのフリープレイ対象作品になっていました。
本作は、近未来のデトロイト市を舞台に、立場の異なる3人のアンドロイドの視点から描かれるオープンシナリオ・アドベンチャーです。
私も未プレイでしたが、評判はなんとなく知っていたので、「ストーリーおもしろいらしいよ」「自分の選択次第で結末が変わるらしいね」と話してみました。
「へぇ~、なら一緒にやってみたい」とのことで、操作を私が担当し、さまざまな局面で話し合いながら進めていったことを覚えています。1周目はビターな終焉を迎えたのですが、2周目で攻略など見ずに全員生存エンドにたどり着けた感動は今も忘れられません。
映画的なアクションやサスペンスの会話劇も含め、没入感が素晴らしいタイトルです。
妻ふたりでストーリー分岐を「ああでもないこうでもない」と悩みながら進めていくのが楽しかったです。主人公のアンドロイドたちに人間味を覚え、良い意味で未来に複雑な気持ちを抱いた作品でもあります。自分たちの選択でこうも変わるのかと、実生活でも自分にとって後悔のない選択をしていきたいと勉強にもなりました。
はじめて自らが操作した『ピクミン3デラックス』

これまでのゲームは、私が操作して彼女が横で見るスタイルでしたが、ニンテンドースイッチの『ピクミン3デラックス』は彼女自身がプレイした記念すべきタイトルでもあります。
スイッチ本体を購入後、『ピクミン3』体験版に心を惹かれて購入に至りました。自然豊かな世界観と、かわいいキャラクターが彼女の感性に刺さったようです。『ピクミン』の世界を楽しみながら、少しずつコントローラーでの操作を覚えていきました。
妻『ピクミン』の存在は知っていたものの、ゲームをプレイしたことはありませんでした。PVで『ピクミン3』に興味を持ち、体験版で水や草木の表現に心を奪われました。自然が大好きな自分にとって、「ピクミンから見た自然はこんなにも綺麗かつ残酷な世界なんだ!」と感動と衝撃を受けたのが印象に残っています。
ファッション好きとしての『あつまれ どうぶつの森』

彼女はファッションも好きなので、『あつまれ どうぶつの森』のコーディネート要素や自然豊かな世界観に興味を持ったようでした。筆者はニンテンドーDS版『おいでよ どうぶつの森』にハマった経験があったので、本作に興味を持った彼女の背中を押した形での購入です。
私も驚きましたが、そこそこハマった様子で合計350時間以上プレイしています。
アイテムの収集要素など「全部集めたくなる」というコレクター精神を刺激された部分も大きかったようです。この辺から段々と「自然豊かなオープンワールドが向いてそう」「収集要素が刺さりそう」といった、ゲーマーとしての素質が見えはじめました。
妻自分の島をゼロからつくっていくのが楽しかったです。愛くるしい島民と仲良くなったり、将来つくりたい島のイメージでワクワクしたり。穏やかな島国への憧れを補填してくれるようでした。ですが、動画サイトなどで他プレイヤーのやり込み度合いを見てしまい、凄すぎてやる気がなくなってしまいました(笑)。
持ち主を超えてハマった『ペルソナ5ザ・ロイヤル』

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』は、私が彼女からプレゼントで頂いた作品です。
とにかくキャラクターが魅力的ですし、ストーリー展開や設定も秀逸で、夢中になってプレイしました。
自分は初の『ペルソナ』シリーズで勝手が分かっていない部分も多く「2学期」でクリアしていました。つまり、『ザ・ロイヤル』の目玉である追加要素を知らないままなのです……。
クリア後に「これは彼女も刺さるだろう」と思い、勧めてみたところ、3学期までちゃんとプレイして私以上に堪能していました。フリープレイで配信されていた続編の『ペルソナ5スクランブル ザ ファントムストライカーズ』もしっかりプレイ。ふたりで何度も泣かされました。
妻これが初めてのRPGゲームでした。反逆のイメージがペルソナに変わる覚醒シーンが、各々のキャラに合っていてかっこよかったです。音楽も素晴らしく、プレイヤーをすぐに戦闘モードに入らせてくれます。属性の相性を考えながら、時間をかけて戦略を立てられたのが、アクションゲーム慣れしていなかった自分に向いてました。全員の弱点を突いてからの「総攻撃」がとても気持ちよかったです!
「ゲーマー」であることを自認した『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』

