『ドラスレ』と『ドラクエ』―国産RPG黎明期に生まれたふたつの「竜退治」【ゲームのおいたち・ゲームのあゆみ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『ドラスレ』と『ドラクエ』―国産RPG黎明期に生まれたふたつの「竜退治」【ゲームのおいたち・ゲームのあゆみ】

そして、国産RPGの夜が明けた。

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『ドラスレ』と『ドラクエ』―国産RPG黎明期に生まれたふたつの「竜退治」【ゲームのおいたち・ゲームのあゆみ】
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日本における国産コンピューターRPGの黎明期。
モニタ上には、妖精の国、ウツロの街、天地のはざま、ギリシアやメソポタミアの神話…さまざまな魅力的な世界が広がっていました。

そしてそのなかには、ふたつの「竜退治」のお話があったのです。

ひとつは『ドラゴンスレイヤー』。1984年、日本ファルコムからリリースされたRPGです。

『ドラゴンスレイヤー』(©1984,日本ファルコム)

そしてもうひとつ。その2年後となる1986年にエニックス(現:スクウェア・エニックス)からリリースされたRPG『ドラゴンクエスト』です。

『ドラゴン・クエスト』(©1986,エニックス)資料提供:NPO法人ゲーム保存協会 ※画像はMSX2版

どちらも日本のコンピューターRPGを語るうえで避けては通れない存在。今回はそんなふたつのゲームについて並べてご紹介します。

※「ゲームのおいたち・ゲームのあゆみ」は、ゲーム保存協会協力のもと制作されている連載です。

そもそも「竜退治」ってなんなのさ?

『ドラゴンスレイヤー』と『ドラゴンクエスト』。ひと目みてわかる通り、両者は「竜退治」を想起させるタイトルである点が共通しています。このモチーフは古典的な物語の類型として世界中で知られ、さまざまな文化圏で脈々と受け継がれてきました。日本ではヤマタノオロチとスサノオノミコトの伝説が知られています。

そのなかでも特に有名なものをひとつ挙げるなら、聖ゲオルギウスによる竜退治の伝説でしょうか。

Albrecht Dürer, Saint George Killing the Dragon(1501–1504年)、ナショナル・ギャラリー(ワシントン)所蔵、Wikimedia Commonsより引用(CC0)

放浪の途中訪れた町で、竜の生け贄として捧げられた姫君の話を聞いたゲオルギウス。彼は竜に戦いを挑み、これを制圧して姫君を救うと、ふたたび町へ凱旋します。そして姫の父である王や民衆がキリスト教に改宗するならば、竜を殺し、災いを取り去ろうと告げます。こうして王たちは洗礼を受けて改宗し、ゲオルギウスは竜の首を切り落とした……という物語です。

この後、王女と結婚するものもあれば、放浪の旅を続けた末に殉教するものもあるようです。

キリスト教の発生以前からドラゴンや竜退治の言い伝えじたいはあったのだと思われます。いにしえの人びとは、そこに歴史上の殉教者である古代ローマの軍人・ゲオルギウスを絡めることで、これをその伝播の物語として変化させたのでしょう。ヨーロッパ世界にあまねく広まったキリスト教にまつわるものであることもあってか、このモチーフは絵画にも盛んに描かれました。視覚にも訴えるようになったゲオルギウスとドラゴンの伝承は、こうしてヨーロッパにおけるドラゴン像を確固たるものとしたといえます。

「指輪物語」J.R.R.トールキン (著), 瀬田貞二・田中明子 (翻訳)/評論社版 画像はAmazon商品ページより引用

時が流れて近現代に入ると、J・R・R・トールキン作の「指輪物語」といったファンタジー小説において、ドラゴンは象徴的な存在としてふたたび躍り出ました。そして、こうしたファンタジー小説の世界観はゲームにも取り入れられることになります。1974年発行のテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(『D&D』)はその流れを受け継ぐ、まさしく「ドラゴン」の名を冠したタイトルでした。もしかしたら、ある程度ここで「RPGといえばドラゴン」という図式や連想が生じたのかもしれません。

Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord - ローンチ トレーラー (日本語) Digital Eclipse 『Wizardry』第一作のリメイク版

その後登場した『Ultima』や『Wizardry』(ともに1981年)といったコンピュータRPGは、さも当然のごとく『D&D』的な世界観や設定を前提としつつ、モニタの上に独自のゲーム世界を作り上げました。「指輪物語」が日本語訳されたのは1970年代のこと。『D&D』の日本語版発行は1985年ですが、一部のファンはそれ以前から原語版をプレイしており、またすでに『D&D』以外のテーブルトークRPGが日本で展開されていたようです。

これら西洋ファンタジー的世界の波はそれぞれ異なった速度で日本に押し寄せ、発生地より短いスパンで流入してきました。国産コンピュータRPGが生まれようとする段階において、「ドラゴン」と「RPG」の関係はもはや切っても切れない典型として日本の人々の目に映ったものと思われます。

『ドラゴンスレイヤー』と『ドラゴンクエスト』

『ドラゴン・クエスト』MSX2版 NPO法人ゲーム保存協会公式YouTubeチャンネルより

さて、どちらも「ドラゴン」をタイトルに冠し、「竜退治」というおなじモチーフを持ったRPGである『ドラスレ』と『ドラクエ』。しかしそのゲーム内容やシステムは大きく異なっています。

『ドラゴンクエスト』は「アレフガルド」と呼ばれる地を舞台に、魔の権化「竜王」を倒し、魔物を封じ込めるアイテム「光の玉」を取り戻すことがゲームの目的です。広大なフィールドマップ画面には町やダンジョンが点在し、ランダムエンカウントで敵との戦闘画面に突入、コマンド選択式の戦闘は命中率やダメージにもランダム性があります。

資料提供:NPO法人ゲーム保存協会 ※画像はMSX2版

こうした点は、『Ultima』(見下ろし型マップ)と『Wizardry』(コマンド式の戦闘)の要素を組み合わせた「良いとこ取り」である……と、教科書的に言われることが少なくありません。なお同様の形式のタイトルとして前年の1984年、クリスタルソフトから『夢幻の心臓』もリリースされていますので、本作は時系列的にいえば必ずしもオリジネーターではありません。しかしいわゆる「JRPG」的と想起されるようなイメージを、ゲームという枠組みを飛び越えた「文化」として日本に広めたことの重要性は、いまさら言うに及ばないことでしょう。

では、『ドラクエ』のおよそ2年前にリリースされていた『ドラゴンスレイヤー』はどのようなゲームだったのでしょうか。本作の目的は迷宮の奥地に潜む「三ツ首ドラゴン」を倒し、奪われた4つの王冠を持ち帰ること。見下ろし型マップで描かれるのは左右にループするダンジョン。敵は画面上に表示されており、接敵することで与える/与えられるダメージは固定かつ確実に命中します。もし本作を現在のジャンルで括るのであればアクションRPGが近いのかもしれません(パッケージには「A new type real time role-playing game」と銘打たれており、続編の『ザナドゥ』でも同様の文言が使用されています。)

ゲームは拠点である「家」のアイコン上からスタート。ゲーム中にはほぼ説明やテキストの類はありません。ダンジョン内には強化アイテムである「金貨」や「パワーストーン」、魔法の使用に必要な「魔法の薬ビン」などが点在、あるいは宝箱のなかに隠され、これらを集めつつ時には敵と戦闘して経験値を積んでいきます。プレイヤーの強化は家のアイコンに重なる必要があるため、アイテム回収の度に帰宅し、ふたたび探索へ……という短いスパンのシークエンスを繰り返すのが特徴といえるでしょう。

