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2度とこんなゲームは現れない? 『十三機兵防衛圏』奇跡の立体構造体験

アトラス×ヴァニラウェアが送る大傑作のSFアドベンチャー『十三機兵防衛圏』ニンテンドースイッチ版が発売決定! 真似することすら困難で、2度とこのようなゲームは登場しないかもしれない本作の立体構造について、ネタバレ無しでご紹介します。

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2度とこんなゲームは現れない? 『十三機兵防衛圏』奇跡の立体構造体験
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Nintendo Switch『十三機兵防衛圏』プロモーション映像

ゲームの宣伝販促というものは、基本的に発売2か月前にゲーム販売店への説明があり、1か月前から活発化させ、発売2週間前後で最高潮に達するものです。よって、発売日が最も注目が高くなり、“初動”といいますが、多くのゲームは発売された週に最も高い売り上げを出します。初動が低ければ遊んでいるプレイヤーの人数自体が少ないので、話題も乏しく、ほとんどの場合はそのまま尻すぼみです。しかしたまにその法則を外れるゲームがあります。ゲームが良すぎた場合に起こる現象です。

アトラス×ヴァニラウェアのPS4用SFアドベンチャーゲーム『十三機兵防衛圏』の初動はたったの3万数千本。凡百のゲームであればそのまま消えていく数字です。しかし、その3万本を遊んだユーザーが熱狂を起こしました。とんでもないゲーム体験をしたと騒ぎました。噂が噂を呼び、有名なゲームクリエイターも声をあげ、メディアが熱いプレイレポートを書き、気がつけば店頭からゲームはすっかり無くなって発売元のアトラスが品薄のお詫びを出す事態となります。

その『十三機兵防衛圏』のニンテンドースイッチ版発売日が2022年4月14日に決定しました。PS4を持っていなくて遊んでいないという人も、ぜひこの機会に遊んで欲しく、ネタばれ無しで本作の魅力を紹介したいと思います。

本作の良いところをあげれば、謎が謎を呼ぶストーリー、魅力的な13人の主人公、見とれるほど美しい水彩画のようなグラフィック、「飯テロか!」と叫びたくなる食べ物の数々……などなどあげればキリがありませんが、今回はその中でも特にすさまじい、狂気とも言える物語の立体構造についてご紹介したいと思います。冗談抜きで、こんなゲームは2度と登場しないかもしれません。

■縦糸と横糸と時代

『十三機兵防衛圏』公式サイトより

ゲームに限らず、物語というものは基本初めがあって、終わりがある、一本の道のようなものです。映画や小説、マンガなどと違い、ゲームはそこから分岐するものもたくさんあります。ゲームならではの物語体験と言えるでしょう。

この道をずらっと横に並べたゲームがありました。1998年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売されたセガサターン用アドベンチャーゲーム『街 ~運命の交差点~』は、8人の主人公の話が同時に進行していくゲームです。1人の主人公の選択がほかの主人公に影響を与えて運命が変わっていくという、緻密に作られた物語。このシステムは後に『428 ~封鎖された渋谷で~』というゲームにも受け継がれ、どちらも高い評価を得ます。始まりから終わりへと進む縦糸に、同時進行するキャラクターの横糸が加わり、物語が面になってきます。

『十三機兵防衛圏』は13人の主人公をかわるがわるに操作して物語を追体験するゲームでまさにこの面の構造です。13人もの主人公が交差し、プレイヤーの選択によって変化していくストーリーはそれだけで大変なものですが、さらにもう1つ、時代の要素が加わります。13人の主人公は必ずしも同じ時代で物語を進まず、複数の大きく離れた時代をまたがっていくことになります。これが面に加わる3つ目の軸で、物語は立体の構造を帯びることになります。

そしてまったく関係のない別々の出来事のように見えるそれぞれが、いつの間にか複雑に絡み合い、場所を超え、時代を超え、いくつもの謎を生みながら、大きな物語に収束していく一部始終を、あなたは自分のその手で体験することになるのです。

