『Wo Long: Fallen Dynasty』安田P&山際Pに訊く『仁王』ではない新たな“死にゲー”へのこだわり―二人の邂逅エピソードには意外な裏側も | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『Wo Long: Fallen Dynasty』安田P&山際Pに訊く『仁王』ではない新たな“死にゲー”へのこだわり―二人の邂逅エピソードには意外な裏側も

『仁王』安田P/Dと『Bloodborne』山際Pがタッグを組んだ三国志死にゲー『Wo Long: Fallen Dynasty』の開発エピソードに迫る!Game*Sparkの取材がきっかけになった意外な秘話も……。

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『Wo Long: Fallen Dynasty』安田P&山際Pに訊く『仁王』ではない新たな“死にゲー”へのこだわり―二人の邂逅エピソードには意外な裏側も
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2022年6月に発表された『Wo Long: Fallen Dynasty(ウォーロン フォールン ダイナスティ) 』(以下、ウォーロン)はコーエーテクモゲームスのTeam NINJAが手掛け、三国志をダークに描いた新たな“死にゲー”タイトルです。編集部では体験版配信を目前に、安田プロデューサーと山際プロデューサーへインタビューを行いました。“死にゲー”をヒットさせてきた両名の邂逅にはGame*Sparkの取材も関係していた……!?ディレクター論やアクションのこだわりについても伺いながら、二人のプロデューサーが作り上げる『ウォーロン』の裏側に迫ります。

本作のデモ版をたっぷりと試遊したレポートも掲載していますので、ゲームの内容を細かく知りたい方はあわせてご覧ください!

プレイレポはこちら!
右:安田文彦氏(Team NINJA ブランド長 プロデューサー)
左:山際眞晃氏(Team NINJA ブランド マネジャー)

山際氏のコーエーテクモゲームス入社はGame*Sparkも関係していた……!?

――山際さんがTeam NINJAに加入されてから1年ほどたったかと思いますが、外からのイメージと中に入ってみて実際に空気を肌で感じて何か違いはありましたか?

山際眞晃氏(以下、敬称略): 元々Team NINJAを外から見ていて、すごくアクションのこだわりが強くて、かつ、『仁王』も『NINJA GAIDEN』そうですが、ワールドワイドで勝負しているという印象が強くありました。

やっぱり見ていた通りというか……見ていた以上かもしれないですが、アクションのこだわりは半端じゃないなと。これまでのメンバーはもちろん、若手や新たなメンバーも増えていますが、とにかく全員がアクションにこだわりを持って粘り強く一生懸命ゲーム開発に打ち込んでいるので、一緒にゲームを作っていて楽しいです。

――本作での立場について伺いたいのですが、安田さんはディレクターではなくプロデューサーに専念しているのでしょうか?

安田文彦氏(以下、敬称略):そうですね、今回はディレクターを二人立てて、我々がプロデューサーとして進めています。

――安田&山際の2プロデューサー体制で開発が進んでいると。

山際:立ち位置としては安田がプロデューサーで、僕が安田の下で割と自由に働かせてもらっている開発プロデューサーという形です。

――なるほど。『仁王』という大ヒットシリーズに続く新たなIPだとは思いますが、若手のディレクターに任せた意図を教えてください。

安田:一人のディレクターにはこれからチームリーダーとしてクリエイティブの面でリードしていってほしいということで抜擢しました。もう一人のディレクターにはずっと『仁王』シリーズでアクションのリードをしてもらっていたので、キャリアパスとしてもここで自分の代表作だと胸を張れる新作をやってもらおうという意味で任せています。……あと、私がこのまま複数タイトルのディレクションを続けると、早晩倒れるという危機感もありました(笑)。正直私ももっとやりたい思いはあるのですが、今後チームをさらに飛躍させる人材も育てていく必要もあるので思い切って任せました。あと、私がやると『仁王』に似通っちゃうかとも思ったので……新規IPだからこそ、私以外の人間がディレクションすべきかなと。

――となると、具体的にお二人はどの程度開発に細かく指示しているのでしょうか?

