フロム・ソフトウェアの『キングスフィールド』と『シャドウタワー』から影響を受けたダークファンタジー系ダンジョンクロウラーとして2023年にリリースされ、高評価を得ている『Lunacid』。
2025年4月には、フロム・ソフトウェアが2000年にリリースしたエディタ「SWORD OF MOONLIGHT KING'S FIELD Making tool」を使用したスピンオフ作品『Lunacid - Tears of the Moon』も公開されています。
2025年7月18日から7月20日にかけて京都市「みやこめっせ」で開催された日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit 13th」に設けられた『Lunacid』の日本語ローカライズを手がけている「CRITICAL REFLEX」ブースにて、開発者のKIRAさんにインタビューの機会をいただきましたので、その模様をお届けいたします。
海外フロムファンは「ビジネスソフト以外全部遊んでる」
――まずは『Lunacid』の日本からの反響をどう感じているか、教えてください。
KIRA:とても良いです。スゴイ(日本語で)。僕がフォローしている日本のYouTuberの方も取り上げてくれて、大好きな『キングスフィールド』と並べて語られていることを誇りに思います。
――KIRAさんの『キングスフィールド』と『シャドウタワー』との出会いはどのようなものだったのでしょうか。
KIRA:一人称視点のRPGを作ろうと思って、どんなゲームがあるのか調べていた時に出会ったんです。それまでフロム・ソフトウェアの作品は『ソウル』シリーズは遊んでいたので、「え、あのフロムのゲームなんだ!」と思ってプレイしてみると、すぐに夢中になりました。

――具体的にこの部分が好き、という点はありますか?
KIRA:まず世界観。あとは少しスローテンポなので自分なりのペースで探検できるところも好きですね。マップ内を限られたアイテムで周らないといけないという“縛り”も、クリエイティブにおいて影響を受けた部分です。
――リソース管理の要素は確かに影響を感じられます。
KIRA:私が元々サバイバルホラー作品を作っていたので、ダンジョンクロウラーでもリソースに限りがある方がより恐怖感が出せると思って、その手法を使っていますね。
――他に好きなフロム・ソフトウェア作品はありますか。
KIRA:ソウルシリーズももちろん好きですが、他だと『エコーナイト』が好きですね。あの頃のクラシカルなRPGをまた作って欲しいな、という気持ちもありますが、難しいだろうなとも理解しています。
――他にもKIRAさん個人としてクリエイティブに影響を受けた作品などがあれば教えてください。
KIRA:ゲームですと『The Elder Scrolls III: Morrowind』や『悪魔城ドラキュラ』シリーズですね。アート作品だと『ウィザードリィ』のトレーディングカードや『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などはキャラクター、特にクリーチャーのデザインに影響を受けていると思います。
――『Tears of the Moon』に使用されたエディタ「SWORD OF MOONLIGHT KING'S FIELD Making tool」は日本語でのみリリースされていますが、開発にあたっての翻訳はどのように対応したのでしょうか。
KIRA:海外でもコアなファンが英訳パッチやMODを作っていて、彼らとコミュニケーションしながらフロムさんのゲームを勉強しましたね。

――海外でのフロム作品、特に『キングスフィールド』や『シャドウタワー』の盛り上がり具合はいかがでしょうか。
KIRA:もちろん『エルデンリング』や『ソウル』シリーズはとても人気で、そうした作品を遊んだプレイヤーが「この会社のゲームを全部遊びたい!」となって、『キングスフィールド』や『シャドウタワー』に辿り着いて来ているんです。なので今でも少しずつ盛り上がってきていて、彼らがプレイしていないフロム作品は(ゲーム開発を始める以前の)ビジネスソフトくらいですよ(笑)。
――フロム・ソフトウェアの作品は歯ごたえのある難易度設定について注目されることもあると思うのですが、クリエイターの立場として難易度についてはどのような考え方ですか?
KIRA:私からするとフロム作品における難易度はそこまで大きなポイントではなくて、やはり世界観が重要だと思っています。『Lunacid』も難易度を調整できるので、あまり簡単にしすぎてすぐにクリアされてしまうのはちょっと違うかなと思いますが、色んな人に遊んでもらえることが一番ですね。
DLCに加え、いつか『Lunacid 無双』も!? 他の作品も同時進行中
――『Lunacid』の今後の予定と、チャレンジしてみたい野望のようなものがあれば教えてください。
KIRA:まず現在はDLCに注力していて、開発は60%くらい進んでいます。『Lunacid』より少し先の物語を描いた、ストーリーを深く掘り下げられる作品になる予定です。
いつかやってみたいのは『Lunacid 無双』みたいなゲームを作ることですかね。できるかは分かりませんが(笑)。
――ちなみに、最近で強く印象を受けた作品やアートはありますか。
KIRA:「セヴェランス」(Apple TVで配信されたSFサイコスリラー・テレビドラマシリーズ)を見て、良い影響かは分からないですけど「もっとホラーやグロのシーンを入れても良いのに」と感じたんです。なので将来的に「セヴェランス」のようなオフィスが舞台となるシューターゲームを作ってみたいなとも思いましたね。
――『Lunacid』以外のシリーズへの意欲もまだまだあるということですね。
KIRA:今は同時に3つほど作品を仕込んでいるんですけど、『Lunacid』に注力しているので週末などの時間を使ってコツコツ進めています。
――シリーズを問わない“KIRAテイスト”と言えば、どのような部分になると考えますか?
KIRA:アートと音楽は独自のスタイルがあると自負しています。あと、実は過去に関わってきたタイトルは深く掘り下げると、全部の作品を作り上げた神的な存在で繋がっているんです。そんなディープな裏設定もありますね。
――興味深いお話をありがとうございます!ちなみに、今年のBitSummitは楽しまれていますか。
KIRA:すごく楽しんでます!できれば全部周りたいですね。

――最後に、日本コミュニティのファンに向けてメッセージをお願いします!
KIRA:まずはLunacidを楽しんでいただき、ありがとうございます。日本のアーティストさんが作り上げた作品にインスパイアされているので、今後は私の作品が日本の皆さんに影響を与えられていたらすごく嬉しいです!
シリーズ開発の背景から海外コミュニティ事情、そしてKIRA氏のクリエイターとしての内面まで、さまざまな内容に及んだインタビュー。前後にはファンが挨拶に訪れるなど、『Lunacid』やKIRA氏が広く親しまれていることが分かる光景も見られました。
『Lunacid』と、スピンオフタイトル『Lunacid - Tears of the Moon』は現在Steamにてリリースされています。
※コメントを投稿する際は「利用規約」を必ずご確認ください