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Game*Sparkレビュー:『Project Wingman』

キャンペーンのレベルデザインにひどい荒削りさが残るものの、飛行感そのものや、インディーレベルを超えたグラフィックは素晴らしい。

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※注意!この記事にはゲームのネタバレを含みます。

Project Wingman』は戦闘機によるコンバットフライトアクションゲーム。Sector D2が開発し、Humble GamesとともにPC(Steam/Humble Store)向けとして、2020年12月2日にリリースされました。Kickstarterでの資金集めから着々と開発が進められ、満を持しての今回の配信開始に首を長くして待ちわびたファンも多かったことでしょう。

『エースコンバット(以下AC)』シリーズフォロワーとも言うべき本作は、随所に同作へのリスペクトを散りばめつつ、製作者の「こういうフライトシューティングをやりたい」という気持ちが強く込められたものだと感じました。UE4で作られたグラフィックは高水準で、機体はもちろんのこと、気象表現もしっかり表現された美麗さは素晴らしいものです。ストーリーは、世界の敵(?)である連邦との戦争を大筋に進み、ジャンルのお約束的に主人公の活躍が大きく影響を与えていくというもの。戦闘は、激しいドッグファイトが熱く楽しめ、現実ではありえないような超兵器も登場します。

本作はキャンペーンとコンクエストの2つのモードがありますが、まずはキャンペーンを中心に「グラフィック」「ストーリー」「戦闘」について触れていきたいと思います。本作のもう一つの特徴である全編VR対応については、筆者環境においてVRヘッドセットが手元にないため、除外したレビューになります。ラブリーなAWACSと共に早速やってまいりましょう。

グラフィックは美麗で迫力満点

おそらくライセンス関係によるものと思われますが、本作に登場する戦闘機はすべて架空機です。とはいえ超兵器めいたオリジナル機体は一部だけで、ほとんどは現実の機体の名称とディティールを少し変更した程度。戦闘機ファンであればその絶妙さに思わずクスリとすることでしょう。

グラフィック自体については、コックピット内部は計器類の表示が固定で細かいゲージに至ってはコピペが散見されるものの、機体外装はフラップの動きなど含め高度な作り込み。気象関連は、機体挙動へのフィードバック込みで見事に表現されています。例えば、雲中を通過すると乱気流によって機体は揺れ、キャノピーに付着した水滴がきちんと後方へ流れていく等。筆者が特に唸らされた部分は雪の表現です。実機の航空機(編注:本レビューの筆者は軍用機経験者ではないものの現役の航空パイロット業)で飛んでいる時に窓から見える景色とほぼ同じものがゲーム内で再現されており、思わず見入ってしまうほどでした。

一方で、雷や火山の噴火などはいささか大げさでしたが、全体的に実際の景色を忠実に再現しつつ、それらをベースにゲーム的な表現へと上手く落とし込んでいます。

この表現があるからこそ、大空をバックに、敵味方が入り乱れてミサイルの撃ち合いをする光景がさらに美しく彩られていると感じます。

ストーリー、世界観は魅力的だがわかりにくい

まるで「ロボットの方のAC(アーマード・コア)かな?」と思わせるような世界観の傭兵視点で展開する、キャンペーンのストーリー。ありきたりながらも世界観自体の魅力やジャンルのお約束を踏まえた展開自体の求心力はあるものの、初見では何が起きているのか非常に分かりづらいという印象。特にミッション中の無線会話については、戦闘が激しいため聞き漏らしがちでした。この、静と動の要素を分けることなく詰め込まれた作りは、後述するレベルデザインの不味さにもつながっている部分です。

物語の大まかな流れは王道で、悪逆非道の連邦に対し、カスカディア国が主人公“モナーク”所属するシカリオ傭兵団を頼り、絶望的な状況から一矢報いてめでたしめでたし……かと思いきや、ラストミッションでどんでん返しが起き、結局はカスカディアは廃墟と化して、唐突に物語は幕切れ。ラスボスから戦闘中に聞かされる恨み節の意味がさっぱりわからず、エンドロール中もずっと首を傾げていました。おそらくは戦場の不条理さを表現したかっただろう意図はともかく、中途半端感が募る印象でした。

このストーリーや、語られていない部分の世界観については、キャンペーンの進行で解放される「ファイル」による解説で、ある程度は補完されます。ちゃぶ台返し的に、かつフォローなく終わったキャンペーンクリア後の世界情勢についても記されているのは、同種の展開を見せる作品の中ではまだ有情な方でしょう。「ファイル」では勢力、ワールド、各登場パイロットの設定の閲覧が可能で、フレーバーとしては充分な内容です。しかしながら「何がどうしてこうなった」という部分をしっかり把握したい場合は、フリー・ミッションモードで各ミッション中のブリーフィングや会話を確認する必要を感じたことには変わりありませんでした。