こうして強化を繰り返したら、いよいよ三ツ首ドラゴンに挑戦。頭をそれぞれ切り落とすと、奪われた王冠がダンジョン内に散らばっていくので、それらをすべて拾い集めて家に帰ればクリアとなります。なお、本作はステージクリア方式となっており、全9ステージ+αという構成でこのようなラウンドを繰り返します。こうした点も現代イメージされるRPGとは一線を画しているといえるでしょう。

本作が『ドラクエ』タイプのRPGや、その後ジャンルとして成立したアクションRPGと異なるのは、そのパズル性の強さです。たとえば「パワーリング」というアイテムを装備すればダンジョンを仕切る壁を押して移動させられるようになります。そして壁だけでなく家すら動かせるため、先述したアイテム回収→強化という流れを加速させられるようになります。

敵を倒して経験値を積めば、壁を破壊する「BREAK」や前方に移動させる「KICK」といった魔法も使用可能に。ダンジョンの構造そのものをパズルのように作り変え、プレイヤーにとって優位な状況に持ち込んでいく……クリア条件はひとつですが、こうした解法の自由度こそ本作のおもしろみといえるのではないでしょうか。

そして攻略においては先を見据えた計画性が求められます。「墓石」のアイコンは敵が出現するポータルで、一定数の敵を倒すと以前より強力な敵が出現してきます。そのなかには、せっせと上げた攻撃力や経験値を低下させる厄介なモンスターも存在します。『ドラスレ』において、敵とは倒せば倒すほどよいものではなく、いつ戦うべきかを考えなければいけない存在といえるでしょう。

こうした状況を打開するために、プレイヤーは先回りして計画を練ることになります。墓石の周囲を壁で囲って敵を閉じ込めたり、あえてアイテム集めを後回しにしてみたり、敵の動きを停止させる「FREEZE」の魔法習得まで待ってみたり……といった具合に。とくに王冠集めのくだりでは、家が墓石に囲まれた状態で強制的に初期位置に戻され、周囲に敵が出現している状態になるため、事前準備をどれだけしておけるかがゲーム攻略の鍵となるのです。

厄介な敵をすり抜けるスリルに、着々と事前準備にいそしむ時の秘密基地感、そしてそれがうまくハマった楽しさ。「前代未聞麻薬的爽快遊戯」という本作のキャッチコピーは、こうした体験を指すのかもしれません。

ふたつの「竜退治」がたどる歴史

MSX2版『ドラゴン・クエスト』パッケージ原本(©1986 エニックス)資料提供:NPO法人ゲーム保存協会

『ドラスレ』と『ドラクエ』は第一作のゲーム内容のみならず、その後のシリーズ展開についても対照的な道をたどっています。

『ドラゴンクエスト』シリーズは、2作目まではパソコン規格であるMSX/MSX2への移植もありましたが、基本的には家庭用ゲーム機市場での展開をメインでおこなってきました。

一方『ドラゴンスレイヤー』シリーズのメインフィールドは長らく国産PC市場にありました。これは本シリーズのみならず、ある時期までの日本ファルコムのゲーム全般がそうだったといえます。

『ザナドゥ』(1985年,日本ファルコム)NPO法人ゲーム保存協会公式YouTubeチャンネルより

もちろん家庭用ゲーム機に移植された日本ファルコムのゲームも少なくありません。『ドラゴンスレイヤー』も最初のリリースから2年後にエポック社の家庭用ゲーム機・スーパーカセットビジョンに移植されています。ただ、移植作業は別のメーカーがおこなっていたり、開発はファルコムが手がけても販売は他社から、ということがほとんどでした。

まずPCでリリースされ、時間を置いて家庭用ゲーム機に移植という流れが基本であり、もともとPC向けゲームとして高い完成度を誇っていたこともあってか、ユーザーのなかにも「ファルコムの本流はPC市場」という意識が醸成されていたように思われます。

