Game*Sparkレビュー: 『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』―「で、味は?」と聞かれたら……「まあまあだな」。 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー: 『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』―「で、味は?」と聞かれたら……「まあまあだな」。

昔と同じように小ネタを再体験できるだけでは、小島監督作品ならではの”遊びの楽しさ”は蘇りません。『MGSΔ』は、原作に忠実過ぎるがゆえに「驚き」のないリメイク作品でした。

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『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』は2004年に発売されて以来、多くのゲーマーを魅了してきた伝説的ステルスアクションゲームです。

舞台は冷戦下のソ連領ジャングル。主人公ネイキッド・スネークが師匠“ザ・ボス”との宿命的な対峙を通じて極秘任務を遂行する物語は、大勢のアクションゲームファンを唸らせました。その当時にプレイしたゲーマーの興奮は、きっとスタッフロールが流れ終えた後も続いていたことでしょう。

そんな歴史的作品を現代にリメイクする『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』には、オリジナル版の重厚なストーリー構造やミッション設計をかなり忠実に踏襲しつつ、グラフィック強化や操作性向上をはじめとする数多くのモダンな調整が施されていました。

本記事では、『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER(以下、MGSΔ)』をおよそ15時間ほどプレイした時点でのGame*Sparkレビューをお届けします。なお、執筆にあたってはコナミデジタルエンタテインメントから提供されたPS5版コードを利用しています。なお、本記事にはネタバレを含んでいるため、閲覧の際はご留意ください。

「リマスター」ではない新作。Δ(デルタ)を冠する理由はどこにある?

早速『MGSΔ』の“リメイク作品”としてのポイントを見ていきます。まずビジュアル面では、キャラクターモデルのディテールが格段に向上し、ネイキッド・スネーク達の表情や汗、泥、水たまりに映り込む光などが自然に再現されています。

4K解像度かつ60fpsでの動作が可能となり、もはやPS2時代の粗いグラフィックスの面影はありません。リアルタイムライティングと高度な陰影表現により、湿った空気感や木漏れ日、洞窟の暗がりや河から眺める夕焼けがシームレスに描き出され、「ジャングルに潜入していく感覚」を生々しく感じられます。

DualSenseのきめ細かな振動フィードバックも新鮮で、自然を突き進む感覚や銃撃戦、接近戦の迫力がプレイヤーの手元に直に伝わる演出も見逃せない点です。

また、操作面も大きく刷新されました。「実際の遊び心地はどうなんだろう」と気になっている方に向けて端的に説明すれば「普通に面白い3Dアクションゲーム」の一言です。特に「NEW STYLE(ニュースタイル)」という操作モードはカメラワークやエイミングが現代的で、昨今のアクションアドベンチャーを遊んだことがあるゲーマーならスッと入り込めるでしょう。

また、その場で怪我や病気を治したり“カムフラージュ率”を上げて潜入しやすくしたり、現地調達した「食糧」で空腹を回復させるシステムなども使いやすく、リマスター/リメイク作品でよく見られる「没入感を阻害する旧態依然としたテンポ」はほとんど感じませんでした。「ザ・フィアー」戦では処理落ちが見られたものの、それ以外では通常版PS5で快適にプレイできるパフォーマンスでした。

筆者はオリジナル版『MGS3』をPS2でリアルタイムで遊び、ケロタンをコンプリートしてからも数え切れないほど周回プレイを重ねていました。そんな私でも素直に「良作3Dアクション」と喜べるほどに、「ニュースタイル」操作の手触りは優れたものだったのです。

カロリーメイトも即席ラーメンも登場

つい楽しくなって1周目から瞬殺しちゃいました

『MGS3』と同じく、『MGSΔ』のキーワードは現地調達。装備や食糧も潜入した現地で集めて、足りないときは「今出来ること」を自分で工夫しながら考え、ダメ元で試してみる。すると……なんと、ホントに出来ちゃう! そんな「まさか」のゲームプレイが、今作でも同じように実行できます。

