2024年10月のサービス開始に向け、現在事前登録受付中の『Wizardry Variants Daphne(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)』(以下、『ウィズダフネ』)。その音楽を手がけているのは『伝説のオウガバトル』『ファイナルファンタジー12』といった名作たちに関わってきた崎元仁氏です。
今回弊誌では崎元仁氏と、ドリコムの『ウィズダフネ』開発ディレクターである金山圭輔氏にインタビューする機会を得ました。両氏の考える『ウィザードリィ』感や本作の音楽の方向性、そして本作が目指すゲーム性や課金回りの話までお聞きしてきましたので、本作を楽しみにしている方は目を通していただければ幸いです。

久しぶりの「オフラインミーティング」となる今回のインタビュー
――本日はよろしくお願いします。
崎元仁氏(以下、崎元): よろしくお願いします。
金山圭輔氏(以下、金山) :よろしくお願いします。
――今回は『ウィズダフネ』で、崎元さんが楽曲を担当されることが発表されたことを受けてのインタビューですが、お二人は既に面識があるのでしょうか?
崎元: オンラインミーティングはやってましたけど、直接お会いしたのは初めてです。
金山: やり取りはもう2~3年以上になると思いますけど、直接は初めてです。
――昨今はゲーム制作において作曲やイラストといった外部の協力者の方ともリモートで話が進んでいくといった例をお聞きするんですけども、『ウィズダフネ』もそんな感じだったんですかね。
金山: 開発の方はそうですね。コロナ禍の頃からそういう体制になりましたけど、作曲の方はその前からです。
崎元: 打ち合わせというと基本的にどこか行ってするもんだというものはあります。でも、コロナ禍で一時期リモートミーティングしかできなくなりましたよね。僕は相当な引きこもりなので、「最高だ」と。もうずっとこうあってほしいと今でも思ってます。
(一同、笑)

――コロナ禍もだいぶ収まって各社さんがリモートから戻りつつあるという中、まだこの先もリモートでやってほしいなというところは結構あるみたいですね。
崎元: 選択肢として増えましたよね。とりあえずミーティングがリモートでという流れが最近結構出てきてる。直接はもうめったに行かないです。
金山: 直接の方が逆に特殊です。
――特に崎元さんは海外からの案件も多いと思いますが、そういうところもミーティングがオンラインで良かった、といった感じでしょうか。
崎元: 海外の方も基本はビデオチャットです。たまに東京ゲームショウとかでクライアントさんが直接会いに来られて、そこで会うのが最初で最後、あとは全部オンラインで……なんてこともあって色々です。
――そうなるとPCとともに起きて、PCとともに寝る……みたいな生活が結構続かれてるんじゃないかなと思うんですけれども、ゲームは遊ばれたりされてるんでしょうか、ゲーム専用PCやゲーム機を持たれてたりとか、あるいは作業環境と兼用だとか。
崎元: 機材が発熱するとファンが鳴ってサウンドに影響するので、PCのグラフィックボードもオンボードのやつしか入れてないんですよ。残念なことに、Steamなんかも全然まともに動かないですね。ただ、最近はSteam Deckのような携帯型PCがあるじゃないですか。なのでああいうのを買いたいな……と思いながら、価格に尻込みしながらネット通販のボタンをポチるかポチるまいか、迷って今日も押せなかったわ……みたいな感じです。
あとはコンシューマ機ですけど、僕自身は本当にゲーム大好き人間なので、プレイし始めてしまうとまずいんです。何か始めたら、多分仕事が止まっちゃうでしょうね。
だから最近は、うちのカミさんがゲームをやってるのを後ろで見てるくらいです。
金山: 人がやってくれるのは楽でいいですよね。どういうものかがわかる。
――金山さんの方は結構ゲームを遊ばれてたりしますか?
金山: 開発の初期や忙しくない時期は遊びますが、開発の中盤後半になると開発に専念するという感じです。ただスマートフォンゲームを一応コツコツやったりして、最近『鈴蘭の剣』を序盤までですけど遊んで。そこでも崎元さんが作曲って知って「あ、こんなのもやられてるんだな」と。
――『鈴蘭の剣』も崎元さんでしたね。
お二方の異なる『ウィザードリィ』の原体験
――それでは、ここからは『ウィザードリィ』についてお尋ねしたいと思います。お二人は『ウィザードリィ』は結構昔から遊ばれているんでしょうか。
崎元: 僕がやってたのは#1から#3くらいだと思うんですよ。「FM-7」という8ビットパソコン向けの5インチフロッピー版で遊んでたかと。当時はまだ「ロールプレイングゲーム」自体があまりなかったので、「こういう難易度なんだろう」と受け入れて遊んでました。同時期の『ウルティマ』なんかも厳しいゲームでしたし。
金山: フロッピーの時代で、あの内容だったんですね。
崎元: そうそう。『ウィザードリィ』はキャラクターが死んでしまうと、すぐにフロッピーディスクに書き込んじゃうんですよね。だから死ぬ直前にフロッピードライブをガシッと開けるとキャラクターが大丈夫な時もあるけれど、もちろん機械の原理上良いことではなくて、下手するとフロッピーディスクそのものが死んじゃう。ディスクが死ぬかキャラクターが死ぬか、自分の手さばきが全てを分けるみたいな。
――手をフロッピードライブのイジェクト機構に常に当てて遊ぶみたいな話、結構聞いてます。
崎元: そうやってる人もいましたね。ただ、昔のPCでそれがやりやすいような前傾姿勢を取るとだんだん体勢がきつくなってきたりね。あと、敵の忍者なんかが一撃でキャラクターを即キルしてきたりとかするんですよね。
――「くびをはねられた」。
崎元: 『ウィザードリィ』は、本当、いつまでたっても気が抜けない、恐ろしいゲームでしたよね。あと、ワイヤーフレームみたいな画面が雰囲気あっていいですよね。
――Digital Eclipseさんから出ている初代『ウィザードリィ』のリメイク版も、常時ワイヤーフレームの画面がオーバーレイの形で出ていて象徴的だったりしますね。金山さんの方は、『ウィザードリィ』との付き合いはどんな形だったんでしょうか。

