■万人向けではないからこそ、刺さる人には深く刺さる

『アノマリス』は、不具合も見かけますし、UIも洗練されているとは言い難いところがあります。この点については、今後のアップデートによる改善を切に望むばかりです。
また、大作TPSと比べると操作性で及ばない部分があり、グラフィックも決してリッチとは言えません。TPSというゲーム性にだけ期待して本作を遊ぶと、十分な手応えを得られない可能性があります。
しかし、『アノマリス』の魅力は、TPSとしての完成度だけで左右されるものではないでしょう。奇怪で理不尽な「異界」を探索し、理解の及ばないアノマリーとの過酷な戦いに挑み、実績豊富な田中ロミオ氏が描く物語と向き合う。そうした要素のすべてが、『アノマリス』という作品を支えています。そのため、一部の要素だけに過剰な期待を寄せると、物足りなさが残るかもしれません。
もっとも、人を選ぶ題材ながらも、物語は単体で見ても十分な魅力が感じられました。ただし、探索やバトルと物語が密接に結びついているため、物語だけに惹かれて遊び続けられるかどうかは、人によって意見が分かれるでしょう。
作品の一部だけではなく、ゲームを構成するすべて、あるいは大部分の要素に惹かれ、総合的に楽しみたいという人には、『アノマリス』と相性がいいかもしれません。

世界観からゲーム性まで、万人向けとは言い難い作品です。だからこそ、代わりになる作品はなかなか見つからず、刺さる人には深く刺さる魅力があります。本作が自分に合うと感じた人は、この稀有な出会いをどうか見逃さないでください。そしてこの記事が、出会いを後押しする一助になれば幸いです。
ただし、価格については難しい面もあります。『アノマリス』の通常版は、8,580円(税込)。パッケージ版の実売価格はもう少し下がるものの、いずれにしても8,000円前後の価値を感じられるかどうかは、本作が提供する内容と、自分の好みが合うかどうかにかかっています。

あくまで個人的な感想ですが、減点法で評価すると点数が下がりやすく、加点法なら好みによって評価が大きく上がる。そんな作品だと思います。
『アノマリス』は、決してリッチな作りではありません。それでも、「この味が食べたかった!」と思わせてくれる作品でした。そう感じられたことが、クリアまで遊び続けられた原動力だったのは間違いありません。

万人に勧められる作品ではないかもしれませんが、だからこそ、同じような作品を待ち望んでいた人には、ぜひ手に取ってほしい一本です。














