『VALORANT』の実況解説は画面のどこを見ているのか?世界に誇る日本のVCTキャスター・岸大河さん、OooDaさん、yukishiroさんに訊く【独占インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『VALORANT』の実況解説は画面のどこを見ているのか?世界に誇る日本のVCTキャスター・岸大河さん、OooDaさん、yukishiroさんに訊く【独占インタビュー】

VCTを語る上で欠かせない、岸大河さん、OooDaさん、yukishiroさんにインタビュー。さいたまスーパーアリーナのお話や、実際の実況・解説をしていく中でのポイントなど、VCTを見ているあなたなら、きっと最後まで楽しい内容になっているはずです。

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『VALORANT』の実況解説は画面のどこを見ているのか?世界に誇る日本のVCTキャスター・岸大河さん、OooDaさん、yukishiroさんに訊く【独占インタビュー】
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「これは奇跡ではありません、チャンピオンズへの軌跡です」

これは、国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 ― Masters Reykjavík」にて、日本代表「ZETA DIVISION」がTeam Liquidに勝利した際に実況の岸大河さんが叫んだ言葉です。

「ゲーム」を「スポーツ」へ昇華させるアツい実況や、目まぐるしく展開されるアビリティーの攻防をわかりやすく理解させる解説……ゲームキャスターたちが『VALORANT』の競技シーンを語る上で欠かせない存在であることは、誰もが認めることでしょう。特に「Masters Reykjavík」では、そのキャスター陣のキャラクター性が世界的な脚光を浴び、その喜びっぷりや言葉選びが大きく評価されました。

そこで今回は、国内の市場規模が今よりずっと小さかった頃からシーンを見通し続け、更にはコミュニティ大会や自身の情報発信を熱心に続けるキャスター陣から、岸大河さん、OooDaさん、yukishiroさんの御三方にお話を伺いました。

左からOooDaさん、yukishiroさん、岸大河さん

さいたまスーパーアリーナでの有観客イベントについてをはじめ、そもそもなぜ『VALORANT』がここまで大きなコンテンツになったのか。そして実際に実況・解説をしていく中でどのようなポイントを見ているのか。VCTを見ている読者であれば、きっと最後まで楽しい内容になっているはずです。

※本インタビューは、2022年7月上旬に実施したものです。

初の大規模有観客、シーンを見極め対応するキャスター陣

ーー本日はよろしくお願いします。早速ですが、さいたまスーパーアリーナで初めてお客さんが入っている状態でステージへ入場したとき、どのようなことを感じましたか?

OooDaさん:意外なことに「うわっすごい!」より「来てくれてありがたいな」という気持ちが強かったですね。始まる前は「さいたまスーパーアリーナなんて埋まるの?」といった心配もどこかにあったので、「ちゃんと応援しに来てくれて嬉しいな」というのがまず浮かびました。

ーーまずは感動より感謝があったんですね。

OooDaさん:「やっとここに立てたんだ」「緊張する」みたいなものはなく、純粋な「本当にみんな来てくれてありがとう!」という気持ちが一番前にありましたね。

岸大河さん:お客さんの数自体はとても多かったのですが、不思議とそこまで多く感じないような、程よい緊張感でした。

ーー普段と違うところなどはありましたか?

岸大河さん:最初は温度感がわからなかったので、いつも通りの方がいいのか、今日らしいイベントチックな方が良いのかと、どのように番組を進めていこうか考えていましたね。そこまで普段と違っていたわけではないんですが、笑いや拍手といったお客さんのリアクションや、緊張する場面で静かになったりとオフラインならではのシーンもありますので、シーンに応じて現場でアジャストしていくのは楽しいです。

yukishiroさん:あれだけお客さんがいるなかだと、スティックバルーンの音でこちらの声もかき消えるので、間を少し長く持たせて歓声が止むのを待つなど、いつものオンラインと比べると、さっきの岸さんのお話でもあったように調整していく必要はありました。

さいたまスーパーアリーナの舞台に立つキャスター陣

岸大河さん:そういえば、OooDaさんは2日連続で同じ説明を噛んだよね。

OooDaさん:「VALORANTについて」のところで(笑)

34分あたりから
35分16秒あたりから

yukishiroさん:OooDaさん、協賛とかそういうところ噛むようになっちゃっているじゃん。

岸大河さん:みんな多少噛むけど、あそこだけは噛んじゃダメでしょ(笑)

OooDaさん:なんか「ここ噛んだら目立つよね」ってところこそ噛んじゃうんですよ(笑)

ーーなんでなのでしょう?(笑)

OooDaさん:なんでなんですかね(笑)

ユーモラスで魅力的なOooDaさん

大きな功績と、見えてきた伸びしろ

ーーある意味「さいたまスーパーアリーナ」という会場は、『VALORANT』国内競技シーンにおけるひとつの到達点かなと思うのですが、次の目標を定めるとしたらどこでしょうか?

