気分は西洋版「鎌倉殿」派閥抗争も恐怖政治もある中世領主ストラテジー『クルセイダーキングスIII』日本語版【先行レポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

気分は西洋版「鎌倉殿」派閥抗争も恐怖政治もある中世領主ストラテジー『クルセイダーキングスIII』日本語版【先行レポ】

中世ヨーロッパを舞台に一族の繁栄を目指す歴史ストラテジー『クルセイダーキングスIII』のプレイレポを物語風にお届けします。

連載・特集 プレイレポート
『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』
  • 『クルセイダーキングスIII』

2022年9月1日にEXNOAよりPS5/Xbox Series X|S向けに発売された『クルセイダーキングスIII』。本作は、中世ヨーロッパを舞台に一人の領主となって一族の繁栄を目指す歴史ストラテジーゲームです。デベロッパーは『ステラリス』など数多くのストラテジーゲームを手がけるParadox Interactive。2020年9月にリリースされたPC版は200万本以上を売り上げています。この記事では本作のPS5日本語版のプレイレポートをいち早くお届けします。

『クルセイダーキングスIII』日本語版トレーラー

領主はつらいよ

本作は歴史ストラテジーですが、戦争で自分の領地を広げていくだけのゲームではありません。プレイの自由度は高く、プレイヤーはいかにも中世の領主らしい、波乱万丈の人生を体験できます。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で描かれているように、主君に不満を持つ家臣同士で派閥を作ることも、その逆に主君が家臣を恐怖で支配することも可能です。他人の弱みを握って言うことを聞かせることすらできてしまいます。

本作でプレイヤーが操作するのは国ではなく一人のキャラクターです。ゲーム世界にはプレイヤーの他にもAIが操作する無数のキャラクターが存在し、それぞれが自分の判断で行動しています。そして、結婚や暗殺から宣戦布告に至るまで、すべての行動はキャラクター同士のコミュニケーションとして処理されていきます。

キャラクターに対するコマンドの一覧(中央)。表示されているコマンドはごく一部に過ぎない。

コミュニケーションと言っても、実際にプレイヤーが行う操作は対象となるキャラクターに結婚や暗殺のコマンドを実行するだけです。AIも裏で同じことを行い、自分が結婚の対象に選ばれれば承諾を求める手紙が届きますし、暗殺のターゲットにされれば暗殺者に命を狙われます。この仕組みのおかげで、まるで人間を相手にしているかのような臨場感あふれるプレイが生み出されるのです。

本作は最大12人のマルチプレイに対応していますが、コマンドの対象が本物の人間に替わるだけで、ゲームの仕組みは変わりません。シングルプレイと同じ仕組みでプレイヤー同士がやり取りしても、マルチプレイが成立するようになっているのです。ちなみに、シングルプレイでもマルチプレイでもゲームはリアルタイムで進行し、いつでも一時停止できます。

ゲームに登場する世界全体を一望したところ。マップは自由に拡大・縮小できる。

本作はストラテジーゲームですが、キャラクターを演じるロールプレイングゲームとしての側面もあります。各キャラクターには性格が設定されていて、性格に反する行動を取ると徐々にストレスがたまり、ストレスが限界に達するとペナルティが発生します。ストレスをいかに管理するかもゲームの一要素です。

マップはヨーロッパから中東、インド、アフリカまで、広大な地域をカバーしています。残念ながら日本や中国は含まれませんが、領主であれば世界中の好きな人物でプレイ可能です。開始年は、ヴァイキングが猛威を奮った867年とノルマン・コンクエストの直前にあたる1066年が用意されており、時代が下れば十字軍が召集されたり、モンゴル帝国が勃興したりすることもあります。

中世の封建領主を題材にしているだけあって、王の下に公爵が仕え、公爵の下に伯爵が仕えるといった、主君と臣下の上下関係もしっかり再現されています。また、プレイヤーが目指すのはキャラクター個人の繁栄ではなく、あくまで一族の繁栄です。たとえ自分のキャラクターが死んだとしても、一族の後継者がいる限りゲームオーバーにはなりません。