安田:私は、月に1~2回ビルドを見て、ああでもないこうでもないと指示しています。ユーザーさんの目に触れるものは全部チェックしています。

山際私の方が、より日々のビルドの中身を見て、進行スケジュールをもう少し細かくみている感じですね。

安田:『仁王』シリーズで一緒にやっていたメンバーの多くもリーダー格としてチームを引っ張ってくれているので、私が目指す方向性は浸透していると思います。

あと開発環境でいうと、この2年でリモートを含めた柔軟な開発体制が会社のバックアップもあって、整ってきました。一方で、新卒や経験の浅いメンバーも多数携わっているので、今年度からはできる限り対面で直接フィードバックするようにしていますやはりアクションのフレームレベルでの細かい指示などは直接やったほうが効果的なんですよね。もちろん事情があって出社が難しいメンバーはハイブリッドな形で開発中です。

これまで一緒にやってきたメンバーを中心にコミュニケーションも取れているので、ようやく一般のユーザーさんにもプレイしてもらってフィードバックが欲しいという段階になりました。

――ゲームの質問に移る前に、最後に伺いたいのがお二人の関係性についてです。以前Game*Sparkでは映像制作チームアルシペルとの共同企画として『仁王2』の開発陣に密着するドキュメンタリーを企画し、お二人にも出演していただきました。その当時はSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に在籍していた山際さんを招く形で安田さんとの対談を行ったのも、もう1年以上前のことになります。山際さんの入社もGame*Sparkの取材がきっかけになったとか、ならなかったとか……というところで出会いや入社までの関係性について教えてください。

『仁王2』の開発を長期で追ったドキュメンタリー

山際:仁王』のイベントで……当時安田がSIEに来て、そこで一緒にイベントに参加させてもらったのが最初だったと思いますね。そこからちょっとコミュニケーションを深めさせてもらって、食事に行くようになっていた記憶がありますが……。

安田:うん。違いますね。

山際:あれっ!?

――(一同笑)。

安田:最初の出会いは、『Bloodborne』を発売した後に当時SIE社にいた山際をコーエーテクモゲームスに招いて行われた講演です。

山際:あっ!そうだそうだ……。

安田:たしか山際がTGSで講演しているのを襟川(陽一氏。コーエーテクモホールディングス代表取締役社長)が聞いて、「当社でも講演してほしい」と頼んでコーエーテクモに来てもらったという経緯だったと思います。

ちょうどその当時、私が『仁王』のディレクターをやっていたので、色々と質問させてもらったんですね。おそらくその時の山際にとっては、たくさん並んだジャガイモの一つぐらいの感じだったんだと思うんですけど。(笑)

山際:嫌な質問されたのを覚えてますよ。(笑)

安田:その後、『仁王』のイベントに来ていただいたり、逆に開発の相談させていただいたり、というのが続いていて。『仁王2』の頃にまたお会いして連絡先を交換して、飲みにいきましょう!みたいな、そんな関係が数年続いていました。

――それこそ『仁王』の開発はだいぶ前になりますよね。お会いしてすぐに意気投合して一緒に……というよりは、薄く繋がっていた縁というところでしょうか。

安田:そうですね。すぐに深い関係になるということはありませんでした。その後Game*Sparkさんとアルシペルさんの企画の撮影で、ぜひ対談相手として出演してもらいたいとお願いして、そこでのやりとりなども含め、さらに関係が深まって……ついには一緒に働くことになったという。

――初対面、講演のタイミングではまさか一緒にゲームを作るとは……。

安田:Game*Sparkの対談の時も『仁王2』がどうかというフィードバックや、『Bloodborne』のプロデューサーとしてどんなことを気にしていたか?というお話を聞きに行くだけだったので、一緒にタイトルを制作するとはまったく想像できなかったですし……お互いそうなんじゃないかな。

山際:そうですね。お話させてもらって、すごく刺激を受けましたし、魅力的なチームだとは思いましたが、今のように自分がそこで働いている……とまでは想像していませんでした。

安田:今回『ウォーロン』を発表して、プロモーションやインタビューの場で、どうやってゲームの魅力を伝えるか、どうやってプレイヤーの皆さんに正しく理解してもらうかということに、山際はものすごく意識が強い人間だと思いますし、TeamNINJAはもちろん、業界を見渡してもこういった人材は決して多くありません。この先Team NINJAが色々なチャレンジをしていきたいと思ったときに、必要な力になってくれるのは間違いないと思っています。

Team NINJAなりの三国志の解釈。小気味よいアクションや攻防のめまぐるしい戦闘へのこだわりは?

