アクション好きなら一度は触れたいハクスラRPG『バビロンズフォール』―確かに光るプラチナ製アクションは、なぜ霞んで見えてしまうのか | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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アクション好きなら一度は触れたいハクスラRPG『バビロンズフォール』―確かに光るプラチナ製アクションは、なぜ霞んで見えてしまうのか

少なくとも、プラチナゲームズのアクションとファンタジーが好きなら、本作をプレイして損はない。……しかし、目を背けられない粗が目立つこともまた事実だ。

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アクション好きなら一度は触れたいハクスラRPG『バビロンズフォール』―確かに光るプラチナ製アクションは、なぜ霞んで見えてしまうのか
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はじめに断っておくと、本稿はPRではない。スクウェア・エニックスよりコードは提供いただいているが、だからといって忖度するつもりは一切ない。安心して欲しい。

スクウェア・エニックスとプラチナゲームズがタッグを組んだ『バビロンズフォール』。最大4人のマルチプレイに対応したアクションゲームで、最大4つのアクションを組み合わせる楽しさと、ハックアンドスラッシュ(以下、ハクスラ)を用いたゲームシステムが特徴だ。ライブサービス型のタイトルであり、シーズン制の導入やイベントの開催も予定されている。

2022年3月3日に正式サービスを開始した本作だが、メタスコアも本稿執筆時点で「40」、ユーザースコアにいたっては2.0と相当厳しい評価(いずれもPS5版)となっている。また、プレイヤー数もSteamDBによるとピーク時で1200人前後と、好調とは言い難い船出だ。先行体験版が配信された2月25日は『ELDEN RING』の発売日ということもあり、影に隠れてしまったとはいえ振るわない数字である。では実際にリリースされて、どうだったのか。インプレッションをお届けする。

本稿はPS5版でのプレイをもとに執筆している。

結論から言うと、「確かに光るものはあるけど、それをゲームとしての粗やシステムが隠してしまっている」印象だ。プラチナゲームズらしい爽快感と全能感溢れるアクションや、しっかり色づけられたキャラクターや物語など、見どころは確かにある。だが杜撰なマッチングシステムやチュートリアル、静止画ではわかりにくいグラフィックなどが魅力を濁してしまっている。

見どころのあるアクション

早速だが、肝となるアクションについてお話したい。『ベヨネッタ』シリーズや『アストラルチェイン』など、アクションゲームの名作を生み出してきたプラチナゲームズが開発を手掛けるだけあって、アクション部分は非常に楽しい。

本作では、武器を4つ装備することができる。それぞれが□・△と、L2・R2に割り当てられ、適応するボタンを組み合わせてアクションを作っていく。□・△はキャラクターが手にしている武器であり、L2・R2は後述の「機棺」(ギデオンコフィン)に繋がれた武器という設定だ。この4つの武器を同時に繰り出していくのが、本作のアクションの主軸となる。

ギデオンコフィンとは、主人公の背中に取り付けられた謎の機械のことだ。これらに繋がれた武器が、主人公の意思によって動かされる、という設定だ。キャラクターの背に武器が浮かんでいるようなデザインはシンプルにカッコいい。まるで「機動戦士ガンダム」のフィン・ファンネルのようだ。

『FF14』のAoEのようなものもある

まず、□・△攻撃は通常攻撃として繰り出される。もちろんコンボ攻撃も可能だ。例えば、それぞれにソードを組み合わせればソールアクションコンボが、ソード×ハンマーであればそれらを組み合わせたアクションが繰り出せるというわけだ。自分のプレイスタイルに応じて決めていくと良いだろう。また、プラチナゲームズらしい両スティックを利用した切り込みや切り上げなど、プレイヤースキルの向上によってアクションが報いてくれるバトルデザインだ。

L2・R2にある武器は「ゴーストアタック」として攻撃する際に活用する。HPゲージ下の赤いバー「SP」を消費するのと引き換えに、□・△のアクションと同時に繰り出せる強力な攻撃だ。SPはビルドにもよるが、自動または□・△攻撃でダメージを与えることで回復する。

ゴーストアタックはプレイヤーがダメージを食らいつつも繰り出せる点が特徴的で(一部の状態異常などは除く)、□・△攻撃を繰り出せないシーンでも攻撃を与えられる。また、タイミングを合わせれば、ソードで吹っ飛ばした敵にゴーストアタックで強力な追撃を与えるような合わせ技も可能だ。PS5では、コントローラー「DualSense」のアダプティブトリガーもしっかり効いていて、文字通り手応えのあるアクションを楽しめる。なお、プレイヤー人数によって難易度は調整されているので、ソロプレイでも無理なく遊べる。

