気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Dream Operator開発、PC向けに8月17日にリリースされたポイント&クリック型パズルアドベンチャー『トゥコニ:森を見守る者』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、絵本のような温かみを持つポイント&クリック型パズルアドベンチャー。森の精霊トゥコニとなり、秋風が吹く美しい森を舞台に、ドングリをリュックに詰めながら冒険していきます。多彩なミニゲームを解きながら、森に暮らす動物たちの冬支度を手助けするのが特徴。日本語にも対応済みです。
『トゥコニ:森を見守る者』は、1,050円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Oleksii 『トゥコニ:森を見守る者』のクリエイティブディレクターを務めているOleksii Furmanです。
最初からとても難しい質問ですね!お気に入りのゲームをひとつ挙げるなら、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』だと思います。あの作品をプレイしていた時ほど、「プレイすること」そのものに心を奪われた経験は他にありません。家族と一緒に体験を共有できる点も素晴らしく、それこそまさに私たちが『トゥコニ:森を見守る者』で目指したものでもあります。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Oleksiiストーリーテラー(物語を紡ぐ者)として、私はこれまで写真、映像、VR、ゲームといった様々なメディアを用いて物語を紡いできました。中でも、異なる領域を横断し、複数のメディアを掛け合わせて真に独自のものを生み出すプロジェクトが一番好きです。
『トゥコニ:森を見守る者』もそうした作品のひとつです。本作は児童向け絵本の美しい世界観やスタイルを取り入れており、その旅をインタラクティブなものとし、すべてのページに命を吹き込むことで、絵本を読むという体験を新たな次元へと引き上げているのです。
私はこれまで主にドキュメンタリーを手掛けてきましたが、2019年にこれまでとは異なる「何か」を創り出したいという強い想いが芽生えました。多忙な日常に追われる人々に対し、一瞬の安らぎと短くとも心休まる逃避行を提供できるような作品です。
私たちが『Tukoni: Prologue』の開発を始めた頃、COVID-19のパンデミックが始まり、世界はさらに混沌を極めました。誰もが家に閉じこもっていたあの年に、手描きで描かれた森の中を静かに散歩することは、まるで「ライフライン(生命線)」のように感じられたのです。
『Tukoni: Prologue』をリリースすると、開発メンバーはそれぞれ自分の仕事に戻り、当時は完全版となるゲームを開発するかどうかも定かではありませんでした。すると、プレイヤーの方々からのレビューが届き始めたのです。平均プレイ時間25分という私たちの作った小規模無料ゲームを世界中の方々がプレイし、どれほどこの作品を楽しんでくれたか伝えてくれました。
大切な人や自分の子どもたちと一緒に冒険の喜びを分かち合い、「この後どうなるの?主人公はどこへ向かうの?」と疑問を投げかけてくれたのです。その時、「いつか必ず完全版を創ろう」と確信しました。それこそが、今も私たちを動かし続ける原動力となっています。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Oleksiiはい、もちろんです!『Tukoni: Prologue』を開発していた際、私たちはAmanita Designが手掛ける数々のゲームから影響を受けました。彼らの作品は、心のこもったアドベンチャーゲームを創り出そうとするすべての人にとって、クオリティと魂の込め方という観点から素晴らしいベンチマークになっていると思います。
ただし、私たちは「1画面固定型」のフォーマットには囚われないアプローチを選択しました。これは、私たちにとって鍵となる重要なデザイン上の決断だったと思います。『トゥコニ:森を見守る者』では、より豊かなゲームプレイやパズル要素を取り入れたかったため、私たちは90年代のアドベンチャーゲームや、それを現代風に解釈した『Lost in Play』や『Röki』といった作品を参考にしました。
アートの観点では、スタジオジブリの作品が私たち、特に私たちのアーティストに絶大な影響を与えています。私たちが生み出す世界や私たちが描くストーリーは、非常に丁寧に創り込まれているという点でジブリ作品に通じるものがあると信じており、生成AIによるコンテンツが溢れる現代において、この「丁寧」という言葉は非常に重要な意味を持つと考えています。また、メインストーリーの進行において重要ではなくても、プレイヤーの皆さんの心に長く残り続けるような、シンプルでありながら味わい深い瞬間を創り出すことも心掛けました。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Oleksii私たちは自分たちの作品やその成果に対して、常に控えめで謙虚な姿勢をとってきたと思っています。だからこそ、プレイヤーの皆さんが温かい応援をしてくださるたびに心から感謝の気持ちでいっぱいになり、その一つひとつの瞬間がとても印象深いものとなっています。
『Tukoni: Prologue』においては、「誰も気づかないような小さなゲームを作った」という思い込みから、「なんと、世界中の人々が私たちのゲームをプレイし、心から気に入ってくれている」へと認識がガラリと変わった瞬間が最も印象的でした。
