【特集】日本上陸、そして撤退した欧米MMOの軌跡―『EverQuest』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【特集】日本上陸、そして撤退した欧米MMOの軌跡―『EverQuest』

「大人数でRPGが遊べる」革新的なMMORPGというジャンルが誕生して数十年たった現在。日本に上陸後、名作と呼ばれつつもその殆どが撤退していった欧米産MMORPG。なぜ日本で成功を見ることがなかったのか。本連載では日本上陸の経緯を振り返りつつ、その理由を考えます。

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    「大人数でRPGが遊べる」革新的なMMORPGというジャンルが誕生して数十年たった現在。日本に上陸後、名作と呼ばれつつもその殆どが撤退していった欧米産MMORPG。なぜ日本で成功を見ることがなかったのか。本連載では日本上陸の経緯を振り返りつつ、その理由を考えます。

今なお、海外でサービスを続ける老舗MMORPG『EverQuest』。Sony Online Entertainment(現:Daybreak Games Company)によって1999年にリリースされた本作は、1997年にサービスを開始した『Ultima Online』と共に、MMORPGというジャンルを広く世に知らしめたタイトルとして知られています。

歴史や文化、種族や派閥によって築かれた作りこまれた世界観、「ヘイト」や「クラウドコントロール」システムを採用したパーティーでの戦略性の高い戦闘、数十人で伝説級の強力な敵と「レイド」など、その完成度の高いゲーム性に多くのプレイヤーが魅了されました。この当時画期的ともいえるゲームシステムは、「EQクローン」と呼ばれるタイトル群を生み、現在のMMORPGの多くは大元を辿ると『EverQuest』にその起源を見ることが出来ます。


『EverQuest』日本上陸!


名作との誉れも高い『EverQeust』ですが、日本上陸が正式に発表されたのが、北米サービス後3年が経過した2002年10月。当時、完全日本語化された上で日本サービスが行われるという発表に、上陸を待ちわびていたユーザーは喜びの声を上げていたのを覚えています。一方で、北米サーバーで遊んでいた日本人プレイヤーにとって、日本サービスの開始は歓迎こそするものの、既に構築されていたコミュニティが分裂する可能性を危惧するものでした。

『エバークエスト 日本語版』の日本サービスは、かつて一斉を風靡したメールソフト「PostPet」で知られるISP会社ソニーコミュニケーションネットワーク(現:ソネット)が担当。SOE同様にソニー傘下であり、開発との連携にも期待が寄せられ、現に日本語版のローカライズの質と運営は高い評価を受けます。

発表から数ヵ月後、2003年1月にベータテストに相当するプレビューテストを開始。ローカライズや各種テストの後、データワイプを経て2003年2月5日から正式サービスがスタートしました。開始時の各種族の初期エリアは多くの人であふれ、倒すべきモンスターが不足するという人気ぶり。また、本家で既にリリースされていた5つの拡張パックのうち、低/中レベル向けの「ザ・ルーインズ・オブ・クナーク」と「ザ・スカーズ・オブ・ベリオス」が導入され、コンテンツ量に不足はない万全の態勢で、初めてノーラスに訪れるプレイヤーを楽しませていました。


拡張コンテンツの導入順にも工夫が見られ、海外で5番目にリリースされた中級向け拡張「ザ・レガシー・オブ・イキーシャ」を先に導入。各ギルドやコミュニティによるRaidが活発化してくると、高レベル向けである3番目の「ザ・シャドウ・オブ・ラクリン」と4番目の「ザ・プレインズ・オブ・パワー」の導入が行われるなど、プレイヤーの進行具合に合わせた運営が行われ、GMによる丁寧なサポートやイベントの実施とあわせて、上々の評判を得ていました。


■ガマニアへのサービス移管、そして日本語版撤退へ

2004年1月には、今でこそ一般的になったインスタントダンジョンを実装する6番目の拡張「ロスト・ダンジョンズ・オブ・ノーラス」が導入。しかし、数ヵ月後の2004年6月に突如、ガマニアへのサービス移管が発表されることとなります。当時のガマニアは日本と韓国(既に撤退済み)以外のアジア地域で『EverQuest』のサービスを担当しており、実績は持っていたものの、So-netによる丁寧な運営サービスに満足していたユーザーからは不安の声が聞こえてきます。