「忠実にリメイクする」とは、どういうことなのか

迫力のあるジャングルや基地での手に汗握る潜入任務と、キャラクター色が強いボスとの戦い。それらを2025年に「良い感じの3Dアクションゲーム」として再び体験できる喜びは確かにあるものの、オリジナル版を忠実に描く試みには、一言で言い表せられない複雑な印象を感じました。

リメイクの“ここ”は「結構イケるな!」

先に「忠実なリメイク」としての優れた点に触れていきましょう。前項で「ジャングルに潜入していく感覚」を生々しく感じられると述べましたが、言ってしまえば筆者は約20年前にオリジナル版をプレイしているので、かなりサクサク進行でした。確かにリアルな表現になっているけれど、木や武装車両の配置、攻略のコツ、そして今も尚語り継がれる名シーンなどは「そのまま」だったのです。

「確かこの道は、迂回すると良いことがあるんだよな」「このスキマにほふく前進で入ると、あそこに行けるんだよな」などなど、古の記憶から思い出を辿って攻略できてしまう体験には、懐かしさと同時に開発チームのリスペクトが感じられました。

そして本作は「オリジナル版のボイスをそのまま使用している」ということで、必要な箇所は新録、あるいは許可を得た上で音声を加工して対応されています。

グラーニンおじの部屋。メタルギアやジェフティが飾ってあって、ファン大歓喜のシーンでもある

なぜか筆者が鮮明に覚えていたのは「機内の減圧完了、酸素供給状態確認(ゲーム最序盤)」「敵のスパイ相手に酒を飲むしかない(グラーニンのくだり)」といった微妙に重要ではないセリフばかりでしたが、それらは当然オリジナル版と同じ表現で、懐かしくなりました。劇中で発生する“拷問シーン”で聞こえるイヤな殴打音まで、当時のまま。特に最後のグチャァ……という音は、当時も今も変わらず残酷表現の演出として鳥肌モノでした。

それは『MGS3』ファンはもちろん、小島秀夫監督を含むオリジナル版開発スタッフへの尊敬の表れでしょう。まさに『MGSΔ』は、伝説的タイトル『MGS3』に忠を尽くして作られた新作です。しかし、それは「喜ばしい」と言える一方で「変わり映えがない」とも言えます。

リメイクの“ここ”は……「なんだこれ?」

ここで「忠実なリメイク」の中で疑問を感じた点について触れていきます。リメイクにあたって「世界設定や雰囲気はそのままにして、攻略方法だけ変える」というアプローチを選ぶタイトルは珍しくありません。大勢のゲーマーに沢山の思い出を与えたタイトルでも、体験を損なうことなく新たな視点で楽しめるようにリメイクした例があります。


ネイキッド・スネークの興奮シーンも美麗なグラフィックスで

それを踏まえると『MGSΔ』はオリジナル版に対して「過剰なほど忠実」です。「原作改変」という言葉を差し込む余地が1ミリもないくらい、当時の体験が現代的に整えられています。

オリジナル版をそのまま用いている音声だけでなく、アクションにおいても基本操作が変わったのみです。「CQC」や「ローリング」「エルード」「壁に張り付き、覗き込む」などスネークの動きはそのままで、新たなアクションは追加されていません。

「リボルバーで蜂の群れを叩き落とせるのかよ」とツッコみたくなるが、カッコイイからすべてよし

そしてストーリーを刺激的に彩るボス戦も、当時のままです。「オセロットの近くの蜂の巣を撃って落とす」「ザ・ペインの蜂の群れをスモークグレネードで散らす」「登場してすぐのジ・エンドを倒してしまう」……それらの攻略をそのまま使えることは筆者の郷愁を刺激しましたが「こんなことまでホントに出来ちゃうの!?」という驚きはどこからも感じられませんでした。

