Game*Sparkレビュー: 『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー: 『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』

高難易度ながら気持ちの良い剣戟アクションとして評価を得た『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』をレビューします(一部ネタバレ有り)。この作品は、果たして本当にプレイヤーへの挑戦状だったのでしょうか。「難しさ」という要素を掘り下げながら、その魅力の正体に迫ります。

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『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は優しい作品である。

冒頭から、Game*Sparkのレギュレーションである「敬体(です・ます調)」を破っての結論で始めさせて頂きました。「易しい」ではなく「優しい」です。数々の剣戟と死亡と……そして貴重で偉大な達成感を経て、筆者が感じた本作の印象でした。

新たな年度を目前に控えた2019年3月。フロム・ソフトウェアがアクティビジョンと手を組んで世に放ったのは、純和風の剣戟アクション『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』です。

そのゲームデザインにはこの記事の執筆時点で様々な議論が交わされており、体験が濃密であったことを示しています。本稿でその流れの全てを紹介することはできませんが、難しさとは何なのかという要素にも触れつつレビューしていきます。記事の最後にはボス戦闘の動画も掲載しています。戦闘の感覚がどのようなものかと、ご購入を迷われている方の参考になれば幸いです。

プレイにあたってはPC版で、操作はマウス/キーボードで挑みました。1週目クリアに40時間ほどを要し、現在は5週目に挑戦中で累計70時間ほど、(おそらく)全てのエンディングを体験し執筆しています。

※本稿では攻略・ストーリーに関するネタバレが含まれています。また記事内の動画には暴力的な表現がある為、閲覧の際にはご注意ください。

期待された難易度



E3 2018で発表された時点から、本作はフロム・ソフトウェアのソウルシリーズに連なるゲームプレイ/システムを採用するものと見られていました。一見してとても太刀打ちできそうにない強敵の数々。プレイヤーキャラが死亡してしまうことへの大きなリスク。限られたリカバリー手段や攻撃方法。そうしたストイックな作風は、新たなジャンルとも言うべき評価・議論を世界的に巻き起こしたのです。

当然『SEKIRO』に求められるものも、そうした方向の手触りであったと思います。結果として、そのデザインはこれまでソウルシリーズをやり込んだプレイヤーを満足させるものでした。大きな枠で捉えれば『SEKIRO』もソウルシリーズの仲間と言えそうです。

とはいえ本作は明らかに独立したIPでもあり、少しプレイすれば見えてくる『SEKIRO』の独創性こそ、本作の大成功を決定づけた要因であると理解できます。それがあったからこそ、「フロム・ソフトウェアの作品に挑むのは難しそうでちょっと気が引ける……」と思っていたプレイヤーでさえも、いざ挑んでみたら大きな達成感を得られたと満足できたのではないでしょうか。

それではまず、その独創性をひとつひとつ確認していきましょう。

【弾き】の快感


画面上部・下部にある黄色のゲージが「体幹」を示している

最も注目すべき本作のシステムは【弾き】でしょう。

【弾き】とは、敵の攻撃に合わせてタイミングよくガードボタン(右クリック/L1)を押すと、通常の防御に比べてリスクが少なくなり、逆に敵へリスクを負わせられるといったシステムです。

『SEKIRO』には体幹という概念があり、プレイヤーが敵の攻撃を弾くことで、段々と体幹を崩していけます。体幹は体力とは別のゲージで表示され、これを削り切ると大きく態勢を崩すこととなり、敵にトドメを刺せるわけです。単なる防御では、むしろプレイヤーの体幹が削られてしまうので、積極的に【弾き】を狙っていかなければならない場面が多くなります。

【弾き】の感覚的なやり方としては、『DARK SOULS』『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の盾パリィや、『ストリートファイターIII』で採用された【ジャストガード】がとても良く似ています。