金山: 世代がちょっと違うんですよ。ジャンルを知ったのはSFCの『真・女神転生』や『真・女神転生if…』からですね。
本格的に『ウィザードリィ』やその派生タイトルを遊び始めたのは、PSの『ウィザードリィエンパイア 古の王女』や『BUSIN』といった、2000年に入ってからなんです。だから、濃ゆい『ウィザードリィ』ファンからするとにわか世代かもしれない。
――いろんな『ウィザードリィ』がありますからね、昔のが最高!という人もいれば、『エンパイア』シリーズが本当に大好き……という声もたまに聞きます。
金山: 『エンパイア』は1回敵と戦って引き返す……という、新鮮な経験をしたゲームでしたね。未知の場所に進もうとしても一筋縄ではいかず、無事に戻れる場所を確保しつつ一歩一歩進んで行ける範囲を広げていく。そんな印象が当時新鮮でした。『エンパイア』はシリーズ中では難度低めといわれてるかもしれませんが、こういう感覚自体は大なり小なり、『ウィザードリィ』シリーズを通してある印象ですね。
――お二人とも、原体験は違えど様々な『ウィザードリィ』に触れてきているのですね。
崎元: 『ウィザードリィ』は未だに残り続けてますよね。40年以上経ってもまだ新作が出ているのって、凄い事だと思いますよ。
――先ほども少しありましたが、『ウィザードリィ』にはいろんな作品があって、様々な差別化がされていますが、お二人が考える「ウィザードリィらしさ」って、いったいどういうものだと思われますか?
崎元: 僕は「むき出しの殺意」というのが『ウィザードリィ』っぽいな……と思います。絶対に安心できない、殺伐とした感じといった印象が強いです。なので、『ウィズダフネ』を見てちょっとそういう感じがして、ニヤリとしました。あのキャラクターたちのプレイヤーに対する感じの悪さとかね。
――なるほど。
金山: 『ウィズダフネ』のそのあたりの雰囲気については「現実的にしたい」、というのがありましたね。(特に近年の)ライトノベルやファンタジーものでは「優しい世界」のものが多いじゃないですか。冒険者に対して優しいとか、偶然上手く行くことが多いとか。
でも、やっぱり『ウィザードリィ』ではそういうことばかりがあっちゃいけないと思うんです。現実だとこうなるよね……という感覚を大事にしたいんです。
崎元: でも、結構ぎょっとする感じの扱いの悪さですよね(笑)
金山: やっぱり主人公が周りの人から急にちやほやされたりするわけないじゃないですか。自分で0から活動して、だんだん仲間から信頼されていく……というのがやっぱりいいんじゃないかと。