――では、ここからはゲームの内容について深掘りしていきたいと思います。今回の体験版をプレイしたファーストインプレッションとしては、Team NINJAのアクションのこだわりは感じながらも『仁王』とは異なる新しい作品だと感じました。改めてお二人が『ウォーロン』を端的に説明するならどんなゲームと言えるでしょうか。

安田:『仁王』はアクションRPGであったりサムライや妖怪だったり、要素が多いゲームでした。『ウォーロン』を端的に表すなら、ひたすら中国武術のアクションを突き詰めるゲームだと思っていて、よりピュアなゲームといえます。もちろん、達成感を感じるまでに試行錯誤して頂くことが重要だと思っているので、RPG的な要素やマルチプレイを含む様々な攻略法や攻撃手段も用意して、プレイヤーの皆さんがそれぞれに自分にあった方法で楽しんでもらいたいとも思っています。

ただ、突き詰めていくとやはりアクションや駆け引きを、より純粋に楽しむタイトルだというのが正確だと思います。

山際:中国武術らしいケレン味や、操作していて気持ちよく自分の動きに酔えるといった要素に「死にゲー」の緊張感をうまくミックスしたタイトルを目指しています。「緊張感が高いけれども気持ちいい」という、中国武術を扱った映画を見た時に感じるような感情を、いかにゲームならではの表現として作り上げるかというのが狙いです。

――「死にゲー」といえば、敵の攻撃を弾いたりカウンターしたりといった要素が定番となりました。『ウォーロン』では「化勁(かけい)」と呼ばれるシステムに集約されていますが、ステージを通してその必要性はウェイトが大きめであったと思います。とは言え、化勁を成功させるタイミングは厳しすぎず、簡単すぎずという印象を受けました。こうした「タイミングの設計」は難しいのだろうなと想像しますが、制作陣の中ではどのように方針を決めたり、設計したりするのでしょうか?

安田:狙いはもちろん明確にあって、ちゃんと論理立てて組み立てていくんですけど、結局アクションゲームって触ったときにどう感じてもらえるかが全てだと思っています。狙ったバランスになっているのであれば、もちろん素晴らしいですけど、開発だけで作り続けていると、どうしても客観性が麻痺したり鈍化していったりということもあります。ですので、今回のタイミングで体験版を配信してそこを伺いたいなと。先ほどもお話したように、プレイして楽しいと思っていただけるレベルには仕上がって来ているので、一旦プレイヤーの皆さんにどう受け止められるか、開発チームでしっかり見た上でブラッシュアップに繋げたいです。

山際:スケジュールとしても、プレイヤーの皆さんからの意見をフィードバックとして反映するにはちょうどよいタイミングだと思います。

安田:もちろんチーム内でひたすら調整のトライアンドエラーは繰り返しています。もともとTeam NINJAが格闘ゲームを作ってきたチームでもあるので、8フレームだと少し短いけど12だと長そうだ、というような感覚ももちろんありますし、アクションゲームの気持ち良いと感じる“間”の感覚は体に染みついているんじゃないかと思います。ただ、結局は広く触ってもらって、意見交換をしながらひたすらブラッシュアップを繰り返すしかないと考えています。

――私はアクションがそこまで得意じゃないので、「死にゲー」では敵を完全に見極めるまで攻めきれないことが多いです。化勁と氣勢のシステムは攻撃と防御のサイクルが速く、これによって強敵にも攻撃を挑みやすかったので、難しさよりもアクションの気持ちよさを第一に据えたのだろうという印象を持ちました。難易度に関することですが、例えばとある強敵にプレイヤーがはじめて出会ってから、何時間くらいまでなら攻略に掛けさせてもいいだろうといった基準などはあるのでしょうか。

安田:「何時間」という基準で作ることはないです。プレイヤーのカスタマイズや育成方針もありますし、どういう武器を選んだか、どういうアイテムを持っていったかによっても敵との相性は変わっていくので、何時間はここに滞留させようといったデザインはしていません。

どれだけ時間が掛かってしまっても、プレイヤーが死んでしまったときに、自分のあの操作に問題があったんだとか、次はこうしてみようとか、そういったものが伝わるようには絶対にしなければいけないと思っています。敵が攻撃してくるアニメーションの早さなどはフェアであるべきですし、例えば火をまとった敵に氷の玉を投げたらダメージが大きいとか、そういったことを一つ一つ見つけてもらいながら、攻略の手札を増やしたり、組み合わせたりして、最後にクリアしてもらうまでの試行錯誤が一番楽しんでもらえるところだと思います。