OooDaさん:収容人数で言ったら、もうドームしかないですよね。ただ、来年から『VALORANT』国内競技シーンは大きく変わると思うので、どうなるかは未知数です。

2023年はインターナショナルリーグが新設される。具体的な形式は明かされていない。

yukishiroさん:個人的には、有観客の「有料」のイベントとして実施して、お客さんがきちんとチケットを買って来てくれたことは大きかったですね。音楽のライブなどの多くは、基本的にはその場に行かないと観られないものになってるものだったりするじゃないですか。でも今回のイベントは、オンラインでも観られるっちゃ観られるんですよ。そんな中で実際に満席に近い状態まで売れましたからね。

OooDaさん:フィジカルスポーツでは、配信チケットを購入して観戦するものもありますよね。それが正解かどうかわかりませんが、eスポーツもそう向かっていくのか……またはいかないのか、気になるところです。

yukishiroさん:こういうイベントを実現させるにはすごいお金が必要ですよね。以前の国内シーンのままだと、いつかは息切れすると思っていたので、こうやって実績を作れたのは大きいと思います。また同じような形式で開催してほしいですね。

Tシャツやタオルなどの限定グッズが販売された会場は、早朝から長蛇の列が

岸大河さん:今回のイベントは、“来年の誘致”という意味合いもあったと思います。

ーー国際大会を日本で実施するための前準備ですね。

岸大河さん:その通りです。来年のMastersやChampionsで、世界中の選手を日本に集めるためのパフォーマンスでもあったと思っています。ただ、そのためにはモニターアームなどの環境面は、国際大会に準拠していく必要があるでしょう。

ーー世界で戦うチームを送り出す会場であるなら、世界と同じ環境を作っていく必要があるわけですね。

現状の競技シーンの概要。来年はフォーマットが変わるが、年2回のMastersと、Championsの開催は明言されている。国際大会が日本で開催される日は、案外遠くないのかもしれない。

インフルエンサーから広がる『VALORANT』

ーー話は大きく変わりますが、『VALORANT』というタイトルがここまでバズった理由は、どこにあると思いますか?

岸大河さん:僕はゲーム配信の隆盛が大きな要因かなと思います。「インフルエンサーも遊んでいるから『VALORANT』をやってみようかな」からスタートしたのかなと思います。もちろん、ZETA DIVISIONの快進撃の影響も大きかったですが。

さらには『Apex Legends』や『フォートナイト』で有名なCR(Crazy Raccoon)もファンが多く、CRの世界大会出場だったり、CRカップなどストリーマーとかけ合わせたイベントきっかけで選手を知った方も少なくありません。こういう様々なターニングポイントが重なって、今に至っていると思います。

CR CUPは今やゲームストリーマーだけでなく、タレントやモデルといった幅広い参加者を集めている。

yukishiroさん:ストリーマーもそうですが、もうひとつは「背景」だと思うんです。

ーー『VALORANT』というタイトルについての背景、という意味ですね。

yukishiroさん:例えば、「世界大会が盛り上がりを見せていて、視聴者層がとても多い『League of Legends(LoL)』の会社が出す新しいFPS」というのも、ポイントのひとつだったと思います。

FPSって絶対的に難しいゲームジャンルなんですよ。それでも面白さと興味を引くことができて、見る人やプレイする人が増えたのは、岸さんのおっしゃる通りインフルエンサーを含め、多くのターニングポイントが重なったおかげなんじゃないかと。

OooDaさん:『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』『Apex Legends』『フォートナイト』といった、非常に多くの人気タイトルがあって。それプレイするストリーマーさんが多くいて。そして『VALORANT』を知って、競技シーン観たらめちゃくちゃ面白いじゃん!みたいな人もいたと思います。