上段で静止して構えた敵……防御で待つか、弾きを狙うか緊張の一瞬

しかしこうした【ジャストガード】のようなシステムは、安定した防御を敢えて解除して、その瞬間に命をかける……といった強いリスク&リターンを狙う上級者向けの技術である場合がほとんどです。よほどやり込んでいなければ、普通は積極的に狙えないものとなります。

『SEKIRO』では、この部分を思ったよりも甘く設定してあります。【弾き】そのものの入力タイミングは意外とラフになっていて、少し早めにガードボタンを押してもきちんと弾いてくれるのです。しっかり敵の攻撃を見ていれば(そこが難しいんですけど)「いまの、タイミング合ってたじゃん!」とつい文句を言いたくなるような場面はほとんどありません。

また、通常の防御をし続けながらでも【弾き】は狙えます。【弾き】の入力タイミングが早すぎても失敗にはなりませんし、とりあえずは通常の防御として攻撃を受けてくれます。要は、敵の攻撃タイミングに合わせて防御ボタンを叩けさえすればいいのです。その意味で、ガードボタンを連打気味に入力してしまっても意外と【弾き】が成功することもあったりします(確実ではなくなっていきますが)。

以上のように、本作は【弾き】のリスクを下げたことで基本技能として土台を築くことに成功しています。【ジャストガード】は、筆者のようなそれほどアクションゲームが上手ではないプレイヤーにしてみればロマンの塊のようなもので、どんなに狙ってもマグレでしか成功しませんでした。しかし『SEKIRO』の剣戟が気持ちいいものとして体験できるのは、この【弾き】入力のやりやすさが起因していると言っても間違いではないでしょう。

高い機動力によって確保された自由度



『SEKIRO』の主人公である狼は忍びです。忍びは速いですよね。いつも電車の窓から眺めていると、次々とビルの上を渡って行ってるので間違いありません。

ソウルシリーズとして括った時、狼は歴代で最も高機動・俊敏な主人公キャラクターです。回避行動やダッシュにスタミナ制限といったシステムはなく、いつでもいくらでも使えます。本作のあらゆる敵キャラクターを含めても、主人公が優位性を保っているのがこの点であり、敵との距離感を選択する余地があります。

状況が厳しいと感じたら離れ、危険な攻撃が来ると思えば瞬時に回避できる。その選択性の高さは本作が随一ではないかと思います。

敢えて離れて、スキの大きい遠距離攻撃を誘発させる

敵の体幹を削るのは(様々な忍具を使うという選択肢があるものの)【弾き】を重ねることが手っ取り早いので、敵に密着して次々と狙うのが良いのは間違いありません。しかしながら、プレイヤーの集中力や瞬発力はそう易々と鍛えられるものでもないので、時には大きく動いて敵のスキを作りだし、時間をかけて撃破するということも可能になっています。

いつでも離脱して仕切りなおせるという感覚は、筆者個人としてソウルシリーズではあまり見出せなかった所でもあり、ある種の気楽さに繋がりました。ボス戦ではできませんが、エリアごと仕切りなおすということも大抵の場合は可能なので、短・長どちらのスパンでも常に自分のペースを保てるというシステムです。「あれ?本当にあの恐れていたフロム・ソフトウェアのゲームだろうか?」という感覚が少なからず筆者にはありました。

もちろんその感覚は悪いものではなく、筆者のようなプレイヤーでも挑める門戸の広さを確保したと評価して良いでしょう。ですがこれによって、歴戦のソウルシリーズ覇者達が『SEKIRO』にヌルさを感じるものではないはずです。

敵との戦闘をキッチリ最速でやろうと思えば、依然として厳しい戦いを強いられます。敵の動きを完璧に把握し、常に【弾き】を成功させ続けるまで重ねたトライ&エラー。それは敵と離れられないからやらざるを得ないのではなく、挑みたい者が相手に近づけばいいだけだったのです。

