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Game*Sparkレビュー:『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』はあらゆるファンを喜ばせるが傑作ではない

「レゴ」「バットマン」両者のポテンシャルを活かせていない

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Game*Sparkレビュー:『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』はあらゆるファンを喜ばせるが傑作ではない
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レゴの楽しみ方は実に多様です。私たちがよく知るレゴブロックの原型を開発したゴッドフレッドは、1963年に起草した企業理念のなかで「あらゆる年齢層を夢中にさせる」という目標を強調しました。

一方の「バットマン」シリーズもまた、コミックの枠にとどまらず、映画やアニメ、ゲームなど様々なメディアを通して発信され、長きにわたり世代を超えて愛され続けてきたフランチャイズです。

この二つの偉大な歴史が交差する最新作『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』。

あらかじめ結論から申し上げておきますと、このゲームは「レゴ」と「バットマン」双方のファンである私にとって楽しい体験を提供してくれた良作ではあります。過去の「レゴ」シリーズのゲームと比較しても、その操作感や世界観の作り込みは間違いなく秀でた部類に入ります。

しかし、私が本作に「9点」や「10点」を与え、手放しで大傑作だと称賛できるかというと、そう言い難いのも事実です。

なぜなら、本作をアニメ映画『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017年)が提示した革新性や、名作アクションゲーム『アーカム』シリーズが築き上げた歴史の延長線上にある作品として捉えたとき、「少々物足りない」「もう少し工夫ができたのではないか」と感じてしまう部分が多く存在しているからです。

本レビューでは、優れたアクションゲームである本作が、偉大なフランチャイズの歴史においてなぜ「あと一歩」及ばなかったのか、その理由を紐解いていきます。

※パブリッシャーよりキーの提供を受けています。

レゴは「壊す」ことによって創造性を育む

まずはじめに、子どもに向けた最近の「レゴ」のメッセージとは何かを説明しておきたいと思います。

「レゴ」シリーズはブロックを使ったおもちゃだけではなく、今回レビューする『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』などのゲームや映画やアニメといった、ストーリーを描く派生作品が多数存在しています。

その中でも「レゴはどのようなことを伝えたいのか?」を読み解くにあたって、2014年公開のアニメ映画「LEGO ムービー」が特に重要となります。

実はこの作品からひとつのユニバースが生まれており、「レゴバットマン ザ・ムービー」もその一作品として位置づけられています。「LEGO ムービー」を機に「レゴ」は自身のメッセージを改めて伝え直したと考えていいでしょう。

さて、大ヒットを記録した「LEGO ムービー」が打ち出したメッセージとは何なのか。それは「壊す」という行為の肯定です。

劇中では、レゴブロックで作り上げた作品を「接着剤」で固定し、組み換えることなく永遠に模型(それも統一されたテーマをもったもの)のように飾ろうとする行為へのカウンターが大きなテーマとして打ち出されています。

もちろん、「レゴ」というおもちゃは大人向けのフィギュアや模型指向の商品も展開されているため、丁寧にパッケージに描かれたような“お手本”を作って飾る行為を真っ向から否定しているわけではありません。ただ、この映画においては、接着剤を使って作品を固定化する行為が「子どもの創造性を削ぐ行為」として描かれているのです。

続く「レゴバットマン ザ・ムービー」は、その理念をどう引き継いだのか。それは、「バットマン」というレゴよりも長く複雑な歴史を徹底的にパロディ化し、巨大なフランチャイズそのものを「破壊して再構成する」ことでした。

バットマンとジョーカーの関係性をくだらないギャグに変換し、ダークなトーンでは描くことが難しい両者の情けない恥部を炙り出す。

ジョークによってキャラクターを崩壊させつつも、本来あったであろう「バットマン/ジョーカーらしい情けなさ」が強調され、関係性に新たな創造が生まれた傑作となり、シリーズファンから文句なしの評価を得ました。