――崎元さんは「むき出しの殺意」という言葉をおっしゃられましたけれども、金山さんとしては「ウィザードリィらしさ」というものは端的にこういうものだ……というところがあったりしますか?
金山: それがなかなか難しいんですよね。自分が1つ思うのは、「凝縮されてる」感じが一種の「ウィザードリィ」らしさかなと。一歩歩くごとに事件が起こったり、急に絶望に突き落とされたりみたいな、そういう悲喜こもごもが一歩一歩に詰まっているということですね。
そしてもう1つ、『ウィズダフネ』の開発でも念頭に置いていますが「自分だけの冒険が楽しめる」というところが『ウィザードリィ』かなと。
一応シナリオがあってみんな同じシナリオを見るものですが、その結果がハッピーかにかかわらず、それまでのゲームプレイを振り返ったらそれはまさしく「自分だけの冒険」だったと感じられるようなものですね。
それぞれ違う冒険の過程が味わえるのが『ウィザードリィ』、という感じはしますね。

――先日ロバート・ウッドヘッド氏にインタビューした際、『ウィザードリィ』を作ったときに1人ずつそれぞれ自分のキャラクターを持ち寄って遊べるようにした結果があの冒険者ごとにセーブデータが管理されるシステムだった……といった旨の話をされたことを思い出しました。
そして、崎元さんの遊ばれていた1~3もそうですけど、いろんな背景説明はされるんだけれども、それはそれとして自分の作った冒険者がクリアの称号を手に入れたときに思い出を振り返るのが、一番の冒険でのカタルシスだったみたいなところは自分がプレイしてもありました。
『ウィザードリィ』らしさと『ウィズダフネ』らしさ
――『ウィズダフネ』では先程の『ウィザードリィ』らしさのうち、「自分だけの冒険」をどのようにして描こうとしているのですか?
金山: 基本、今までの『ウィザードリィ』と同じようなスタイルで、さまざまな冒険を体験できるようにしました。さまざまなキャラクターの人格やシナリオはあっても、道中で何が起こるかは人それぞれですし、一部のクエストではダンジョンの形すら人によって違ってしまう。その中で何が起きてどう対処するのか、その結果うまくいくのか、それとも全滅してしまうのかが、いわゆる「その人の冒険」になる形です。パーティー編成の自由度が高いのもあり、メンバーの組み合わせによっては事故が多いというか…そういう面も「自分だけの冒険」になりやすい仕組みです。
もちろん仲間として連れていくキャラも仲良くなっていくのか、仲違いしていくのか、そのあたりは今風に仕上げていますね。

――最初に邪険にされていたことも、いつかいい思い出になってそうですね。
金山: 優しくされた時に、「最初はああだったのに……こいつめ」みたいなね(笑)
――話を聞いていると『ウィズダフネ』は人生山あり谷あり涙あり、みたいな感じの雰囲気をすごく感じるのですけど、その中で崎元さんに楽曲を依頼したというのはどんなところから始まったのでしょうか?
金山: 元々「ウィザードリィを作る」という点と、「ウィザードリィの正統続編ではなく外伝である」という点の両面を満たさなきゃいけないという状態でゲームを作っていたのですが、音楽にもその性質が必要だなと思いまして。
伝統的で重厚でみんなが期待するファンタジーみたいなのを作曲できるけど、『ウィズダフネ』らしい前衛的な部分もできる、そして世代に刺さる方がいないかな……と探していて、その条件に当てはまった感じですね。
『十三機兵防衛圏』や『ドラゴンズクラウン』でそういった両方の方向性もできる事は存じ上げていたので、崎元さんに『ウィズダフネ』の作曲をお願いしました。
崎元: 実は、僕は最初、普通の『ウィザードリィ』っぽくしようと思ったんですけれども、はじめに提出したテーマ曲と戦闘曲がリテイクを受けてしまって。
金山: その際の曲はどちらもオーケストラで正統派な曲なんですけど、『ウィズダフネ』の最初に出てくる曲としては正統派すぎるという感じで。ゲームもちょっと特殊な内容なので、曲もちょっと特殊な感じにしてほしいと。そこの方向性のすり合わせが大変でしたね。
崎元: このゲームの作曲は僕が思ってた方向性と違って手強いぞ……という感じでしたね。
――ちなみにそのリテイク楽曲は、別の箇所で使われているという情報を小耳に挟みました。
金山: そうなんです。別テイクでテーマ曲は頂いたんですけど、これはこれで使わせて頂けるということで、序盤だと騎士団が再出発するときなどの、「これから行くぞ!」という時の曲に使わせて頂いています。
――贅沢な使い方ですね。決めとなるテーマ曲的なのががいくつもあるという。
金山: 「これから行くぞ!」という時には、本当に合うんですよ。
崎元: ちなみにメロディはリテイク元とリテイク後で同じで、楽曲としてはアレンジ違いなんです。聴いた感じはだいぶ違いますけど。