個人的に、ストーリーに熱が入り盛り上がりはじめたと感じたのはミッション15~16から。何発もの巡航ミサイルを受けて地獄になった都市プレシディア。生き残った主人公含む傭兵団が、カスカディアとある「取引」をして今後の方針を決定していくところに、泥臭くも渋い格好良さを感じました。ゲーム中、おそらく唯一と言っていいムービー(といっても、映像は定点カメラで移された倉庫内で、聞こえるのはキャラクターたちの会話のみです)は、本作中では素晴らしい演出でした。

敵が本気でぶつかってくる激しい戦闘

シチュエーション自体は「溶岩の上スレスレを飛びながら建物の中に飛び込み、内部の目標を破壊する」「超大型航空機を破壊する」「大量の巡航ミサイルを撃ち落とす」……などなど要所要所で盛り上がるポイントを用意してくれている本作。

戦闘のフィーリングも素晴らしいもので、ドッグファイト自体は激しく、そして心地よく楽しむことができます。敵は難易度イージーでも容赦なくプレイヤーに襲いかかるため、非常に緊張感のある締まったゲームプレイに。こちらの武装は豊富で、通常ミサイルに加えて最大で3つの特殊兵装を搭載し(機材による)、フレアも時間回復式で無制限に使用可能です。

これらのおかげで、力を出し惜しみすることなく、存分に敵を落としていくことができます。しかも一方的なバランスではなく、敵も積極的にミサイルや機銃を放ち、戦闘機においてはフレアによる回避行動もとるため、考えなしに突っ込んでも簡単には勝てません。特に一部のエース機は理不尽な程の超機動でこちらの攻撃を躱し続けます。そのためプレイヤーはタイミングを読み的確に仕留めていく戦略性も求められ、苦労も多いですが、それが上手くキマると実に爽快。まさにここが本作の戦闘を激しく、そしてより引き締まったものにしている部分でとても好印象です。

機体の操作や挙動については、ACシリーズと比べ多少の違いはあれどストレスは全くありません。強いて言うなら機銃やロケット弾などは偏差が設定されているので、それを考慮した上で攻撃する必要があります。それでもACシリーズと比較して当てやすい印象で、筆者は殆どのミッションでお世話になりました。ハイGターンは(一部除き?)存在しないものの、前述の通り無制限のフレアのおかげで戦闘中に特に不便を感じることはありませんでした。ただしロックオン機能がしばしば暴れん坊で、武装を切り替えただけでロックが外れたり、いつの間にか別の敵機へ切り替わったり、果ては明後日の方向にいる敵を順繰りに選択してから目の前の敵をロックするなど少々もどかしい部分がありました。

また一部機体は速度をほぼゼロの状態にして、ホバリングめいた挙動が可能。その便利さから、筆者は後半のミッションからほぼ「ACCIPITER(元ネタはハリアー)」を使い倒すほどでした。特殊兵装にURMとCGPにフレアを積んだ時の当機は、もはや空中固定砲台とも言うべき活躍ぶりで、対地対空の敵を軽く捻るだけでなく、前述の理不尽な超機動を繰り返すエースにも着実にダメージを与えられます。

詰め込みが悪目立ちするキャンペーン

一方で、本作のキャンペーンのレベルデザインについては、素晴らしい戦闘に比して大きな課題を抱えていると感じます。「ミッションが長い」「攻撃目標が多い」「中間ポイントが無い」……一見すると良い部分かと思えますが、実際はこれらのおかげで、単体では骨太で爽快感があるはずの戦闘が、ミッションでは苦痛な作業になりがちでした。

ミッションの基本的な流れは、開始とともにまず第一波とも呼べる「優先攻撃目標」が対空対地合わせて10体以上がマップに現れます。それ以外の敵も含めると合計20体以上になることもしばしば。優先目標を一掃すると、「ミッション更新」の表示とともに、第二波が同程度の規模で出現。機銃またはミサイル一発で落ちる敵や、複数回の部位破壊でやっと倒せる敵が、そこそこ広範囲に散らばるので、マップを動き回って地道に処理していきます。味方も一応働いてはくれますが、プレイヤーが遠くに離れると、途端に何もしなくなるので、全面的に頼ることはできません。また前述の通り、本作では雑魚も十分な戦闘行動を行うため、相手の数が増えるほど大変な“作業”となり、プレイヤーの集中力と精神力を削ぎに来ます。

それらを全部片付けたら、最後に第三波、または敵エース機とのボス戦が始まります。エース機には体力ゲージが設定されており、彼らを倒すにはミサイルを何発も当てる必要があります。繰り返しになりますが、一部のエースは、理不尽なまでに鋭利な挙動で翻弄して来る上に、嵐のような激しさのビーム攻撃とミサイル乱射を行ってくるのでかなりの難易度。

これが第一波直後に始まったのであれば、おそらく集中力も残っており、爽快感を得られたと思います。しかしながら、こちらはずっと緊張感のある戦いをしてきて精神的にも満身創痍。しかも途中でやられたらまた最初からというプレッシャーもあるため、キャンペーン中盤以降は「もういいから早く終わらせてくれ……」という懇願に近い気持ちでプレイしていました。