もちろん「そんなの気付かないよ!!」みたいな攻略の抜け道もあっていいとは思いますが、あくまでそれは裏技ややりこみに近いものであって、基本はフェアである事を念頭において、アクションスピードから相性、弱点などを設定していますね。

――レベルアップでいうと、「五行」という5種類のステータスを強化できましたが、1回目と2回目では敵の倒しやすさが違うと感じました。2回目は攻撃力ではないステータスにしたことで威力が足りなかったため、途中から「大刀」という単発の威力が大きい武器に持ち替えて切り抜けられました。私は一つの方法に固執してしまいがちなのですが、色々な手を試しやすいシステムになっていますよね。

安田:そうですね。「五行」はプレイスタイルに強く紐づきます。今回の体験版ではそれぞれの特徴をかなり強調して分かりやすくしますが、本編ではプレイヤーがイチから育成していく形になります。

――レベルアップの話題になりましたので「士気」「不屈」のシステムについて伺います。キャラクターのレベルアップとは別に、士気の差が敵との攻防へ大きく影響していました。士気が足らないうちは、キャラクターのレベルを上げても効果が薄いのかと思ったのですが、この辺の兼ね合いはどうなのでしょうか?

安田:キャラクターのレベルアップや装備品は恒常的・長期的に維持される強化要素ですが、士気(不屈)ランクは、次のステージに行くとリセットされてしまう一時的なものです。ですので、レベルアップしていないと長期的には苦しくなりますが、士気を上げてしまえば多少レベルが低くても短期的には対応できます。もちろんアクションの腕に自信がある人は、レベルや士気を上げなくても、アクション要素で乗り越えられるデザインにはなっています。

山際:リスクはありますが、自分より士気ランクの高い敵を倒すと士気を大きく上げたり、良いアイテムを入手できたりする要素があります。ただし、倒されると士気ランクは下がってしまうので、どう振る舞うのかというのもプレイヤーさん自身で選んで楽しんでもらえると思います。

――体験版では近接攻撃ばかり使っていたのですが、他の武将を呼び出して共闘したり、「神獣」を呼び出したり、様々な要素が垣間見えました。弓矢だけではなく仙術のような遠距離攻撃もありますし、一度の体験版では全てを覚えきれないほど様々な戦略、プレイスタイルが取れそうですね。

安田:今作では化勁を中心に中国武術のアクションや攻守が頻繁に入れ替わる部分を一番描きたかったので、近接アクション中心のスタイルが真っ当な楽しみ方かもしれません。ただ、攻略の仕方は千差万別ですし、我々もなるべく多くの攻略法を用意しようと思っています。炎や水を操って攻撃や補助を行う「仙術」から、ボム的な扱いもできる「神獣」など、どう組み合わせるかによって戦略・攻略が変わってくると思います。

武将を共闘できるシステムでは、オンライン上の別プレイヤーと協力できるので、それらを駆使していただいて、強大な武将や妖魔たちに挑んでいただきたいなと思います。ちなみにオンライン要素としては、他のプレイヤーの世界に侵入するような要素も準備しています。

――多様なプレイスタイルや要素が楽しめそうですが、体験版ではジャンプをはじめとしてステージの高低差、立体構成が目を引きました。ステルスアクションで道を切り開くこともできましたし、一部の強敵の回避も可能でした。『ウォーロン』でこうしたチャレンジをしたのはなぜだったのでしょうか。

安田:『仁王』では侍をテーマにして甲冑を着込んでいるという設定だったのでジャンプはありませんでした。しかし、アクションゲームのジャンプは直感的なものですし、今作はその直感性を重視したタイトルにしたかったことが理由です。

また、舞台となる中国らしいスケールの大きな背景とジャンプを組み合わせてより立体的なレベルデザインができますし、士気を上げるための軍旗の配置も要因です。もちろん新規タイトルということで、『仁王』との差別化の意味でも、ジャンプや立体的な構造は入れたいよねという方針は早い時期から決めていました。

――スタミナ的な制限がないことや、立体的な戦略が取れることで体験版は想像よりも攻略が早かったように感じました。「簡単か難しいか」というよりは、テンポが良かった印象です。私にとってはちょうど良かったのですが、もしかしたら体験版への意見としては攻略しやすかったという意見が多めになりそうな気がします。どこまでいけば「死にゲー」なのかは、設計が難しいだろうなと感じます。

