2025年1月30日にダウンロード版が、そして2月27日にパッケージ版が発売されたニンテンドースイッチ版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』。
パッケージ版と同時配信のパッチによって全世界のユーザーが作成した「ユーザーシナリオ」もプレイ可能になり（スイッチ版は「ユーザーシナリオ」ダウンロード・プレイのみ可、「ユーザーシナリオ」の作成は不可）、150種類以上のシナリオが遊べるようにもなりました。本記事では、そんな本タイトルのスイッチ版のレビューをお届けします。
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』とは
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』は2006年、PC（Windows）向けに発売された『ウィザードリィ』シリーズタイトルです。『ウィザードリィ』にはさまざまなバリエーションのタイトルがありますが、本作はGBなどで展開された『ウィザードリィ外伝』の流れを汲み、5種族8職業の冒険者をキャラクターメイキングして、6人の冒険者でパーティを組んで地下迷宮へ挑む……という、シンプルかつクラシックなゲームシステムを採用していることが特徴です。
また、2006年版からシナリオを自作できる「ユーザーシナリオ」機能が用意されており（繰り返しになりますが、ニンテンドースイッチ版では「ユーザーシナリオ」の自作は不可）、インターネットを経由して熱心な『ウィザードリィ』ファンたちがさまざまなアイデアを凝らした、珠玉の作品たちを作り上げていきました。
その後、紆余曲折を経て発売から15年後の2021年、Steam版の早期アクセスが開始。本作は現世代機への対応を行いつつ、装いも新たに復活を遂げたのでした。
そして2025年、満を持して登場したのがニンテンドースイッチ版です。今作では2006年版に収録されていた5つのシナリオ、そして『ウィザードリィ』や3DダンジョンRPG自体の入門者に向けた新規シナリオ「偽りの代償」を収録。そしてDLCとして『五つの試練』の事実上の前作にあたるシナリオ「戦闘の監獄」や「慈悲の不在」のリメイク版が用意され、2月27日のアップデートにより先述のユーザーシナリオも遊べるようになりました。
また、UI面でもニンテンドースイッチの携帯向けモードに向いたUIと、テレビに接続してフルHD画質で遊ぶモードに向いたUI2種が用意されています。本項のスクリーンショットは携帯モード向けUIで撮影していることをご了承ください。
「ユーザーシナリオ」で広がる無数の冒険へ！
デフォルトシナリオの「偽りの代償」をクリアしてみたら、次は是非とも「ユーザーシナリオ」に挑んでみましょう！他の5つの本体同梱シナリオは、『五つの試練』と銘打たれた通り、2006年当時の「ウィザードリィマニアたちに向けた挑戦状」といった側面があり、非常に難易度が高いのです。
デフォルトシナリオ以外にも、ウィザードリィマニアたちが作成してきたバリエーション豊かなシナリオを多数遊べるのが本作の魅力の1つなのです。もしあなたが公式シナリオだけで満足しているなら、はっきり言って「もったいない！」と言ってしまいましょう。それほどまでに「ユーザーシナリオ」の価値は高いです。
どうやって「ユーザーシナリオ」を導入するのか？という方向けに、ニンテンドースイッチ版における導入手順をご説明します。まずは2月27日に配信されたパッチの導入後、タイトル画面から「STORY SELECT」を選択しましょう。
するとシナリオ選択画面に入るので、「ユーザーシナリオ」を選択します。この時点で、今動かしているスイッチがインターネットに接続されていることをお忘れなく！
メニューから、「ユーザー作品リスト」を選びます。
するとユーザー作品のソート順を選ぶ画面へと遷移しますが、一旦「リスト更新」を押してユーザーシナリオ一覧を更新しましょう。新着作品と出会えるかもしれません。
その後、ユーザーシナリオの一覧から気になったシナリオを選ぶとシナリオの詳細画面が表示されます。
シナリオ詳細画面にはシナリオの概要や詳細な作品情報が表示されているので、目を通しておきましょう。「面白そうだ！」と思ったら、「インストール」です。