愛のある敵の攻撃モーション


次に来る攻撃はハッキリしている……問題はタイミングだけだ

断言しますが『SEKIRO』の敵に設定されている攻撃モーションには開発者の愛が溢れています

全ての敵はいくつかの攻撃パターンが設定されています。その時の攻撃は、発動が確定すれば絶対に見てから判断できるモーションとなっているのです。

途中まで同じモーションなのに、攻撃判定が出るときにはどちらかの行動を取らなければ被弾してしまうような、対戦格闘ゲームで言うところの下段か中段かをジャンケン的に選ばせるような攻撃はやってきません。

『SEKIRO』にジャンケンはないのです。これは本当に徹底してあると感じます。

また、数々の攻撃はプレイヤーの為に用意されたかのような予兆が挟まれていて、それに気が付ければタイミングを確実に図ることだってできる訳です。

はじめのうちは、反射神経で全てを処理しなければいけないかのように感じてしまうことでしょう。しかし本作の開発者が、プレイヤーに意地悪をしようと思えば、まだまだいくらでもそれらを挟む余地があります。

ボスキャラ葦名弦一郎の、この斬り込みに愛着を持つプレイヤーは多いはず

強敵と打ち込み続け、何度もやられているうちに「この動きは自分のためのヒントとして用意してくれているな」という一瞬のモーションが、何個も見えるようになってくるはずです。

そうして、「その動きなら、こちらはこうする!」というルールのようなものがプレイヤーの中に組み上がっていきます。その結果として、外からみればあたかも全てを反射的に対処しているかのような戦い方が可能になります。そうなれるように、ひとつひとつのモーションが丁寧に作り込まれているのです。

もはや、開発者の愛としか言いようがありません。

何度もやられることそのものがコンテンツ


背後の裾野に沿った刃は美しさと不気味さを併せ持つ……秀逸な美術は注目に値する

本作に登場するキャラクターは多くを語らず、主人公と深く関わりあう訳でもないのに、不思議な親近感を覚えるのはこのためだと感じます。

「どうだ!この俺のワザを受けてみろ!お前なら出来るはずだ!そうだ!それでいい!」とでも問いかけてくるかのようなボス達との戦闘体験なのです。

剣戟は会話のキャッチボールのようであり、互いを知り尽くすための手段ともなり得ます。このゲームにおいて、ボスに倒されてしまうことは通過点に過ぎません。全ての動きを把握して、倒しきるまでがそのボスとのゲーム体験の全てです。

何度も倒されてしまうことを以ってこのゲームを難しいと断ずることは、判定するための視点が異なると言えます。度重なるトライ&エラーのプロセスそのものが本作の味わうべき体験であり、だからこそ撃破した時の達成感と、相手への愛おしさに繋がる訳です。

疑いを振り払う為のシンプル化



ソウルシリーズと比較した時、大きく異なると言えるのは戦闘スタイルの一本化が挙げられます。機動力によって自由度は増えていますが、本作では主人公の装備やステータスという概念がなく、用意された1セットの攻撃方法を土台にするしかありません。

狼は楔丸というカタナ一本で活路を切り開いていきます。実際の所は、忍義手とよばれるカラクリを仕込んだ左腕を活用することもできますが、これらはいわゆる特殊攻撃という位置づけになります。

筆者がソウルシリーズをうまく走破できなかった理由として、様々な装備品を選定できなかったという問題がありました。力のステータス育成だけに絞って、最も身軽な防具をまとい、こん棒一本を握りしめ、回避行動の僅かな無敵時間でムリヤリなんとかするというプレイスタイルでした。

難しいボスを前にすると、自分の腕が悪いのか、何かクエストを見逃しているのか、装備の相性が悪いのか(こん棒だけではムリなのか)などと、どこに悩みを見出せばよいのか分からなくなってしまったのです。

それに対して『SEKIRO』は複雑なステータス育成や、様々な装備品というものがありません。体力や体幹、攻撃の威力強化は可能ですが、育成要素はそれだけとも言えます。

前方への突き攻撃を無効化できる【見切り】は重要スキル。一番最初にスキルポイント2点だけで取得できる

攻略に最低限必要と考えられるスキルや忍義手のカラクリは、早い段階で取得できるようになっており、開発者から「お前が戦う為の方法はこれで十分だ!」と明示されている印象すら受けます。