■複雑怪奇な物語 しかしプレイヤーをおいていかない究明編

『十三機兵防衛圏』公式サイトより

13人の主人公による様々な時代で起こる物語がいくつもの謎を呼び、なんて言うと物語が難しくてついていくのが大変そう、と思う人もいるかもしれません。実際最初は物語の全容を把握することはまるでできません。また、お話を理解するのが大変だった、という人も確かにいるでしょう。しかし、おそらく多くの人が想像するよりは、ずっと物語に入りやすくなっていて、心配しすぎる必要はないように思います。

まず、物語体験は、各主人公を選ぶと10分程度の短い区切りで遊べます。そしてその10分のお話の中で、主人公への感情移入があり、謎があり、場合によっては衝撃の事実があり、そして強い“ヒキ”があって終わります。すぐに、先が知りたくなります。あるいは、ある主人公の中に謎の人物が出てきて、それが別の主人公だったりします。そうすればもちろん、その謎の人物を自分で操作して事の顛末を知りたくなりますよね。そうやって興味のおもむくままに次々進めるだけで良いのです。むしろ、あまりにテンポよく進んでいくせいで、やめ時を失うことの方に注意が必要なぐらいです。

もちろん物語全体を見渡せば膨大な情報量があります。しかしそこも心配はありません。本作には究明編というモードがついていて、ゲームを進めて出てきた人物や用語解説、さらにはイベントシーンのリプレイなども搭載、この究明編の要素をアンロックしていくことで、主人公たちの視点で体験する物語とは別の角度から、俯瞰的に大きな流れを把握することができます。

13人もの主人公の視点で時空を超えた立体構造の物語をプレイし、しかも進行にあわせて常に解説がついてくる。ゲームだからこそできる体験であると言えるでしょう。

■2度とこんなゲームが現れないかもしれないワケ

『十三機兵防衛圏』公式サイトより

さて、このような素晴らしいゲーム体験ですが、もしかすると、同じようなゲームは2度とでてこないかもしれません。というのは、開発するのが大変すぎるのですね。1本道だったとしても、面白いシナリオを作るというのは大変なことです。それが13人もの主人公の視点で、さらにそれぞれの行動が選択でき、それによってお互いに影響を与えて、しかも時代を超えた物語が次第に収束していく……考えただけでめまいがしそうです。

シナリオは本作のディレクターでありヴァニラウェアの代表取締役社長でもある神谷盛治氏によって作られましたが、その膨大な情報が矛盾なく成立するか第3者でも確認できるようにと、アトラスでは行動や時系列などをまとめた“聖典”と呼ばれるデータが作られたと言われます。

すべての主人公の行動や、居た場所、時系列、持っていたもの、あるいは行動原理そのもの、そういった要素が物語のあらゆる場面に波及する可能性があるため、何か修正を加えればそれがどんな影響を与えるかチェックしなければいけません。

さらに、ゲームですから、シナリオが変われば、背景や、キャラクターの服装、モーション、声優さんの収録、そういった部分への影響もあります。シナリオだけすべてゆっくりと完成させて、完全に固まってから他の工程を……とできれば良いでしょうが、そんな余裕のある現場はなかなかないでしょう。実際には多数の工程が同時進行であり、あらゆる影響を考慮しながら、なおかつ面白いものを作らなければいけません。

本作は信じがたいことに全ての脚本とそれをゲームに組み込むスクリプトまでをも神谷氏が1人でこなすという狂気によって破綻のない物語が作られ、それでもなお綱渡りのギリギリの開発であったことが、後に様々なインタビューなどから明かされています。しかしその結果、誰も体験したことのないようなゲームができあがり、初動たったの約3万本を遊んだユーザーが熱狂を起こすことになったのです。

ゲームのシステムというものは著作権で保護されません。ですから、ヒットしたゲームがあると、その仕組みを真似て次々に似たゲームが登場するのがゲーム業界の常です。しかし、『十三機兵防衛圏』のフォロワーはあらわれません。ヴァニラウェアやアトラスからも、次回作についての情報は今のところありません。もしかしたら本当に、こんなゲームは2度と作られることはないかもしれません。この機会に遊んでみることを、強く強くオススメします。

《田下広夢》

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