我々が協力できている部分もあるかもしれませんが、コンテンツの発信、各チームの努力もあって、競技シーンを魅力的に見せられているのも大きな要因かなと思います。

キャスター陣が中心となって『VALORANT』の基礎や実践、競技シーンなどを取り扱う「SmashlogTV」など、積極的な情報発信がされている。

岸大河さん:ZETAとCRのパワーは大きかったよね。

OooDaさん:本当に大きいです。『VALORANT』も最初から右肩上がりというわけではありませんでしたから。

yukishiroさん:最初のほうは視聴者数も3000人とかで、CRの試合になるとグッと視聴者数が増えるみたいな感じでしたからね。

ーーインフルエンサーという言葉が出てきましたが、ゲームをプレイする以上に、ゲームを観るという人が当たり前の存在になりましたよね。

岸大河さん:まず、モバイルゲームやコンソールを中心にゲームをしていて、PCを持っていない人は一定数いますよね。僕のインスタグラムで「ヴァロをどういうきっかけで観始めたの?」「どこのチームが好きなの?」と訊くと、CRやZETAと答える人が多いんです。さらに彼らを知るきっかけはインフルエンサーが集まるイベントでのコラボだったりするので、やはり大きな存在ですよね。

なかには、歌い手さんのファンが、歌い手さんと一緒のチームになった選手を見たことがきっかけで観始めたというケースもありました。そもそもゲームに興味がないような、他の界隈のファンがどんどん流入してきているんです。いまやプロゲーマーも積極的に配信活動をしているので、PCを持っていない人でも楽しめるコンテンツとして成り立っていますよね。僕らとしては『VALORANT』をプレイしてくれ!とは思ってなくて、観てくれるだけでも嬉しいんです。

yukishiroさん:歴史も感じますよね。「PUBG JAPAN SERIES(PJS)」くらいから、昔と違って選手の見方がひとつ変わってきて、昔の「ゲーム内だけで強いヤツ」という印象から、「表へ顔を出して活動していく」という存在に変化してきました。『PUBG』は一気に視聴者層としての認知、ゲームに対する認知、シュータージャンルへの認知を高めたと思います。

例えば、一昔前であれば「エイム」という言葉の意味をわかる人は多くなかったと思いますが、今ではたくさんの人がゲームの歴史をなぞれた上で、その意味を理解しています。『VALORANT』のルールを明確に理解しきれていないけど観ている人は結構数いると思うのですが、色んなゲームをなぞって「敵に照準を合わせて撃つのはすごい」という認識を持てているからこそ楽しめているんですよね。

岸大河さん:あとはキャスター陣が楽しそうだとか、わかりやすく説明していることもトリガーにもなってるのかなと思います。堅苦しい実況ではなくエンタメチックに、時には熱く、時には面白く、時には真面目にやっているのが、インフルエンサーきっかけで入ってくる方にとっては心地よい空間なのかな。

「ゲームキャスター」とユーザーの距離感

ーーゲームキャスターへの注目度の高まりは、肌感覚として感じていますか?

岸大河さん:「ゲームキャスターになりたい」とか「どうやったらなれますか?」みたいなDMが来たりするので、そうですね。ただ、なんで注目を浴びたかはわかりません。テレビを観ない方やYouTubeなどでゲーム実況を観ている人からすると、客観的な実況が不思議に思えたのかもしれませんね。

ーー俯瞰視点として観るゲームが新鮮というわけですね。

岸大河さん:「負けちゃった」「スーパープレイが出た」というゲーム実況で主観的なものとして観ていたものが、客観的に実況されたときに、主観との差別化がされて、観ていて面白いものになったのかもしれません。

あと、我々の「ハズす時はハズす」という温度感が今の若いゲーマーにはマッチしてるのかもしれません。僕らもそういうゲーマーの心を持っているので、変なハズし方というよりは、ゲームってやはりトラブルとかバグとかも含めて面白いシーンがあるので、そういうイレギュラーなことは拾うようにしています。

ーー自身がプレイヤーだからこそできることですね。

yukishiroさん:でもVCTの中で一番好き勝手言ってるのは岸さんだよね(笑)

OooDaさん:間違いない。止められない(笑)

yukishiroさん:去年のLCQ見て欲しい。めっちゃぶっ飛んでた(笑)

昨年のChampionsのLCQ(ラストチャンス予選)では、日本チーム「NORTHEPTION」が大健闘を見せた。

岸大河さん:でも別にバズろうと思って喋ってるわけでもないし、スタイル自体も『オーバーウォッチ』時代からそんなに変わってないから。

yukishiroさん:僕ら別にタレントになるつもりはないよね。影の存在でいいんですけど、さいたまスーパーアリーナのお客さんの反響はすごかった。実況席にそそくさと移動してたらめっちゃ声かけられてビックリしましたよ。

