先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
海外における『フロントミッション』シリーズの複雑な歴史と、なぜほとんど知られていないのか

『フロントミッション』シリーズは、最も長く続いているメカゲームシリーズの一つです。ヴァンツァーのデザインには「装甲騎兵ボトムズ」からの強い影響が見られ、複雑なメカのカスタマイズも特徴となっています。しかし残念ながら、これらのシミュレーションRPGは海外ではあまり知られていません。
多くの日本製メカゲームと同様に、『フロントミッション』シリーズの多くの作品は、海外ではきちんと発売されることがありませんでした。海外で発売された数少ない作品も、それ以前の作品が正式に発売されておらず、シリーズを理解するために役立つ背景や文脈が欠けていたため、本来想定されていたユーザー層に届けるのに非常に苦労しました。
しかし、初代『フロントミッション』がスーパーファミコンで発売された頃は、日本版を輸入し、かなり詳しくレビューしていたイギリスのゲーム雑誌もあったのです。
「Super Play」とイギリスのゲーム雑誌黄金時代
ここからは、しばらくその雑誌「Super Play」について語ることにしましょう。
1990年代に「Super Play」が登場した頃には、イギリスにはすでに「Mean Machines」と「Computer & Video Games」、ファンの間では単に「CVG」と呼ばれていた、2つの大手ゲーム雑誌が競い合っていました。
「Super Play」はこの2誌とは少し異なっていました。その理由のひとつは、アニメや、日本から輸入したゲームのレビューも行っていたことでしょう。また、非常に才能のあるウィル・オーバートンによる素晴らしいイラストも掲載されており、彼は「ファミ通」における松下進に相当する、イギリスの存在とも言える人物でした。
こうしたイギリスのゲーム雑誌の欠点のひとつは、イギリスのファンの間に、ある種の意見の総意を押し付ける傾向があったことです。つまり、「Super Play」ないし他の大手雑誌ががあるゲームを良い、あるいは悪いと評価すると、それがある種の絶対的な事実であるかのように受け止められてしまい、当然ながらさまざまな問題を引き起こしました。(これは、インターネットにおける個々人の感想の流通がまだ発展していなかったこともあるでしょうが)
この傾向は、その後に登場した雑誌「EDGE」にも引き継がれました。しかし残念ながら、優れた「Super Play」のライターの多くは去ってしまったか、ゲームそのものにあまり関心を持たなくなってしまったため、前述した欠点はそのままでありがなら、レビューは以前と比べ非常に気取ったものになりがちで、そのうえ誤りも多く含まれてしまっていました。それは当時も、そして今でも、当然ながら非常に苛立たしいことです。
いずれにしても、海外、特に欧州における『フロントミッション』シリーズの評価を語るには、この、当時公式に英語版が作られることのなかった日本のゲームをレビューしていた数少ないメディアの功罪は外すことができません。
ザイ・ニコルソンと『フロントミッション』

「Super Play」誌で執筆していたなかでも、イギリスが輩出した最高のゲームライターのひとりだと考えているのが、ザイ・ニコルソンという本当に素晴らしい人柄の人物でした。彼はレビューするゲームを必ず最後までプレイし、できる限り公平に評価しようとしていました。
しかし、メカアクションゲームに関しては、ザイには少々苦手な部分がありました。この点については、後ほど触れます。
いずれにせよ、「Super Play」第31号で初代『フロントミッション』をレビューしたのは、ザイ・ニコルソンでした。
ザイは初代『フロントミッション』について非常に詳細で、ほとんど愛情すら感じられるほどのレビューを書き、しっかりと高い評価を与えました。その結果、ファンの間ではこのゲームが特別な作品として扱われるようになりましたが、実際にはそのほとんどのファンは同作をプレイする機会はありませんでした。
同様に、「Super Play」第43号で『フロントミッション ガンハザード』をザイがレビューした際、ザイは打って変わって同作に対して非常に批判的でした。もちろんザイは、同作に『重装機兵ヴァルケン』と共通するスタッフが参加していることも知っており、『ガンハザード』を『ヴァルケン』と比較してもいましたが、それでもゲームのプレイ感そのものをあまり気にいってはいませんでした。
その結果、それ以降、海外では『ガンハザード』は「悪い」ゲームだというのが一般的な認識になってしまいました。しかし、ここでもまた、実際に自分でプレイして評価を下した人はほとんどいませんでした。
最初に触れた通り、ザイは間違いなく優れたライターであり、ゲームをきちんとプレイできる人物でもありました。しかし、それから何年も後に「EDGE」誌で『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム』のようなゲームをレビューした際にも、やはり低い評価を付けており、その操作方法や戦闘システムをあまり気に入っておらず、十分に理解してもいませんでした。
当時、私はこの件についてよく彼を責めていましたので、おそらく彼にとってはかなり迷惑だったと思います。しかし、それ以降『フロントミッション』が海外で一般的にどのように受け止められるようになったのかを説明するためには、この背景について触れておく必要があると思います。
不完全な海外展開と広がった混乱
「Super Play」のレビューによって『フロントミッション』の存在自体は知られていましたが、初代作品がスーパーファミコン向けに海外で発売されることはありませんでした。初代の正式な海外発売は後年、2007年のニンテンドーDS版まで待つことになり、しかもそれほど大々的に宣伝されたわけではありませんでした。
その間に入るような作品も、『ガンハザード』、『フロントミッション セカンド』、『フロントミッション オルタナティヴ』はいずれも海外で発売されず、『ガンハザード』に対する「悪い」レビューの印象が払しょくされる機会もありませんでした。
実際、『フロントミッション』シリーズとして初めて正式に海外発売された作品は、1999年の『フロントミッション サード』でした。しかし、海外のファンにとっては、前述のような数少ないレビュー記事を除けば、それ以前のシリーズ作品について知る手段も、実際に触れる機会もほとんどありませんでした。そして、当時の日本製のゲームの多くと同様に、当然ながら、この時期、同作の宣伝はほとんど行われていませんでした。
その後、『フロントミッション フォース』が登場しましたが、アメリカでは発売されたものの、ヨーロッパでは発売されませんでした。しかし、それに続く『フロントミッション フィフス』は再び日本のみでの発売となり、『フロントミッション オンライン』も同様でした。さらに、『フロントミッション2089』も日本のみでの展開でした。
要するに、海外のファンが実際にプレイできたのは、基本的に『フロントミッション サード』(と、後年移植された『ファースト』)だけであり、アメリカのゲーマーであれば『フロントミッション フォース』がなんとかそこに加わる、といった状況でした。そのため、実際にプレイできるという意味では、シリーズの大部分が海外の多くのゲーマーにとって未知のままだったのです。
『フロントミッション エボルヴ』と『LEFT ALIVE』

