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Game*Sparkレビュー:『Chicken Police - Paint it RED!』

動物擬人化ポイント&クリック型アドベンチャー『Chicken Police - Paint it RED!』レビューをお届けします。

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ようこそクロービル市へ。ここは動物たちが2本の足で歩き、喋り、煙草を吸い酒を飲む場所。街並みは白黒で主役は刑事コンビ「チキン・ポリス」こと「サニー・フェザーランド」と「マーティ・マクチキン」の2人……いえ2羽です。とはいってもサニーが主人公で物語は彼の視点を通して描かれています。

本作は伝統的なポイント&クリック型のアドベンチャーを基本として、選択肢によって相手の反応が変わる独自の「尋問システム」に、そのほか人物などの手がかりを組み合わせて状況を整理する「調査システム」の2つが合わさっています。


なにより特徴的なのは舞台設定といえるでしょう。なにしろ全員が擬人化された動物たちで、ユーモアたっぷりに「一生じゃなく鳥生」とか「俺たちは成鳥だぜ」や「別人ならぬ別鳥」なんてコミカルに表現されていています。これはローカライズの良さでもあり、本作の翻訳はかなり高いレベルでまとまっていて文章を読むのが非常に楽しいです。そのうえフルボイス(英語音声のみ)なので原語でなんと言っているかの比較もできておもしろく読み進められます。

ミステリー風味の物語と調和する独自のシステム


引退を前にした大晦日の夜、サニーの元に1頭のインパラがあらわれます。なんでも、仕えている女主人「ナターシャ」が脅迫されているとのこと。問い詰めるとサニーのパートナーだった女性モリーと知り合いだと書かれたナターシャの手紙を見せられます。このことによりサニーは事件に首を突っ込むことになり、相棒だったマーティと合流して事件の深部に迫っていくのです。


問い詰める、としましたがこの際に登場するのが尋問システム。相手の性格や印象を手がかりに選択肢を選び、反応に応じて焦点の合った詰問をするというものです。無事に終えられると五つ星評価で採点され、失敗すると尋問のやり直しです。このシステムは会話主導のために物語を楽しめる上に(インタラクティブという意味で)ゲームらしい手触りがあり非常に興味深く挑めます。無事に終えるだけなら難易度も高くはなく、そのうえでより刑事としての冴えを見せるためにハイスコアを目指すといったプレイスタイルも選べるでしょう。


調査システムは物語の要所でその時点での事件のあらましを確認する内容となっており、具体的には人物の写真や手がかりを正しく組み合わせて正しい選択肢を選ぶというもの。これにはスコアはなく単純に正答を導き出せばよく間違えれば選び直しになるだけです。よってゲームらしいおもしろさは薄いですがシンプルな整理になるため物語の要所をうまく押さえさせてくれます。

上述した2つのシステムは物語にインタラクトする感触、介入する手触りがあるために非常に有効的に働いています。では肝心の物語自体はどうでしょうか。

複数の事象が絡み合う物語は興味深く挑める


ストーリーはサニーの視点で進みますが、ナターシャの脅迫に始まり第1の死者が出てドリブンする物語は後半まで犯人が読めないよう作られており、なおかつ要所のイベントではサニーが絶体絶命のピンチに陥る場面もあるのでわくわくしながらテンポ良く読み進められることでしょう。誰が犯人なのか? 誰が関与しているのか? そういった好奇心を裏切らない展開が待っていて、たとえば犯人を追う過程で主要人物を(上述した)尋問システムで問い詰める時には興奮も合わさります。そのうえ調査システムでの整理で浮かぶ次の捜査線も次なる展開への期待感を煽ります。この展開には凄みがある、そう信じることができるはずです。


またなんらかのシーケンスで「世界観情報」や「個体情報」(人物情報のこと)が更新されて手帳に記録されます。閲覧すればより深く舞台を知ることができ、ドンドンと物語へと没頭していくはずです。それぞれ情報量は多めで事件の手がかりはもちろん、登場する動物、場所、世界観などの項目ごとに分かれています。それぞれがユニークなので興味を惹かれることでしょう。

途中で詰まるかもしれない


本作はポイント&クリック型アドベンチャーなので、途中で「どこを、何をクリックすれば進むのかがわからない」という状況が発生するかもしれません。筆者は1時間ほど「進めるためのポイントがどこにあるのかわからない」という状態に陥りました。ただし該当箇所は少なめではあろうと思います。

外伝を期待したくなるほどの設定の奥行き


本作はミステリアスな物語はもちろん、世界観作りが非常に巧みで続編や外伝的作品を期待したくなる作品です。“個体”同士の掛け合いはもちろん、舞台となるクロービル市自体かつては動物たちが争っていた時代もあったなどきちんと歴史があり奥行きがあります。この世界を使ってほかの作品も生まれてほしい、そう思うほどユニークでユーモアにあふれたテキストが並んでいます。本作はSteamでは無料デモ版が配布されているので、1度そちらをプレイしてみて気に入ればぜひ購入してお酒片手に、もしくは飲めなければコーヒーでも添えて遊んでみて下さい。きっと損はしない時間となることでしょう。

総評:★★★

良い点
・動物を擬人化した世界観
・物語と有機的に絡み合う独自のシステム
・意表を突くストーリー
悪い点
・詰まるかもしれない不親切さ

タイトル:Chicken Police - Paint it RED!
対応機種:PlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch/Windows
発売日:2020年11月6日
記事におけるプレイ機種:PC(Steam
今回の記事執筆に限定したプレイ時間:10時間
価格:2,000円(Steam版)


《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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