ある程度シナリオをインストールしたら、キャンセルボタンで画面を戻っていき、「セーブ済み作品」を選びましょう。
すると、現在スイッチにインストールされているユーザーシナリオの一覧が表示されます。この中から、遊びたいシナリオを選びましょう。
今回は難易度的に初心者向け、かつ比較的短時間で濃厚なダンジョン探索体験が楽しめる、231氏制作のユーザーシナリオ「悪夢の動物園 / Re」をご紹介します。
ユーザーシナリオの「スタート」を押すと、シナリオデータが読み込まれ、ゲームが始まります。とりあえず、「GAME START」を押しましょう。
すると、今回の舞台となる街に放り出されます。実際のところ、各種施設の名前の違いこそシナリオによってあるものの、ゲームの初期の流れは「偽りの代償」をはじめとする他のシナリオと変わりません。例によって、街にいきなり放り出されて、何をすればいいという指示がないのです。
例えばどんなパーティ編成でダンジョンに挑めばいいか、どんな手順でキャラクターメイキングを行えばいいか……についても、ゲーム中に一切説明はありません。これは本作が『ウィザードリィ』および3DダンジョンRPGの初心者に全く優しくない、2006年版から抱える問題点です。
基本的なシステムの説明は「偽りの代償」で行われるのですが、これも「パーティを組んだ後」にダンジョン内で行われる講義によるものであり、まったくの3DダンジョンRPGの初心者に向けてとしては「遅すぎる」という印象が拭えません。
こうした「初心者向けの配慮の不足」は80年代『ウィザードリィ』のクラシックかつハードコアな雰囲気を現代に伝えている……といえば言葉はいいのですが、筆者の個人的な印象としては、こうした投げっぱなしな状況こそが「『ウィザードリィ』はプレイするハードルが高い」、あるいは「『ウィザードリィ』の難易度は非常に高い」というイメージに繋がっているのではないかと思っています。
過去にPC版の「偽りの代償」を題材にしたGame*Sparkの『五つの試練』紹介記事で、筆者としてはこの辺りの説明を補完したいと思っていますので、3DダンジョンRPG初心者の方はこちらも参考にして頂けると幸いです。
何はともあれ、ゲームを開始したら「町外れ」→訓練場（本シナリオでは「案内場」）でキャラクターを6人制作し、パーティを組みましょう。
なお、本シナリオ「悪夢の動物園 / Re」では種族・職業に大きな変更はありませんが、ユーザーシナリオによっては種族の特性値や職業の内容に大きく手が入っていることがあります。その場合にはシナリオダウンロード時の詳細解説欄に明記してあることがほとんどなので、シナリオ詳細にはしっかり目を通しましょう。
本シナリオの目標はシンプルで、地震の影響で街に併設された地下動物園から動物が大量に逃げ出してしまった、どうか暴れている動物たちを静めてほしい……というものです。背景設定を把握したら、地下動物園へと挑みましょう。
本シナリオのダンジョン構成も比較的シンプルで、街で売っているスペシャルアイテム「宝石の指輪」を装備することでミニマップが常時表示、更にダンジョンを一通り探索すると、戦闘→アイテム入手のトレハン作業が非常にしやすいマップ構造になっている……と、初心者にもトレハンを楽しみたい方にも優しい仕様となっています。
さらに本シナリオには、『五つの試練』デフォルトの6シナリオには存在しない「アイテムへの魔法効果のエンチャント」要素が存在します。これは「アイテムにランダムでさまざまな補正効果が付く」というもので、攻撃回数の増加や特定種族への倍打、攻撃や魔法ダメージの増加など、同じ名前のアイテムでもまったく違った効果になる事があります。この要素によって、トレハンの可能性は飛躍的に増しています（「呪い」や「攻撃回数減少」がエンチャントされていて台無し……という事もありますが）。
『五つの試練』基本6シナリオにはない要素なので、これらの基本シナリオしか遊んでいない……という方には、この1つのシステムをとってもまったく新たな気分で遊べることでしょう。
この仕組みは元々DLC「戦闘の監獄」で採用されていて、同作終盤ほどの派手なエンチャントは付かないものの、こういったアイテムへのエンチャント有りのシナリオに慣れるにはちょうど良いボリュームの作品です。