――なるほど。今回はメロディ強めの楽曲が多いという印象だったりするのでしょうか?
崎元: いえ、そうでもないですかね……「三分咲き」くらい?
――「三分咲き」?
金山: 実はゲーム中もともと音楽をあまり鳴らさない方向性で考えていて、今もダンジョンに入ってすぐはBGMは鳴らないんですよ。臨場感を出したいところに要所要所でBGMで演出する……みたいな方向性でお願いしていました。
メロディがあったとしても、状況に対して追ってくる感じではあるけれども、ガンガン押し付けてはこない感じになっています。
崎元: なので、僕の中では「三分咲き」くらいですね。あと大枠でのテーマはメインのテーマと、異形のテーマくらいしかないんですが、それくらい少ない方が本当は効果的だと思いますし。
ただし、エンディングの楽曲ではそのテーマを両方出して、まとまって1つの曲みたいに聴こえると思います。そんなところは注意してテーマを使い分けてます。
――『ウィザードリィ』らしさと『ウィズダフネ』らしさというところは、崎元さんの中でどのように位置づけられた感じでしょうか?
崎元: 最終的にはあまり原作のことを考えすぎないようにしました。
一方で、それぞれの曲には幅を持たせて、一番端っこの方は『ウィザードリィ』がちゃんと感じられるようにして、反対側の端っこはもう『ウィザードリィ』から完全に外れている……どっちかというとゴシックホラーとか、あとは何ですかね、「有機物ぐちょぐちょ系」というか。
(一同、笑)
崎元: SFチックな音も入っていいのか、みたいな感じにしてました。だから非常に『ウィザードリィ』寄りのイメージのものはリテイクになった(多くの日本版ウィザードリィの音楽を手がけてきた)羽田健太郎風のテーマ曲と最初の戦闘曲ぐらいです。
金山: いろんな敵が出ますからね(笑)最初の方はそんなにぐちょぐちょしてない。一応、普通の敵をプレイヤーに見せてから……と。
崎元: 『ウィズダフネ』らしさって、ドロドロっとした感じというか、ちょっと特殊な何かがある。その奇妙で変わった感じは音楽にも入っているとは思うんですけれども、最初の戦闘音楽にはそんなに入ってないです。
『ウィズダフネ』特有の「○○の○○(ネタバレのため伏字)」要素や雰囲気については音的にも、音符的にも色々と入れたので、そのあたりがうまく機能していてくれるといいな……という感じです。
金山: 気持ち悪い異形の感じとか、「○○の○○」要素の奇妙なその感触とかは曲によっては本当に強く感じますね。

