Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ 2』 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ 2』

兄弟による旅路を描いた『ライフ イズ ストレンジ 2』をレビュー。プレイヤー次第では、人生を写す鏡にもなりえる作品です。

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偏見



前作『ライフ イズ ストレンジ』ではオレゴン州の港町“アルカディア・ベイ”を舞台に、時を操る能力を手にした女子高生“マックス”の数奇な運命を描いていました。ひとつの町を舞台に展開されるほろ苦い「学園ドラマ」とバタフライ・エフェクトやカオス理論などの「SF要素」を融合させた、独特の雰囲気が特徴です。時を操るギミックも相まって、多くの人の心を掴みました。


しかし、本作は打って変わってロードムービーのような展開。エピソードごとに舞台が異なり、テーマはより現実に沿ったものになりました。そして何より「過去を変えることはできない」……作品としての毛色が大きく異なるのです。ここが前作のプレイヤーにとっても大きな戸惑いの種になる部分だと感じました。

本作の主人公となる兄弟は、母親が失踪した片親家庭の子供で、メキシコ系の移民二世。事故で“警官殺し”の汚名を着せられたのちに展開する逃亡劇は、非常に重々しいものです。前作でも衝撃的なシーンやバイオレンスな表現はありましたが、本作ではよりビターに演出されています。心安らぐシーンもあるのですが、常に付きまとう“逃亡劇”という背景が絶望に拍車を掛けています。

シリーズ作品として「縛りがない」のは、テーマと密接に絡みあった物語を展開する上で大切であると言えますが、非常に思い切った決断です。個人的には楽しめましたが、今回の作風を受け入れられない方もいるでしょう。まして、「人々の違い」というセンシティブなテーマに深く切り込む物語は、人によっては穏やかに見ることのできないものです。主人公たちは「移民二世」ですし、少なからず異なる信条を持った人間たちの物語が描かれます。そうした題材に不安や疑問を感じる方にとっては、評価しにくい面もあるかもしれません。

描かれるうち、いくつかのテーマは比較的政治寄りです。これも本作の物語に感じる重苦しさの一因となっています。特に「人種」による差別などの描写は、人によっては非日常的に映るでしょう。しかし、エピソード1で出会う“ブロディ”のセリフを借りるのであれば、「政治と切り分けられるものなんてない」。 身近に横たわる問題として、確かにそこにあるものです。実際、劇中でのショーンもシアトルにいたときには「人種」という違いに苦しんでいませんでした。運命に翻弄され、立場が変わっていく中で初めて気付く。「運命」を強調する、クセの強いスパイスです。


かくいう筆者も、序盤の展開には戸惑いを隠しきれず心配したファンのひとりでした。しかし、「運命」を軸にした物語はまさしく『ライフ イズ ストレンジ』です。前作を汲んだセリフもあり、思わず心を揺さぶられました。シリーズファンを狙ったと思われるその目配せは決して媚びたものではなく、プレイヤーによっては気付かないのではないかと思えるほど自然なもの。エピソード1の終わる頃にはすっかり感情移入し、物語に没入していました。散々前作について言及しておいてこう述べるのもおかしいかもしれませんが、『ライフ イズ ストレンジ 2』を評価するのであれば前作『ライフ イズ ストレンジ』の思い出は切り離すべき……とも思います。なにせ、それぞれが違う“人生の物語”なのですから。

エピソードごとの区切り


家族、人種、犯罪……そういった縁の渦巻く世界で、何を見出すのか。そこが本作のテーマです。各エピソードにもテーマが配置されていて、例えばエピソード1「旅立ち」では「人生」と「旅」、エピソード2「ルール」では「家族」と「ルール」が中心に物語が展開されています。

前作でもエピソードごとに盛り上がる場面は用意されていたものの、全ての答えがエピソード5に収束する、というイメージでした。本作ではエピソードごとにひとつの物事が決着する、という感触。歯切れがよくなったとも言えるでしょう(もちろん、最後には全てが収束する大きな答えが用意されています)。日本での展開は「コンプリートシーズン」形式でしたが、海外ではエピソードごとに期間を空けて配信される形だったので、それを意識してのことかもしれません。また、ロードムービーの特色である「道中での出来事が物語となる」という語り方にも合致します。各エピソードが際立ち、語りたくなる部分が増えたのは嬉しいことでした。

魅力的なキャラクターたち



主人公はもちろん、キャラクターひとりひとりがそれぞれの思想を持ち、そのもとで行動しています。「旅するジャーナリスト」、「過激な愛国者」、「信仰と規則を重んじる人」……。優しく接してくれる人もいれば、横柄な態度をとる人も珍しくありません。“いかんともし難い存在”としてある他人は、実にリアルです。心が温かくなるほど「いい人」もいれば、信じられないくらい「悪い人」もいます。その描き方は容赦なく、強いストレスを感じることがあるかもしれません。


特に主人公の二人には、性格に由来する能力が備わっています。受け容れることで周りの人間に親しまれるショーンは、絵の才能があり、日々スケッチに勤しむアーティストの卵。アクティブで、周囲に影響を与えるダニエルはテレキネシスで物に触れずとも干渉できます。多様な人格に揉まれながら、彼らがどう変化していくか、というのも魅力のひとつです。

辿り着く答えは


選択によって物語が分岐する、というシステムはありふれたものに思えるかもしれません。しかし、何気ない選択が及ぼす影響が大きいのが『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの特徴です。ただ、前作は「時間を巻き戻す」ことができましたし、展開もなんとなく予想ができるような感覚がありました。しかし、本作では理不尽とも言えるような「運命のいたずら」に翻弄されます。具体的な箇所については言及しませんが、きっと後悔のない選択ができる人などいないでしょう。


加えて、責任を持たなければならないのはショーンの未来だけではありません。弟であるダニエルを導くのも重要です。兄弟は二人でひとつ。弟の生き方も運命に大きな影響をもたらします。

本作のキャッチコピーは「ひとつの選択だけで人生は決まらないから」。まさにその通りです。複数のエンディングがある本作では、旅路の果ても人それぞれになることでしょう。そして最後の選択、下した決断が正しいと思えるかどうかはプレイヤー次第。明確なメッセージもないため、各々がこの作品から受け取るメッセージも違います。辿り着いた答えに納得がいかないこともあるでしょう。実際、筆者はエンディングを見終えた後、少し悩みました。もっと違う生き方があったかもしれない……と。そうして考えることこそがこのゲームの意義であり、『ライフ イズ ストレンジ 2』というゲームが示したかったものなのだと感じました。


《杉元悠》
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