Game*Sparkレビュー:『サガ フロンティア リマスター』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『サガ フロンティア リマスター』

必要十分な追加要素もあり、快適になったとはいえ、一部には不親切さを感じさせるがそれもまた『サガフロ』の魅力であり、味なのである。

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スクウェア・エニックスより、4月15日(Steam版のみ4月16日)にPC/PS4/ニンテンドースイッチ/iOS/Android向けRPG『サガ フロンティア リマスター(SaGa Frontier Remastered)』がリリースされました。

本作は、1997年に初代PlayStation向けに発売されたサガシリーズ第7作『サガ フロンティア』のリマスター作品。グラフィックの高解像度はもちろん、倍速機能や「退却」コマンドの追加など、現代にあわせてゲームのUXも改善。また、オリジナル版で採用されなかった幻のイベントと「8人目の主人公」ヒューズ編を追加しています。

本稿では、24年の時を経て進化した『サガ フロンティア リマスター』のレビューをお届けしていきます。本レビューの執筆にあたってはニンテンドースイッチ版をプレイしています。

24年の時を経てより快適にパワーアップ!

本作は境遇が異なる8人の主人公を選び、それぞれ独立したストーリーをクリアするのが目的です。物語の舞台は異なる種族や世界観で、独特のコロニーを作り出している「リージョン」が連なる世界。主人公の種族も「ヒューマン」「妖魔」「モンスター」「メカ」などさまざまで、各種族に応じて方向性の異なる育成が可能です。

シリーズ第4作『ロマンシング サ・ガ』から始まり、以後多くのシリーズ作品で採用されてきた「フリーシナリオシステム」も搭載。プレイヤーの選択によって物語の展開が異なるシステムは奥深く、ゲームのリプレイ性の高さを作り出しています。また、戦闘では「閃き」「見切り」「プログラム」「連携」などのシステムもゲームを盛り上げます。

リマスター版では、オリジナル版の魅力をそのまま引き継ぎながらも、より「あそびやすくわかりやすい」システムの改善を実現。自由で気軽に遊べるシステムだからこそオリジナル版で起こっていた「次にどうしたらいいかわからない」「気がついたら敵が強すぎる」などのトラブルに対処しやすくなっています。

追加された"8人目の主人公"ヒューズ編は、「各主人公のシナリオに介入する」「各シナリオのラスボスと戦える」というもの。さまざまな面で繰り返し遊びやすくなった本作にふさわしいシステムと、オリジナル版当時の攻略本「サガフロンティア裏解体真書」に掲載された幻のヒューズ編小説を書いたベニー松山氏による、新たなシナリオも楽しめます。

アセルス編では没イベントも復活。

BGMを担当する伊藤賢治氏の楽曲、キャラクターデザインを担当する小林智美氏によるイラストも健在で、ゲーム内のライブラリーではいつでも楽しむことができるのも大きな魅力です。

シナリオが個性豊かで面白い!

個人的に本作の推したいポイントとして、ストーリーの良さがあります。ディレクターの河津秋敏氏によるシナリオ(主人公編ごとの設定担当も存在)は、王道でありながら、カオスな「リージョン」を組み込んだ驚きの展開になることも。サブクエストでも登場キャラクターの個性が際立つ、独特な台詞回しなども魅力的です。

『サガ フロンティア』では、主人公が独自のストーリーを持っています。仲間になるキャラクターや手に入るアイテム、ラスボスなどもシナリオごとにさまざま。「そのシナリオでしか仲間にならないキャラクター」「メインキャラだと思ったらシナリオで離脱してしまうキャラクター」などもいるため、初回プレイでは驚くことも多いでしょう(ある女性キャラはその展開で「罠」扱いされることも……)。

上級妖魔によって血を受け"半妖"になってしまった少女「アセルス」編では、本作のシステムそのものが重要になるマルチエンディングも採用されています。お約束で熱い展開を楽しめる「レッド」「T260G」編、王道ファンタジー「クーン」編、自身の宿命と戦う「ブルー編」、展開で大きく結末の意味が変わる「エミリア」編、最初からラスボスに挑める「リュート」編など、どのシナリオも本稿では語り尽くせないほど魅力的です。オリジナル版7人の主人公をすべてプレイすることで、本作の世界観を堪能することができます。

そして追加された「ヒューズ」編では、それぞれの主人公の重要イベントにヒューズが介入するという独自の物語が展開されていきます。ヒューズ編は合計7つのシナリオをプレイするため、それぞれのプレイ時間は短いのですが「イベントの裏側」などを覗かせる場面もあり、本作を語るうえで欠かせない重要な要素といえるでしょう。

ちょっとヒューズが格好良すぎる感じもありますが、オリジナル版でカットされ24年待った主人公としてはこれくらいの役得があってもいいのかもしれません。本作の物語は、すべての出来事が明かされるわけではありませんが、いろいろな場所にイベントに関わるエピソードが隠されていることもあります。世界を観光し、色々と推測しながら遊ぶのも本作の楽しみ方の1つです。

オリジナルの魅力と圧倒的快適さを持つシステム!

