西部群像劇『Red Dead Redemption2』の世界に行く前に原点『Revolver』を振り返る【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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西部群像劇『Red Dead Redemption2』の世界に行く前に原点『Revolver』を振り返る【特集】

『Red Dead Redemption 2』では前作の広大な西部を旅する体験を推し進めたキャンプシステムを特徴としています。それは群像劇の要素があるといえますが、実は原点の『Revolver』もそれを持っています。

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西部群像劇『Red Dead Redemption2』の世界に行く前に原点『Revolver』を振り返る【特集】
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西部劇を題材に、殺伐とした荒野を旅する人間を描くロックスターの西部劇をテーマにしたオープンワールド『Red Dead Redemption』シリーズ。その原点では一体何が描かれていたでしょうか?

いよいよ『Red Dead Redemption 2』(以下、『RDR2』)の発売日である2018年10月26日まで、2ヶ月を切りました。大ヒットを記録した前作の持つ、広大な西部を旅する体験を推し進めてた形である「キャンプシステム」が話題となっています。


キャンプシステムではプレイヤーは共に暮らすギャングとの交流や関係の変化がポイントになっています。ここでうかがえることは、前作が西部の荒れ果てた土地を旅していく一人の男、ジョン・マーストンの人生にフォーカスを当てたオープンワールドであったのに対し、今作では主人公のアーサー・モーガンだけではなくその他の登場人物たちの物語も追う形になるという、ある意味で群像劇的な要素を持っていると言えるでしょう。

ところが、さまざまな登場人物の人生もフォーカスする群像劇の要素を持つ西部劇を初代の『Red Dead Revolver』ではすでに実現しているのです。原点を振り返りながら、あらためて群像劇がいかにして生まれたのかを紹介します。

オープンワールドではなかった原点



『Red Dead Revolver』は元々はオープンワールドではありませんでした。本作はステージクリア式のTPSとして開発された作品です。世界観を体験できる部分はそれほど多くはなく、ステージクリア後のインターミッションとして街があるくらいという構成です。

2000年代の初期は、コンソールだけではなくPCゲームでもまだまだ本格的なオープンワールドの時代が到来する前夜でした。Rockstar GamesやBethesda Softworksなどが「シームレスに世界観をそのものに関わることのできるゲーム」をゲームデザインとともに、セールスの結果も先行している時代でした。

その一方、もうひとつ世界観をそのまま堪能する要素のあるTPSがあったと思います。そう、既存の映画の展開をそのままゲームプレイするゲームデザインです。

これは香港のアクション映画の巨匠、ジョン・ウー監督のスローモーションでの銃撃戦を再現するかのような『Max Payne』(2001年)をはじめ、『Red Dead Revolver』もそうした系譜の作品といえるでしょう。こちらはセルジオ・レオーネ監督の『夕陽のガンマン』シリーズを主演した、クリント・イーストウッド演じる「名無しの男」をはじめ、多数の西部劇の要素をモチーフにしています。

2002年の開発中当時のデッドアイの仕様。『レイフォース』などの自動ロックオンに近い。

思えば『Max Payne』のスローモーションで相手を狙うバレットタイムのデザインも、『Red Dead Revolver』のデッドアイに影響を及ぼしているかもしれません。また、デッドアイ時の自動ロックオンは『レイフォース』(1994年)『パンツァードラグーン』(1995年)の流れを感じさせます。初期の開発トレーラーでは、よりそれらを思い出させる膨大な自動ロックオンを見せています。

その後、肩越し視点の定型を作ったTPSである『バイオハザード4』(2004年)ではゾンビ映画のシチュエーションや「インディー・ジョーンズ」のような、映画のシチュエーションを追体験するかのようなレベルデザインが印象深いでしょう。また、チョウ・ユンファ氏主演、ジョン・ウーが監督した『ストラングルホールド』(2007年)のように本格的な映画的TPSが登場するなど、『Red Dead Revolver』は映画的TPSの流れのひとつといえる作品ではないでしょうか。

各キャラクターごとに特殊能力のあるマルチプレイヤーの対戦モード

現代のゲームシーンからすると全然違う意味に聞こえるセリフ

Red Dead Revolver』はマルチプレイヤーでの対戦モードにも力を入れており、メインストーリーモードを進めていくことでさまざまな能力を持ったキャラクターを選択できます。ここで「多くのキャラクターを操作できるようにする」ということが、ある意味で群像劇的な要素を持つことになる要因になっているのではないかと思われます。

荒野で生き抜こうとする男の原点



Red Dead Revolver』のゲームプレイで、主な物語の体験はひとりの西部で生き抜く男を演じることです。賞金稼ぎの男レッド・ハーロウは子供の時、家族と過ごしていたときに無法者に襲撃を受け、家族を殺されてしまいます。レッドが賞金稼ぎとして生きていく中で、やがて家族を襲撃した仇を見つけ出します。