また、『ドラゴンクエスト』シリーズがゲームシステム面の変更を段階的なものに留めるのに対し、『ドラゴンスレイヤー』シリーズは毎回大幅にシステムを刷新しているのも対照的です。タイトルの付け方も『ドラクエ』シリーズはナンバリングで進んでいきますが、『ドラスレ』は続編が『ザナドゥ』、ナンバリング3作目が『ロマンシア』といった具合にまったく違うものとなっており、システム・タイトルともに個々の独立性が高いシリーズだといえます。

『ロマンシア』(1986年,日本ファルコム)NPO法人ゲーム保存協会公式YouTubeチャンネルより

こうしたことについて、当時日本ファルコムに所属していたプログラマーで、『ドラスレ』の生みの親である木屋善夫氏は「新しいプロジェクトのたびに毎回違うことに挑戦したかった」からなのだとインタビューで回答しています。またタイトルに関しては、ナンバリング5作目である『ソーサリアン』以前の初期シリーズは作り始めてからタイトルが決まることが普通だったようです。『ドラゴンスレイヤー』の名をシリーズ名として冠するという決定も、創業者の加藤正幸氏や社内のマーケティング部門が意見を出し合った結果の判断だったと木屋氏は語っています。(1)

特にナンバリング6作目となる『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』は「英雄伝説」シリーズとして新たな潮流を生み、木屋氏が日本ファルコムを退社した後も『ガガーブトリロジー』『軌跡』シリーズなどに派生しました。これらのシリーズは、本作以前のシリーズとは異なる『ドラクエ』的なRPGといえ、現在では代表的な「JRPG」として広く認知されています。

『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』(©1989,日本ファルコム) ※画像は1991年発売のPCエンジンSUPER CD-ROM²版

また、『ザナドゥ』シリーズも現在まで続く人気タイトルとなっており今年7月には最新作である『亰都ザナドゥ -桜花幻舞-』がリリース予定です。

そんななかで、ナンバリング4作目である『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』(販売:ナムコ 現:バンダイナムコゲームス,1987年 以下、『ドラスレファミリー』)は『ドラスレ』初期において異色な作品だったといえそうです。これまで述べてきたように、ほとんどのシリーズにおいて『ドラゴンスレイヤー』はサブタイトル的な扱い。しかし本作のタイトルはわかりやすくナンバリングとなっているうえ、略称である『ドラスレ』というワードすら入っています。

『ドラゴンスレイヤーⅣ ドラスレファミリー』(©1987,日本ファルコム)NPO法人ゲーム保存協会公式YouTubeチャンネルより

さらに本作は当初からPCではなく、ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)版が開発のメインとされていたようです。リリースこそMSX2版が1週間早く、その3ヶ月後にMSX版がリリースされているものの、開発機材はファミコン向けのものを自作してスタートしたのだといいます。(2)

先述したように日本ファルコム作品はPC‐88やPC‐98といったホビーパソコンをメインにリリースされており、それは次作である『ソーサリアン』以降もしばらくの間保たれることになりました(1994年にPCエンジンSUPER CD-ROM2用ソフトとして家庭用オリジナルタイトル『風の伝説ザナドゥ』がNEC-HEより発売、翌年同ハードで『風の伝説ザナドゥII』がリリース。初の自社パブリッシュ作品となる)。結果として『ドラスレファミリー』はファミコン、そしてMSX/MSX2という比較的家庭用ゲームハード色の強いPCでのみ展開された『ドラスレ』となりました。もしかしたら、「ファミリー」とはゲーム機とかけたタイトルだったのかもしれません。

システム的にはサイドビュー視点のアクションRPGの『ドラスレファミリー』は、タイトル通り「家族」がプレイヤーキャラクター。かつて「ディルギオス」というドラゴンを倒した者の血を引くウォーゼン一家が、復活しつつあるディルギオスを打倒するため家族みんなで奮闘します。

プレイヤーは一家のなかから1キャラを選択し、迷宮に隠された王冠を持ち帰るべく旅立ちます。キャラにはそれぞれ能力や特性に差があり、迷宮内で分岐するルートに応じて適切なキャラを使わなければ攻略は困難です。操作キャラの変更は家に帰ることで可能となります。