ですから、様々な強敵に何時間も負け続けた時に「何かがおかしい……」と疑い始めたとしても、このカタナと【弾き】を使って敵の攻撃を見極めればクリアできるはずだ、という原点に戻れるようになるのです。

先述した、丁寧に作りこまれたモーションを潜り抜けるほど、その確信は強まっていきます。新たなボスに出会うたび「今度こそフロムは意地悪なボスを出してきたのではないか?」と不安になったりもするのですが、撃破してみればそんなことはなかったのだと思い知らされます。ラスボスに至るまで!

優秀な難易度曲線への信頼



SNS等で既に多くのプレイヤーが名を挙げているボスキャラクターである葦名弦一郎は、本作の登竜門とも言うべき総合的な戦闘を楽しませてくれます。

物語全体の1/3を経過するころに出現するこのボスキャラは、それまでおっかなびっくりと進めてきたプレイヤーの心を一度は打ち砕きます。純粋に強すぎるのです。

【弾き】の活用が基礎となることは、本作を遊び始めればすぐに理解できるのですが、むしろどのようにして強気な攻めを構築すればよいのかを見出すのが難しい、という側面があります。結果として、相手の出方を伺いながらスキを突くというスタイルでジリジリと進行するのが、大抵のプレイヤーが踏む最初のステップとなるでしょう。

そこに現れる葦名弦一郎は、それまで対峙したボスキャラと異なり、非常にすばやく、手数が多彩で、遠近共に容赦なく、攻め入るスキを見出せないのです。

どんなに凄腕のプレイヤーだろうと、数百回とこの画面を見ている

ここで多くの死を経験するプレイヤーは、どこかのタイミングでやぶれかぶれの戦法をとる瞬間が出るだろうと思います。その時から、プレイヤーは思ったより攻めていいという感覚を掴めるようになります。

弦一郎および多くの敵キャラは、狼の攻撃をしっかり受けきって、確実に反撃を返そうとしてきます。逆に見れば、プレイヤーの方から斬りかかることで、反撃の形で相手の攻撃を誘発できるのです。

こちらの攻撃に対して、その後に反撃がくるということは、このタイミングで発生する敵の攻撃パターンがいくつあるのかを把握すればよいことになります。先述した通り、『SEKIRO』の攻撃モーションは全て判別可能なものとして作られている為に、あとは自分の目がどれだけ慣れるかの勝負に持ち込めるわけです。

もはやライバルのように感じた敵から「腕を上げたね」と言われる達成感

葦名弦一郎をはじめて撃破した時、筆者は彼がラスボスなのだろうと考えていました。それほど苦労したボスでしたし、達成感の大きな相手でもあったのです。彼を倒したことで「ここまでが『SEKIRO』のチュートリアルだったのだ!」と実感されたプレイヤーは多かっただろうと思います。

プレイヤーにとって彼の撃破は一種のブレイクスルーをもたらします。以後のボスを攻略する上で大きく悩むことに変わりはないものの、自分が何をどう探っていけばよいのかが、戦闘を通して分かるようになるからです。

そして葦名弦一郎が愛されている理由のひとつとして、彼が単純に強すぎるボスとしてではなく、それまでの戦闘経験をしっかり基礎として習得していたかどうかを試すようなデザインとなっていたことが挙げられます。

本作は主人公が忍びであることから、閉じ込められてしまうボス戦を除けば、広い空間や高低差を活用して、ステルス要素やズル賢い方法で攻略することもできます。条件が揃うのならば、中ボスですら【忍殺】(ステルスキル)が可能なこともあり、はじめてまともに正面切っての戦闘を経験させてくれたのが彼だったというプレイヤーも多いのでしょう。

