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大好物てんこ盛りメガトン級!「スターシップ・トゥルーパーズ」【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介する企画「コントローラーを置く時間」。今回は、戦争に対する皮肉の効いた痛烈ブラックジョーク映画「スターシップ・トゥルーパーズ」をご紹介。

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ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。

そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回ご紹介するのは、凶悪な昆虫型生物との激しい戦いをブラック・ジョーク全開で描いた傑作「スターシップ・トゥルーパーズ(原題:Starship Troopers)」(1997)です。

視覚効果の巨匠による、驚異の映像革新


本作は、ロバート・A・ハインラインの名作SF文学にして、1960年のヒューゴー賞受賞作品「宇宙の戦士」(早川書房刊)を、「ロボコップ」(1987)「トータル・リコール」(1990)の鬼才ポール・ヴァーホーヴェンが映画化した作品。新兵募集のための派手なプロパガンダ放送ではじまる本作は、血肉飛び散るスプラッター的暴力描写の連続と、お色気なラブシーン、痛烈な社会風刺を含めたインパクト抜群の奇天烈快作(怪作)で、いまなおカルト的人気を誇る名作です。

原作は兵士が装着する人型装甲服、いわゆる“パワードスーツ”のアイディアをいち早く考案し、この概念を広く普及させたことで非常に有名。ですが、この原作の特色といえるパワードスーツ要素は潔く捨てられ、映画版では、醜悪な昆虫型宇宙生物アラクニド(通称バグズ)と人類の凄絶きわまりない争いに焦点を絞っています。映像化は不可能とさえいわれた伝説的文学を、当時のCG/VFX技術を最大限に結集し、潤沢な予算であえてB級くさい宇宙戦争を描き切っています。映画の世界観だけを見ると『地球防衛軍』シリーズを彷彿とさせるし、原作のパワードスーツ要素は『Fallout』シリーズで同じ空気を感じられる気もします。

さて、コンピュータによるデジタル表現の向上および拡大と、これまで一般的だったアナログな特撮シーンの両面を取り入れた本作は、映像技術の過渡期をまさに映像としてまざまざと見せています。封切り当時はちょうど映像技術がアナログからデジタルへと移行するタイミングだったこともあって、こうしたコンピュータグラフィックスとアナログな特撮の双方の導入は必然的な流れだったのでしょう。ゼロ年代に入ると特撮はCG/VFXに推移するのですが、そういった意味で「スターシップ・トゥルーパーズ」は映像技術の転換点をヴィジュアルとして目の当たりにすることができるのです。

本作の視覚効果を担当したのは、ヴァーホーヴェン監督とは「ロボコップ」でチームを組んだ過去を持つフィル・ティペット。「スター・ウォーズ」(1977)では、かの有名な“モンスター・チェス”のシーンを担当し、「ジュラシック・パーク」(1993)ではCGの恐竜にモーションを伝達する特殊装置を開発するなど、業界では視覚効果の巨匠として崇拝される存在です。本作の視覚効果はフィルが主宰するティペット・スタジオが先導し、長年の実績で培った特撮の技術と、コンピュータによる革命的映像が一流クリエイターの手によって実現したのです。

これはジャンルの枠を超えたメガ盛り映画だ!


この映画は、ジャンルをひとつに特定することなどまず不可能といっていいでしょう。なぜなら本作は、サイエンス・フィクションというカテゴリーである以前に、ボーイ・ミーツ・ガールな青春群像劇でもあるし、本質的には悪趣味なゴア表現をふんだんに盛り込んだスプラッター映画であるとも言えるでしょう。しかも、激しい人体欠損や血みどろの残虐シーンといったグロテスクな描写を、莫大な予算をかけて製作しているのだから、(あえてこの言い方をしますが)まったく悪趣味きわまりないのです。

また、男女混合のシャワーシーンや濡れ場といったお色気要素を映してみたり、原作とはまるで別物なエンターテイメントとして成立させている点こそ、ヴァーホーヴェン監督が鬼才と呼ばれる理由なのでしょう。こうした種々の要素がまさに“メガ盛り”のごとく胃を圧迫し、ひとつの作品でここまで多様な表現を内包できるのかと、良い意味で呆れてしまうことでしょう。

さらに映画は、原作で問題視された暴力礼賛と戦争肯定な思想を、ヴァーホーヴェン流の皮肉で風刺し、全体主義国家のプロパガンダ、あるいはファシズムの精神などなど、多岐にわたる政治風刺を色濃く描写しているのも特徴的。本作が描く未来は、性別や人種といったあらゆる差別を廃した理想の世界に見えるでしょう。しかし、兵役を軸とするヒエラルキーが確立され、連邦軍の兵士には“市民”としての保障が、兵役に就かない者は“一般人”という限定された権利が与えられ、軍が主体となる新たな格差が生じています。

作中のある女性キャラクターの言葉からも明らかになるように、この世界では“一般人”は出産を許されていないといい、また原作では参政権は兵士、すなわち“市民”にのみ与えられた権利でした。この未来世界の格差社会は平たくというと、兵士になれば特権が得られるということで、まさに軍隊を中心とする軍国主義的な政治体制と、公権力を絶対とするファシズムの思想、極右翼的なプロパガンダを盛大に風刺したメッセージが全編にわたって示されています。

戦争、青春、政治、お色気、スプラッター…胃もたれ必至のメガ盛り映画をぜひ!



現在、映画「スターシップ・トゥルーパーズ」はU-Next/Amazonプライム/dTVなどにて有料配信中。監督自身が好きなものを徹底的に詰め込んで、監督自身が嫌いなものを徹底的にバカにした映画こそが「スターシップ・トゥルーパーズ」なのかもしれません。
《Hayato Otsuki》
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