ソロゲーム開発者のオメール・エレントゥルク氏は、オープンワールドRPG『Dungeons & Warbands』を3月に早期アクセスでリリースします。
本作は、グリッド制・ターン制バトルとオープンワールド探索を融合したローファンタジーな中世が舞台のダンジョンクロウラーRPGです。部位ダメージや多層式防具によるシビアな戦闘が特徴で、仲間を集めて戦団を率いることも可能。傭兵として、あるいは指導者として、自分だけの運命を切り開いていきます。
本記事では、ソロで意欲的なRPGの開発に挑むオメール氏にインタビューを実施。本作の背景や、意外な日本との関わりを掘り下げました。
日本の友人から“義勇”という名前をもらった開発者

――まずは自己紹介をお願いします。これまでの経歴や、お気に入りのゲームについても教えてください。
オメール(義勇): 私の名前はオメールです。日本の友人たちから、何年も前に「義勇」という名前をもらいました。私は『Dungeons & Warbands』を開発しているソロ開発者です。私はRPGやダークファンタジーゲームが大好きなゲーマーで、単に「楽しいから遊ぶ」というよりも、人生について深く考えさせてくれたり、何かを問いかけてくるような作品を強く好みます。
『Kenshi』は、私にとって特に大きな影響を与えたゲームです。あの作品では、プレイヤーの行動一つひとつに本当の重みがあります。広大な世界のどこにいても、そこでは固有の物語が生まれ得る。その点が、『Dungeons & Warbands』を作るうえでの最大のインスピレーションになりました。
私は、ユニークな物語を生み出せる「深いメカニクス」を非常に大切にしています。ほかに特に好きな作品としては、『Battle Brothers』『Mount & Blade』『Stoneshard』『Caves of Qud』などがあります。
――『Dungeons & Warbands』は、ダンジョンクロウル、オープンワールド探索、ウォーバンド管理、グリッド制のターン制戦闘など、多くの要素を融合しています。このプロジェクトは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。
オメール(義勇): このプロジェクトは、純粋なダンジョンクロウルの実験として始まりました。当初は、現在多く見られるダンジョンクロウラーと同じように、単一のダンジョンだけを舞台にしたゲームだったんです。
しかし、ずっと暗い場所に留まり続ける感覚が、次第に息苦しく感じられるようになりました。そこでオープンワールドへと拡張することを決めたのですが、そのとき自分自身に問いかけました。「正気な人間が、本当に一人きりで危険なダンジョンを襲撃するだろうか?」と。
答えは「ノー」でした。そこで、パーティ人数を1人や4人に制限するのではなく、多くの仲間を連れていけるようにしました。その結果、ダンジョン攻略はまるで軍勢で突入するような感覚になり、とても面白くなったんです。
この仕組みを盗賊との遭遇にも適用したところ、戦闘が「本物の戦い」のように感じられるようになりました。そこから現在のスカッドシステムが生まれ、ゲームはターン制の『Total War』のような感覚を持つようになったのです。結果として、プレイヤーは一人の英雄としても、指揮官としても振る舞える自由を得ました。
――ソロ開発だからこそ可能だった点は何でしょうか。一方で、最も大変だった部分についても教えてください。
オメール(義勇):利点は、妥協のないビジョンを貫けることです。意思決定は非常に速く、チームを説得する必要もありません。昼夜を問わず、自分の好きなタイミングで作業できますし、誰かのスケジュールに合わせる必要もありません。一方で、課題はスケールと時間です。広大な世界を、一人で設計し、すべての要素が調和するように作り上げるには、多くの眠れない夜が必要でした。
――多くのソロ開発ゲームは比較的小規模ですが、なぜこれほど大きなオープンワールドを舞台に選んだのでしょうか。
オメール(義勇): 正直に言えば、私のミスでした(笑)。冗談はさておき、私はまずゲーマーなんです。だから、自分が本当に遊びたいと思えるゲームを作りました。私は機能に対して貪欲で、そのせいで自分自身が圧倒されることもありましたが、最終的な結果には満足しています。
現在、メカニクス自体はほぼ完成しています。早期アクセスの期間では、この広大な世界を「意味のあるコンテンツ」で満たしていくことが目標です。
細かすぎるダメージ・防具のシステム