9月1日からのガマニア運営からはサービス方針も変更し、今まで有料だった拡張パックを無料配信する大胆な展開が行われます。サービス移管後、リリース予定だった格調パックの導入は行われず、移管から約1年半後の2006年5月末に本家SOEへと移管し、日本語によるサービスは幕を閉じたのでした。


『EverQuest』が日本でヒットしなかった理由を考察

2002年9月の段階で世界43万人、同時接続者数10万人を達成し、当時海外で大ヒットしていた『EverQuest』。なぜ日本で撤退することになったのでしょうか。その理由を考えます。

1.爆発的勢いを持つライバルタイトルの存在

『エバークエスト日本語版』がスタートした2003年当時、日本国内では既にNCsoftの『リネージュ』、ガンホーの『ラグナロクオンライン』、そしてスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXI』のサービスが行われている状況。今ほどPCゲーマー人口が多くない中で、この3つのタイトルは国内におけるMMORPGの主流派の立場を確立していきます。

特に『ラグナロクオンライン』の勢いは凄まじく、2004年には同時接続者数10万人を達成。そうした流れから、国内でのMMORPGは手軽にプレイできるハックアンドスラッシュ系が栄華を極めていきます。一方、「EQクローン」と呼ばれることもある『ファイナルファンタジーXI』も2004年1月の段階でプラットフォームのPlayOnline会員数が世界で50万人を突破したと報告。決してMMORPGプレイヤーが多くない中、国内での知名度に劣る『エバークエスト日本語版』にとって、先にサービスが開始されていた『ファイナルファンタジーXI』や『ラグナロクオンライン』は無視できない影響を与えたと考えられます。

2.遅すぎた日本上陸

また、海外版『EverQuest』のローンチから4年後というタイムラグも国内サービスに影響を与えたことでしょう。本作に既に興味を持っていたユーザーの多くは海外ローンチ時にプレイを開始しており、Veeshanサーバーなどを中心にコミュニティが形成されていました。長い間プレイし続けていた海外版プレイヤーにとって、日本語版への移行は簡単に出来るものではありません。そうした状況を踏まえて海外版のデータを日本語版へと移行する計画もあったようですが、実現することなく終わりを告げます。

3.敷居の高い決済方法

更なる暗雲をもたらしたのは日本語版の決済方法。月額支払いのMMORPGは当時主流でしたが、初期の決済方法には「クレジットカード」か「So-netのプロバイダ料金とまとめて支払う」の2種類のみで、ウェブマネーといったプリペイドサービスは非対応。クレジットカードを持っていないプレイヤーは実質的に遊ぶことが出来ない状況でした。ローンチから約6ヶ月後にプリペイドサービスに対応し、併せて第2サーバー「Faceless」が設置されましたが、時期を逸脱した感は否めません。


4.パーティープレイがもたらす弊害

また、高く評価される戦略性の高いゲーム性もマイナス要因になりえます。パーティープレイを前提とした本作は、適正なレベルでバランスの取れた仲間が居なければまともに遊ぶことすら難しくなります。ローンチ後、ユーザーの平均レベルは上昇して行き、新規ユーザーや平均レベル帯から外れてしまったプレイヤーは、パーティーを組むのも苦労し、結果としてゲームをやめてしまう悪循環に陥ってしまいます。

当時のMMORPGの時流、日本サービス開始時期、月額支払いの敷居の高さ、そしてゲームシステム。こうした要素が積み重なり、海外で大ヒットを記録した名作MMORPG『EverQuest』は日本から撤退したのでした。時代はMMORPGの黎明期、もし仮に日本展開が最低でも1年早ければ結果は変わっていたのかもしれません。

UPDATE(2015/10/18 15:30):記事初出時「ガマニアより7番目の拡張パック"Gate of Discode"が導入された」と記述していましたが、正しくは「SOEへの移管後に"Gate of Discode"の無料配信が行われた」の誤りでした。事実に沿って記事を訂正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。
《水京》

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