
インドはゲーム人口が中国の約6.5億人に次いで約5.5億人で世界第2位、モバイルゲームのダウンロード数に関しては世界1位になっているように、今まではモバイルやPCゲームの割合が大半を占めていました。ところが、ここにきてさらに飛躍するといわれているのがコンシューマー事業です。
もともと物価の差や高すぎる関税の問題などがあり、インド国内ではゲーム機自体が一般的ではなく、あくまで富裕層や中流でも限られた人しか購入できない贅沢品でした。2010年前後にPS2やPSPを流通させようと、人気映画とのタイアップや国民的スポーツのクリケットを扱ったインド国産のソフトがいくつか開発されましたが、結果的にそれらは失敗し、ソフトはほとんどが輸入品に頼るようになります。その事実は、今でもそこまで大きくは変わっておらず、それこそが簡単にプレイできるモバイルゲームが人気を得ている要因ではあるのですが、ここにきて、コンシューマー事業へのリベンジが同時多発的に起ころうとしているのです。
その要因は、コロナパンデミックの影響があります。自粛期間にゲームを楽しむ人が増えたとされていて、これは日本でも同じような現象がありました。もうひとつは、ITブームによる雇用の改善と賃金上昇によって、ゲームを趣味にする人が増えたことです。まだまだ贅沢品に違いはないですが、ゲームに対して、無理してでも購入したいという価値観を見出す人が圧倒的に増加したといえます。新作ゲームの発売日にゲームショップに行列ができるという光景も珍しくなくなってきました。さらに細かく言うと、都会も地方もネット環境が整ったことによる決済システムの充実や電力不足の改善などといった、様々な要因も加わっているといえます。
そしてこれからは、海外ゲームの輸入に頼るのではなく、自国のゲームを開発し、逆に世界に発信していくフェーズに突入します。というか、すでに年々、新たなゲーム制作会社が各地に増えている状況で、インドのゲームが世界を驚かせるのは、決して遠い未来ではなく、まさに2026~27年がターニングポイントともいわれているのです。
そこで今回は、今後リリースされる、5つの注目タイトルを紹介します!!
『The Age of Bhaarat』
インドのゲームが本気を出したら……。正にそんな本気度を象徴したかのようなタイトルが『The Age of Bhaarat』です。ちなみに「バーラト」というのは、インドのことです。
古代インドにおけるヒンドゥー神話をベースにしたダークファンタジーで、森の守護者の主人公が鬼神ラークシャサの侵略に立ち向かう物語を描くアクションRPG。プレイヤーカスタマイズ機能やCo-opプレイなど、やり込み要素も満載。
この作品、何が凄いかというと、インド映画界のレジェンドで、「Kaun Banega Crorepati」(インド版「クイズ$ミリオネア」)の司会としても知られるアミターブ・バッチャンが、「シヴァ」三部作や「ラーム・チャンドラ」シリーズなどで知られる、ベストセラー作家アーミッシュ・トリパティ、『ゴーストリコン』シリーズのプロデューサー、ヌールディン・アブードによって共同設立されたゲーム会社タラ・ゲーミングによる第1弾プロジェクトなのです。
さらにアカデミー賞にもノミネートされた映画「ザ・ホワイトタイガー」(2021)のプロデューサーで、「マダム・イン・ニューヨーク」(2012)などを制作したウォッチタワー・ピクチャーズ設立者のひとりムクール・デオーラが取締役兼トランスメディア・プロデューサーとして就任しました。
つまりインド映画界がゲーム産業に本格参戦したといえます。発売時期は未定ではありますが、開発は急ピッチで行われているようで、今年の年末か来年あたりにはプレイできるかもしれません。
『Son of Thanjai』
チェンナイを拠点とする、30名のメンバーからなる独立系ゲーム制作アイェレット・スタジオによる『Son of Thanjai』は、11世紀南インドを舞台にした、ストーリー重視のシネマティック・アクションアドベンチャー。
2023年にリリースされた『Unsung Empires: The Cholas』と同じく、ラージェンドラ・チョーラの物語を描いた続編です。ラージェンドラというのは、実在したラージェンドラ1世のことであり、南インドのタミル系王朝チョーラ朝の全盛期を築いた王として知られています。
