今回は、KAMITSUBAKI STUDIOが手掛けるPC向けタイトル『ムーンレスムーン』をプレイ!本作は、夜になると不思議な世界に迷い込んでしまう少女が、その世界の住人たちと交流をして自分の居場所を見つけていくテキストアドベンチャーです。

KAMITSUBAKI STUDIOのクリエイターであるKazuhide Oka氏は、過去に『ナツノカナタ』や『午前五時にピアノを弾く』などの名作テキストアドベンチャーを手掛けています。『ナツノカナタ』は、イベントレポート絵日記として紹介しているので、気になる方はそちらもチェックしてみてください。
◆日が暮れると別の世界に迷い込む少女の物語

学校から帰ってきた主人公・ヨミチは家を出た。フラリと立ち寄った公園で、クラスの友達が来週の試験の話なんかをしていたのを思い出す。

いつの間にか日が落ち、公園の中の日陰が外へと広がっていくと……気がつけば彼女は真っ暗なトンネルの中に立っていた。

いきなり見知らぬ別世界にワープしちゃったらパニックに陥りそうなもんだけど、ヨミチが別世界に迷い込んだのはこれが初めてではないので落ち着いたもんだ。

ヨミチは夜に一人でいると、不意にどこか別の場所に飛ばされてしまう。この現象は中学生の頃から始まったようだ。最初こそは気が触れたのかとパニックになったけど、今ではもう慣れてしまって、この世界で知り合いも出来たらしい。
こんな不思議な世界で出会う人とは、ヨミチと同じような迷い人なのか、それとも不思議な世界の住人で、人に仇をなす怪異タイプのどちらだろうか。

どちらにせよ迷い込んだのが僕だったら、向こう側も最大限に警戒するだろうな。変なおじさんだもの。

幸いにも不思議な世界の知り合いは理性的な人間だった。彼は、トンネル内の横穴で経営をしているコーヒーショップのマスターだ。ヨミチはコーヒーが得意ではないんだけど、ここで出されるものだけは別で、砂糖とミルクも不要で、苦みと深みが美味しいと感じるようでホロリと涙を流す。

この世界で対価として差し出すのは涙だ。コーヒーのお代も流した涙で支払うのだ。金銭のやりとりが無いのは楽でいいけど、泣けなかったら無銭飲食になると思うと、コーヒーを飲むのも緊張するな……!

「RIDDLE」と呼ばれるパートでは、会話の中の単語を見つけ出し、文章内の空白を単語で埋めることでストーリーが進行していく。

空白を埋める単語は、会話中の単語にカーソルを合わせると取得できる。入手したキーワードは、壁、曲、扉、コーヒー、湯気の5つだ。

冷静に考えれば難しくはない謎解き要素だからこそ、大喜利のようにボケたキーワードを入れてみたくなるよね。
マスターとの会話を楽しんでいると、ヨミチのスマホがポケットの中で振動した。母親からのメッセージだ。それが終わりの合図だというように、店内の時間が停止し、動きを止めた風景は砂のお城が崩れ去るように消えていく。

気がつくと、もといた公園のベンチに一人で座っていた。街灯の光だけが冷たく照らし、先程までの楽しい時間が嘘だったかのように、彼女を現実へと引き戻していった。

自分の本当の居場所はこの現実世界なのか、それとも友人たちのいるあちらの世界なのか……。
ゆっくり目にプレイして4時間ほどでクリア出来ました。
基本的に文章を読み進めていくだけなのですが、RIDDLEのキーワード入力が良いアクセントになり、ダレずに最後まで楽しめました。
ゲーム中に挿入される複数のミュージックビデオは、単体で見ても完成度の高いムービーなのですが、物語の内容に沿って作られているので、プレイと合わせて鑑賞することでより味わい深くなっていました。
Kazuhide Oka氏が手掛けた『ナツノカナタ』や『午前五時にピアノを弾く』が好きだった方はもちろん、本作のビジュアルやストーリーにビビッと来た方なら間違いなく楽しめると思います。
『ムーンレスムーン』はPC(Steam)向けに配信中です。