ここ最近のレゴが打ち出しているメッセージは、このような「破壊からはじまる創造性」であり、長く続くシリーズに対するアプローチとして非常に素晴らしいものだと私は思います。

しかし、これほどの理念を打ち出した映像作品群があるにも関わらず、最新ゲームである『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』は、少々「創造性」に欠けた作品になってしまっているのではないか。そう感じざるを得ないのです。

単調でレパートリーの少ない戦闘

ではゲームそのものの話、プレイの大半を占める戦闘について触れていきましょう。

本作の戦闘はボタンを連打するだけで近くの敵を自動でロックオンして倒していくシンプルなフリーフローコンバット(Free-Flow Combat)を採用しており、2009年リリースの『バットマン アーカム・アサイラム』など過去のシリーズを踏襲しています。

さらに、開発に『バットマン アーカム・アサイラム』のRocksteady Studiosが参加していることも明らかになっていたため、ファンは喜び、私も大いに期待していました。

子ども向けの作品というものは複雑すぎてはいけず、“はじめて触るビデオゲーム”であることを前提にルールを設定していかなくてはいけません。

誤解のないよう明記しておきますが、「子ども向けでルールが明快であること」と「単調であること」はイコールではありません。明快かつ奥深い子ども向けゲームはいくらでもあるはずです。

本作をプレイしてみた感触としては、かなり単調な仕上がりでした。ボタンを連打しながら、カウンターの表示が出たらそのボタンを押す。モーションがたくさんあり、映画さながらのアクションを再現できていれば単調さは緩和されたと思いますが、それほど多くのモーションはありませんでした。

また、バットラング(手裏剣)などを使った遠距離攻撃も行うことができるのですが、戦闘のほとんどは集団戦のごちゃごちゃしたものとなるため、効果的に使える場面はほとんどありませんでした。

もちろんスキルツリーによる強化要素もあります。しかし、戦闘が集団戦メインなのに対し、強化の恩恵を受けやすいのが「単体攻撃」ばかりという噛み合わなさがあります。

一方でガジェットを強化するツリーは戦闘をダイナミックに変化させますが、こちらは隠しアイテム収集で解放されるやり込み要素に近いものです。結果的に常に操作することになるバットマンの基本能力だけを強化していくのが効率的になり、それに終始してしまい、他キャラクターで戦闘を行うのはよっぽどのこだわりがない限りないでしょう。

さらに、中盤を過ぎたあたりで「すべての種類の敵を倒す」という内容のトロフィーが解放された時は驚きました。敵のバリエーション不足と戦闘の単調さは、『バットマン アーカム・アサイラム』も抱えていた問題であり、そこから進歩がないと言わざるを得ません。

大半のボス戦も通常の敵とあまり変化はなく、ただHPが多いだけの敵になっています。これに関しては明らかに過去の過去シリーズよりも明らかに退化した点でしょう。

さらに、ステルス要素もあまり効果的ではありません。ステルスを行ったところで戦闘が劇的に楽になることはなく、むしろ何も考えずに敵の集団に突っ込んでボタンを連打している時の方が、明らかに効率的で面白いと感じてしまいます。

味方のAIキャラクター(ロビンやジム・ゴードンら計6体の中から選択することができる)は敵の目の前を平気で通り過ぎますし(しかもなぜかバレない)、「敵2体を同時にステルスで倒す」といった場面でも棒立ちしているため、協力して戦闘を行っているという実感が持てません。

「味方がいる」という設定が、単に協力プレイ(Co-op)用に準備されただけの機能に収まってしまっているのです。

ただし、一部のボス戦(ポイズン・アイビー戦など)は地形や形態の変化が盛り込まれており創造的でした。加えてダンス風のQTE、障害物を破壊しながら進むカーチェイス、謎解きといったミニゲーム要素がテンポよく差し込まれており、単調さを緩和しようとする工夫自体はしっかりと感じ取ることができました