本作は、敵シンボルと接触することで戦闘が始まるエンカウントシステムを採用しています。また、シリーズ作品『ロマンシング サ・ガ』から続く「戦闘回数が増えるほど敵が強くなっていく」のも特徴。そのため、従来作では「いかに効率よく敵と戦いパーティを強化するか」「どうやって戦闘回数を減らすか」などのプレイスタイルを求められる場合がありました。

しかし、本作のダンジョンなどは基本的に道が狭く敵モンスターとの戦闘を避けるのが困難。その上、ダンジョンなどから脱出する方法が元の道を帰るしかなく(一部例外もあり)、マップを切り替えるたびにモンスターは復活してしまいます。そのため、サブイベントを多くこなしている内に敵やボスがとても強力になるケースも珍しくありませんでした。

その状況を打破するのが、リマスター版で追加された「退却」コマンドです。退却は戦闘前/戦闘中いつでも選択可能で100%成功します。退却後は敵シンボルが消えるだけでなく戦闘回数が加算されないため、極端な話をするとマップのモンスターを「なかったこと」にできてしまうのです。もちろん、ボスやイベント戦闘などは回避できないのでご注意を。

そのほか、ストーリーを振り返り目標を提示する「シナリオチャート」、戦闘や移動速度などを高速化する「倍速機能」などにより、ゲームをかなり快適に遊べるようになりました。それでも状況が厳しくなったときには、セーブデータの能力やアイテムを引き継いで最初からプレイできる「New Game+」まで用意されているというまさに至れり尽くせりな仕様に。また、これまで分かりづらかった移動できる場所の表示も可能です(いくつかの機能はオプションや設定でON/OFFもできるのでその辺りも親切ですね)。

引き継ぎで初期から大暴れするT260G

とはいえ、一部キャラクターシナリオなど、本作は決して親切なゲームではありません。しかし、その雑多な雰囲気も『サガ フロンティア』という作品の魅力なのです。リマスター版はその魅力を理解し「雰囲気を壊さずにどれだけ快適にできるか」を実現している印象を強く受けました。

戦闘の面白さこそ『サガフロ』だ!

システム、ストーリーとも魅力的な本作ですが、もう一つの醍醐味である「戦闘」の楽しさも語らずにいられません。戦闘は、コマンド選択式のオーソドックスなもので、敵を全滅させれば勝利。勝利後は戦闘中の行動結果によりステータスが上昇していくというシリーズ経験者であればお馴染みのシステムです。

戦闘で特徴的なのが、『ロマンシング サ・ガ2』から登場した「閃き」システム。技を閃くのはヒューマン種族(半妖・ヒーロー含む)だけになりますが、ステータスや武器だけでなく、閃いた技によっては戦闘中に突然キャラクターがパワーアップする可能性もあるのです。そのほか、"銃"や"術"を使用することで、戦闘後に技を思いつくこともあります。

他種族の「メカ」「妖魔」「モンスター」は独自の成長システムを備えており、モンスターは戦った敵から技や能力を吸収していき、メカは装備品でのみステータスが変動するなどヒューマンとはやや違った育成が求められます。少し癖はありますが、ヒューマン種族よりも短時間で強力になれるのがこうした種族の魅力といえるでしょう。

そして、本作で最大の戦闘システムが「連携」です。連携は、いくつかの発動条件を満たしたときに発動し、選んだ技が合体して非常に強力なダメージを与えます。連携では技名も合体するのが特徴で、最大5連携では「無多段陽子ロケット陽子ロケットスクリーム」などといった長い名前になることも。(もちろんこれ以上に長い名前を作り出すことも可能)

発動した連携技はメニュー画面で保存することも可能なため、カッコいい見た目や面白い名前を見つけ出すのも楽しみ方ですね。

本作の戦闘は、キャラも飛び回ったり派手なエフェクトを出すなど演出が多彩です。特に5連携では発動時に画面もよく光り、とにかく「すごいことが起こっている!」と思わせられます。退却の重要性は前述の通りですが、やはり「戦闘の楽しさ」を堪能してこその『サガフロ』といえます。

総評

24年前の作品のリマスターである本作ですが、言わずもがなベースは90年代のゲームであり、いくつかの場面で「懐かしい雰囲気」を感じることがあるかもしれません。当時もスピーディーだった本作を、「退却」「New Game+」などシステム面でより快適にすることで、現代でも通用する手軽に遊べるけれども奥深いRPGが再誕しました。

それぞれの主人公シナリオは決して長くありません。それはすべてのシナリオをプレイすることを前提としている部分でもあり、追加された「ヒューズ」編では全キャラクリアが必要な、新たなやりこみ要素が加わっています。一主人公のシナリオだけプレイして作品を評価するには早いので、プレイする際には、ぜひすべてのシナリオやイベントを堪能するつもりで遊んでみてください。

ただ、さまざまな面で快適に生まれ変わっていても、それでもまだ一部で「不親切」に感じる場面があるのは否めません。しかし、これも『サガフロ』、もっと言うなら『サガ』シリーズの味。この雰囲気を、ほぼストレスなく堪能できる正統リマスターの本作は、当時のプレイヤーから新規プレイヤーまでぜひ触ってほしい一作です!

総評:★★★

良い点
・最高にカオスでごった煮な世界観で自由に冒険!
・24年前のゲームゆえの「不便さ」を快適にする各種システム
・追加シナリオ・追加イベントはあの頃のプレイヤーにも嬉しい!
悪い点
・(魅力ではあるものの)一部不親切さは否めない

《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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