なお、先述した「宝石の指輪」のほか、「蛙の剣」「クマの鎧」といった特定効果が付与された「スペシャルアイテム」も存在します。この武具名でピンときた方は、きっといろんな機種の『ウィザードリィ』で遊ばれてますね。なお、本シナリオでは「村正」「聖なる鎧」「手裏剣」もスペシャルアイテムとして実装されています。
「悪夢の動物園 / Re」というシナリオタイトル通り、本作では動物系のモンスターが多数出現します。とは言え、全体的に敵の強さは大人しめの調整となっており、熟練のウィザードリィマニアならノーリセットでも充分に進める難易度ですので、ノーリセットチャレンジにも挑んでほしいシナリオです。安心してください、本作の「臆病なウサギ」はクリティカルヒットを持っていませんよ。
はたして暴走した動物たちと、怪しい人間たちがたむろする地下動物園の奥にはいったい何があるのか？是非ともあなた自身の目で確かめてみてください。
ユーザーシナリオで無限に広がる「冒険」こそが本作の魅力だ
もちろんユーザーシナリオにはこうした初心者向け・短編作品のみならず、大きなボリュームやビックリするような独自システムを取り入れたユーザーシナリオもあります。ダンジョン探索要素をほぼ廃し、トレハンと戦闘に特化した「階級別格闘大会」「コロッセオ！」、ランダムなダンジョンへのワープにより、疑似的にダンジョンの自動生成を実現した「Infinite Labyrinth」「Infinite Labyrinth:L」、他作品へのオマージュも含まれる「聖者の経典」「永遠の守護者」など、ウィザードリィマニアたちが知恵と工夫を凝らして産み出した素晴らしい作品群がたくさんあります。
クラシックな『ウィザードリィ』のチュートリアルとなりうる本作の基本シナリオ「偽りの代償」や、ウィザードリィマニアたちの熱意がこもった150本以上のユーザーシナリオの存在は、本作を「一生遊べる『ウィザードリィ』」と言っても過言ではないほどの完成度に至らせています。
しかしながら本作はクラシックな『ウィザードリィ』を踏襲しているが故に、今まで『ウィザードリィ』シリーズを遊んだことがない、あるいはキャラクターメイキング主体の3DダンジョンRPGを遊んだことがない方にはとっつき辛い部分が多々あります。そういった部分で、『ウィザードリィ』や、各種DRPGの完全未経験者には薦めづらい部分があるのは事実です。
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』は万人には向かないタイトルですが、クラシックスタイルの『ウィザードリィ』愛好家ならば、本作は必携の一本といえるでしょう。
なお、ニンテンドースイッチ版のアップデートは今後も予定しており、「ボタン入力未反応」といった操作性の問題や、ダウンロード可能なユーザーシナリオ件数に制限がある問題は今後の継続的なアップデートで改善されていくとしています。また、ニンテンドースイッチ版独自のキャラクターポートレートDLCの配信予定もあるという事です。
Game*Spark レビュー『ウィザードリィ外伝 五つの試練』ニンテンドースイッチ版 ニンテンドースイッチ ダウンロード版：2025年1月30日 パッケージ版：2025年2月27日リリース
シンプルかつクラシックな『ウィザードリィ外伝 五つの試練』がニンテンドースイッチに登場！公式シナリオのみならずユーザーシナリオで無数の冒険を
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GOOD
- クラシックなスタイルを踏襲し、シンプルかつスピーディな内容にこだわった『ウィザードリィ』
- クラシックスタイル『ウィザードリィ』の基礎から学べてボリュームも充分な基本シナリオ「偽りの代償」
- 5つの高難易度公式シナリオ・DLC「戦闘の監獄」「慈悲の不在」に加え、多種多様な工夫が凝らされた無数のユーザーシナリオ
BAD
- なんだかんだ言ってクラシックな『ウィザードリィ』で、強制チュートリアルもないので未経験者がプレイした際の難易度とハードルは高い
- スイッチ版は一部操作性で気になる部分あり（アップデートで改善予定）