この4軸の攻撃を組み合わせて、ド派手なアクションをプレイヤー自らが組み立てていく感覚が楽しい。ハクスラらしく、ドロップする武器によっては属性が異なることはもちろん、振り(攻撃スピード)が早くなるなど、アクションが細かく変化していくことも魅力のひとつだ。

また、ジャスト回避やジャストガード、パリィなども存在する。エフェクトも相応に派手なもので、連続でジャスト回避をして攻撃を一気に叩き込む、といったプラチナ印のアクションの楽しさは健在だ。

様々なプレイスタイルに対応するシステム、4つの軸を組み合わせた自由なアクション、プラチナゲームズらしいプレイヤースキルの向上に報いる爽快なアクション、この3つによって、本作のアクションは爽快でやりごたえのあるものになっている。ハクスラとして、装備集めに特化したクエスト(スカーミッシュ)や、たくさんの敵が出現するクエスト(シージ)なども存在する。自分の組み上げたアクション(=ビルド)を存分に発揮できる。

そして、機糸(ギデオンガット)と呼ばれるアンカーアクションも大きな特徴のひとつだ。これはアンカーのように敵へ飛びつくだけでなく、敵からガットでHPやSPを奪うアクションや、味方と繋いでバフをかけることもできる(ガットの解放まで時間がかかることが少々残念である)。

ひとつひとつのアクションは決して悪くないし、エフェクトも派手でかっこいい。ただしこれらのアクションがしっかりと絡み合っているかと問われれば疑問である。

というのも、それぞれが独立したアクションに感じられ、それらを「使うこと」は楽しいが、「組み合わせること」に対する楽しみが物足りない。アクションが固定された『ベヨネッタ』などは、近接と銃撃を無限に思えるほど組み合わせることで楽しさが生まれているタイトルだった。一方で本作は、アクションの選択肢を多くしたことで、柱のひとつである肝心の「アクションの融合」による楽しさが損なわれている印象だ。着想としてはとても面白く、プラチナゲームズであればもっとブラッシュアップしたものを出せるのではないか?と思ってしまう。

なお、ゲームスピードを上げる効果のある武器を組み合わせると、アクションの組み合わせの整合性が取れているように感じることもある。これを様々なビルドで試して探すことが、本作のハクスラの目的のひとつなのかもしれない。

また、せっかく手に入れた武器などを試す場所がないのは大きな問題だ。ロード画面にアクション練習をさせろとは言わないが、拠点の一角にアクションを試せる場所が欲しい。なお、この要望に対して「技術的な検討を行ったが、実現可能かは回答が難しい。」としているが、アクション性の高いバトルとハクスラを組み合わせるゲームデザインゆえ、筆者としては優先順位を変更してでも実装にリソースを割くべきだと考える。

しっかりした物語とキャラクター

世界観や物語は、とても興味深いものだった。舞台は、蒼い陽光に起因する病「蒼死病」の蔓延や、人間を狩る怪物「天士(ガルー)」による脅威が立ちはだかる陰鬱とした世界。「哨士(センチネル)」として「機棺(ギデオンコフィン)」を付けられた主人公(プレイヤー)が、巨塔「バビロン」の攻略に身を投じていくというもの。

救いようのない世界で懸命に生きる青年や、物語を重ねるにつれて印象が大きく異なっていくキャラクターなど、声優陣の演技も相まって、それぞれのキャラクターはしっかり立っている。コテコテのハイファンタジーな物語も王道ながら、熱いシーンが要所にあるだけでなく、コメディタッチで描かれる部分もあり、退屈することはない。ハクスラを主軸としたゲームはエンドコンテンツがメインとなりがちなものも見られるが、しっかりとキャンペーンとして楽しめるのは良いことだ。

また、ここまで掲載してきたスクリーンショットの通り、本作は油彩画のようなアートフィルター「ブラシワークフィルター」を実装している。世界観に即した画作りであり、悪くない。この画作りを活かすためか、並べられた絵画を見るように展開されるイベントシーンも見られる。一枚のスクリーンショットで見るとなんとも言い難い印象を持ってしまうことは否めないが、数時間プレイしていると「画作り」として表現したい開発の意図は伝わってくる。