本作は広大なマップを誇り、上述したキャラ変更を駆使する攻略も相まって難易度の高いゲームとして知られています。一方で、『Legacy of the Wizard』というタイトルで販売されたアメリカでは、日本とはまた異なった評価を得ているようです。木屋氏によれば当時の全米でのセールスは同時期の『ドラゴンクエスト』以上のものであったらしく、また現在では「メトロイドヴァニア」の始祖的な扱いを受ける例もみられます。

迷宮を探索し、家に帰るというシークエンスはまさしく『ドラゴンスレイヤー』を彷彿とさせるもの。かつて勇者たるプレイヤーはひとりで家に帰っていましたが、いまや帰れば家庭があるのです。もちろんそこに「竜退治」はつきものですが。

本作は現在以下のストアで購入できます。

・プロジェクトEGG:MSX版MSX2版
・ニンテンドースイッチ:EGGコンソール MSX2版
・PC(Steam):NAMCO MUSEUM ARCHIVES Vol 2 ※NES(海外ファミコン)版『Legacy of the Wizard』として収録

このほかスマートデバイス向けサブスクリプションサービスPicoPicoでも配信中です。

まとめるなら、『ドラクエ』はナンバリングタイトルをメインシリーズとし、その枠内でのシステムを大きく変えない、伝統を重んじるタイトル群であったといえます。そしてゲームシステムが大きく異なる場合には、その世界観を用いた外伝作品としてシリーズを展開してきました。

一方『ドラスレ』はこれまで述べたように、もとよりシリーズとしてのまとまりはそれほど強くはありません。初期においては木屋氏がゲームデザインを手がけているという共通項があったものの、現在においてはむしろ派生シリーズのほうにこそ統一感が見出せるようなシリーズだといえるでしょう。

拡散するドラゴンとRPGのイメージ

記事のはじめに、「ドラゴン」の伝説が世界中に広く分布していることを述べました。それらはすべてではないにせよ、大枠ではどこか似通っている部分があったり、それでも細部が異なっていたりと様々です。時に影響しあい、分化し、その形状をしなやかに変えながら、人びとのイメージのなかにたしかに生き残ってきたもの、それが「ドラゴン」なのでしょう。

RPGという概念もそのように歴史を刻んできた、というのは言いすぎでしょうか。まだ「JRPG」どころか「RPG」が海のものとも山のものともつかないころ、国産RPGが誕生する時代には、現在とは異なる形質を持ったタイトルがありました。私たちは現在のゲームと過去のタイトル群を対話させることで、その変化を知ることができます。現在生き残っているRPGのかたちは、決して当たり前のものではないのです。

ドラゴンの伝説は、時代を経て複数の文化において交わり、幅広く人びとに伝えられていくうち、もはや源流がなんであったか、そもそも源流があったのかすら分からなくなっていったのだと思われます。コンピューターゲームの歴史はまだそれほど長くはないため、いまはある程度探求することが可能です。それでもたった数十年でRPGに対するイメージが変わったことをみるに、いずれその源流を探ることの意味も顧みられなくなるほどに分化や発展をしていく可能性を秘めています。

「もうあきた。」そう言われたのも幾星霜、いまふたたびの竜退治

今回は「ドラゴン」ということで、『ドラスレ』と『ドラクエ』をテーマにお届けしました。実のところこの2タイトル以外にも、黎明期の国産RPGにはドラゴンのモチーフが見出せます。

たとえば、はじめに挙げた妖精の国、つまり『ハイドライド』(T&Eソフト,1984年)のタイトルには竜の一種ともいえる「ハイドラ(海蛇)」と入っています。さらにギリシア神話=「カレイジアスペルセウス」(コスモス・コンピューター,1984年)における最強の敵はドラゴン(と巨大蟹)ですし、天地のはざま=『夢幻の心臓』のタイトル画面にも巨大なドラゴンが描かれています。加えてアーケード発のRPG『ドルアーガの塔』(ナムコ 現:バンダイナムコゲームス,1984年)のロゴの後ろにはドラゴンらしき姿が見受けられますし、光栄(現:コーエーテクモゲームス)が1982年にリリースした『ドラゴン&プリンセス』は日本初のRPGといわれることがあります。