ひとりの男の復讐と生き様を体験していく部分、それは続編『Red Dead Redemption』のオープンワールドによって開花したといってよいでしょう。こちらでは元ギャングであるジョン・マーストンが、荒れ果てた西部にていかに生きていったのかをより追体験します。

ガンファイト以外にも、広大な自然の中で野草を集めたり、野生動物の皮を店で売って生活資金にすることや、ポーカーをはじめとしたギャンブルなど、生活感のあるゲームプレイを通してマーストンの人生を体験していくゲームデザインとなっています。

同時に、「西部開拓時代の終焉」というどこか批評的な側面も込めた時代背景を設定している点も注目すべきでしょう。西部劇は2000年代には下火になっていたジャンルでした。映画の世界で終わったかに見えるジャンルを、ビデオゲームが再び定義する可能性を行ったという意味で「西部劇の終焉」を取り扱う意味は大きいです。ジャンルを始めるために、終わりを見つめたということですから

西部を生きるさまざまな人間たちを描く、その続き


Red Dead Revolver』に話を戻しますと、実はこの作品は主人公レッドだけの生き様を追う形ではないんですね。なんと途中で他の登場人物に操作が切り替わり、彼らの人生も追いかける展開にもなっているんです。

ジャック・スウィフト。二丁拳銃を駆使する英国紳士

ステージが進むと無法者につかまっていた英国出身の2丁拳銃使いのジャック・スウィフトを助けるイベントがあります。その後、彼を操作するステージが登場。ジャックはレッドのデッドアイとはまた違った能力を持っており、2丁拳銃による多重ロックオンの乱射を使います。



本作のヒロインと言えるのがカウガールのアニー。彼女は知事に土地を抑えられてしまい、無法者が襲い掛かるなかたったひとりで牧場を守る戦いの身を投じます。武器はショットガン、アニーを操作する牧場のステージでは、牛に乗りながら戦う豪快なアクションを体験できます。

主人公の従兄弟だというシャドウ・ウルフ。彼のステージはスニーキングゲーム的なデザイン。

軍隊を従える悪漢、ディエゴ将軍。大砲による後方支援の能力を持つ。

他にもネイティブアメリカンの弓使いシャドウ・ウルフ、果ては、敵であるディエゴ将軍にまで視点は移り変わります。西部を生きる様々なサイドの登場人物に視点が移り変わることで、レッドひとりではない西部の人間たちを群像劇的に描いています。

こうした特殊な構成となっているのも、もしかしたらマルチプレイヤーモードで様々なキャラクターをプレイさせる意図があったのかもしれません。どうあれ、この群像劇的な要素は最新作にも繋がっていると思います。

西部を生きる人間たちの群像という意味を引き継ぐ最新作


Red Dead Redemption 2』は初代の持っている「西部を生きる多くの人間たち」の部分をより押し広げる可能性を持っているといえます。『Red Dead Revolver』の後半のステージではこれまでに描かれてきた登場人物たちが集結、主人公レッドとともに巨悪の知事と闘います。そこには仲間の集結という熱い展開と言うだけではなく、レッドだけの物語ではないという群像劇ならではの厚みを感じさせる瞬間です。


Red Dead Redemption 2』も主人公アーサー・モーガンだけの生き様を追うものではない、ということをキャンプシステムは示しています。そこにはアーサーだけではない、数多くの人間たちによって西部が存在しているという厚みを、より深く体験させるものではないでしょうか。

西部劇ではひとりの男の人生そのものをフォーカスすることが多いものです。ですが、RockStar Gamesによる本シリーズを振り返ると、彼らが描こうとする西部とはさまざまな人生が積み重なった厚みそのものなのかもしれません。

『Red Dead Redemption2』商品情報

発売元:Rockstar Games
プラットフォーム:PlayStation4/Xbox One
ジャンル:オープンワールド
発売日:2018年10月26日(金)予定
価格:パッケージ版 通常版 希望小売価格 8,800円+税
   パッケージ版 スペシャルエディション 希望小売価格 10,800円+税
   パッケージ版 アルティメットエディション 希望小売価格 12,800円+税
   ダウンロード版 通常版 販売価格 8,600円(税込)
   ダウンロード版 スペシャルエディション 販売価格 10,500円(税込)
   ダウンロード版 アルティメットエディション 販売価格 12,450円(税込)
※XBOX One版はダウンロードのみ販売です
プレイ人数:1人(オンライン時:未定)
CERO:審査予定

※文中の誤字を訂正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。
《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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