若き王ラージェンドラをプレイしながら、伝統武術カラリパヤットから着想を得たスルルヴァール(螺旋状の剣)は、斬新な戦闘スタイルでプレイヤーを飽きさせません。音楽やデザインにもこだわりがあり、多方面からタミルの伝統文化を体感できます。
ストーリー重視というだけのことはあり、映画「バーフバリ」2部作や「プシュパ 覚醒」(2021)など、大ヒット作の脚本にも参加した、マダン・カルキーがメインストーリーとサイドストーリー、タミル語と英語のセリフ、さらには作中の歌の歌詞まで手掛けているのは注目すべき点です。
カルキーは、もともとゲーマーであったことから、ずっとゲーム制作に関わりたいと思っていて、今回のプロジェクトへの参加が決まったそうです。2026年内リリース予定です。
『Fishbowl』
リア・グプタとプラティーク・サクセナの2人組による、アイミスマイフレンド・スタジオが「GameMaker」を使用して制作したインディーズゲーム。新しい街の新しい会社に就職したばかりで、ひとり暮らしの21歳、アロを主人公とした、ハートフルな青春物語。
亡くなった祖母の遺品をパズル形式で整理しながら、子どもの頃の思い出を探求し、ビデオチャットで多彩なキャラクターと交流を深め、インフルエンサーの動画編集をしたりと、ミニゲームをしながらアロを成長させていく、敵の出てこないRPGです。
ほとんど室内で物語が展開される理のは、開発者のリアがコロナパンデミックで家族や友人と会えない状態が続いた経験に基づくもの。新生活の孤独感をリアルに描くのに役立ったそうです。
開発者のふたりが日本の漫画やアニメ好きでもあることも作品の中にも強く表れていて、デザイン的にも日本カルチャーへのリスペクトがあります。ちなみに主人公が同じ色の服ばかりを着ているのは、漫画を意識しているからだとか。
手描きのピクセルアートと、心地よいローファイサウンドによる独特の世界観を構築します。2026年4月リリース予定です。
『Raji: Kaliyuga』
プネーを拠点とし、インド、ギリシャ、アメリカ、カザフスタン、イギリス出身の16人のクリエイターによる、ノディング・ヘッズ・ゲームズが制作した『ラジィ 古の伝説』の続編で、グラフィックも数段レベルアップ!!
『ラジィ 古の伝説』は、様々なゲームアワードで36以上の賞を受賞し、インド国内外から注目されたことで、インド・ゲーム業界のイメージをワンランク上に押し上げた作品ともいえます。そんな前作から6年後を舞台としており、神々の力を使うラジィに加えて、前作では連れ去られていた弟ゴルーもプレイアブルとして参戦します。
ストーリーによって主人公が切り替わる仕様になり、三人称視点は変わりませんが、前作のキャラクターが小さすぎて見づらい点は改善されています。
熟練の戦士となったラジィと、過去と未来の幻影に悩まされながらも成長した弟のダーシュ(ゴルー)の新たな冒険と、拡張された世界観は、より多くのゲームユーザーを魅了するはずです。2026年リリース予定です。
『Suri: The Seventh Note』
ベンガルールのタトヴァマシ・スタジオが制作した、横スクロールのリズムアクション。スタジオにとっては初の商用ゲームです。
ヒンドゥー神話の神秘性とラジャスタン州の古代の砦からヒマラヤ山脈の静謐な山岳寺院といった多様なインドの風景をベースとしていながら、『悪魔城ドラキュラ』や『スペースハリアー』などの公認アートで知られるキリアン・エングや『アサシン クリード』シリーズのコンセプトアートで知られるマキシム・デスメトルといったアーティストからインスピレーションを得て構築された、全編コミックアートのような独特の世界観を冒険することができます。
リズムアクションということで、とにかく音楽には拘っていて、音楽とオーディオ監督には、ケーララ州トリシュール出身のポストロックバンド、マッシュルーム・レイクのメンバーとして知られるジティン・デイヴィッドとマラヤーラム語映画「Aaha」(2021)などの楽曲を手掛けたフィニー・クリアンを起用し、クオリティを追求しました。それによって、ローリングストーン・インディアなどの音楽メディアからも注目されています。2026年リリース予定です。