すでにそこそこのゲーム好きに見えますが、彼女は根っこがアウトドア派なので「私はゲーマーだ」と思うことに、どこかで抵抗や気恥ずかしさを覚えている様子でした。
そして、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、彼女を「ゲーマー」にした作品と言えます。
自然豊かな世界を歩けることから「もしかして彼女に刺さるのでは」と予感したため、一緒に購入して先にプレイしてもらいました。
最終的にどうなったかというと、『ゼルダ』仕様の有機ELモデルスイッチとProコントローラーを自分で購入するほどハマっています。プレイ時間は600時間以上で、後に遊んだ続編の『ティアーズ オブ ザ キングダム』も含めると、合計で1,400時間を超えています。
特に『ブレワイ』に登場する四人の英傑が大好きらしく、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』でのミファーのとあるシーンで、顔面をぐしゃぐしゃに歪ませて泣きながらプレイしていました。
妻私の短いゲーム人生ではありますが、一番愛している作品は『ブレワイ』だと胸を張れます。何度もこの記事に登場する「自然が大好き」が根底にあるので、遠くまで見える壮大な景色に何度も見惚れました。聴いただけで「この場所だ!」「このシーンだ!」と分かる音楽、奥深いアクション。語りだすと止まりませんが、何より英傑たちのストーリーが素晴らしいです。本当に『ブレワイ』には何度号泣させられたか…。おすすめしてくれた夫に感謝しています!
ついに「冥人」となった『Ghost of Tsushima』