決して理不尽ではなく、突飛すぎることのない、『SEKIRO』の戦闘のエッセンスを丁寧に詰め込んだボスこそが葦名弦一郎という男だったのです。


ボスの中に獅子猿という巨大なゴリラのような敵がいます。彼を普通に倒すだけでもかなり苦労するのですが、その獅子猿はなんと複数で襲ってくる場面があるのです。

本稿で幾度も重ねてきた『SEKIRO』の魅力は、丁寧な敵の設計と【弾き】の体験が大きいというものでした。必然的に、このことはゲームプレイの大半が一対一の真剣勝負で占められることを意味します。実際、そこら辺のザコ敵であろうと2体以上に囲まれてしまうと、とても事故死しやすい状況になってしまうのです。

そこで立ちはだかる強制的な複数ボスとの戦闘は、『SEKIRO』に対する信頼が揺らぐ場面でもあります。「こんな相手はどんなにスキを窺って戦おうと事故死するばかりではないか……」というように。

ここでは具体的な攻略方法について言及しませんが、彼ら獅子猿との戦闘でさえ「こうすれば安全に素早く撃破できたのか!」と見極められる瞬間がやってきます。それもカタナ一本で。それが見えた時、『SEKIRO』が持つプレイヤーへの配慮は最後まで一貫していたと痛感することでしょう。

繰り返しになりますが『SEKIRO』は、ジャンケンのような運任せ、事故死のような理不尽を、一見しただけでは気付きにくいレベルで丁寧に細かく排除されているのです。是非この作品を遊ぶ際には、そうした難易度への信頼を最後まで失わずにいてもらえれば、と切に願います。

とは言え、この複数の獅子猿戦闘はルートによって完全に回避できたりするのですが……。

戦いを彩る特殊攻撃の数々



ここまでカタナ一本でストイックに戦うばかりの話をして参りました。『SEKIRO』には忍義手というカラクリがあり、プレイヤーはいつでもこれを利用できます。

いわゆるファストトラベル地点である【鬼仏】で補充するまで、使用回数に限度があるというシステムですが、その地点間もかなり細かく配置されているので、意外と積極的に活用できます。

盾を構えて進んでくるザコ敵に斧を叩きつければ、その盾を完全に破壊できるなど、クリティカルな解決法となるものはありますが、全体を見渡せばそこまで劇的な活用が可能な特殊攻撃は少ないかもしれません。そのため、特殊攻撃はスキル技も含めて使いどころが難しいものばかりという印象を受けるものの、ボスを含める様々な敵への有効策がそれなりに隠されています。

このモーションは素早い2連攻撃。その後に必ず変則的な連続攻撃がくる。

攻撃を見てから判断できるとは言え、敵の中にはリズムを巧みに崩した変則的な連続攻撃を仕掛けてくることがあります。葦名弦一郎が横なぎに斬り返す形で、すばやく2回攻撃を放ったのなら、それはジャンプを織り交ぜた長めの連続攻撃が開始する合図でもあります。

筆者はこの連続攻撃を全て【弾き】切る自信はないので、2回斬り返しを弾いたあとはサッサと距離を取って、この連続攻撃を舞台の客のように鑑賞します。連続攻撃の最後は大きく振りかぶった攻撃を放つので、こいつに【弾き】を入れて自分のペースに持ち込むのです。

ただ、攻略にスピードを求めたいプレイヤーにとっては、この眺めている時間がスマートではないこともあるでしょう。そんな時にこそ、全てを【弾き】で解決するストロングな思考を一度置いて、特殊攻撃の活用を検討すべきです。

先の弦一郎の連続攻撃であれば、【爆竹】という特殊攻撃を置いてやることで、連続攻撃そのものをキャンセルできます。すぐに次の攻撃へ繋げられるので、より撃破への時間が短くなることでしょう。

体術スキルである「拝み連拳」

スキルの中には体術も含まれています。忍義手ではなく、いわゆる必殺技のようなスキルの場合、一部を除いて使用回数に制限はありません。スキの大きな技が揃っているので、使いどころは難しいですが、そうした大技はスキルツリーの後半に配置されているため「ああ、これはクリアに最低限必要なものではないな」と判断できます。