――これほど大規模なゲームを一人で作る中で、絶対に妥協しないと決めている要素は何ですか。
オメール(義勇): 私が絶対に妥協しないのは、歴史的・機械的な論理です。多くのゲームでは、防具は単なる一つの数字として扱われますが、私はそれを許したくありません。ここで、私の考え方をいくつか例として挙げます。
たとえば、日本の鎖帷子(くさりかたびら)は斬撃に強い一方で、矢には弱い。私のシステムでは、こうした具体的な強みと弱みを反映しています。また、どれほど優れた鋼鉄の胸当てであっても、必ず隙間は存在します。首を守っていなければ、たった一撃で致命傷になり得ます。
全身鎧を着た敵に斬撃を加えても効果は薄く、鈍器や長柄武器による衝撃を狙うべき。その違いを、プレイヤーに“体感”してほしいのです。これらすべてを一人で作るのは非常に大変で、身体の部位ごと、防具の層ごとに、何百もの変数をバランス調整する必要があります。しかし、この深さこそが、「あなた自身の冒険」が現実に根ざしたものになる理由だと信じています。
――戦闘システムでは、局所的な部位ダメージ、多層防具、斬撃・刺突・打撃といったダメージタイプなど、非常に複雑で現実的な仕組みが導入されています。なぜここまで詳細なシステムを実装したのでしょうか。
オメール(義勇): 私は、すべての一撃に「結果」を持たせたかったのです。
布、鎖帷子、プレートといった防具の層で特定の部位を守ることで、戦闘は単なる数値のやり取りではなく、戦略的なパズルになります。敵の防御をどう崩すか、どこに隙間があるかを考える戦いになる。歴史的にも、戦闘とは本来そういうものだったはずです。

――この戦闘システムにおいて、あなたが考えるコアとなる「面白さ」はどこにありますか。特に、位置取りや装備選択、頭部・首・胸部への致命的な一撃の存在が非常に印象的ですが、戦闘中にプレイヤーにどのような思考や緊張感を味わってほしいと考えていますか。
オメール(義勇): 面白さは「準備」と「緊張感」から生まれると考えています。
頭部や胸部への一撃は命を奪います。敵はほんの一瞬前まで非常に健康そうに見えていたのに、首への攻撃が成功した途端、血を浴びせながら倒れ込む。その急激な変化こそが、私が表現したかったものです。
プレイヤーには、自分の選択の重みを感じてほしい。たとえば、ゴージェット(鋼鉄製の首当て)を装備することは、単なるステータス上昇ではありません。それは「生き残るための戦術的判断」です。多くの人は、最初は見た目が豪華な防具を装備するでしょう。しかしゲームを通じて、「どう身を守るべきか」「どう戦うべきか」を学んでいくはずです。
また、私はクールダウンという概念を廃し、疲労システムを採用しました。現実で「特別な技」を使うとき、人工的な待ち時間など存在しませんよね。疲れるまで使い続けるだけです。だから私のゲームでは、すべての行動が疲労に結びついています。
インベントリ内のすべてのアイテムには重量があり、重ければ重いほど早く疲れます。スキルの使用も疲労に依存します。軽装であれば、多くのスキルを使い、素早く動き、敵に突撃し、斬り伏せることができます。しかし過剰に荷物を持てば、動きは鈍くなり、戦闘能力も著しく低下します。
“制限が嫌い”―過酷だけど理不尽ではないオープンワールド
――ゲームデザインにおいて、特に影響を受けた作品や哲学はありますか。
オメール(義勇): 私のデザイン哲学の根幹にあるのは、「過酷だが理不尽ではない」という考え方です。もし巨大なモンスターを簡単に倒せてしまうとしたら、そこに本当の達成感はあるでしょうか。私は、戦術的に深いシステムを理解し、それを使って困難を乗り越えたときにこそ、真の「面白さ」が生まれると信じています。
具体的な影響としては、『Stoneshard』の体力・負傷システムに強く影響を受けています。出血を包帯で止めたり、痛みを薬で抑えたりしなければならないあのリアリズムが大好きです。負傷を放置すれば「痛覚ショック」によって戦場で気絶することもある。私はこの思想を、局所的な部位ダメージとして取り入れました。腕を負傷すれば攻撃効率が下がり、脚を負傷すれば「チャージ」のようなスキルが使えなくなります。
また、「プレイヤーの時間を尊重する」ことも非常に重要です。私は多くの伝統的なローグライクの難易度を尊敬していますが、ベッドや焚き火に戻らなければセーブできず、何時間もの進行が失われるような仕組みには賛同できません。