改変すれば忠実ではなくなり、忠実であると刺激がなくなる……という言い分は、ないものねだりの骨頂かもしれません。しかしアクションゲームを遊ぶとき、人はきっとどこかで刺激を求めているはず。「まさかココに敵が潜んでいるとは思ってなかった!」「まさかとは思ったが、信じられない方法で攻略できてしまった!」といった心地よい挫折や新たな発見を味わう体験こそ、『MGS3』の本質であったと私は考えます。

「小島秀夫作品をリメイクする」とは、どういうことなのか

少し話を戻します。筆者はリアルタイムで『MGS3』をプレイし、もちろん最近も大作3Dアクションは遊んでいて、この初夏には『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』のレビューも執筆しました。その上で『MGSΔ』は「普通に面白い3Dアクションゲーム」と評価しています。それは単に操作性だけでなく、システム面やグラフィックスの向上を総合した上での判断です。

しかし、オリジナル版『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』は「普通に面白い3Dアクションゲーム」ではありません。もしPS2版発売当時に私がゲームライターをやっていたら「腰が抜けてイスから転げ落ちるほど面白いゲーム」と評価していたでしょう。

「METAL GEAR SOLID」シリーズの基本は抑えつつ、複雑なストーリーながらも見事に風呂敷を畳み、その上で続きをも想起させる。ネイキッド・スネークを操作しているだけでも楽しいのに、作中の重要人物が「実は自分の正体は◯◯だ」と告白する怒涛の展開が続くことに、常にワクワクしていました。

……なんていうのは、今しても仕方のない「if」の話なのですが、少なくとも小島秀夫作品が“普通に面白い”だとか“良作”だとか、そういった評価に留まることはありません。何かしらの理由で話題になり、エッジの効いた部分が評価されてきたはずです。

小島秀夫監督作品にあって『MGSΔ』にないもの。それは「驚き」です。筆者にとって小島秀夫氏は、素晴らしい驚きと心地よいゲーム体験を提供してくれるクリエイターです。

「リメイク作品なのだから、驚きがない」というのは当たり前の話にも思えますが、先述の例以外でも「リメイク作品」がゲーマーを驚かせることは珍しくありません。

『MGSΔ』は、オリジナル版のマップ構造やミッションの流れをほぼそのまま踏襲し、忠実過ぎるほどにリメイクしています。オセロットがシングルアクションアーミーに大興奮する超絶有名シーンは、本当に原作に忠実過ぎて「PS2時代の表現」であると感じるほどでした。

あれだけリアルなジャングルを表現しているのに、なぜここだけPS2時代のようなモーションなのか。今回はスクリーンショットのみのお届けとなりますが、このシーンだけキャラクターの重心や足の動き方がどこかぎこちなく、現代的な3Dモデルに当てられたモーションとして不自然に感じました。

これは邪推に過ぎませんが、あまりにも有名なシーンであるため「新たな表現手法を取り入れる隙がない」ということだったのかもしれません。望まれない形で手を加えれば、原作ファンからの鋭い意見は回避できないでしょう。しかしここまで「当時のまま」だと、筆者のようなゲーマーからしたら「古臭い」と言うほかありません。

『MGSΔ』は、発表後に様々な反応が寄せられたタイトルです。疑念の声も期待する声もそれぞれ一枚岩でなく、開発チームも「どこをどうリメイクするべきか」を非常に熟慮されてきたことでしょう。結果として「忠実なリメイク」の道を選んだと考えますが、筆者には“ザ・ボス”がゲーム開始最序盤で伝えてきたメッセージが、思いがけず重みを増しているように感じました。

(中略)だから『絶対敵』なんてものはない。私たちは時代の中で、絶えず変化する『相対敵』と戦っているの。『忠をつくしている』限り、私たちに信じていいものはない。……たとえそれが愛した相手でも。

あまりにカッコいいセリフです。ゲーム開発者にもゲームメディアの編集者にも、そしていちゲーマーにとっても「絶対敵」や「相対敵」なんてものはそうそう存在しませんが、やはり「絶えず変化すること」には共感できます。