ボスの中には体幹が強めに設定されている敵もいて、いくら【弾き】を重ねてもなかなか削れなかったりします。そんな時は、直接刃で斬りつけて体力を減らせられれば、体幹の回復速度を落としていけます。

ただし、ちょっとしたスキを突かなければ大抵の攻撃は防御されてしまうので、これを狙うにしてもやはり時間がかかります。どちらかというと体力のシステムは、いつまでも体幹の回復に追い付かず戦闘が終了しない……という問題を回避するためのものという印象です。粘り強く戦っていればいつか勝てる設計なのは、これが功を奏しています。

体幹が固い相手の場合、体術を視野に入れましょう。前方に2連続で正拳突きのような攻撃を繰り出す【拝み連拳】などは、体幹へのダメージが高めに設定されていて、通常攻撃と同じようなリズムで放てるので、より攻略が早くなります。


また、鍵縄を使った移動も本作を特徴づける要素です。一見して踏破できそうもない谷や崖といった地形もスムーズに進めますし、本作で最も忍者らしい操作感を体験できる場面かもしれません。似たような雰囲気が続く中、探索に飽きがこないのは、こうしたメリハリのある設計のおかげでしょうか。

道中ではたくさんのアイテムが見つかります。これらの拾得物はメインストーリーに関わる重要アイテムでない限り、積極的に使う場面があまり明示されません。はじめの頃から入手できる【にぎり灰】は、敵にぶつけて目くらましに使う単純なものですが、大ボス戦でもなかなか活躍します。目を向けてみなければその価値に気づけないアイテム達ではありますが、探索によって得られるものの中にも、実は攻略のカギが隠されていたりするのです。

これらのように、『SEKIRO』の特殊攻撃やアイテムは試してみると意外と活用法があるものです。スキルツリー後半の大技を活用するのは確かに難しいとは思いますが、全編を通してストイックすぎる戦い方をしていてもしんどい時もありますし、華を狙ってみるのも一興でしょう。

純和風を描き切った稀有な美術



世界を相手にしたレベルのゲームタイトルで、純和風が違和感なく描かれた作品は貴重だと感じます。『SEKIRO』のステージ設計は美しく、物語の本舞台である葦名城はこれまでのゲーム史の中でも比類ないほどの壮大さで、かつて我が国に存在していた本当のお城というのは、城下までも含めて「こんな感じだったんだろうな」と想像豊かに楽しめます。

ストーリーの都合上、全体を通して暗めな場面が多くなりがちですが、息をのむような日本の美しい情景が丁寧に描かれているステージもあります。雅な魅力は国外のプレイヤーにも大きな印象を残したのではないでしょうか。

筆者はいわゆる「NINJA」な変わったニッポン描写も好きだったりするのですが、主人公が演じた忍びとしての姿は、国内においてもゲームとしては極めて珍しい丁寧な描写だったと評価できるでしょう。


本稿で挟んでいった画像にも美しいものを感じて頂けると思います。どこか寂しげでありながら、力強い何かを隠し持っているかのような……多くを語らずも芯の強さを感じるような、一貫した美術が高い完成度で築きあげられていたのです。

明解で前向きなストーリー



フロム・ソフトウェアの作品の傾向として、その多くを語らないストーリー形式は伝統のようでもあります。上記に反するような形となってしまいますが、『SEKIRO』はそれでも作品群の中においては明解な部類に分けられるでしょう。

全てのエンディングやサブクエストに挑まなければ見えてこない部分が確かにあるものの、それぞれのキャラクターは自身の目的をはっきりと持っており、それらを通そうと戦いを挑んできます。

様々なボスキャラが愛される形となるのは、そこに「悪」という「悪」がそれほど存在しなかったからなのかもしれません。道としては誤りだったのかもしれないと思っても、彼には彼の、彼女には彼女の切実な願い、目指すべきものが必ず見えていました。