『夢幻の心臓』(©1984,クリスタルソフト)

国産RPGのはじまりとは一種の混沌であったかもしれません。その夜明けから現在の発展に至るまで、傍らには常に「ドラゴン」の姿がありました。

2026年3月、日本ファルコム45周年を記念して「ドラゴンスレイヤー・プロジェクト」が始動しました。記事執筆時点で日本ファルコムがWeb上に公開しているのは第一作のロゴをあしらったティザーサイトのみ。そして5月2日におこなわれたばかりの「軌跡」シリーズファンミーティングにおいて初めてコンセプトアートが公開され、「ドラゴン」「家」「家族」を軸に据えたコンシューマ向けの企画となると報じられています。かつて国産PCゲーム市場で旋風を巻き起こした『ドラゴンスレイヤー』が、今度はコンシューマに舞台を移し、ふたたび襲来することが期待されます。

一方『ドラゴンクエスト』は今年でリリースから40周年を迎えます。昨年は続編とセットでHD-2Dリメイク版『ドラゴンクエストI&II』がリリースされ、大きな話題を呼びました。また、4年前のティザートレーラー公開以降沈黙を守り続ける最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』は、シリーズを通して音楽を手がけてきた故・すぎやまこういち氏と、キャラクターデザインを手がけてきた故・鳥山明氏両名の遺作ということもあり、シリーズファンは新たな情報を待ち望んでいます。

『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』ティザートレーラー

時代とともに姿を変えるふたつの「ドラゴン」は、これからも私たちを飽きさせることなく、いずれ自らを滅ぼしにくるプレイヤーの訪れを待ち構えているに違いありません。

いかがでしたでしたか?

本記事は特定非営利活動法人ゲーム保存協会の協力のもとお届けしています。同団体の公式サイトでは、毎月特定のテーマにちなんだゲームを、週替わりでショート動画とともに紹介する企画「保存録」を掲載中。

4月のテーマは「ドラスレ対ドラクエ」でした。本記事はそのテーマをもとにGame*Sparkが新たに書き下ろしたものです。

なお、その月のテーマが何だったのかは毎月4本目のゲームが紹介された際にゲーム保存協会から届くメールマガジンで明かされます。保存協会の活動に興味を持たれた方は、この機会にサポーター会員として登録されてみてはいかがでしょうか?

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参考文献

(1)(2)The Untold History of Japanese Game Developers Volume 3 著/John Szczepaniak 木屋喜夫氏へのインタビュー(24P-25P)を参照

協力:特定非営利活動法人ゲーム保存協会

ライター:林與五右衛門,編集:みお,制作協力:ゲーム保存協会編集部


ライター/ 林與五右衛門

2023年4月よりゲームライターとしての活動を始めました。『Fable』や『シェンムー』といったゲームから影響を受けてNPCに強い関心を抱き、彼らがゲーム内でどう息づいているのか観察しています。演劇集団ゲッコーパレードのメンバーとしても活動中。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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制作協力/消えゆく前に残す。日本のゲームを記録し、伝える。 ゲーム保存協会編集部

2011年に東京で設立された特定非営利活動法人。国内で発売されたすべてのゲームの保存を 目指し、現在パソコンゲームを中心に記録・研究を続けています。実物のパッケージや媒体、 そして雑誌・攻略本などの関連資料を収めたアーカイブを運営し、将来的には誰もが利用 できる公共のゲーム資料館として広く開かれた存在を目指しています。劣化が進む磁気 メディアからデータを救出する技術開発にも取り組み、市民の力で、世界のために、 ゲームの歴史を守り続けています。

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