崎元: 音も特殊な加工をしたり変な音を一生懸命出しましたし、音符も結構変わっていて、旋律だけ聴くとメジャーかマイナーかよくわからない、そこに伴奏を入れていくと気持ち悪いスケールの中に音が入っていって、不気味なものになっていく。それが『ウィズダフネ』に合うのかなって、みんなが思ってくれると嬉しいです。
金山: 制作過程で一通り曲は聴かせて頂いてますが、実際ユーザーさんが聴いてみたときにこれをどう感じるかはちょっと楽しみですね。
――『ウィズダフネ』は発表から結構時間がかかったイメージがあるんですけれども、楽曲の方もそれに合わせて二転三転されたりはしたのでしょうか?
金山: 楽曲の方針は最初から変わっていないですね。およそ2年間、曲数もそこまで膨大ではないので、そんなにハイペースな感じでもなく2カ月に数曲くらいのペースでやって頂いて。
――その分、一曲一曲が大変だったのではないでしょうか?リテイクがかかったとか。
崎元: 僕のやってきた仕事の中では、かなりリテイクが多かったかもです。
金山: 本当ですか!?
崎元: いやいや、僕も探り探りやってたのでむしろリテイクはウェルカムだったんですけど、ただこう……とりあえず1球目を投げてみて、顔色を見て「あ、これ全然違うっぽいな、まずい」みたいな……。
金山: こっちも見ていて、リテイクしすぎてるんじゃないか……ていう。
崎元: いやいや大丈夫ですよ、こちらも投げてみるしかなかったですから。予定調和の方に最初から向かってればいいんですけど、まあでも、そういうのもあんまり面白くないですから。
金山: そうですね。
崎元: 探り探りやりながら方針が決まってくみたいなのは最近は珍しくて、僕自身の作曲の方も試行錯誤しながらだったので、割と変わったものができて良かったと思っています。
金山: その覚悟を知って、何回かちょっとリテイクさせて頂いて。
崎元: 後半の方は、なんとなくこういう音を作ると皆さんの表情が明るい……と。
(一同、笑)

金山: なるほど、見切られてます(笑)
――こういう曲を作るとみんな顔が明るくなる……といった感じの部分と、この作品だったらこういう曲を自分は絶対作りたいんだよな……という部分のバランスは、どうとらえていたのでしょうか。
崎元: 実は、今回はあまり最初から皆様が僕に期待するようなことはやってないんですよね。逆に、後半の方で少しずつそういうの出してて大丈夫なのか……と思いながら出したら、意外と大丈夫だったということもあったりして。
金山: ゲームの区切りとなる場面で登場するとある曲は、正統派で壮大な曲だったのですが、結構なストライクゾーンに投げてこられて、「いいですね!」となっていたら、崎元さんから「やっぱり皆、こういうの好きなんですよね」という感じで言われて、ああなるほど、という。
崎元: なんだかんだ言って結構僕らもそうなんですけど、やっぱりベタな感じの曲というのは意外と好きで。僕らなんかは超音符マニアなわけで「直球とかもう絶対こんなの食わねえよ!」と口では言うんですけど、でもやっぱり「直球美味しいな」となんだかんだ思うんですよ。
コントラストあった方が光りますよね。『ウィズダフネ』ではわりかし正統派な事をやってる部分もあるんですけど、それでも控えめにやってるんですよね。
「なんか突然勇者の剣を持って勇者がやってきました」みたいにならないように抑えめでやってるんですけど、それでもやっぱりすごいコントラストがはっきりするな、と思いました。
金山: いろいろと『ウィズダフネ』らしさを経て、正統派が来るとやっぱりそこで際立つ。そうなるとやっぱりプレイ中に「そう、ここは正統派だね!」というキメの場面はやっぱり必要だと思いますね。
崎元: ありますね。やっぱりどうしても「待ってました!」は欲しい。でもなかなか来ない。
金山: それまでは涙涙の苦しい冒険者生活ですが、「待ってました!」はなかなか来ない。なかなか来ない……んですけど、最後にはもちろん来ます。
崎元: でも予想を完全に裏切って「待ってました!」が中々こないっていうのは、僕はすごくいいな……と思いましたよ。
最初から雰囲気違うし、なんか思った通りには全然ならなくて、全然違う方向に行って本当にこれどうなるんだ……と思いながらあの序盤を進められるっていうのはなんかすごく新鮮でしたね。