中間チェックポイントが存在しないということは、墜落/撃墜されるとまた同じミッションを初めからやり直さなければなりません。この時、ネックになるのがその長さ。攻撃目標が非常に多いため、クリアには平均して15~20分程度の時間がかかります。そのため序盤ならともかく、終盤でやり直しになるとかなり心に来る辛さがあります。

演出や展開に多少の違いはあるものの、自動生成でもないはずなのにそんな詰め込み感のあるミッションが代わり映えせず全部で21回続くのが本作のキャンペーンモード。本音を言うと13時間に及ぶプレイの途中で何度か心が折れかけました。

ここで比較のため、似たようなアーケードの文法に則った『AC7』と『STAR WARS:スコードロン』のミッションをランダムでプレイしてみます。まずミッションクリアまでにかかる時間について計測したところ、ムービー演出を除いた上でどちらも10分程度。ほどよい長さで、どちらも本作と似たようなステージ進行ではありながらも快適でした。

これはおそらく、細かい部分で差異はありますが、敵の出現数が少なく、配置もステージ進行とマップに沿っているためだと推量します。また、ムービー演出の挿入などを含めた展開のメリハリ、しっかりとした静と動がプレイヤーの精神的な負担を十分に和らげているからでしょう。いずれの作品も超機動な敵や入り組んだマップ等でストレスが溜まるシーンもありましたが、それでも中間チェックポイントがあるおかげで、本作よりは負担なくプレイすることができました。

本作のキャンペーンのレベルデザインについて、中間チェックポイントの廃止や、雑魚敵の攻撃性の高さなど含め、他作品との差別化としてよりシミュレーター寄りの作風を目指した結果なのであれば、それに伴う配慮も必要だったのでは、と感じざるを得ません。例えば、僚機のAI強化や命令機能の追加による、味方の有用性の向上などですね。

コンクエストは意外な面白さ

一方で、本作に搭載された「ローグライク」モードであるコンクエストでは、キャンペーンと似たミッション構成でありながら、クリア時間は長くても15分程度。さらには攻撃目標数と出現数がキャンペーンほど多くないため、前述の問題点の印象は薄く(中間ポイントについては「ローグライク」である以上実装できませんが)、比較的遊びやすい印象でした

このモードはワールドマップから選択した戦場(ステージ)で、攻撃目標の撃破やスコア達成をしつつ、次の戦場を開放していくのが基本的な流れ。ミッションを進めていくほど、アラートレベルが上昇し敵も強力になるので歯ごたえがあります。

ミッション報酬で得たクレジットを使えば、自機購入以外に、「雇用デン」で僚機とパイロットを雇うことが出来ます。例えばキャンペーンにも登場した超大型攻撃機にエースパイロットを乗せて僚機に、なんてこともできたりするのは嬉しいところ。エースパイロットはよく働き、ステージ難易度が上がっても敵をバシバシと撃墜してくれるため、非常に楽しく遊べました。

ただし本モードの翻訳はUI不備など含めて問題点が目立ちます

なお、このモードでは、プレイヤーが撃墜されるとそれまで拡大したマップの進行、ならびに雇った僚機は全てリセット。「ローグライク」ならではです。ただし購入した自機とクレジットは持ち越せるので、むしろ「強くてニューゲーム」状態で再戦することができます。この手の救済措置は、中間チェックポイント含めてキャンペーンモードに是非とも欲しかった部分ですね……。

総評

本作は美麗なグラフィック、特に戦闘単体のやりごたえについては文句のつけようが無いほど素晴らしいものでした。その分、折角の良い部分が、キャンペーンでは問題を含んだレベルデザインによって「大変な作業」という感覚に上書きされてしまうことが非常に惜しい印象です。コンクエストのような内容であれば、ミッションの長さが適切である限りはローグライクジャンルと割り切って遊ぶこともできるのですが……。

またキャンペーンでは、毎回クライマックスのような展開と演出が目立ち食傷気味。「好きなものを全部詰め込んだぜ!」というのはとてもよく伝わりますが、キャンペーン全体を通じて展開にメリハリを付けトーンを整えられたなら、もうひとランク本作の完成度が上がったことでしょう。

とはいえど、全体の完成度は(翻訳の完成度を除けば)ほぼ個人主導のインディー開発とは思えないほどの高さで、昨今のACシリーズ独壇場とも言えるフライトシューティングジャンルに大きく切り込んだ意欲作であることは間違いありません。願わくば、今後のアップデートではせめて、中間チェックポイントの実装があらんことを。

総評:★★

良い点
・気象表現の作り込みを中心とした美麗なグラフィック
・歯ごたえのある激しいドッグファイト
・小粒ながらにまとまったコンクエストモード
悪い点
・快適なプレイのための練り込みに欠け、詰め込み感も目立つキャンペーン
・敵が一部、理不尽すぎるまでの高機動を有する


《麦秋》

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