『フロントミッション』がニンテンドーDSで発売されてから数年後、スクウェア・エニックスはアメリカのゲームスタジオに、『フロントミッション』を題材としたシューティングゲームの開発を依頼することにしました。おそらくその背景には、アメリカのゲーマーはシューティングゲームを好むため、これが海外でシリーズを再始動させる最善の方法だという考えがあったのでしょう。
しかし残念ながら、『フロントミッション エボルヴ』はゲームとして完全にまとまりを欠いた作品となってしまいました。最大の問題は操作性とヴァンツァーの挙動で、ロボットの着ぐるみを着て動いている誰かを操作しているような感覚でした。
これは当時、アメリカで作られたメカゲームによく見られた問題でした。メカゲームというものにほとんど馴染みがなかったため、いわば「困ったら母親のところへ逃げ帰る」ように、何でも筋骨隆々の男が巨大な銃を撃ちまくるようなものとして扱ってしまっていたのです。
このアプローチは(他の例のように)失敗に終わり、このゲームはレビューで低い評価を受け、売上も振るわず、海外における『フロントミッション』をほぼ終わらせる結果となりました。
そして、その後に登場したのが『LEFT ALIVE』です。
こちらは『エボルヴ』はもちろん他のシリーズ作品ともまったく異なる方向性を目指しており、ゲーム序盤は徒歩でのステルスを中心とし、終盤になってようやくヴァンツァーを見つけるという構成になっていました。
本作に携わったスタッフは非常に注目すべき著名な人物が揃っており、海外でもよく知られていましたが、残念ながらゲームとしての実際の作り込みがそれを活かしきれませんでした。
物語を重視した構成とステルス要素がうまく噛み合っておらず、ようやく操縦できるヴァンツァーを見つけても、その操作性は単純に扱いづらいものでした。
繰り返しになりますが、当時の日本のゲームは、特に操作方法やカメラなどについて、海外のゲームがどのように作られているのかをまだ学んでいる途中でした。そのうえ、本作がヴァンツァーの操作について独自の方向性を取ろうとしたことも、海外で想定するユーザー層を獲得するうえで、決してプラスにはなりませんでした。
精彩を欠いたリメイクと海外での全般的な関心の薄さ
この時点で、スクウェア・エニックスはオリジナルのシミュレーションRPG作品を再始動させることを決め、ポーランドのゲームスタジオに新たなリメイク作品の開発を依頼しました。
しかし、この頃にはすでに海外でシリーズのイメージが大きく損なわれていたため、これらのリメイク作品が発売された際、多くの人は『フロントミッション』を単に「操作しづらい駄作ばかりのシリーズ」だと考えていました。
これらのリメイク作品も、その評判を払しょくすることはできず、海外では非常に否定的に報じられ、レビューもかなり関心が薄く、実際に提供された内容に感銘を受けていないものが多く見られました。また、「単純に難しすぎる」という不満も多く寄せられていました。
そして話は現在へと戻りますが、現実として、少なくとも海外では、『フロントミッション』は多くの海外ゲーマーの目には、事実上すでに終わったフランチャイズとして映っています。
もちろん、私のように昔の作品をすべて日本語でプレイし、大好きになった例外的な人間もいます。しかし残念ながら、私は一般的な例ではありません(この時点では、もはやそのことを説明する必要もないと思いますが)。
ですから、『フロントミッション』のゲームについて話してほしいと頼まれるのは嬉しいのですが、海外における悲しい現実として、このシリーズはいまだに本当の意味では理解も評価もされていません。
率直に言えば、海外でこの状況から抜け出す明確な方法があるのか、私にも分かりません。しかし、海外の若い世代のゲーマーたちがオリジナルの日本版をプレイし始め、それらが実際に素晴らしいゲームであることに気付き始めています。
そのことは、いつの日か『フロントミッション』がついに海外でも本来のユーザー層に届くのではないかという希望を与えてくれます。しかし今のところ、残念ながら見通しは依然としてかなり厳しく、多くの人がこのシリーズを試してみようとすらしていないのが現状です。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。
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