金山: どこまで行っても見切られないようにしようと努力して開発してたら、なかなか期待に応えないまま進んでいくゲームに……(笑)
そういうところも含めて、『ウィズダフネ』ってちょっとB級感あふれるタイトルだと思うんです。そこに崎元さんの曲がピタリとハマることで本当はB級なのに、思ったよりも上質な雰囲気に仕上がった感はありますね。
崎元: 楽曲面ではそこがなかなか難しいんですよね。
金山: そうなんですか。
崎元: 「有機物ぐちょぐちょ系」の音とかもさじ加減を間違えると、一気に安っぽい感じになっちゃう。なかなか難しいんです。
金山: なんで安っぽくならなかったんだろうって、今ふと思いました。確かに。
崎元: 一応そういう法則を見出してやってはいるんです。けど結局、試行錯誤をそれなりにしてるからというのもあります。
金山: その思考錯誤も素敵ですね。普通に考えるとぐちょぐちょ系とかB級ホラーみたいになりますからね。よく落とし込んでいただきました。
ゲーム序盤の範囲では、やってることはB級ホラーなのに、そうでないようにしっかりと聞こえるんですよね。
崎元: けど、B級ホラーっぽい音、実はいっぱい入ってますからね。
金山: そんなに気付かないと思いますB級ホラーっぽいって。どっちかというといい楽曲とか重厚な世界って思っちゃうんですけど、なるほど我に返ると意外にそうじゃないみたいな。そういうバランスだと思います。
――そのバランス感もタイトルの魅力、というところですね。
金山: タイトルの魅力か、崎元さんの作曲テクニックの魅力かっていう。

――崎元さんは、『ウィズダフネ』の作曲にあたってはゲームを遊ばれてから作曲に入られたのでしょうか?
崎元: いや、作曲を始めたときにはまだゲームも動く段階までできてなかったんです。
金山: 映像ないからどうしましょう……ぐらいの状況でしたね最初は。なのでできるところからということで、映像を断片的にお渡ししていきました。
崎元: 実機のゲームをやってその雰囲気を掴むことって完成済みのゲームであればすごく重要なんですけど、制作中のタイトルだと話が違う部分もあります。ゲーム側のテンポ感が開発の進行にともない大きく変わってしまうと曲の印象も変わってしまうので、実はあまりそこを重要視しないようにしています。
なので、僕たちの仕事は、まったく何もないところから、ディレクターさんの頭の中にあるもの……それぞれのパートの人間が一生懸命作ってるもの、それを意識しつつ、なんとかディレクターさんの予想を超えたところまで行こうとするものです。
きっと、絵を描いた人や、声優さんもそういう風にみんなやっていくことによって、相乗効果が起きてくると思うんですよね。それがこの手の職業の醍醐味だと思っています。
だから実機のゲームが無くてもなんとかなる感じです。
モノ作りには「エッジ」が必要だ
――金山さんは今回の『ウィズダフネ』で、制作チームの努力がどこまでまとまったか手応えはありますか?
金山: 元々企画してた時のものに、ゲームの体験としてはかなり近づけられたと思います。だから普通にプレイして、BGMを楽しんで、グラフィックを楽しんで、シナリオを楽しんで、攻略を楽しむ、という意味では十分なものにはなりました。
ただ、それを運営型のゲームビジネスとしてやっていくという意味では正直なところまだわからない流動的な部分が多くて不安で一杯ですね。

――そこは、これからの頑張り次第という部分ですね。
金山: そういう時代ですからね。あとは運営部分がしっかりできたらきっと100点です。ゲーム自体は唯一無二の楽しい体験になったと思います。
――崎元さん的には楽曲的には手応えを結構感じられた印象ですかね?金山さんの制作の力になれたというか。
崎元: そう願ってます(笑)
金山: うまくまとまったって言うと変なんですけど、崎元さんが最後ちゃんと合わせてくれる人なんですよね。エッジのあるモノを作る人の中には最後まで合わせてくれずに、「できました」とポンと出してくるだけの方も結構いらっしゃるんです。
ですが、崎元さんは独自の世界を展開しつつも、最後にちゃんと実装のところですり合わせてくれるところが非常に助かりました。すり合わせの部分はいつも悩みどころだったので。
崎元: 僕の印象を言うと、何か物を作ってる時って「エッジ」っていうか、尖った部分を作るのがすごく大事だと思ってるんです。
それは1番最初の段階からやっておかないと絶対できなくて、逆に尖った部分を丸めることは後からいくらでも簡単にできるんです。なのでできるだけ最初は尖ったものを作って、みんなの顔色を見ながら「これは尖りすぎたな」と思ったらちょっと丸めて……みたいなことをやっています。
大きく尖ってるものは方向性が間違ってれば本当にひどいことになってしまうんですが、方向性が合ってればそれで勝つと。
金山: 尖っていてもちゃんとゲームとマッチしている、いい落とし所になったかなと思ってます。刺激的だけどゲームの中では馴染んでるっていう。
多分イベントシーンとか戦闘シーンでは、この曲の力でかなりテンション上がると思います。いろんなシーンがあるけど、ホントにはまってるんですよ。

