Game*Sparkレビュー:『マフィア コンプリート・エディション』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『マフィア コンプリート・エディション』

2020年9月25日にリリースされたシリーズ初代『Mafia: The City of Lost Heaven』のリメイク作品のレビューをお届けします。

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初代であり原作と言える『Mafia: The City of Lost Heaven』は特別視されるタイトルです――少なくとも古参のゲーマーにとっては。もしくは未プレイの方でも、すごいタイトルだという噂はご存じかもしれません。なので、続編には似たような雰囲気を求めるプレイヤーがいましたし、リメイク版にも原作の良いところを期待しているプレイヤーは少なくないでしょう。

1930年代をマフィアとしてどう過ごしたかを振り返りながら、主人公「トーマス・アンジェロ」(トミー)がカフェで刑事にネタを売って助けを求める、という大筋は原作も本作も共通です。では何が違うのか、どう変わっているのかが評価するポイントでしょう。

というわけで本稿では、2002年に登場したシリーズ第1作『Mafia: The City of Lost Heaven』のリメイク作『マフィア コンプリート・エディション』のレビューをお届けします。

書き換わったトミーの人生観

結論からいって、このリメイク版である『マフィア コンプリート・エディション』は原作のテーマを書き換えて更新した作品です。原作でタクシー運転手だった主人公トミーがオープニングで「サリエリファミリー」の一員を助けたあと、敵対ファミリーに報復されサリエリファミリーの一員となることを決めるときに「どうせなら太く短く生きろだ」と吐き捨てます。

これを表すように、その後ドン・サリエリに命令される形で報復のさらなる報復へ向かう際は、オリジナル版では面倒ごとにはまり込んだと嫌悪感を示していたのに対し、リメイク版ではトミーの方から報復させてほしいと願い出ています。

何を書き換えたかと言えば、こうしたトミーの人生観であり、それは作品の終盤で明らかになるテーマでもあります。しかしあらすじは変わっておらず、大筋はほとんどそのままで一部の台詞やシーンの描写に改編がある、といった程度になっており、原作ファンがガッカリするようなシナリオではないはず。哀愁を足し算方式にして『Mafia II』との関連をより強めており、あるいは、結末の部分において原作より救いの含みを持たせているとも言えるでしょう。

当時は制限やなんらかの事情によりもろもろの(難易度を除いた)シーケンスがあっさりとしたものが多かったのに対して、リメイク版では会話などをより深めるアプローチが取られています。そこに一番はじめに気付くのはオープニングの会話でしょう。警官の私生活などもうかがえるものとなっています。

現代版として挑みやすく調整

たとえばイントロダクションのカーチェイスですが、オリジナルが開始直後で車の挙動もわからないプレイヤーに対し、真剣なドライビングテクニックを要求して少々難易度を感じさせるものでした。それが適度に演出のあるイベントを挟みながら進行するようになったので、オリジナル版のムードを削がずにより洗練されて、ドラマへの集中も促しています。

また戦闘シーケンスでは、味方が死亡するとゲームオーバーになる仕様が改められ、味方が死亡しないようになって遊びやすくなりました。この点はやり応えの点で劣るように思われますが、現代の感覚ではこちらの方が断然遊びやすく感じられます。オリジナル版は理不尽に感じるゲームオーバーが多く、没入感が削がれることもしばしばでした。

『Mafia II』以降のアートデザインとなりカラッとした印象に

原作である『Mafia: The City of Lost Heaven』のデベロッパーはイリュージョン・ソフトワークスで、後にテイクツー・インタラクティブに買収され2Kチェコとなり、また時を経てHangar 13 Gamesの母体となりました。その後に『Mafia II』と『Mafia III』がリリースされています。

初代は古参のゲーマーにとって神聖視されがちなタイトル。そんな初代のリメイクには、20年間にわたって全作品のアートディレクションを担当しつつ、Hangar 13 Gamesのスタジオマネージャーを務めているローマン・ハラディーク氏も携わっています。

しかし本作は『Mafia II』と『Mafia III』を経た後の作品という印象が強くなっており、オリジナル版のウェットなアートや雰囲気は継承されず、カラッとした絵作りに。これはフェイシャルを含めたアニメーションにも表れているほか、キャラクターたちの動作などが雄弁に物語っています。オリジナルのシックなムードは期待できませんが、一方で新規プレイヤーにはあまり気にならないでしょう。

まとめ

本作を評価するにあたっては、「オリジナル版プレイヤーが手に取るべきか」と「オリジナル版を遊んでいないプレイヤーが手に取るべきか」という2つの観点があるでしょう。そこで筆者としては、両者どちらにもプレイしてもらいたいと考えています。

原作PC日本語版は2003年リリース(オリジナル版は2002年リリース)ということもあって、当時のプレイヤーには偉大な作品として記憶に刻まれているでしょう。エンディングはオリジナルより救いがあるといえますし、もっと哀愁があるようにも受け取れるように変化。プレイアビリティは向上しつつ、会話などのディテールも増大しています。1930年代の禁酒法時代をマフィアとして駆け抜ける体験をリメイクする手法は、グラフィックの向上にのみならず、そのほかの様々な点においても鮮やかな仕上がりとなっています。

総評:★★★

良い点
・テーマの更新
・雄弁なフェイシャルアニメーション
・現代的でカジュアルなゲームプレイ

悪い点
・オリジナルのシックさが損なわれている

タイトル:マフィア コンプリート・エディション
対応機種:PlayStation 4/Xbox One/Windows
発売日:2020年9月25日
記事におけるプレイ機種:PC(Steam
今回の記事執筆に限定したプレイ時間:24時間
価格:4,950円


【編集部より】
本稿は、レビューできなかった2020年リリースのタイトルを取り上げるGame*Sparkレビューの「年末年始特集」として公開予定でしたが、編集部の都合で掲載が遅れてしまったため、このタイミングでの掲載となりました。ちょうどSteam版のセールも19日まで開催していますのでぜひ参考になれば幸いです。出来すぎたタイミングではありますが、レビューのお約束の通り、本レビューは一切のプロモーションとは紐付かず、編集部が自費で準備したゲームをレビュアーがプレイしています。


《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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