一族の家系図を見ることもできる。一族が繁栄するにつれて家系図はどんどん広がっていく。

征服王のダメ息子

百聞は一見にしかず。ここからは実際のプレイを物語風に見ていきましょう。

今回筆者がプレイするのは、ノルマン・コンクエストで名高いウィリアム征服王……ではなく、その長男のロベルトです。時はまさにウィリアムによるイングランド征服が始まる1066年。弱冠12歳のロベルトは、公爵である父に仕える伯爵として北フランスの領地を任されています。

青がフランス。赤がイングランド。北フランスにある小さな水色がロベルトの領地。

軍勢を率いてイングランドに向かう父を見送ってから4年後。16歳になったロベルトは成人を迎えました。少年時代を経てロベルトが身につけた性格は「狂信的」と「怠惰」と「せっかち」。信仰には熱心ですが、怠け者で、深く考えずに行動してしまいます。今回のプレイでは、この性格に沿ってロールプレイします。

キャラクター画面(左)。性格などの特性はキャラクターの下にアイコンとして表示される。

さらに、ロベルトは教育を通じて「稚拙な陰謀家」の特性を身につけました。策略に長けた特性ですが、ランクは最低です。しかも、外交、軍事といった能力値はどれを取っても平均以下。能力値はさまざまな成功判定に使われるので、今後の行く末が心配です。そんな不安をよそに、ロベルトはさっそく家臣の女性から金を巻き上げて小悪党ぶりを発揮しました。

プレイ中にはさまざまなイベントが発生する。イベントには選択肢や成功判定があることも。

成人したロベルトは妻を迎えました。時代的なところからわかる方も多いでしょうが政略結婚です。義父となったリチャードもまた父ウィリアムに仕える伯爵で、領内で最大の有力者です。

本作の結婚は同盟と同じ意味を持ちます。リチャードと同盟したロベルトは、妻だけでなく強力な後ろ盾も手に入れました。

配偶者は同盟のきっかけになるほか、キャラクターの能力値を上昇させることができる。

ロベルトが少年時代を怠惰に過ごしている間、父ウィリアムはイングランド各地を転戦しながら連戦連敗を続けていました。さすがにこのままではマズイと感じたロベルトは、ようやく重い腰を上げてイングランド征服戦争に参陣します。

イングランド征服戦争で苦戦中の父ウィリアム(左)とイングランド王(右)。

自分の領地で集めた兵士を率いてイングランドに渡ったロベルトは父ウィリアムと合流。イングランド軍との一大決戦は見事ウィリアムの勝利に終わりました。ウィリアムはこの戦いでイングランド王の世継ぎを捕らえ、不利な戦況を一気に覆します。

本作での戦争は、個々の戦闘の勝敗と占領した土地、重要人物の捕虜を総合して最終的な勝敗が決まります。

戦闘の勝敗は兵数だけでなく多くの要素によって決まる。斜線部分は占領されている土地。

勝利に沸き立つロベルトのもとに本国から悪い報せが届きました。父が留守にしている間に、義父リチャードが公爵の座を狙って暗躍を始めたのです。

主君に不満を持つ家臣は派閥を作ることができます。派閥から要求を突きつけられた主君は、要求を認めるか、戦争で決着をつけるかを選ばなければなりません。

義父リチャードが作った派閥(右)。プレイヤーも派閥を作ったり参加したりできる。

三つ巴の戦い

イングランドに侵攻してから6年目。父ウィリアムが突然「聖像破壊派」への改宗を宣言しました。聖像破壊派は、カトリックから異端とされる宗派です。父親が異端者となったことにロベルトは大きな衝撃を受けました。

本作には宗教や文化の概念が存在します。それぞれ固有の特徴が設定されていて、宗教や文化の異なる相手とは非常に仲が悪くなります。

突然改宗を宣言したウィリアム。歴史上の出来事ではなく、今回の世界で偶然起きたイベント。

ウィリアムの庇護のもと、聖像破壊派の教えは急速に広まっていきます。一族を改宗させたウィリアムはロベルトにも改宗を求めましたが、「狂信的」な性格のロベルトは自らの信仰を貫くことを決め、父の要求を断固拒否します。