岸大河さん:嬉しいけど、やっぱりどこか違和感あるよね。

yukishiroさん:わかる。選手とかが注目されるならわかるんだけどね。

岸さん:僕らもなんかアイドル化してしまっていて……それは嫌ではないんですけど。あくまでも選手ファーストで、僕らよりは選手に注目して欲しいですかね。

OooDaさん:フィジカルスポーツとも違ってキャスターが前に出やすいから、タレントとして見てくださってるのかもしれませんね。

yukishiroさん:ゲーマーという意味ではお客さんと一緒だから、距離の近さを感じるのかもね。一般的なスポーツキャスターはテレビ局の社員だったりするので、良い意味で距離感が保たれてますから。我々はなんなら配信もするので近くに感じやすいですよね。

岸大河さん:キャスターも昔に比べて声優さんと同じように、裏方というよりはタレント性が必要な時代になってきたのかな。声優さんも今では歌って踊って舞台挨拶して、バラエティ番組などへも出演したりしています。僕らも同じように本来の職務以上のことを求められているのかも。

ーーキャスターとしての仕事がこれまで以上に多彩になってきているんですね。

OooDaさん:そういう意味では、(ゲームキャスターを目指す)ハードルもすごい上がっているのかもしれませんね。実況がうまいだけでは起用されない。

岸大河さん:何か得意な分野があったりとかね。

OooDaさんが影響を受けたのは、まさかの“ラッパー”

ーーみなさんはゲームキャスターという仕事が一般的でない頃から、草の根をかき分けてきたと思いますが、実況解説において、参考にしたものや、影響を受けたものはあったりするんでしょうか?

OooDaさん:最初は勉強しようと、競馬の実況をはじめ、古舘伊知郎さんなどから吸収しようとしたこともありましたね。それからは現場叩き上げに加えて、一番影響を受けたのがラッパーでした。

フリースタイルラッパーの「TKda黒ぶち」さんの、早口になったりスローテンポになったりテンポを使い分けつつも、感情を込めてバトルする姿を見て「俺はこうなりたいな」と思いましたね。以降はアツい時はアツい、悔しいときは悔しい、と気持ちを乗せるように心がけています。

岸大河さん:僕も同じく古舘さんのトーキングライブや、競馬などをウォッチしていたことがありますね。でも、他のアナウンサーの方々の表現方法を見ているうちに「俺はこの道ではないな」と至り、どれが自分に当てはまるか今も模索しています。海外のeスポーツ実況を聞いていた影響も少なくありませんね。

アナウンサーの巨匠、古舘伊知郎さん。某報道番組から退いてもなお、新しい挑戦を続けている。

歌に目を向けてみると、音程を取るのが上手くても感情を込められない人がいれば、音程は外れていながら感情が伝わってくる人もいます。実況も同じで、状況整理が上手ければ良いわけじゃなくて、観ている人を感情移入させるにはもっと違うアプローチがあるんじゃないかと思うんですよね。

OooDaさん:すごいわかる。実況は状況を説明してる人だけど、そこから喜怒哀楽を感じて欲しいんだよね。

岸大河さん:今でもどれが正しいのか今でもわかりませんが、実況が上手くなくても、前で起きていることに対して共感できる何かを言葉にしちゃえば、そこからリンクしてみんなが盛り上がる空間が作れるはずです。

yukishiroさん:実際に実況していて、それが正解かどうかはお客さんから漏れ聞こえた反応で定めたりしてますね。MCなどは特に、どのように回すとスムーズにお客さんにウケるのか、反応が薄いのかなどの反応で見定めていたりします。

ーーそこにお客さんがいることでリアルタイムにフィードバックを得ているんですね。

実況・解説は画面のどこを見ているの?

ーーでは、みなさんが実際に『VALORANT』の実況解説をしていくなかで、画面のどこを見ていることが多いのでしょうか?

yukishiroさん:実況と解説で違うと思いますが、僕は解説なので基本はミニマップです。あとはアビリティーの個数・武器の状況・クレジットの状況で、撃ち合いが始まった瞬間だけ選手の視点を見ています。でないと、すごい良いプレイが起きた時に、自分がそのリアクションができなくなってしまいます。

OooDaさん:実況はその真逆くらいだよね。

yukishiroさん:岸さんとOooDaさんも違うよね、岸さんの実況は「先読み」が多くて、OooDaさんはその場の実況がメインな感じ。OooDaさんのアイスボックスの早口実況はシビレたね。

REIGNITE VS Sengoku Gamingでの一幕(1時間6分42秒あたりから)。SGのアビリティーとRIGの前線ラインなどを完璧に把握し、それを声に出して伝えているのがよくわかる。

OooDaさん:あれは全然意識してなかった!