網羅性があるが物語として機能はしていない

本作は、「バットマン」シリーズの歴史やコンテンツを一挙に紹介するショーケースのような側面を持っています。映画、コミック、アニメの細かなオマージュが散りばめられており、シリーズのファンとしては純粋に楽しめました。

グラフィックに関しても、レゴ関連ゲームだからといって侮ることはできません。バットマンが執拗にこだわるマントの素材の細やかな繊維のキメまでが描写されています。ゴッサム・シティの街並みも、お馴染みのモチーフや建物がレゴブロックを使って再現され、移動のたびに大きな感動を与えてくれます。

コスチュームや乗り物は過去のレゴゲームのようなパーツごとのカスタマイズ機能こそありませんが種類は豊富です。チャプターごとに引用される元ネタが変化するため、それに合わせた衣装やビークルを選べばゴッサムシティへの没入感は高まるでしょう。

このように、美術やデザインに関しては「バットマン」「レゴ」らしい統一感のあるものに仕上がっているのです。しかし、全体のプレイを通して一貫したテーマや物語が見えてこないのはひとつの問題だと感じました。

本作はビデオゲームであり、映画やアニメではありません。ゲームレビューにおいて物語の評価を点数に直結させすぎてしまうのはフェアではないかもしれません。ただ、長い歴史を持つ「バットマン」をパロディ化するところから本作が出発している以上、物語の薄さに触れざるを得ません。

前述した通り本作はショーケースのような側面を持っているため、シリーズ初心者が作品を知る入口になり得ると思うかもしれません。しかし、仮にバットマンを知らない人が本作をプレイし、そこからシリーズの入口になるかというと、難しいだろうと考えます。

例えば、ロビン(ディック・グレイソン)の描写について。彼はバットマンの相棒として長年親しまれているヒーローであり、同時にブルース・ウェイン(バットマン)の養子です。重要なのは、バットマンとロビンが「実の両親を失っている」という共通点をもっているということです。

しかし本作において、そのような背景は本当に簡単にしか描かれません。ロビンの登場シーンはサーカス団の一員として活躍するところから始まります。もちろんそれが彼の出自として重要であり、ゲーム内でも「ガジェットの使い方を学ぶチュートリアルとしてサーカスの芸を行う」という演出として使われ面白い体験となりました。

とはいえ、彼がなぜバットマンの養子となり共に戦う決意をしたのかといった内面的な描写がすっぽり抜け落ちているため、キャラクターとしての深みが感じられません。キャラクターの魅力を感じ、共感するところが無ければ好きになることはめったにないでしょう。

また、本作は合計7つのエピソードで構成されていますが、各エピソードの繋がりはほとんどありません。動機がイマイチわからないヴィランが登場しバットマンを挑発する。

そして、とにかくヴィランを倒し、治安を守らなきゃいけないと信じてやまないバットマンと仲間たちが一緒に戦う。それ以上でもそれ以下でもないのです。

結果として、この網羅性はシリーズファンに向けた「接待(ファンアイテム)」の域を出ていないのではないかと私は思ってしまいました。「レゴ」らしい驚きの組み合わせもほとんどないのです

驚異的に思えないヴィラン達

戦闘だけでなく、パズルや謎解きも本作を構成する重要な要素です。周囲のレゴを壊して新しい形に組み替えたり、ガジェットを使ってオブジェクトを動かしたりするのが基本操作となりますが、いずれもプレイヤーを迷わせない丁寧な導線が敷かれている点は好印象でした。

例えば、R3ボタンを押し込むと、どのガジェットで問題を解決すればいいかがアイコンで表示されます。さらに、間違ったガジェットで対象にフォーカスしてしまっても、正解のガジェットを所持していれば自動で持ち替えてくれるという、非常に親切な設計になっています。

こうした丁寧な導線と多様な謎解きは、本来であればゲームプレイを豊かにしてくれるはずの要素です。ただ本作では、それらを解くにあたってプレイアブルキャラクターたちが「ありきたりだ」「都合がいい」といったメタなセリフをこぼすことがあります。これが非常に冷めてしまうのです。

