
大昔から人は、監視者の目を盗んで仕事や作業をサボりにサボり倒してきました。いかに効率よくサボるか、それがすなわち文明の発展に繋がったといっても過言ではないかもしれません。たった今この記事を読んでくれているアナタも、実は用事の最中なんじゃありませんか?
しかし、ひとたび監視する側に回れば、作業員にはちゃんと働いてもらわないと困るわけです。ましてや外敵が襲い掛かってきている状態だったら、緊急態勢で取り組んでもらわなければいかんのです。
『The King is Watching』は、プレイヤーである王様が監視している施設以外一切稼働しないシミュレーションゲーム。先々月発売されましたが、日本語に対応したのでぜひとも紹介させてください。

人望のない王様ってこんな感じなのか? サボりまくる国民を監視する新感覚ローグライト
プレイヤーは画面右下にいる王様です。本作は画面左にある最大5×5のグリッドで作られた街を発展させて、画面右から襲ってくる外敵の襲撃から国を守ることが目的のローグライト・シミュレーションゲームです。

なるべく早く街を発展させるシミュレーション要素と、徐々に強くなっていく敵を追い払うタワーディフェンス要素がくっついた作品なのですが、なんといっても新鮮なフィーチャーは「王様が監視している施設以外一切稼働しない」という点です。
街には「視線」という名前の小さなカーソルが置かれています(初期にプレイできるボールドウィン王は『の形)。このカーソル内を王様が監視しているということになっており、枠内の施設だけが稼働します。

まずは井戸を建設し「水」を確保しましょう。水があれば「木」を植えられますし「小麦粉」も生産できるようになります。「市場」があれば「小麦粉」を「金」と交換できます。そういった具合で、とりあえずは街に施設をバンバン置いていき、資源のチェーンを作っていきましょう。
そうこうしているうちに敵がやってきます。最初のうちは「盗賊ゴブリン」くらいしかいないので「農民」を何人か徴兵すれば追い払えますが、敵グループはどんどん強くなっていきます。生産ラインを整え、強いユニットを並べていく必要があるわけです。

しかしながら、何度も言うように本作は監視している施設しか動きません。小麦粉と木を生産しつつ、ユニットの徴兵も同時にしたいのに、建物が隣接していないためにどうでもいい水を生産してしまったり、もう徴兵しきっている施設にカーソルを合わせざるを得なかったりします。
施設自体を別の場所に動かすこともできますが、しばらくのあいだ生産にペナルティが付くので、あまり積極的にやりたくはありません。

ようは数多のRTSや街づくりシムに存在する電力資源のような概念を、視線というギミックに変えているわけなのですが、ただ言い換えているだけではなく、要る施設と要らない施設を長期的に選り分けていくパズルにもなっているわけです。
王様によってカーソルの形も保有する能力も異なるので、プレイフィールがだいぶ変わる点が良いですね。

特徴的なフィーチャー以外にも、全体的なゲームデザインも良くできています。
最初の敵のウェーブを退けた後は、のちにやってくる敵がどういう組み合わせなのか、占い師から「予言」を賜ります。
予言と言いつつ、ここではプレイヤーが敵グループを指名することができるのですが、必ず来る敵グループをどういう順番で来させるか決められるうえに、追加で増やすこともできます。追加された敵グループは強力ですが、倒せた場合は報酬も手に入るので、近い将来に自軍がどこまで育っているかを鑑みて、適宜敵グループを追加していくのも重要です。

ちなみに、ランの最初とボス討伐後も占い師が出てきて、次のボスの情報を教えてくれるのですが、この占い師さんは筆者ドストライクのキャラでした。ずっとこの人とお話していたいところですが、断腸の思いで民の監視に戻ります。だって見てないと誰も働かないし!

どの施設を稼働させるか、どういう風に建てるかを考えるだけでも大変なのに、施設自体もリソースになっています。資源を生み出す「生産施設」とユニットを生み出す「兵舎」に分けられていますが、どちらもバランス良く持っておく必要があります。敵を倒したり、研究施設を稼働させたり、商人から購入したりすることで入手できますが、必ずしも欲しいものが提示されるとは限りません。

こうして書くと難解なゲームに思われるかもしれませんし、実際に資源は14種類もあってなかなか覚えきれませんが、最初のうちは半分くらいしか使いませんので、徐々に慣れていくことでしょう。
また、本作はお馴染みのローグライトであり、勝利しようが敗北しようがランの進行度に応じて「タウンデナリィ」という緑色の通貨を入手できます。これによって「アップグレード」や「評議会」などの要素をアンロックしていけば、強化された状態でランに挑むことができます。RTSが苦手な人でも、だんだんと難易度は下がっていくため、そこまでハードルは高くありません。

プレイすればするほど、このゲームの細かいクセもわかってきます。非戦闘時に常に稼働させておきたい施設とユニット死亡時に緊急招集するための施設を区画単位で分けられるようになったり、資源のチェーンを暗記して効率的に生産やお買い物ができるようになったりして、成長を実感できるのが良いですね。

また、ゲームの進行に応じて、怪しい雰囲気の一枚絵が表示され、非常に興味をそそられます。生贄のための黒ヤギすらユニットとして徴兵するヤバい国なのは知っていたが、本当に何か恐ろしい儀式に手を染めているのでは……?
チルで素敵なBGMに浸りながら(曲数が少ないのが瑕ですが)皮肉に満ちたローグライトをぜひともお楽しみください。

タイトル:『The King is Watching』
対応機種:Steam
記事におけるプレイ機種:Steam
発売日:2025年7月21日
著者プレイ時間:9時間
サブスク配信有無:なし
価格:1700円
※製品情報は記事執筆時点のもの
視線という面白いギミックをフル活用したドハマり必死のローグライトスパ!