yukishiroさん:早口過ぎて何言ってるかわからないみたいなことも全くなかったよね。

ーー岸さんの「先読み」とはどういうことでしょうか。

岸大河さん:この間のVCTでも、Meteor選手のシーンとか、場の雰囲気があって、彼の過去のプレイとかみいても「これ行っちゃうんじゃない?」みたいなものを感じ取ることがあります。試合の流れ、選手の配置、顔出すタイミングの優位性などを総合した、言葉じゃ表しにくいものがあります。

Meteor選手がマーシャルで鮮烈な3キルをもぎ取ったラウンド(6時間14分36秒あたりから)。3キル目、Cリンクにしっかりとフォールトラインが入っているところを見ると、連携力の高さがうかがえる。

yukishiroさん:予測する要素はあるよね。武器不利ラウンドでマーシャルを持って先頭を行くMeteorを見ると、そのままエントリーする可能性は高いので「お願いMeteor」になるわけです。

岸大河さん:「こういうシチュエーションならこっち狙ってるよね」という前提で実況をしてるんですよ。

yukishiroさん:なんとなくスーパープレイが起きて欲しい、起きるだろうなという気がしちゃうよね。

OooDaさん:口がもうそれになってんだよね(笑)

yukishiroさん:仮にそれができなかったとしても、その選手がチームのために前に進んでキルを狙ってることは伝わるよね。だからその選手が成功しても失敗しても、どう転んでも正解なんですよ。

ーーとても面白いお話です。他に見ているところはありますか?

岸大河さん:選手のアクションを見落としちゃうんじゃないかと思うほど、アビリティーもめちゃくちゃ見ます。

ーー画面にはたくさんの情報があるので、それらを処理して理解して言語化するのはとても大変だと思います。

岸大河さん:キャスターによると思います。「どこまで見るか」というところで。

OooDaさん:そのラウンドや状況によっても見るところは変わります。ゆっくりな展開だったらずっとミニマップに注意を向けていますし。

岸大河さん:僕はMastersとChallengersで変えていることがあって、ミニマップより選手のアクションを見ていたりします。Challengersでは選手視点がミニマップに可視化されているんですが、Mastersではそれがないのでフィールドに出るアビリティーが見やすく、よくミニマップを見るようになりますね。

あと、アビリティーのクールダウンが出ないシグネチャーアビリティーや、特に残り数個でアルティメットが使えるときはアルティメットポイントなんかも見ています。

yukishiroさん:UIも昔に比べていろいろ変わってきたよね。

岸大河さん:昔は観戦画面もフラッシュを食らってたんですよ。その間にラウンドが終わってたりしました(笑)

yukishiroさん:今はフラッシュ食らってることを示すインジケータが出てわかりやすくなりましたし、機能も追加されたりしてわかりやすくなりましたね。

岸大河さん:今後は、『LoL』みたいに上から順にデュエリスト・イニシエーター・スモーク・センチネルになると良いですね。そうするとソーヴァのリコンボルトなどのシグネチャーアビリティーが同じラインで見られるとか、スモークの残り個数とか、見えてくる部分が必ずあるんですよ。

ーー確かに、ミラー構成でも違う位置に同じエージェントがあったりするので、同じ順であればよりわかりやすくなりますね。今度の改良に期待したいところです。

ーー本日はとても興味深いお話をありがとうございました。最後に一言、視聴者・読者へメッセージをお願いします。

yukishiroさん:これからも、よりわかりやすく解説をしていきますので、引き続きVCTをお楽しみください。

OooDaさん:引き続き、みなさんが楽しめるように実況していきますのでVCTをよろしくお願いします。

yukishiroさん:食レポは……?

OooDaさん:フェニックスと共に食レポも強く、上手くなっていきますのでよろしくお願いします(笑)

岸大河さん:観戦する、プレイする、一緒に盛り上がる、といった『VALORANT』の楽しみを、競技シーンでなくても、ストリーマーなどを通して興味を持ってくれたら嬉しいです。競技シーンも、引き続き暖かい目で応援していただけると嬉しいです。


ユーザーとコンテンツの架け橋であるゲームキャスター。その醍醐味を楽しげに語らう三人は、FPS競技シーンの歴史をウォッチし続けてきた戦友同士であるからこそ、お互いに背中を預け合ってきた絆を感じさせるものでした。

まだVCTは終わっていないので、8月上旬からの「LCQ(Last Chance Qualifier)」と世界の頂点を決める「VALORANT Champions 2022」……魅力的なキャスター陣による実況・解説を聴きながら、まだまだ『VALORANT』のお祭りを楽しみましょう。

<取材・執筆:岡野朔太郎/一部撮影・編集:矢尾新之介/協力:Signater>

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