安田:我々もその辺りの皆さんの印象が一番知りたいところです。難易度についてはフェアでないとならないので、テンポを遅らせるために敵パラメータを高く設定すればいいものではありませんし、重要な要素である近接アクションや化勁をやらないとダメ…といった押しつけがましい調整・システムになってしまっていないか、という点にも気を付ける必要があります。

戦略に多様性も持たせたいので、ある戦術が強すぎて、それだけやってればオッケーとか……そういったバランス調整もやはりプレイヤーの皆さんの反応から改めて冷静に見ていきたいなと。やはりリリース時には、一番良い形で提供したいですから。

……それで体験版、簡単でしたか!?(笑)

――えっ!?いや、簡単というわけではありませんでしたが……

山際:オンライン要素で他のプレイヤーと共闘できるならもう少し簡単に感じますかね?
※編集部の体験版プレイ時にはオンライン要素は遊べなかった。

――確かに複数のプレイヤーで進行するならそう思うかもしれません。いくつかの「死にゲー」をこれまで遊んできて、そこから比較するとボスなどを倒せるまでの時間は少し短めで済むように感じましたが、私にとってはちょうど良かったなと思っています。その原因はやはり氣勢と化勁のシステムによるもので、攻撃も防御もリスクをあまり感じずにやれたのが気持ちよかったです。シビアな「死にゲー」だと普通のガードもけっこう命がけですよね。氣勢ゲージの増減が高速なので、うまくタイミングを見極めれば化勁にこだわらずとも、何回かの攻撃はガードでやりすごせたり、そうした猶予が多層的に用意されているのは新しいなと思いました。

安田:ガードもそうですが、攻め込まれていても最後の強力な攻撃だけは割り込んで化勁で返せるとか、そういった部分は開発チームもこだわって作っていますので、いつでも攻守が入れ替わったり、逆転できたりといった感覚は感じてもらえるんじゃないかと思います。

――前回の密着記事の中で、安田さんへ「プレイヤーの皆さんからの意見がどれだけダイレクトに伝わっているか」を質問したことがありました。その時は、実際にかなり細かいところまで見ているとお答えいただきました。

安田:提出して頂いたアンケートはもちろん目を通しますし、SNSも体験版配信期間やリリース後はなるべく見るようにしています。評判そのものもありますし、どのように見られていて、これからどのように伝えていくかの参考にもなりますね。もちろんゲームの調整方針の参考にもしています。

山際:何かの発表や今回のような大きな節目のタイミングでは、安田と食事しながら反応を眺めてます。(笑)

――一方で、エゴサしようと思えば無限にできますよね。どれぐらいの頻度までやろうという基準などはありますか。

安田:特に基準はありませんが、プレイヤーの意見や感想に大事なヒントはあっても答えがあるわけではないので、解決すべき課題として捉えるようにしています。プレイヤーが「こうして欲しい!」っていうのをそのまま鵜呑みにして対応する…と形にはしないように気を付けています。私自身ももちろん注意していますし、チームにも強く伝えています。

――体験版ではアクションがメインでしたので、ストーリー部分について教えてください。

安田:コーエーテクモはずっと三国志を題材にしたゲームを様々なジャンルで作ってきましたが、その中で一番ダークな、そしてリアルな三国志を描きたいと考えていて、期待していただけるストーリーになってきていると思います。戦場で強い敵と邂逅し、勝ったら武将と絆が深まるとか、いわゆる三国志の武将たちの物語を『ウォーロン』なりに解釈して描いていますので、ぜひご期待ください。

山際:フレーバーテキストについても、今回の体験版範囲でもこだわりを察する武器などもあったと思います。三国志が好きな方にはもちろんですし、そうでなかったとしても断片情報が繋がっていくような、そういった部分を楽しんでいただけるんじゃないかと思います。

(プレイヤーキャラクターである)名もなき義勇兵として、オリジナルキャラクターだからこそ描ける物語があると思うんですよ。どこにも属してないからこそ、様々な歴史上の武将と出会えるという点などですね。よく安田も言いますが、三国志はやっぱり武将のドラマが肝になるし面白いよねと。そういったところをとにかく丁寧に描いていきたいなと思います。

――ちなみに、社内で三国志に関する時代考証チームといった方々がいるんでしょうか?