宗教の分布を示すマップ。北フランスに点在する紫色が聖像破壊派の信仰。

ウィリアムはイングランド王と和平を結ぶと、征服戦争を中止して軍勢を引き上げました。ようやく平和が訪れたと思ったのもつかの間、ウィリアムはフランス王の暴政に耐えかねて反乱を起こします。フランス王が異端の教えを棄てるよう迫ったのが原因かもしれません。

父ウィリアム(左)が主君であるフランス王(右)に反逆。兵力では圧倒的に不利。

ウィリアムの軍勢は強力ですが、フランス王の軍事力には及びません。風雲急を告げる中、今度は義父リチャードの派閥が公爵の地位を求めて挙兵。北フランスは三勢力が入り乱れる戦乱に突入しました。誰の味方につくか迷いに迷ったロベルトは、生来の「怠惰」な性格からなにもせず戦いの行方を見守り続けました。

戦乱の中、本来は敵同士でないフランス王と義父リチャードの軍勢が衝突する場面も。

翌年、義父リチャードは父ウィリアムとの決戦に敗れ戦死。その二年後、フランス王に敗れたウィリアムは捕らえられ、地下牢に幽閉されます。ウィリアムの領地はすべて召し上げられ、宮廷にいた一族はヨーロッパ各地に散り散りになりました。

フランス王にすべての領地を召し上げられ、地下牢に幽閉された父ウィリアム(左)。

一族の中で領主の地位を保っていたのは中立を守ったロベルトだけでした。父の敗北から一ヶ月後、信じられないことが起こります。なんと、フランス王が父から召し上げた公爵の地位をロベルトに与えたのです。「怠惰」な性格が初めて役に立った瞬間でした。

フランス王からロベルトを公爵に任じるとの書状が届いた!

運命の子

労せずして公爵の地位を手に入れたロベルトは、ますます「怠惰」になっていきました。妻の暗殺計画を察知した密偵頭から警告を受けたときも、まったく気に留めませんでした。

家臣である密偵頭は頻繁に陰謀を報告する。一々気にしていては身がもたない。

珍しく妻と狩りに出かけたロベルトが背後の物音に気づいて振り返ると、ナイフを持ち、妻に襲いかかろうとする女の姿が目に入りました。警告を受けた暗殺者に違いありません!

妻(左)に襲いかかる暗殺者(右)。まさか、こんなところで襲われるとは!

このときのロベルトは「怠惰」よりも「せっかち」な性格がまさっていました。とっさに女に飛びかかったものの、平均以下の能力値では勝てるはずもありません。

あえなく返り討ちに遭い、凶刃に倒れてしまいます。薄れゆく意識の中で、ロベルトは暗殺者の正体に気づきました。「若い頃に悪党ぶって金を巻き上げた、あの女だ……。」

キャラクターが死んでもゲームオーバーにはならない。後継者がいる限り物語は続いていく。

ロベルトとその妻は狩猟中の「事故」で命を落としました。公爵の地位を継承したのは、わずか3歳の一人息子です。その後、父ウィリアムは獄中で命を落とし、イングランド征服の大義名分は子供たちに引き継がれました。

はたして、残された幼子は散り散りになった一族をまとめ、祖父の悲願であるイングランド征服を成し遂げることができるでしょうか?


このプレイレポートにおける物語はここで終わりますが、実際のゲームは世代を越えて続いていきます。今回の場合なら、プレイヤーは後継者である3歳の子供を操作してゲームを続けることになります。本作は文字通り世代を超えて一族を繁栄させていくゲームなのです。

ご覧の通り、本作は遊び方の自由度が高いゲームです。ゲームに慣れてきたら、ぜひ戦争で領地を広げる以外の遊び方にも挑戦し「あなただけの大河歴史ロマンシミュレーター」を目指してください。

『クルセイダーキングスIII』はPS5/Xbox Series X|S向けに発売中です。


Crusader Kings 3 (輸入版:北米) - PS5
¥6,097
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
Crusader Kings 3 (輸入版:北米) - Xbox Series X
¥4,750
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《FUN》

遊ぶより創る時間の方が長いかも FUN

元ゲームプログラマー。得意分野はストラテジーゲーム。ゲームライターとして活動する傍ら、Modの制作や有志日本語化に携わっています。代表作は『Crusader Kings III』の戦国Mod「Shogunate」。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top