
2月1日に東京新橋のニュー新橋ビル地下で開催された、シューティングを中心としたゲーム試遊イベント「ふしぎなシューティングゲーム祭りin新橋」。STG『カラス』を開発したRS34代表の増渕佳人氏だけでなく、途中から加わったサウンドクリエイター/デザイナーである永田大祐氏へミニインタビューを行いました。
なお、ブースでは『カラス』の試遊だけでなくサントラCDの物販も実施。さらに、イベント終了間近には、『カラス』のゲームプレイを見守るギャラリーが発生しました。まるでゲームセンターでプレイヤーが果敢にゲームへ挑戦し、エンディングの到達までを見守る様子が再現されたようでした。



――今回の現行機種への『カラス』移植の切っ掛けは何でしょうか?
増渕氏: 最初の家庭用移植版『カラス』はドリームキャストで、その後はXbox 360版などが出ていますが、現在はいずれもプレミア価格となり、気軽に遊べる状況ではありません。一方で、「『カラス』に興味があって遊んでみたい」という声は少しずつ増えており、「それならぜひ現行機向けに出したい」と思うようになりました。
これまで『ラジルギ』や『イルベロ』は現行機移植を行ってきましたが、『カラス』だけは手をつけられていませんでした。そろそろ移植したいと考える一方で、そもそも『カラス』という作品自体を知ってもらう必要もあると感じていました。現行機への移植で、昔のファンには改めて遊ぶ機会を、そして今の世代には「『カラス』って何?」と知ってもらうきっかけを作りたいという思いから、この企画を進めることにしました。
――アーケード版『カラス』は当時少しだけプレイしたことがあるのですが、同時期に稼働した『トリガーハート エグゼリカ』と同じく「弾幕が消せる」ということが特徴だと思いました。当時流行していた弾幕STGの遊び心地を変えたいという想いがあったのでしょうか?
増渕氏: まず前提をお話すると、現在の私はRS34の社長ではありますが、当時の開発元・マイルストーン時代はオリジナル版『カラス』スタッフにギリギリ入るような立場でした。マイルストーンのゲーム作り傾向として「いろんなことをやりたい」というのが基になっています。
例えば最初期にできた『カオスフィールド』では剣も振れるしショットも撃てる。さらにフィールドチェンジといって、敵の攻撃が激しくなる代わりにこっちからも攻撃できるモードもありました。そういった、色々なことができるというのが売りだったのですね。
それをガラッと変えたのが『ラジルギ』であり、そして『カラス』に繋がっていったのです。また、『カラス』を出した2006年という時代、我々は弾幕STGとして作っているという意識はありませんでした。「色々なことができて、弾を処理する方法も色々ありますよ」という制作イメージ自体は今も変わっていないですね。

――『カラス』はたまたま「弾幕STGっぽい形になった」というものだったのですね。
増渕氏: そうですね。弾幕シューティング的であるという世間での評価はそうかもしれませんが、作っている我々としては弾幕STGと考えて作っていないということですね。
――『カラス』は画面に表示されるテキストや登場人物との会話によってストーリーを語るなど特徴があると思います。特徴あるSTGを作る理由というのは何でしょうか?
※ここで増渕氏の提案により、サウンドクリエイター/デザイナーの永田大祐氏がインタビューに加わる
増渕氏: 具体的にはゲーム制作的な判断と、表現的な判断の2種類あります。
永田氏: 源流である『カオスフィールド』制作当時、開発状況が乱雑としていて、世界観やストーリーを誰が作るのか決まっていなかったのです。
それが個人的にモヤモヤと納得できなくて、次の『ラジルギ』から自分が全部作るとわがままを言いました。音楽だけじゃなくて、その世界観やキャラクターデザイン、ストーリー設定みたいなものも全部です。そして『ラジルギ』が完成し、次の『カラス』へ取り組む時に、これまで作ってきた作品と、「これまでの全部何かが繋がってほしい」という想いが自分の中に強くありました。

なぜそうしたのかと言われれば、夢のない言い方になりますが、後々続編を作っていく時に作りやすい世界観設定をしておこうと思ったからです。『ラジルギ』の時にそのベースとなる設定を作り、それが脈々と今も生きていますが、ただあまりその設定がゲーム内で語られることはありません。ほとんどの人は、わからないままだと思います。
ちょっと独特であり、作品ごとに世界観は違うけど、ゲーム中に共通の言葉が出てきたりとか、共通した謎があったりするのはそういった理由からだと思います。
――シリーズ展開を考慮に入れたことで、そういった特徴のあるシューティングゲームとなったということなのですね。
永田氏: そうです。後は、もともとシステムやゲーム部分を弊社の松本というプログラマが作っているのですが、そこに私の音楽や世界観などを合わせていくスタイルで、私にしても松本にしても、そして増渕にしても、「人と同じことをしてもしょうがない」という想いがあります。
自分たちは変わっていると思っていませんが、こういった考えが根底にあるので、周りから見たときにちょっと変わっていると言われるのかもしれません。
――なるほど。確かに、『カラス』は他作品と並べられると見た目の差異から目立つ作品だったので、当時2006年後半のゲームセンターで非常に見つけやすいと思いました。
永田氏: いわゆる過去にあったシューティングゲームの定番は、グラフィックが鉄っぽい質感で一号機は赤、二号機は青…、みたいなものが主流でした。私自身も子供の時からずっとやってきているので、それが嫌いなわけじゃありませんが、自分が作る時は「なんか違うな」と思いました。インスピレーションを求めるのはゲーム以外の、アニメや映画などの影響がたぶん大きいのですよね。