安田:シナリオチームには「三國志」や「真・三國無双」に関わっている人も多いので、意見を頂いたり様々な形でフォローしてもらって助かっています。それこそ弊社には、シブサワ・コウという「三国志」のシンボルみたいな存在がいるわけで……。

シブサワ・コウ氏

――逆に作りづらくなるんじゃないかとも思うのですが……。

安田:いや、むしろ「好きにしたら?」みたいな感じです(笑)。本当に縛りなくTeam NINJAらしく三国志を解釈したゲームが作れています。さらに言えば、パッとPVを見せても「これ、趙雲だよね?」みたいなやりとりで済みますし、経営陣が全員武将の名前を知っているという、普通の企業ではありえない環境でやらせてもらっているなと。(笑)

――ストーリー部分も含め全体のボリュームはどの程度になるのでしょうか?

山際:プレイ時間を答えるのは難しいですが、普通に遊んでいただいて、最初から最後まで40時間ぐらい遊べるボリュームにはしたいなと思っています。もちろんサブミッションなどのやり込み要素をプレイしていただくことでトコトン遊び尽くしてもらえるようになっています。先ほども触れたオンライン要素も今回の体験版から試していただけますので、ぜひ触ってみてください!

――そろそろ〆に入りますが、改めてお二人にお伺いしたいのが、ゲーム業界におけるプロデューサーとディレクターの役割についてです。前回の企画にも通じる部分はありますが、本作ではお二人ともプロデューサーという立場ということで、改めてそれぞれがどういう役割だとお考えでしょうか。

山際:私は、ディレクターはゲームの面白さに対する責任者だと考えています。一方でプロデューサーは、商品の責任者という認識です。そこはしっかりと責任の区分としては持つべきだし、本人の自覚としても持つべきだと思います。

ただ、プロデューサーがゲームのことは一切口出さないとか、ディレクターはお金を全然気にしなくていいのかって言えば、同じチームで作っている以上そうはいかないですよね。そこはコミュニケーションを取りながらですし、今の自分の役割でいえば、若いメンバーも増えてきているので、彼らがやりたいことを行える環境を作るっていうのも含めてプロデューサーの仕事なのかなと思ってやっています。

安田:ディレクターが作って、プロデューサーが伝えて、売る、シンプルにこの図式で私は捉えています。品質の最後の砦はディレクターであり、その責任を持つべきだという考えは変わりません。

ただ、山際も言っているように役割分担はそこまで重要ではないとも感じています。シンプルな説明や少ないビジュアルでどういうゲームなのかが伝わる、楽しみを想像して期待してもらえるような「伝える努力をしなくても伝わるゲーム」がやはり理想としてあり、それはプロデューサーかディレクターかを問わず目指すべき形だと考えています。

――それでは最後に、Team NINJAの今後をお聞かせください。本作ではプロデューサーですが、安田さんがディレクションするタイトルも控えているのでしょうか?

安田:TeamNINJAとしては、『ウォーロン』が『仁王』から展開しているように、それぞれのタイトルが新しい軸になるような流れを続けていきたいと考えています。そのためには、これまでのノウハウ・経験をどのように多層的に積み重ねて新しいゲームに繋げていくかに尽きます。『仁王』で育ったメンバーが『ウォーロン』を生み出す、そこで育ったメンバーがディレクターやプロデューサーとして経験を重ね、また新しいチャレンジを……というサイクルを続けていきたいです。

今は『ウォーロン』を全力で開発していますし、その先には私がディレクターを担当する『Rise of the Ronin』もありますので、これからも世界中の皆さんに喜んでもらえるようなタイトル制作を続けられるようにチャレンジしていきたいと思います!


Team NINJAの新たな挑戦となる『Wo Long: Fallen Dynasty』は、プレイレポートでもお伝えしたように駆け引きの楽しさと爽快さを兼ね備えたアクションゲームに仕上がっています。Game*Sparkともちょっぴり縁のある安田&山際両氏がタッグを組むことでどのような作品に仕上がっていくのか、完成に向けても大いに注目が集まります。インタビュー中でもあったようにTGSの試遊や配信が始まった体験版のフィードバックは製品版に向けても取り入れられるということで、興味のある方はぜひ実際にプレイをしてその声を開発陣に届けてみてください。

プレイレポはこちら!
《Trasque》

一般会社員 Trasque

会社員兼業ライターだけどもうすぐ無職になりそう

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