崎元: 僕的にも結構満足です。変なこといっぱいできたし。
(一同、笑)
崎元: 特に最近は、その「大きなエッジ」を作れることがそんなに多くないような気がしますね。だからやっぱ嬉しいですよ、変なことやれると。
ただ、後はユーザーさんがどう思うかというところがあるので、作ってる時は「超楽しい!」とか言ってやっていても、実際にいよいよ皆様ができたものを聴いたり見たりする段階になると「本当にあれで良かっただろうか?」って思うんです、これは毎回必ずですね。
金山: そうですよね。苦労してでも普通じゃないのを作って、ユーザーが喜ばなかったら最悪ですね。『ウィズダフネ』には万人受けしない性質も多少なりとも含まれているので、気分的には仕方ないと諦められる部分もないわけではないですが。
崎元: でも何もエッジがないもの作って、それで誰も喜ばなかったよりは絶対いいと思いますけどね。
金山: 誰か1人でも喜んでくれれば、十分嬉しいです。
崎元: エッジが立ったものを作って、あんまり受け入れられなかったケースと、エッジもなにもないものを作って、それで受け入れられなかったケースを考えて、どっちかと言われたらね……。
金山: 前のめりに倒れる。
崎元: そうそう、人生前のめり。
金山: モノ作りって、やっぱりエッジの立った部分のパワーで戦った方が、普通のものを作って戦うより楽しくて価値あるものができるような気はしてます。
崎元: そう、その先に繋がると思うんですよ。なんだかんだ言って、パワーがあったとしてもビジネスとして成功しなかった作品はありますよね。それでも、必ずそれでも何か先に繋がるような気がするんですよね。
ちゃんと強力な個性があるものを作っていれば、「あれは売れなかったけど、でも良かったよ」みたいな感じでまた仕事が繋がることが多いような気がするんですよね。
金山: 個人的に崎元さんほどの方でも、そのエッジを思いきり立てた後にすごい心配になられてる瞬間があるんだなってのが、意外でしたね。
崎元: いや、心配ですよ(笑)やっぱり、これは作り手だからだと思うんですけど、どっかで結構楽しくなってきちゃうんです。
楽しみながら仕事するのはいいことですよね。でも、同時にちょっと罪悪感もあったりとかして。それが、(ゲームが世に出る)審判の日が近づいてくると、突然そういう罪悪感みたいなものが頭をもたげてきて、「ただ自分が喜んでただけじゃないだろうか」とか思います。
金山: ゲーム開発は長いから、自分が暴走していたとしてもなかなかフィードバックがなくて、外れていっちゃってるんじゃないか……って不安は結構ありますね。クローズドベータテストで(賛否ありつつも)一定の好評が得られたので、すこし一安心できました。
テストが始まるまで、「これ大丈夫なのか、あれ大丈夫なのか」と。皆様が喜んでくれて「おお!良かった!」みたいな。テストがなかったら緊張と不安のあまり死んでたかもしれないです。
(一同、笑)
崎元: ディレクターさんは本当に孤独な立場ですよね。
金山: 変なものは、誰も作ったことないからコストもかかるんですよね。
楽じゃないイバラの道だから、前例がなくコストもかかっている、作って面白いかどうかも誰もわからない、みたいな状況でずっとやり続けていく中、変な曲をオーダーしちゃったりとかもして。
これで、サービスがうまくいったらちょっとやり切った感出せるんですが、まだまだわからないですね……(笑)