そして『トゥコニ:森を見守る者』では、作品を発表した当日にウィッシュリスト登録数が3,000件を超えた日が一番印象深かったですね。私は本作のゲームディレクターであるNikita Bohdanovに電話をかけ、嬉しさのあまり大声で叫んだことを今でも覚えています。
個人的にもう一つの忘れられない瞬間は、Steamでのリリース告知を書くために机に向かった夜です。これまで歩んできた道のりと、プロローグ版のリリース時、本作の発表時、そして完全版のリリースに至るまで、素晴らしいプレイヤーの皆さんがどれほど寄り添い支えてくださったかを振り返る機会となりました。本当に何度でも言いたいのですが、プレイヤーの皆さんの驚くほどのご支援がなければ、本作は決して存在し得ませんでした。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Oleksiiフィードバックは素晴らしく、(このインタビューに回答している時点で)本作はSteamで99%という非常に高い「圧倒的に好評」の評価をいただいています。リリース直後の数日間、『トゥコニ:森を見守る者』はウクライナ人プレイヤーの間で欠かせないゲームとなり、私のSNSのタイムラインは、普段ゲームをあまり遊ばないような人々まで含め、本作をプレイする人々の投稿で溢れました。
(※続きの回答には重大なネタバレが含まれるため、本記事の最下部に記載します)
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Oleksii先日、チュートリアルやゲーム内ヒントを中心とした不具合修正および小規模なアップデートパッチを配信したばかりです。さらに来月には、より大規模な「ニューゲーム+」アップデートを計画しており、快適性の向上に加え、クールな新規コスメティックアイテムの追加も予定しています。
――本作の日本語対応状況について教えてください。
Oleksiiアジア市場での展開に向けてはパブリッシャーのGamersky Gamesとパートナーシップを組み、彼らに翻訳作業を一任しました。同社からは本作のローカライズに関する非常に専門的な提案をいくつもいただき、私たちはそれらを採用しています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Oleksiiはい、もちろんです!
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Oleksii『トゥコニ:森を見守る者』をプレイし、私たちのこれまでの道のりを温かく支えてくださった日本の皆さんに、心からの感謝を申し上げます!個人としても、特にPS2時代の日本のゲームから多大な影響を受けました。本作の開発にあたっても、日本の芸術や文化が非常に大きなインスピレーションとなっています。
ここで、本作のリードアーティストを務めたKateryna Ustymenkoにバトンタッチします。
Kateryna少し前、私は日本文化に強い関心を持つようになり、今でもその魅力にのめり込んでいます。中でも私の心に最も響いたのは、自然に対する敬意です。葉っぱ一枚、草の芽ひとつにまで命が宿り、物語が紡がれているというものでした。スタジオジブリの作品に描かれているように、小さな森の精霊たちは私たちが気づきさえすれば、本当にそこに存在しているのです。
『トゥコニ』の世界において、偶然は何一つありません。共に旅する「一枚のイチョウの葉」も、決して偶然バックパックに入ったわけではないのです。イチョウの木は、長い時を超えて存在し続けてきたからこそ、「永遠の命」を象徴しています。そして、それはたった一枚の葉っぱに過ぎないのです!一枚のスズカケノキの葉、お茶のトゥコニが編み込む草の葉、森のシダの茂み…小さな植物のひとつひとつが、それぞれの物語を語りかけています。それはキャラクターたちも同じであり、枕のひとつにさえ物語が存在するのです。
そしてティータイムは、まさに特別な存在です!森の住民ごとに特徴的で、異なる素材があり、お茶から立ち上る湯気でさえ、香りがひとつのダンスを繰り広げるように個々の植物を象徴しているのです!それでいて、焦らずじっくりと準備する時間や、味わう喜びという「変わらない本質」が存在します。そして何より大切なのは、立ち止まってリラックスし、身の回りにある「美」に気づくことなのです。
最後に、親愛なる日本の読者の皆さんへ…どうぞ本作に登場する謎の数々を解き明かしてみてください。本当にたくさん用意されていますし、その細部すべてに意味が込められています!そして、お気に入りの温かい飲み物でティーパーティーを開き、元気をチャージしてください。時にはリラックスすることも重要です。そうすることで、物事を新しい光の中で見つめ直すことができるはずです。(もしかしたら、新しい実績も解除できるかもしれませんね!)
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。
(以下重大なネタバレあり)
質問「リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください」)の続き
Oleksii本作の最後は、森の動物たちと自然の精霊たちがリンゴの木の下で紅茶とパイを分け合うシーンで締めくくられます。ウクライナでは戦争が続き、数多くの人々が故郷や愛する家族から遠く離れて暮らすことを余儀なくされている現状において、このラストシーンは多くのプレイヤーにとって非常に感情を揺さぶられるものとなりました。
私たちが拝見した数々のゲーム配信でも、その瞬感を目の当たりにしました。本作が単なる「ほのぼのアドベンチャーゲーム」という枠組みを超え、プレイヤーの方々に「ホーム(故郷・我が家・家庭)」の温もりや、安心で幸せだと感じられることの尊さを思い起こさせる作品になれたことを、心から嬉しく思っています。