『ブレワイ』で基本的なアクション操作を体得した彼女に「今ならきっとプレイできるだろう」と思って次に勧めたのが『Ghost of Tsushima』でした。
私が過去に本作をプレイしている様子を見ており、美しいグラフィックが描く自然豊かなフィールドに興味を持っていました。興味を持って眺めていたときはまだゲーム未経験者だったので、「『ゼルダ』で戦えたならきっと大丈夫」と、数年ほど時を経て再び推してみた形に。
アクションゲームに少し自信がついてきて、色々なタイトルに挑戦したい気持ちも芽生えつつあったようです。
驚いたのは、彼女が選択したエンディング分岐でした。
ネタバレ防止のため詳細は控えますが、「彼女の性格では選ばなさそうな方」を選んでいたのです。それはつまり、物語を通して彼女が主人公とリンクしていた証でもあります。
暴虐な蒙古軍から対馬を守るために武士道を捨て、やがて「冥人(くろうど)」と呼ばれた主人公・境井仁の姿と、彼女の背中が重なって見えました。
彼女に「アクションゲームが楽しい」と感じてもらえた、個人的にも大好きな傑作です。
妻『ブレワイ』で大自然オープンワールドの素晴らしさを知った私にとって、この作品に惹かれるのは必然だったのかもしれません。フォトモードで大自然のどこを切り取っても素晴らしく、アウトドア派かつ写真を撮ることも好きなので楽しかったです。
私は出血表現が苦手なので最初はオフにしていましたが、夫から「『ツシマ』は血が芸術的なんだよね」と言われ「それなら・・・」と恐る恐る「オン」に変更。戦闘シーンで「本当に綺麗だ!」と思えた何とも言えない感動を体験してからは、最後まで出血表現ありでプレイできました。「境井仁」というキャラも素晴らしく、いろんな感情を共にしていくうちに、私も冥人になっていたようです。
「妻」になった現在もゲーム好きは継続中
結婚して妻になってくれた現在も、様々なゲームをプレイしています。
『ジャッジアイズ 死神の遺言』
『龍が如く7』
『Horizon Zero Dawn』
『アストロボット』
『Rise of the Ronin』 など
最近は『龍が如く極3』の体験版を遊んだことで再燃し、ついに『龍が如く0』を自分でプレイし始めました。当時はとなりで観ていただけだったのに、立派にチンピラへヒートアクションをカマすまで成長しました。世の中のパパ・ママさんたちは、我が子がはじめて歩いた姿をみて、こんな気持ちになるのでしょうか……。
自分の趣味を身近な人へ推すときの心構え
冒頭で触れているように、「パートナーとの趣味問題」は様々な場所で議論されています。
これまでお伝えしてきた筆者の経験から、自分の趣味を身近な人に伝えるうえで「こうすると良いかもしれない」と考えるポイントが見えてきました。
最後に、「趣味の推し方」を3つのポイントに分けて解説してみます。絶対的な正解ではありませんが、ぜひ、ご自身や周りの人を思い浮かべながら「自分だったらこうするな」などとイメージしながら参考にみてください。
相手の趣味にも乗ってみよう
絶対に忘れてはいけないのが、相手の趣味や嗜好にも乗ってみること、そして否定しないということです。
筆者の場合は、妻と一緒に近くの海へ出かけたり、旅行へ出かけたりすることが当てはまります。
私は、暇さえあれば部屋に閉じこもってゲームをしていたいインドア派でした。しかし、妻についてまわるうちに、外の空気を吸う気持ちよさや、旅の魅力が分かってきたのです。
「自分の趣味だけわかって欲しい」は、ただの価値観の押し付けに過ぎません。昔は何度もケンカしてきましたが、今ではお互いの趣味を、心地良いペースで共有できる夫婦になることができました。
相手の興味に合わせて推してみよう
これは営業マン時代に学んだことですが、人は興味のない話に耳を傾けることはありません。
妻の場合は、ドラマが好きなのでストーリー性が高いものから勧めました。どれだけ好きでも、熱意一本勝負で人を動かすのは無理があります。可愛いキャラクターが好きな人にゲームを勧めるならば、『バイオハザード』ではなく、『ポケモン』や『ピクミン』の方が適しているでしょう。
大切なのは「自分が何を言いたいか」ではなく「相手は何に心を傾けてくれるか?」を考えることだと思います。話をしっかりと聴いて、相手の感性を知ることです。
興味を持ったら優しく見守ろう
経験者が、初心者に対してやりがちなミスがあります。
それは「ついついアドバイスしてしまうこと」です。
ボウリング場やゴルフの練習場に、「アドバイス禁止!」なんて張り紙を見かけることもありますよね。
求められていないアドバイスは、百害あって一利なし。下手をすれば、せっかく育ちかけている興味の芽を摘むことにもなりかねません。気持ちは分かりますが、グッとこらえることをおすすめします。
アドバイスは、聞かれたときだけ答えた方が平和です。苦戦する様子も、ニヤニヤしながら温かい目で見守りましょう。
おわりに|ゲームを推した成功体験とライターの原点
「ゲームに興味を持たなかった人に魅力を伝えられた」という経験が、筆者がゲームライターとして活動する上での「軸」になっています。
こうやって読んでくださっている画面の前の読者さんに「こんな素敵なゲームがあるんです!」と伝えたいのです。色々な言葉を使って文章を書きますが、最終的に言いたいのは「このゲームおもしろいよ!」なのです。
しかし、好きなものを推すのは勇気がいりますよね。否定的な反応をされると悲しくなってしまいますから。そんなときは「伝えたい!」の前に少しだけ立ち止まって、相手のことを考えてみるという方法もおすすめです。ぜひ、周りの人にあなたの「好き」を伝えてみませんか?もしよろしければ、コメント欄で「ゲームをはじめたばかりの人に推したい作品」を教えてください!











