ホラーというジャンルは、その中でもさまざまな表現方法があります。グロさを前面に出したスプラッターものや、そこになにかがいるという雰囲気で怖がらせる怪異もの、最近知り合った人がなんか変といったヒトコワものなど一口にホラーといってもその中身は驚くほど多様です。
そうした多様化は年々加速しており、近年ではインディーホラーの躍進も目覚ましいものがあります。たとえば『8番出口』や『夜勤事件』は実写映画化も果たしており、インディーゲーム発のホラーがゲームファン以外にも広く届く時代になってきました。
さらに「近畿地方のある場所について」や「変な家」のような“新感覚ホラー”も大きな話題を呼んでいます。
今回、紹介させていただく『Dyping Escape』は、そうした近年のホラー表現の流れをゲームとして取り込みつつ、さらに“タイピング”という誰もが日常的に触れる行為そのものが恐怖へ繋がる作品です。
※本記事の執筆にあたり、パブリッシャーのPLAYISMよりSteamキーの提供を受けています。
※ゲーム内の仕掛けや演出に一部触れる箇所があるため、ご注意ください。
PCが破壊される新感覚の恐怖演出に怯えるタイピングゲーム
本作の基本は、画面に現れた不気味な目玉に指示された通りにタイピングを行っていく、非常にシンプルなものです。
目玉から求められる入力内容は、最初こそ「いまの時間を教えてくれ」「名前を教えてくれ」といった、どこか不穏さを感じさせつつもまだ常識の範囲内に収まったものばかり。しかし、ゲームを進めるにつれてその空気感は徐々に変わっていきます。


コマンドプロンプトでコマンドを入力させられ、PC内のデータがすべて消えるように仕向けられたり、マルウェアをダウンロードさせられそうになったりと、こちらのPCが壊されていくような演出が次々と襲ってきます。
ゲームの中の出来事であるはずなのに、現実のPCが本当に破壊されてしまうかもしれないという感覚に陥るのが印象的です。
『ドキドキ文芸部!』をはじめ、過去にも第四の壁を取り入れた作品は存在しますが、本作はその要素をかなり前面に押し出している印象です。単なるメタネタとしてではなく、タイピングという行為で、プレイヤー自身が加担しているかのような作りになっています。

序盤をすこし過ぎた辺りからは、ヘルプボタンを担いだ不思議な猫の助けを借りて目玉にPCを破壊されないようにさまざまな工夫を凝らしていきます。
例えばタイピングしなくてはいけない文字の一部をバックスペースキーで削除して指示を変えさせたりという風にPCの機能をフル活用して、目玉に反抗していくことになります。


タイピングで文字を打ち込むだけのホラーゲームではなく、いま画面で何が起きているのかを観察し、PCの機能そのものを使って抵抗していく。感覚としてはちょっとした謎解きや脱出ゲームに近いです。
一般的なタイピングといえば、ただ速く正確に打てばいいといった感じのゲーム性ですが、本作では時には打たない判断や、入力内容そのものをどうにかして変えるなどの発想力が求められる。そこが本作の一番の魅力と言えます。
ホラー作品で得られる恐怖は、血や臓物が飛び散るグロテスクなもの、突然の大音量で脅かせるジャンプスケアなど非現実的なものから、実際に起こり得るかもしれないと感じさせるものがあると思います。
本作はPCのデータがすべて消える、マルウェアがダウンロードされてしまう、個人情報が流出してしまう等、現代に現実で起こったら恐ろしいものをゲームとして体験させてくれる新感覚ホラー作品だと感じました。
ホラーゲームの新風を味わいたい人は、ぜひ一度この不気味なタイピング体験にチャレンジしてください。

※UPDATE(2026/03/13 16:57):本文に追記を行いました。