また、「アニメっぽい塗りにしたい!」と最初から思っていたために、『ラジルギ』からそうした方向性になりました。当時は、トゥーンシェードと言っていましたが、他がやっていない表現にしたいというのが、常々思っていることかもしれません。
増渕氏: 私の考えていることを補足すると、1つは「他と同じことをやってもしょうがない」というところに繋がります。それは、シューティングジャンルのゲームを開発しても上位に様々なレジェンドが存在します。そういったレジェンドと似たようなものを作ったところで、そのレジェンド達を超えるのは難しく、大変だというのがわかっています。
それより、新しいシューティングを表現することで、まだSTGをプレイしたことがない若い人や海外の人などに訴えたいという強い思いがあります。今回は『カラス』の移植ですが、昨年11月27日に『イルベロスウォンプ ハッピートゥギャザー』という新作シューティングゲームをリリースしています。往年のファンだけでなく新しいファンにもシューティングを広く知って欲しい気持ちを持って作り続けた結果、すごい方向へ進化しました。
ほかにも、ゲーム画面を一目見ただけで「何のゲームか」が分かることは、必ず守っているポイントです。スクリーンショットを切り取って見せられたときに、「これはうちのゲームだ」と伝わることを強く意識しています。
自分たちのゲームは、他と似ているものがあまりないと思っていて、たとえば1画面を見ただけで「これは『カラス』だ」「これは『イルベロスウォンプハッピートゥギャザー』だ」と分かるようにしたい。その“ひと目で分かる”状態を作ることを、開発の裏側ではとても大切にしています。
永田氏:すでにやっていることで勝負しても勝てないから、自分たちで「独自の道を切り開いていくしかないよね」という気持ちはあります。
――確かに00年代のアーケードSTGシーンはケイブが頂点にいましたし、それを超えるとなると並大抵の力ではどうにもならない、というのはよくわかります。
永田氏: 当時も弾幕って言葉でよく言われていましたが「うちはそうじゃない」みたいな気持ちを強く思っていました。それが多分表れているのではと思います。『ラジルギ』からきて『カラス』、そして『イルベロ』へと繋がっていくのですが、その想いは貫かれていて、システムなど表現したいことが明確になっていくというか、完成度は段々と上がっていると思うのですよ。

増渕氏: 『イルベロスウォンプハッピートゥギャザー』はある意味極まっている感じがするので、ぜひ遊んで確認してみてください。
――ありがとうございます。最後に読者やユーザーなどに向けてメッセージをお願いします。
増渕氏: シューティングゲームが一番流行ったのは80年代後半から90年代前半だと思いますが、今現在、かなりマイナーなジャンルになってしまいました。。ただ、そのブームが過ぎ去ったあとでも、こうした会場に足を運んで遊んでくださる方がいる。その存在に応えたい、応え続けたいという気持ちがあります。それに応えるものを作り、それを未来に繋げていくことが、RS34としての役目であり、やりたいことだと考えています。
昔からSTGが好きな方も、最近興味を持った方も、これまでまったく触れてこなかった方も、まずはRS34の作品を見ていただけたら嬉しいですね。Game*Sparkの読者の皆さんのコメントを見ていても、「もっとこうしたい」「新しいものを見たい」と強い想いを持っている方が多いと感じています。そうした人たちと、一緒に変えていけたらいいなと思っています。
シューティングゲームは、作り手も多くなく、プレイヤーも決して多いジャンルではありません。でもだからこそ、いろいろなことに挑戦できて、試せる余地がある、とても面白いジャンルだと思っています。流行から数十年が経った今だからこそ、新しい技術や新しい表現を取り入れることで、作り手が本気で向き合えば、今の時代にもしっかり通用する、面白いジャンルになると信じて作っています!
永田氏: RS34として、「やれること」や「やるべきこと」があると信じて取り組んでいます。自分たちも年齢を重ねてきて、考え方や見える景色は少しずつ変わってきました。その積み重ねが、作品にも自然と表れているのではないかと思います。
言葉にするのは難しいのですが、ぜひその変化を一緒に見ていただきたいですね。RS34の作品からシューティングゲームを知ってもらってもいいですし、逆に別の作品からRS34を知っていただく形でも構いません。シューティングゲームが今の時代にどう変化しているのか、その姿を感じてもらえたら嬉しいです。
また、『カラス』もこれで終わりというわけではありません。詳しいことはまだ言えませんが、次に向けていろいろと仕込んでいますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
――ありがとうございました!

『カラス(Karous)』は、PC(Steam)/PS4/PS5/ニンテンドースイッチ向けに発売中です。