ギャグのつもりだろうとは思いますが、こうしたセリフはギミックを「本当につまらないもの」に感じさせてしまい、笑いに繋がっているとはあまり思えません。そして、説得力のない(ありきたりな)ギミックだと思わせることは、それを仕掛けたヴィランの脅威や魅力を削ぐことに直結してしまいます。

徹底的にバカにするならその方向に振り切ればいいのですが、そこまでの域に達しておらず、ヴィランの恐ろしさが一切強調されないままストーリーが通り過ぎていくのは残念です。

前述したとおり、本来ヴィランの脅威が描かれるべきタイミングでそれを演出できないのは、「バットマン」のゲームにおいて大きな欠点と言えます。

本作は全体を通してコメディタッチで描かれています。ゴッサム・シティの治安の悪さをコメディに昇華するのはレゴらしさであり、大切なアイデンティティです。

キャットウーマンの鞭で打たれればバットマンはコマのように回転し始めますし、街の消火器を破壊してあふれ出した水に身体を寄せるとサーフィンを始めたりします。

こうした細かなリアクションは非常に良くできているのですが、やはり物語の深部に関係する描写になるとシナリオを進めること(あるいは多くのネタを網羅すること)に終始してしまい、「バットマン」というフランチャイズの魅力が薄れてしまうのは少々残念でした。

総評

ミクロな視点で見れば、ゲームプレイの手触りや美術は非常に優れています。しかし全体を通して見た時、そして歴史あるフランチャイズ作品として見た時、本作は「いい作品」ではありますが「傑作」とは呼べません。

結論として、映画版のように「バットマンを破壊して新たな価値観を作り出す」という領域には到達していません。もちろん、過去の関連作品群が傑作揃いでハードルが上がっている面はあります。

歴代のあらゆる要素をオマージュし、バットマンのレゴ商品を並べて遊ぶような楽しさは確実にあるでしょう。しかし、これは「最新のビデオゲーム」であり、単なる「宝探し(イースターエッグ探し)」以上の体験を求めてしまうのは、いちプレイヤーとしてごく自然な欲望であるはずです。

「レゴのバットマン」であるなら、もっと無茶苦茶なことができたはずです。一度映画でそれを達成しているからこそ、物足りなさを感じてしまいます。

進歩のない戦闘システム、恩恵の薄いスキルツリー、中途半端なギャグ、そして網羅的だが重要性の低いシナリオ。様々な点で肩透かしな結果に終わったことは否めません。

とはいえ、アクションゲームとしての楽しいプレイ体験は担保されています。過去の「レゴ」シリーズの中でも、操作の手触りは非常に良い部類に属しているのではないでしょうか。

Game*Spark レビュー 『レゴバットマン:レガシー・オブ・ザ・ダークナイト』 PC(Steam、Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S 2026年5月23日

シリーズファンを喜ばせるゲームだが進歩はなく傑作だとは言い難い

GOOD

  • レゴらしい楽しいグラフィック
  • 「バットマン」シリーズを網羅するオマージュの数々
  • テンポを良くする意識はある

BAD

  • 戦闘に工夫がなく単調
  • ヴィランが怖くない
  • 物語に一貫性がなく、キャラクターは掘り下げられない



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¥7,253
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:タナカハルカ,編集:みお

ライター/気さく タナカハルカ

インディーゲームデベロッパー・よんとんトマチンのメンバー(ヤムニャン学園)として『ふりかけ☆スペイシー』を開発。著書『海外ゲーム音楽ガイドブック ビデオゲームからたどる古今東西の音楽』『楽曲派アイドル・ガイドブック ももクロ以降のアイドルソング再考』。寄稿『ユリイカ2025年12月臨時増刊号 総特集=大貫妙子』『DAWN N°2』など。毎週新高円寺で会える。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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