
マップ構造と世界観のインスピレーション
ーーかなりオープンな作りに見えます。作家性のある体験とおっしゃっていましたが、リニア(一本道)ですか、それともかなりオープンなマップですか?
Minkoff: これは私たちが「ワイド・リニア」と呼んでいるゲームです。時には非常に広くなることもありますが、基本的には直線的な進行となります。戦闘スペースが極めて広くなることもあり、ある場所では幅が200メートルほどになります。それでも1つの空間から次の空間への直線的な進行であることに変わりはなく、プレイヤーが適切な物語体験、つまり作家性のある物語体験を確実に得られるように設計されています。
ただし、ゲームの世界全体は1つのマップ内に収まっており、遠くに見える目標地点までシームレスに到達でき自分が来た道を振り返ることも可能です。私は過去のゲーム制作でもこの構造を常に愛してきました。連続した空間とプレイヤーとの関係はより地に足のついた没入感のあるものだと感じています。ですので、連続した空間でありながらそこを直線的に進んでいく構造になります。
Kurosaki: 付け加えると、基本的には連続した空間であり連続した時間でもあります。私たちはそういったストーリーテリングを好んでいます。このゲームの話はだいたい24時間くらいと記憶しています。ですから、常にずっと動き続けているような体験と似ています。

ーー物語のストーリー自体に、具体的なインスピレーションの源はありますか?
Kurosaki: はい、私たちが生きているこの世界そのものです。私は永遠の楽天家で、たぶんMinkoffは私よりも少し悲観的だと思います。でも、私たちは上手くバランスを取っています。彼も根は楽天家だと思いますし、キーボード越しに石を投げ合うような、この非常に分断された世界においても、私たちは自分が思っている以上に共通点を持っていると信じています。もし地球に向かってくる隕石があったとしたら、LaylaとCrossのように、私たちもこの実存的な脅威を乗り越えるために協力せざるを得なくなるでしょう。
インスピレーションの源は連帯です。
音声と言語、アクター演技へのこだわり
ーー言語サポートについて教えてください。英語以外の言語の音声はありますか?
Kurosaki: はい。具体的なことには触れませんが、間違いなく複数の言語の音声吹き替えを予定しています。
ーーLaylaがオーストラリアの英語アクセントを使ったのは物語上の意図的な決定ですか?
Kurosaki: もちろんです。私たちのキャスト全員が母国語のアクセントを使っています。私はこれを非常に重視しています。多くの俳優、特に国際的な俳優がアメリカのアクセントで演じることを求められますが、非ネイティブのアクセントをこなすためには精神的なリソースの一部を割かなければなりません。そのアクセントを維持しようとするだけで、必然的に演技の質がいくらか低下してしまうのです。
私はキャストの多くと長年の付き合いがあり、彼らが母国のアクセントで話す一人の人間であることを知っています。だから、私にとって探求するのがとても楽しい部分でした。デルロイを演じる俳優でさえ「本当にアメリカ英語じゃなくていいの?素晴らしいアメリカ英語ができるよ」と言ってきましたが、「過去の作品で全部聞いたよ。でも、私は君自身であってほしいんだ」と伝えました。本当に楽しい経験になっています。
シングルプレイへの特化とIPの再構築
ーーシングルプレイヤーの物語主導ゲームに注力しているとのことですが、いくつかのシステムは素晴らしく、マルチプレイヤーゲームでも最高のものになりそうです。将来的にマルチプレイヤーは完全に除外されているのでしょうか、それとも開発中に検討したことはありましたか。
Minkoff: 将来のことについてはお話ししません。なぜなら、私は自分が取り組んでいるゲームの終わりしか見ることができないからです。将来のことまで考えようとすると頭が爆発してしまいます。これらのゲームを作るのは非常に難しく、多大な労力を要するため集中しなければなりません。
私たちは新しいスタジオでありゼロから技術を構築しています。Unreal Engine 5で構築していますが、独自の物理インターフェース、AIインターフェース、プレイヤーインターフェース、アニメーションシステムを構築しなければなりませんでした。このゲームを最高品質のAAA体験にするためにやらなければならないことが山ほどあるため、そこから気を逸らすようなことはこのゲームを最高のものにする上でのリスクになり得ます。
将来的に色々なことをやりたいと願っているかといえば、もちろんです。でも今は本作に集中して純粋に物語主導のシングルプレイヤーAAA体験に焦点を当てています。