いったいどうなる?『ウィズダフネ』のマネタイズ
――サービスの話といえば、『ウィズダフネ』のいわゆるマネタイズ的なところで、結構心配になっているユーザーさんが散見されます。そのあたりはどんな感じですかね?
金山: そんなに課金内容に意外なことはないかたちにはなると思います。皆さんが心配されてるのはごもっともで、自分も心配ですからね。ゲームを好きになってくれた人が、お金を使って更に楽しく遊べるような課金は用意していますが、別に費用を一切払わなくても全然楽しめるはずです。だからこそ、心配なんですが…。なるべくプレイヤーの皆様にご協力ただきたいところです(笑)
いや、本当に難しいんですよね。買い切りでは買ってまあ1~2週間、長いものでも1ヶ月くらい楽しんで、「あ~面白かった」となれば、それはそれで次に繋がるので、そのプレイ期間の体験に集中して仕上げれば…という面はあるんですが、一方でサービス運営型のゲームでは長く遊んでもらわないといけないので…。人が半年以上もの間、同じゲームで遊ぶって相当なことじゃないですか。そのゲームの純粋な楽しさだけでは、消費されていくのに十分なコンテンツの物量にならないことが多いんですよね。だからどこかで歪みが生じる、みたいなことがあって。

崎元: 金山さん、凄い正直な人だなと(笑)
――凄い正直だ(笑)いや、ありがとうございます。
金山: そこに堪えられる内容と物量のあるゲームを作るのであれば今度は売上を立てるためにどうする?みたいなバランスが重要になります。
最近のサービス運営型ゲームで思うんですけど、初めから長く、大量のコンテンツを遊べるスタイルが結構うまくやれている印象ですね。
――そうですね、かなり遊べて、課金もまああるけど。
金山: 最悪課金しなければしないでしなくてもいいってスタイル。売上げはどうなってるのか不思議なんですけどね、うん(笑)
――あれは不思議ですね。意外となんか課金しちゃうみたいですよね。
金山: 『ウィズダフネ』も同様の方向性ではあるので、あやかりたいものですね、是非。
――『ウィズダフネ』でもそのスタイルがうまく成功することを祈っております。これからいろんな楽曲を『ウィズダフネ』で聴きたいのはやっぱりありますので。
金山: サービスが続けば続くほど崎元さんの曲が聴けますよ!(笑)
崎元: そうですね。
金山: おそらく、四半期ごとに数曲新曲が追加されていくと思います。
――なるほど、四半期ごとぐらいには大きめなアップデートとかが用意されてる、と。
金山: ダンジョンやシナリオがどんどん追加されていくのと、新モードなどが入るたびに楽曲が追加される予定です。その度にいい曲が聴けるので、皆さんにはぜひゲームを続けていただいた方がいいんじゃないかなと思います。
崎元: 私も是非『ウィズダフネ』の楽曲制作を続けたいと思っております。

――頼もしい言葉ありがとうございます!ではそろそろインタビューの方も締めに入らせて頂きます。まずは崎元さんに『ウィズダフネ』の楽曲を心待ちにされてるユーザーさんへ一言お願いします。
崎元: 今回は珍しく、かなりたくさんの試行錯誤をしながら作っていて、結果的にすごく変なものができたと思います。
異形の旋律とかは気に入っていて、すごく気持ち悪い感じに仕上がったかなと思っています。
皆さんがそれを聴かれてどう感じるのかは、これから結果が出るわけで、楽しみであったりちょっと怖かったりもしてますが、とにかく、是非聴いていただけると嬉しいです。
――ところで、本作のサウンドトラックには未公開曲というか、今後のアップデート分の曲も先に入っているそうですね。
金山: 『ウィズダフネ』のローンチでは、メインダンジョンは2つなのですが、サウンドトラックには3つ目のメインダンジョンの曲も入る予定です。
崎元: サントラの発売日等は未定ですが、多分ゲームがリリースされてからそんなに遠くないうちに出ると思いますので、ぜひよろしくお願いします。
――それでは金山さんに『ウィズダフネ』について最後に一言お願いします。
金山: もし本作に興味を持たれましたら、事前登録をお願いします。また『ウィズダフネ』の公式サイトにも他の公式インタビューへのリンクが掲載予定なので、そちらもあわせてチェックして頂ければと思います。
――長時間にわたるインタビュー、ありがとうございました!
こうしてお二人の『ウィザードリィ』遍歴から崎元氏の音楽制作手法、そして創作論やマネタイズにまで話が及んだインタビューでしたが、いかがだったでしょうか。
『Wizardry Variants Daphne』はiOS/Androidにて2024年10月サービス開始予定で、現在事前登録受付中です。また、PC(Steam)版も近日配信を目指し準備中です。
『Wizardry Variants Daphne』公式サイト