また、サウンドが素晴らしい。「ミディーバルサウンド」をコンセプトに据えた、中世ヨーロッパの楽器や音楽を軸にした音楽は、中世の荘厳かつどこか煙たいイメージを華麗に表現している。とりわけ、拠点やPS5/PS4のゲームアイコンを選択しているときに流れる「吟遊詩人のレトー」は最高だ。リュートと呼ばれる古い弦楽器で奏でられているそうだ。リードコンポーザーの山口 裕史氏による手記では視聴もできるので、是非聞いてみて欲しい。

目を背けられない粗が目立つ

正直、本作の体験版を30分プレイした時点で絶望していた。陰鬱とした世界観を全面に押し出した冒頭のカットシーンは、理解しにくいグラフィック表現と、唐突にギデオンコフィンを植え付けられるという、意味不明な世界をそのまま押し付けられているような内容だ。キャラクターへ感情移入させたい意図は理解できるが、華がなく、平坦である。ファンタジーらしさを全面に押し出すか、ギデオンコフィンの魅せ方をひと工夫する必要があるだろう。

冒頭のバトルチュートリアルを兼ねた戦いも、いちいちウィンドウ表示で説明することでテンポが絶望的に悪くなっている。また前述の通り、複数のアクションが独立してしまう問題は、ゲームスピードが遅い初期装備ではなおさら強く感じてしまうが、一方で物語の中盤以降(6時間程度)までゲームを進めると、こうしたテンポの悪さは幾分かは解消されていくことはお伝えしておきたい。

正直、フルプライスを払って本作をプレイする人はこれを乗り越えねばと思うだろうが、無料体験版でプレイするユーザーの多くは離れてしまうのではないだろうか。

マルチプレイの仕様も気になる。クエストボードでクエストを受注して準備完了して出撃、というハンティングアクションのようなシステムだが、フレンドとのマルチプレイもわかりにくい。本作のマッチングシステムは、クエスト受注から約10秒間は同拠点(拠点は最大16人が参加する)のプレイヤーが参加可能であり、その後20秒間で全ての拠点から参加、そしてその後自動出撃という仕様である。

プライベート拠点を作成してフレンドだけで出撃することは容易だが、すると他の枠を別のプレイヤーとマッチングすることは不可能だ。フレンドと3人以下で組んで、残りの枠を野良で埋めたい場合は、受注から10秒以内にフレンドに参加するように声を掛ける必要があるという……なんじゃそりゃ

この他にも、進行によって解放されるオーダー機能(「〇〇を何体倒せ」のような受注式のサブ目標のようなもの)は、ミッション中に確認することができない仕様や、ミッションとストーリーカットシーンが紐付いているため、クイックマッチで参加したら長いカットシーンを見る羽目になるなど、QoLに関する不満点を挙げればキリがない。幸い、これは開発側も認識しているようで、公式Discordサーバーでは専用のチャンネルでフィードバックを随時受け付けているほか、これに対してサーバー内や公式生放送などで回答する姿勢が見られる。今後の改善に期待したいところだ。



まとめると、プラチナゲームズが持つ強みを活かしたアクションの楽しさと、しっかりした物語とキャラクターがありながら、あまり良いとは言えないシステム周りによってそれらが霞んで見えてしまうということだ。少なくとも、プラチナゲームズのアクションとファンタジーが好きなら、本作をプレイして損はないはずだ。しかし、多くのプレイヤーはその楽しさへたどり着くまでに、テンポの悪いチュートリアルと、不明瞭な仕様、フルプライスという壁を乗り越える必要があることも事実である。

『バビロンズフォール』はPS4/PS5/PC(Steam)向けに発売中で、クロスプレイにも対応している。PS4/PS5向け体験版も配信されているほか、Steam向けにも3月下旬配信予定。

ゲーム内ではシーズン1「久遠の巨塔」が開催中で、3月22日には新武器種「グレートアクス」の追加を含む初の大型アップデートが配信されるほか、3月29日からは『NieR:Automata』とのコラボイベントが予定されている。また、バトルパスのプレミアムトラックが無料で開放されている。

  • タイトル:バビロンズフォール

  • 対応機種:PC(Steam)/PS5/PS4

  • 記事におけるプレイ機種:PS5

  • 発売日:2022年2月25日(PS版)/3月4日(PC版)

  • 記事執筆時の著者プレイ時間:30時間

  • 価格:8,580円(通常版)/11,880円(デジタルデラックスエディション)/19,880円(コレクターズエディション)


《Okano》

「最高の妥協点で会おう」 Okano

東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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