『Dungeons & Warbands』では、ダンジョンの各階層ごとに自動セーブが行われます。死亡しても、その階層の入口から再挑戦でき、1フロアの所要時間は通常5~10分程度です。これにより、致命的で緊張感のある戦闘を維持しながらも、プレイヤーの時間を無駄にしない設計を実現しています。
哲学的には、「Your Adventure, Your Rules(あなたの冒険は、あなたのルールで)」という考え方を貫いています。ターン制のワールドマップや、ミノタウロスのようなモンスターを雇える仕組みも、すべてプレイヤーが自分なりの方法で問題を解決できるようにするためのものです。
――ウォーバンドには人間だけでなく、ゴブリンやミノタウロスといった非人間も加えることができます。なぜ仲間を人間に限定しなかったのでしょうか。
オメール(義勇): 私は制限が嫌いなんです。敵が存在するなら、彼らと友達になれてもいいはずでしょう。だから、ゴブリンやミノタウロスも仲間にできます。
現在は、人間の兵士が非人間の仲間に不満を持つといった仕組みも実装中で、強いリーダーシップが求められるようになります。
――ダンジョンを制圧すると、その場所を使って新たな仲間を雇えるというシステムは非常にユニークです。この仕組みについて詳しく教えてください。
オメール(義勇): このアイデアは『Heroes of Might and Magic』シリーズから着想を得ました。
多くのゴブリンを倒したあと、ゴブリンキングの前に立つとしましょう。彼は狡猾な性格で、死を避けたいと考え、「殺すくらいなら仕えさせてくれ」と提案してくるかもしれません。そうして、彼の民をプレイヤーに差し出すのです。これは単なる戦利品とは異なる、「現実的な選択肢」を生み、世界をより生き生きと感じさせます。
――スキルシステムでは、攻撃能力だけでなく、「待機」「追従」「攻撃」といった指揮行動も重視されています。プレイヤーには、戦士・指揮官・傭兵団の長のどの役割を最も強く感じてほしいですか。
オメール(義勇): どれでも構いません。戦士にも、傭兵団の長にも、指揮官にもなれます。私は新しいシステムを作ること自体が好きなので、これらの役割すべてに同じ距離感で向き合っています。だからこそ、「Your Adventure, Your Rules」なのです。
――今後追加予定の「Kenshi的」な動的ワールドシステムについて、どの程度の不可逆性や永続的な結果を想定していますか。
オメール(義勇): 私は、世界がプレイヤーの行動に反応してほしいと考えています。アーティファクトを盗んだり、人物を誘拐したりすれば、復讐のために軍勢が動き、街の支配者が変わる。そうした連鎖反応が起きる世界を目指しています。その結果、「自分のゲームでは北方勢力が世界を制圧した」「いや、自分の世界では南方が勝った」といった、プレイヤーごとの異なる物語が生まれるはずです。
――こうしたシステムは、プレイヤーによっては強いストレスを感じる可能性もあります。その緊張感は、意図的なものなのでしょうか。
オメール(義勇): はい。ストレスがあるからこそ、勝利は価値を持ちます。緊張感のない勝利は、決して満足感を与えません。私は、プレイヤーの知性と判断を尊重するゲームを作りたいのです。
――日本では現在、ウィッシュリスト数が世界2位で、日本語サポートに積極的に取り組んでいると伺っています。日本のプレイヤーに特に楽しんでほしい点はどこでしょうか。
オメール(義勇): 日本からの関心をとても光栄に思っています。日本のプレイヤーは、『ポケモン』のように「集めて、育てる」文化を深く愛していると思います。
私のゲームでは、人間だけでなく、個性的なモンスターや背景を持つキャラクターを仲間として“収集”できます。その要素と、緻密な防具システムやウォーバンド管理を、ぜひ楽しんでほしいです。
――日本文化がお好きだと伺っています。日本に関する個人的な思い出や、今後ゲームに取り入れたい要素について教えてください。
オメール(義勇): 私は『Shogun: Total War』のキャンペーンを少なくとも20回はプレイしていますし、戦国時代が大好きです。
アメリカ留学中、日本の友人たちから「義勇」という名前をもらいました。今でも彼らとは交流があります。このつながりがあるからこそ、日本語を最初のローカライズ言語にしたいと考えています。現在、日本風の防具やキャラクターを制作中です。日本のコミュニティから意見をもらい、それを意味のある形で実装したいと考えています。
――早期アクセス開始時に、最も注目してほしいポイントは何でしょうか。また、事前に心構えしておいてほしい点はありますか。
オメール(義勇): 注目してほしいのは、スカッドシステムです。600人以上が参加する大規模戦闘を、高速かつ流れるように処理できます。現在も実験的な要素で、オプションで有効・無効を切り替えられます。心構えしてほしいのは、「残酷さ」です。仲間は死にますし、ログには武器が深く突き刺さる描写など、詳細な負傷描写が表示されます。

――最後に、日本のシステム重視RPGファンへメッセージをお願いします。
オメール(義勇): ぜひ気軽に連絡を取り合い、皆さんの考えやアイデア、意見を聞かせてください。私は皆さんのフィードバックを何よりも大切にします。特に、日本文化をどう表現すべきかについて、ぜひ導いてほしい。
西洋のゲームには、侍や忍者をただ置くだけのものが多いですが、私はそれをしたくありません。日本の魂や精神性を、表面的ではなく、本質的に表現したい。そのために、ぜひ力を貸してください。この素晴らしい機会を与えてくれたGame*Sparkに感謝します。皆さんの時間に値するゲームを作るため、全力で取り組んでいます。Arigato!
――ありがとうございました!
『Dungeons & Warbands』は、PC(Steam)にて3月11日早期アクセス開始予定です。