ーーこのカバーシステムをマルチプレイヤーで見られたらとてもいいと思います。将来的にそうなることを期待しています。
Minkoff: 同意します、クールだと思います。しかし、このゲームは完全にシングルプレイヤーに関するものです。はっきり言っておきますが、私たちは非常に野心的なチームです。インディペンデントスタジオの最初のゲームとして、業界を前進させ、誰もやったことのないことをやろうとしているくらい野心的です。すでにリスクのあることをやっており、限界まで手を広げているので、それにマルチプレイヤーやCo-opを追加するのは、チームが最初のゲームでできることを超えてしまいます。将来何が起こるかは誰にも分かりませんが、この最初のゲームを作るにあたって、私たちは責任を持ち、目標としたことを確実に達成したかったのです。成功の秘訣は、視野を狭め、やりたいことを達成することにレーザーのように集中することだと思います。
ーーこのゲームは再構築とのことですが、もとの『クロスファイア』の世界観やIPはどの程度ゲームに組み込まれているのでしょうか?
Kurosaki: たくさん詰まっています。様々なクリエイターによって再構築される非常に息の長いIPが数多く存在します。そういった再構築が成功する場合、クリエイターや新ディレクターは原作を尊重すると同時に原作に馴染みのない人々も歓迎する必要があると考えています。私たちがこのゲームを単に『Crossfire』と呼ぶことに決めたのには理由があります。
プレイヤーに「そのゲームは知らないからこれからたくさんの予習をしなければならない」と思わせたくないからです。このゲームとストーリーは、IPを聞いたことがない人々にも等しくアピールするように設計されています。純粋にトレーラーを見て「かっこいい、彼女の動きはとても興味深い。今までゲームで見たことがない。何ていう名前?かっこいい名前だね。買ってみよう」となるか、あるいはあなたが『Crossfire』の伝承にどっぷり浸かっているなら、私たちはそのIPの良き管理者となります。私たちはその両方を達成しているのです。
難易度やアクセシビリティについて
ーー『Crossfire』の難易度はどのくらいですか?新しいシステムを見ると、難易度は極限まで上げられそうに思えます。
Minkoff: その質問には2つの答えがあります。一つはゲームはプレイヤーにカバーシステムを使わせるほど致死的でなければなりません。もし棒立ちで大量の弾丸を浴びてもランボーのように振る舞えるならカバーを使う理由は全くなくなってしまいます。そこはチューニングの問題があります。敵は致死的で、連携が取れていて、十分に賢い必要があり、ダメージモデルはカバーを有利に使うようプレイヤーに促すほどでなければなりません。
同時に私はミリタリーシミュレーターゲームの大ファンですが、それがニッチであることも知っていますし、私たちはこのゲームを多くの人が楽しめるマスマーケット向けの体験にしたいと考えています。私のキャリアを通じてやってきたことは、私が楽しんでいる非常にニッチなゲームの仕組みを取り入れることです。それらはマイクロマネジメントが多すぎたり、罰則が厳しすぎたりプレイが難しすぎたりするため、非常に幅広い層にアピールするものではありません。それをどうすればスムーズで使いやすいバージョンにできるかを考えるのです。
例えば、プレイヤーが非常に多くの異なる姿勢を取れる他のゲームを見ればわかりますが、通常そのインターフェースは非常にマイクロマネジメントが必要です。アダプティブ・カバーのビジョンの一部は、キャラクターが周囲の環境に合わせて自動的に姿勢をとってくれるというもので、これによりハードルが下がり、より幅広い人々がこのゲームをプレイし理解するのがずっと簡単になります。
「プレイヤーがシステムを使うための必然的な挑戦を感じ、それを楽しむためには一定の致死性や難易度が必要だ」という一定のバランスが存在します。しかし同時に誰もがかつてないほど簡単でシームレスに、そしてより没入感をもってこれらのシステムを使えるように構築しています。それがこのゲームの真のビジョンです。
Kurosaki: ゲームの難易度を一定レベルにする必要がある理由はもう一つあります。 そうしないと物語が崩壊してしまうからです。ゲームプレイが物語を納得させる必要があります。これがゲームプレイと物語が協力して機能する部分です。

ーーアダプティブカバーは敵が一定の範囲内に入ると自動的に開始され、戦闘が終了するとオフになるのか?
Minkoff: いいえ、プレイヤーがアダプティブカバーを開始する必要があります。他のゲームにカバーボタンがあるのと同じように、このゲームにもアダプティブカバーボタンがあります。環境を歩き回り、背筋を伸ばして探索していると敵が現れます。そのままのモードに留まることを選択すればより速く移動できますが、アダプティブカバーモードに入ると、低い姿勢をとり環境に応じてキャラクターが適切なスタンスを選択します。だからといって、敵が近くにいることによる他のアニメーションへの影響がないわけではありません。これは以前私たちが作った他のゲームと同じように、無数のレイヤーが重なり合うアニメーションを備えた高級なAAAゲームです。
カバーモードに入って遅く慎重に動くか、それとも警戒を解いて走るかを選択する決定権はあなたにあります。戦術的な理由でとにかく全力で逃げたい時もあるでしょう。そういう時はより無防備になったとしても、カバーモードから抜け出してできるだけ速く移動したいはずです。このゲームは決闘ではなく待ち伏せのゲームです。ですから、敵と弾丸を撃ち合いお互いがカバーの外に立っているような状況になった場合、「今一番すべきことは、背を向けて走ることだ」と判断するかもしれません。
ーー異なるスキルレベルや能力を持つプレイヤーに対するアクセシビリティの余地はどのくらいありますか?
Minkoff: それは私たちが現在取り組んでいることです。現在プレイテストの段階にありゲームには異なる難易度レベルが用意されます。私たちの意図としては、数多くのシューター、ステルスゲーム、アクションアドベンチャーゲームをプレイしてきた非常に高いスキルレベルのプレイヤーにはそのレベルに応じた適切な課題があり、このタイプの体験にもっとカジュアルなプレイヤーにもそれぞれのスキルに応じた適切な難易度があるようにゲームをチューニングすることです。
しかし強調しておきたいのは、このゲームは挑戦的で致死的にチューニングされておりプレイヤーは知的な戦術を使うことで報われるということです。ただ走り回って撃ちまくるようなことをしたいなら非常に高いスキルが必要です。なぜなら、このゲームは現実世界の致死性レベルにインスパイアされてチューニングされているからです。