物語は死ぬことのできない定めという、呪いのようなテーマを中心に進んでいきます。その力の淵源となる御子を主と定めて、ひたすらに忠実であろうとする主人公が、プレイヤーに無限のやり直しを許容する説得力として佇みます。

本作は、無限という矛盾を無限そのもので終わらせるという哲学を据えました。為すべきことを為し、あるべきものをあるべき場所へ。ただただ、御子と主人公は正しい姿を求めて奮闘し、様々な敵はそれを利用しようと付け狙っているのです。

副題である『SHADOWS DIE TWICE』とは何だったのだろうと考えます。主人公が【回生】の力で、一度だけ戦闘に挑みなおせるシステムを単純に表現したものだとはじめは考えていました。

しかし主人公である狼は忍びであり、影そのものとは言い難く感じます。御子にとってはこれほど頼り甲斐のある人物もいなかったでしょう。光のような存在だったのではないでしょうか。

影とは一体誰の事だったのかと考えれば、ひとりだけ思い当たる人物がいます。

彼だけは、主人公である狼をこれ以上ない形で裏切り、自身の目的の為に利用したのです。だからこそ、彼だけが作中で本当に二度殺されることとなったのではないか。ほかならぬ狼の手によって。副題の意味はここにあったのだろうと筆者は勝手ながらに考えています。

悪を悪であると滅した狼の旅は恐らく続きます。ダウンロードコンテンツが来るのか、続編があるのかは分かりませんが……魅力あるキャラクター達がもったいぶるかのようにして口にする過去のことや、葦名だけではない勢力の存在など、まだまだ描けるところはたくさん残されているのです。

『SEKIRO』は本当に難しいのか



フロム・ソフトウェアの作品群は確かに難しいものです。『シャドウタワー』や『アーマード・コア』、ソウルシリーズをきちんと攻略できなかった筆者には苦手意識があります。

作品を勧めるという意図のある本稿において、この点は間違いなく明言しておかねばなりません。『SEKIRO』は確実に高い難易度のゲームです。アクションゲームやリズムゲームを、とにかく苦手とする方にオススメすることはできません。

しかしそれでもお伝えしたいのは、難易度設定を常にハード以上にするのが当然であるかのような、やり込みタイプのゲーマーでなくとも、『SEKIRO』には挑むだけの価値があるということです。

弾幕シューティングもできなかったり、対戦FPSでもなかなかガチれなかったり、『バイオハザード RE:2』の方が『SEKIRO』よりも全然難しいと個人的に感じている筆者のようなタイプでも、思い切りハマれたことをここに記したいと思います。

Celeste』の山を登り切って達成感を得られた方ならば、狼となって強敵に挑むことは大きな価値ある体験となることでしょう。『SEKIRO』は主人公と同じように、まっすぐで優しいゲームなのです。



※以下は筆者が挑んだボス戦闘の動画です。動画としてスムーズに撃破したものを録画できるまで、やり直しは数知れず……決して当然のように出来ているわけではありませんが、ぜひご覧ください。また、動画の後にあるアンケートにもご参加頂ければ幸いです。





総合評価: ★★★

良い点

・【弾き】による高い達成感のある戦闘システム
・プレイヤーを順当に成長させる難易度設計
・深いレベルで理不尽さを排した丁寧なモーション
・取り組むべきことが絞られたスリムな構成
・貴重で秀逸な純和風の美術
・【鬼仏】の配置などリプレイ性の高いレベルデザイン

悪い点

・アクション/リズムゲームを苦手とする方に勧められない
・壁越しに狂うカメラワーク
・何度もやらされるムービースキップ
・あまり目立たなかった竜咳と冥助システム
・楽しくないボス戦が少なからずある


「Game*Sparkレビュー」では、読者の皆さまのゲームの感想も募集しています。下記リンクにて質問にお答えください。回答期間は2019年4月11日から2019年4月18日まで。また、集計終了後には「Game*Spark読者レビュー」として記事を公開し、回答やコメントを取り上げる場合があります。

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《Trasque》

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