小島秀夫監督は、アメリカや世界を巡る国際情勢、コロナ禍で起きた分断(※)、映像表現やキャスティングなど、常に変化していく時代に合わせた「面白さ」で、ゲーマーを驚かせてきました。一方で『MGSΔ』が成したのは「テクノロジーの進化を享受できる、忠実な原作再現」です。

※コロナ禍の時期に話題となった「分断」と『DEATH STRANDING』で描かれた「分断」がキーワードとして合致したことは偶然であったと、小島秀夫監督自ら明かしている。

『MGSΔ』の快適なプレイフィールとストレスの少ない展開は確かなもので、筆者は約9時間半休むことなくプレイして、エンディング後までじっくり堪能しています。夕方から翌朝までぶっ続けで遊んで、スタッフロール後の「演出」を聞いてから窓の外の朝焼けを見たときの気持ちは、新たな「ゲームの思い出」として刻み込まれました。

「シリアスだけどおちゃめ」なところも再現

ただし、本作には「METAL GEAR SOLID」シリーズが持っていた「驚き」という本質が存在しません。そういった意味を込めて、筆者は『MGSΔ』は“A HIDEO KOJIMA GAMEの体験”をリメイクできていないと評価します。

しかし、忠実な再現に注ぎ込まれた情熱は「本物」であると評価します。そして「猿蛇合戦」を始めとしたスペシャルゲームには「おっ!」と声を上げる驚きがありました。欲を言えば、この驚きをストーリー本編でも感じたかったところです。

「Δ(デルタ)」という記号には「変化」「差異」といった意味が含まれています。これは公式Xでも説明されていて「リメイクのコンセプトに即している」ということでした。プレイヤーによっては「忠実でいてくれることこそ、至高」と感じる方もいるでしょう。一方で「Δ」の名を冠する以上、もう一歩踏み込んだ革新性を期待していたユーザーも少なくないはずです。

総評で記事を結ぶ前に『MGS3』をクリアした経験のある読者の皆さまに質問です。あなたにとって“記憶に残っている『MGS3』の名シーン”は、どのようなものでしょうか? 筆者は「ジ・エンドを一瞬で倒せたとき」「ザ・ソロー戦を初めて攻略したとき」、そして「とあるシーンで□ボタンを押すとき」です。

『MGSΔ』は、懐かしいゲームプレイを現代的な技術で再体験させてくれます。今作でもジ・エンドは「とある方法」で倒せましたし、ザ・ソロー戦もオリジナル同様に攻略できて、最後のボタンは「□」から「R2」になりました。それでも、かつて感じたあの“驚き”は一期一会です。

「まさかの方法が、実は正攻法だった!」と気付いた瞬間の感動をリメイク作品に求めることは、欲張り過ぎるかもしれません。しかしながら、『MGSΔ』は開発技術が優れているがゆえに「物足りなさ」も浮き彫りになっている作品だと感じました。

本作の開発チームにとって『Δ』は一歩目に過ぎません。「メタルギア」シリーズという、常に時代に合わせて進歩してきた“巨大歩行型IP”が踏み出す次のステップが、素晴らしいものになることを期待しています。

Game*Spark レビュー『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』 PS5/Xbox Series X|S/Windows PC(Steam) 2025年08月28日リリース

「最高だ!」と言うには物足りないリメイク作品

GOOD

  • 確かな技術力が注ぎ込まれたグラフィックスとシステム面
  • 細やかなところまで原作を尊重しているゲームプレイ
  • 復活&進化するとは思っていなかったおまけコンテンツ達

BAD

  • 原作経験者に向けたアプローチが欠けている
  • メインコンテンツのボリュームは少ない

    ©2025 Sony Interactive Entertainment Inc. Ape Escape and Piposaru are trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc.
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    ©Konami Digital Entertainment
    ※画像は開発中のものです。



    編集:Game*Spark,ライター:キーボード打海

    ライター/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

    Game*Sparkの編集者。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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