アニメーションのこだわりとジャンルの進化
ーー処刑アニメーションが10点満点中10点の素晴らしさでした。これらはモーションマッチングによるものですか?
Minkoff: このゲームには本当に膨大な量のアニメーションがあります。それらのモーションがちゃんとマッチしているかといえば、答えはイエスでありノーです。これらのアニメーションには、モーションキャプチャーされていてモーションマッチングされていない部分とされている部分があります。ダイナミックでモーションマッチングされている部分はアニメーションへの入りの部分です。
多くのゲームで同期された近接キルやステルスキル、攻撃がどのように機能するかを考えてみれば、それらが主に平坦な地面や階段のような非常に標準化された傾斜で行われていることに気づくでしょう。一人が左手で誰かを掴み右手で刺すといったすべてが完璧に並ぶ必要がある場合、平坦な地面でそれを行うのは非常に簡単です。ところが私たちのゲームを見ればわかるように、平坦な地面はほとんどありません。橋の終わりにほんの少しあるくらいで、大部分は起伏の激しい地形です。ですから、同期されたモーションキャプチャーのアニメーションが起こり得る位置に両方のキャラクターを配置できるように、周囲の地形がどれほど複雑であっても、キャラクターを正しい位置に配置するためのモーションマッチングされた数十種類の異なる進入角度を用意しています。つまり、両方の組み合わせです。
率直に言って、私たちのアニメーションエンジニアとアニメーションチームは魔法使いです。彼らが私に「どんな角度でも、どんな高低差でも、キャラクターを正しい位置に配置して同期させることができますから心配しないでください」とプレゼンした時、私は「分かった、信じるよ。上手くいくといいな」と思っていましたが、彼らが達成できたことは私の想像を絶するものでした。

ーーキャラクタークリエイト機能や主人公の選択はありますか?
Kurosaki: これはストーリー性のある物語であり、Laylaにとってかなりトラウマになるような一日です。ですから、彼女に服を着替えるような贅沢な時間はありませんが、ゲームをプレイしている間ロードアウトを選ぶことはできます。ヘルメットを被るかどうか、アーマープレートを使うかどうかといったように、プレイヤーが持てるある程度のカスタマイズ性は存在します。私たちのカットシーンはすべてUnreal Engine 5でリアルタイムに実行されているため、あなたがした選択、選んだロードアウト、彼女がヘルメットを被っているか、どんな種類のヘルメットを被っているかなどが、ゲームプレイだけでなくカットシーンにも反映されるのを見ることができます。
ーー『Crossfire』の登場により「胸の高さの壁」は終わりを迎えるのでしょうか?
Kurosaki: いいえ、胸の高さの壁はサードパーソンのカバーベース・シューターでは「違法」だからです。頭の高さの壁や腰の高さの壁という意味であればそうかもしれません。Minkoffと私は、直角的な形状を特徴とするこれらのサードパーソン・カバーベースシューターの最初期のバージョンを最前列で見てきました。世に出た時は本当に驚くべきもので、まさに業界のパラダイムシフトのように感じました。私たちは、あの時と同様にパラダイムシフトと見なされるであろうものを作ったと信じており、それを本当に誇りに思っています。20年前に最初のサードパーソン・カバーベースシューターが登場した時、業界の誰もが身を乗り出し注目しそこからインスピレーションを得たのと同じように、他のチームが私たちのやっていることを見てインスピレーションを得てくれることを願っています。私にとってそれこそが業界を前進させるということだからです。
私たちは皆、巨人の肩の上に立っています。私たちはお互いに触発されお互いをより良く高め合っています。私たちのゲームが他の開発者にインスピレーションを与え、彼らのシステム、彼らの作品、そして彼らのクラフトを前進させ続けることを願っています。彼らのゲームが間違いなく私たちにインスピレーションを与えてくれるからです。












